2026年10月7日〜9日に東京ビッグサイトで開催された「第53回 国際福祉機器展 H.C.R.2026」で、Pekoeは国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の情報バリアフリー助成事業の成果を発表し、展示も行いました。

3日間にわたり、「Pekoe(ペコ)でつくる、誰もが『伝わる』・『楽しめる』スポーツ観戦環境」をテーマに発表しました。2025年7月から2026年3月まで、スポーツ会場や東京2025デフリンピックの会場で行ってきた実証実験の成果を紹介しました。

正直なところ、発表の前は少し不安でした。スポーツ観戦の情報保障というテーマに、どれだけの方が興味を持ってくれるのか、分からなかったからです。

ところが発表が始まると、想像以上に多くの方が集まりました。説明の途中でふと顔を上げると、席の後ろには立ったまま聞いている方の姿もありました。

立ち見の方までいたことに驚きましたが、それ以上に、これだけ多くの方がこの取り組みに関心を持っていることを、とてもうれしく感じました。

スポーツ観戦にある「情報の壁」
Pekoeは、音声をリアルタイムで文字にし、その文字を参加者どうしで共有・修正できるコミュニケーションサービスです。単に「文字を見る」のではなく、参加者みんなでより正確な情報にしていけることが特徴です。
もともとは聴覚障がいのある方とのコミュニケーション支援から始まったサービスですが、活動を続ける中で、ずっと気になっていたことがありました。それが、スポーツ観戦における「情報の壁」です。
スポーツ会場には、実況、場内アナウンス、選手紹介、判定結果など、たくさんの情報があります。しかし、その多くは音声だけで伝えられています。聞こえにくい方や聞こえない方は、試合の展開だけでなく、その場で共有されるさまざまな情報に触れにくいのが現状です。
そこで私たちは、「誰もが同じ情報を共有し、同じ瞬間を楽しめる観戦環境」を目指して、NICTの助成を受けて実証を重ねてきました。

3フェーズ・計10回の実証で、改善を重ねる
実証は3つのフェーズに分けて、計10回行いました。
・ラグビー:5試合
・バレーボール:2試合
・東京2025デフリンピック:2回
・体験会:1回
スマートフォンでの情報提供から始め、スマートグラスや手のひらサイズの透明ディスプレイの活用、表示方法の改善、運用方法の見直しなど、利用者の声をもとに改善を繰り返しました。会場では、事前の辞書登録とスタッフによるリアルタイムの修正を組み合わせ、より正確な字幕を届けられるよう工夫しました。
その結果、総合満足度は100%、スマートグラスでの表示の満足度は86%となりました。実証の中で見つかった6件の課題のうち、4件を解決し、1件は改善を進めています。残る1件は、中長期で取り組む課題として引き続き検討しています。
利用者からは、次のような声がありました。
・応援の言葉が分かり、周りの人と一緒に応援できた
・試合を見ながら情報を確認できた
・両手が空くので、応援やダンスにも参加できた
成果発表では、こうした実証結果だけでなく、利用者の声も紹介しました。

「伝わる」から「参加できる」へ
発表の中で、私がいちばん伝えたかったのは、実証に参加した中学生からいただいたこのコメントです。
| 「今まで、アナウンスの声が聞こえないから楽しめないだろうと試合に行くのがいやだと思っていたけど 字幕があることで、自分も観戦者の一員になれた気がして、とても楽しめました。」 |
このコメントは、とても心に残りました。情報が分かるようになっただけでなく、「観戦者の一員になれた」と感じてもらえたことに、この活動の大きな価値があると思ったからです。
スポーツ観戦の楽しさは、試合を見ることだけではありません。周りの人と盛り上がること、応援を共有すること、同じ瞬間に歓声を上げること。そうした体験も含めてスポーツ観戦なのだと思います。
だからこそ、情報保障は「伝えるため」だけでなく、「参加するため」の仕組みでもあるのだと、改めて感じました。

展示ブースで広がった対話
展示ブースでは、スポーツ会場での実証事例や情報提供の仕組みを、LEDパネルで紹介しました。発表のあとは多くの方がブースに立ち寄り、スポーツ以外での使い方についても、さまざまなお話を伺いました。
特に印象に残ったのは、「窓口や受付ではどう使えるのか」「イベントで使う場合、どんな運用が考えられるのか」といった、具体的な利用場面を思い浮かべたご質問です。Pekoeはこれまでも窓口や受付、イベントなどで使われてきましたが、それぞれの立場から、Pekoeへの期待や活用についての意見を直接伺えたことは、大きな収穫でした。
「こういう取り組みがもっと広がるといいですね」と声をかけていただく場面もあり、アクセシビリティへの関心の高さを実感しました。

これからも、同じ情報と体験を共有できる社会へ
今回の助成事業は一区切りとなりますが、私たちの取り組みはこれからも続きます。今回いただいたご意見や活用のアイデアを生かして、スポーツ観戦だけでなく、窓口や受付、イベント会場など、さまざまな場面で誰もが情報にアクセスしやすい環境づくりに挑戦していきます。
最後に、実証にご協力いただいた京都聴覚障害児放課後等デイサービス にじの皆さま、ご参加いただいた皆さま、そして国際福祉機器展でブースや発表にお越しいただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。
Pekoeの導入や活用にご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本取り組みは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の令和7年度「情報バリアフリー役務提供事業推進助成金」の交付を受けて実施しました。
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関連リンク
国際福祉機器展 H.C.R.
https://hcr.or.jp/
NICT 情報バリアフリー役務提供事業推進助成金
https://www.nict.go.jp/info-barrierfree/nict/promote/index.html