2026年8月26日(水)、府中市市民活動センター プラッツにて、「デフラグビー きこえない人たちの挑戦!~EQUAL THROUGH RUGBY~」が開催されました。体験・展示コーナーと講演会・トークセッションの2部構成で、世界最高峰のデフラグビー選手が語る「挑戦」の物語を通じて、きこえる人ときこえない人がともに楽しめる社会について考えるイベントです。Pekoeは講演会・トークセッションにおける文字の情報保障支援として参加しました。

映画館のような案内表示
会場に足を踏み入れると、まずインフォメーションのディスプレイが目に入りました。まるで映画館のような案内表示に、出展者としても思わずテンションが上がります。

その近くには、Pekoeの出展ブースを設置。モニターには実際の試合映像を流しながら、Pekoeでどのように文字起こしができるかをご紹介しました。ブース脇には、これまでのラグビー観戦でのPekoe活用事例をまとめたパネルも展示。実況MCの文字起こしの様子や修正の様子、観客の様子といった、これまでコラムでもご紹介してきた事例を、写真とともに振り返っていただける内容にしました。

出展ブースでは
ブースの前では、パネルを覗き込みながら足を止めてくださる方が何人もいらっしゃいました。展示されている過去の活用シーンの写真を見て、「こんな場面でも使えるんですね」「ここで修正作業されているのですね」「みなさん楽しそうに観戦されてますね」と話しかけてくださる方もいて、Pekoeがラグビー観戦の一場面をどう支えてきたかを、直接お伝えできる貴重な機会になりました。

講演会場では
講演会場では、舞台裏から客席まで音声ケーブルを延長していただき、音声を取り込みました。ステージ横のスクリーンにはリアルタイムの文字が表示しました。誤認識は修正担当のお二人が客席前方で修正して正しい情報をお伝えしました。

登壇されたのは、デフラグビー日本代表主将の岸野楓さん。講演タイトルは「”トライ”から始まった僕のデフラグビー物語」。手話で語られる岸野さんの言葉を、手話通訳者の方が読み取って音声にし、それをPekoeが文字にして表示。ご自身の歩みを語る言葉が、スクリーン上に次々と文字として映し出されていきました。

とりわけ会場が沸いたのは、大学時代のエピソードです。大学のラグビー部に入部した岸野さんは、補聴器を外すと情報が全く入らずチームメイトとのコミュニケーションが取れず、2年間ずっと一番下のチームから抜け出せなかったといいます。
3年生になって監督に相談し、トレーナーが隣でやり取りをメモしてくれるようになると、それまで入ってこなかった情報が一気に増え、練習前に作戦を共有できるように。試合中は味方の動きを見て、身振りやアイコンタクトを交えながら合わせられるようになったといいます。
その結果、3年で一つ上のチーム、4年でさらに一つ上のチームまで駆け上がったそうです。文字による情報保障と、身振りやアイコンタクトを重ねた意思疎通が、競技人生を後押ししたエピソードでした。

拍手が起きた、講演の結びの言葉
講演の最後、岸野さんは「無謀に見える夢でも、持ち続けることに意味がある」という言葉で締めくくりました。誰もが無理だと口にした早稲田大学への挑戦を、自分を信じて実現させてきたご自身の歩みと重なる一言が文字として映し出されると、会場からは大きな拍手が起こりました。

サイレントレフリーが教えてくれた「平等」
続くトークセッションでは、1か月前に秋田で行われた大会での岸野さんの試合映像が紹介されました。健常者の中でもレベルの高い大会に、デフラグビーチームとして特別に出場した試合だといいます。この試合にはもうひとつ特別な仕掛けがあったことが明かされました。レフリーが笛を使わない「サイレントレフリー」を、大会側が特別に許可してくれていたというのです。
対戦した聴者チームに感想を聞くと、「サイレントレフリーだったからこそ、自分たちのチームでもっとコミュニケーションを取らなきゃいけないと気づけた」という声が返ってきたそうです。岸野さんはこの経験から、「聞こえる人が聞こえない人に合わせるのでもなく、その逆でもない。どちらにとっても新しい学びがある環境をつくることこそ、本当の意味での平等だと思う」と語りました。今回のイベントタイトルでもある「Equal Through Rugby ~ラグビーを通しての平等~」という言葉の重みを、実体験を通して実感した瞬間でした。

トークセッションでもひと工夫
トークセッションでは、文字での情報が必要な方の席の前に、Pekoeの文字を表示したタブレットを設置。壇上の会話をリアルタイムで文字として追っていただけるようにしました。会場全体が手話を中心に進行する中でも、参加者それぞれの状況に応じた情報保障を行えるよう、手話と文字表示を組み合わせた環境を整えました。

タオルで感じる、もうひとつの伝え方
イベントの締めくくりには、登壇者から「やってみましょう」と呼びかけがあり、来場者もレフリーの指示を体験する場面がありました。デフラグビーでは声の代わりに、レフリーがタオルを振って指示を伝えるそうです。客席のあちこちでタオルが掲げられ、笑顔とともに会場が一体になった瞬間でした。

この秋、東京にやってくる世界大会
日本代表チームの愛称は「クワイエット・タイフーン(Quiet Typhoon)」。今年10月31日(土)から11月3日(火・祝)にかけて、第3回7人制デフラグビー世界大会が東京都内で初めて開催されます。予選は10月31日に夢の島競技場、11月2日に江戸川区陸上競技場で行われ、11月3日には秩父宮ラグビー場で決勝トーナメントが行われる予定です。会場での声援に加え、手話やジェスチャーで気持ちを伝える「サインエール」での応援も歓迎されるとのこと。ぜひ現地で、クワイエット・タイフーンの挑戦を見届けてみてはいかがでしょうか。
おわりに
「声が届かない」ことは、「伝わらない」こととイコールではない。今回のイベントでは、手話、文字、タオル――伝える手段はひとつではないということを、あらためて教えていただきました。Pekoeも、その中のひとつの選択肢として、これからも様々な現場で情報保障のお手伝いをしていきたいと思います。
ご来場、ご登壇いただいた皆様、そして貴重な機会をくださった府中市市民活動センター プラッツの皆様に、心より御礼申し上げます。
府中市市民活動プラッツ
https://www.fuchu-platz.jp/
日本聴覚障がい者ラグビーフットボール協会
https://deaf-rugby.or.jp/
Pekoe公式X
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