「もし学生時代にPekoeがあったなら、学生生活は大きく変わっていただろう」と話すリコージャパン株式会社の得能さん。そして、長年共に働いてきたリーダーの森さんもまた、その変化を実感しています。
リコージャパン株式会社は株式会社リコーの日本における販売・サービス会社で、従業員数18,000名を超え全国に拠点があります。お二人は業務革新センターという業務を集約した部門に所属し、4つある拠点のうち東京都中央区にある日本橋事業所に勤務しています。
もともと同じグループで同僚として働いていた二人ですが、社内で行われた、あるセミナーが、聴覚障がいについて深く考えるきっかけとなりました。それまで独学でITスキルを習得していた得能さんは、Pekoeを使い始めたことで業務革新センターの課題に向き合うようになります。そして、RPAやExcelを活用したDX推進によって、業務工数の大幅削減という大きな成果を達成しました。
今回は、お二人にPekoe導入前後の変化や、活用におけるポイントについてお話を伺いました。


リーダー 森 信介さん
リコージャパン株式会社 経営企画本部 業務革新センター P/C業務部 P/C OR登録グループ
得能 泰成さん(聴覚障がいを持つ当事者)
リコージャパン株式会社 経営企画本部 業務革新センター P/C業務部 P/C OR登録グループ
「聴覚障がいについての理解を深めるセミナー」をきっかけに良い方に回り始めた
―Pekoe導入前はどんな様子でしたか。
森 導入前は基本的に筆談ですが、口話も併用し、得能さんに読唇してもらっていました。しかしこのやり方ですと、会議の時に、重要なポイントや要望しか伝えられず、すべてを伝えられていないという課題を感じていました。 そのため、後で補足の筆談やメールが必要になることも多かったです。
得能 唇の動きで何とかコミュニケーションを取ってきましたがコロナで全員がマスクをするようになり、急にコミュニケーションが難しくなりました。会議などで複数の方が発言するとついていけず、意見を言うことができませんでした。
どこかに「自分は別」という意識があり、周囲との間には常に霧がかかった状態でした。自分の業務処理をひたすら丁寧に迅速に進めていくことが、自分の存在意義でした。
森 もともと得能さんとは同じグループで同僚として働いていましたが、ある時、現在のPekoeのメンバーが実施した「聴覚障がいについての理解を深めるセミナー」に参加したことで、聴覚障がいについて深く考えるようになりました。
得能 今思うと、そのセミナーで周りの皆さんが聴覚障がいについて理解してくれたことをきっかけに、いろいろなことがどんどん良い方に回り始めました。
聴覚障がい者も聞き耳を立ててみた
―Pekoeを使ってみていかがでしたか?
得能 初めてPekoeを使った時、会議内容が理解できたのはもちろんですが、会議後のメンバー同士の雑談の内容まで忠実に文字起こしされ「まるわかり」だったので、まるで自分が健聴者になったかのような感動すら覚えました。
ある時、私の目の前で聞こえる二人が仕事の会話をしている時、マイクを向けてPekoeで話の内容を文字化してみたことがあります。聴覚障がい者にとって「聞き耳を立てる」ことができるのは感動的でした。マイクを置いておけば周りの会話が拾えるので、聞こえる人にはこのように周りの会話が自然に耳に入るのだなと思いました。
それ以外にも、社内の学習動画視聴やイベント動画視聴など、会社でのほぼすべての業務でPekoeを使うようになりました。
チームと個人で工夫していること
―Pekoeを使う時に工夫していることがありますか?
森 大きくは二つあり、同時に話さないことと話す時には名乗ることです。ルールにすると意外に簡単に慣れます。Pekoeに依存しすぎないこと、チャットやメール、筆談、読唇などその時にあった方法を選ぶことも大切です。
得能 健聴者と同じように、あらゆる情報を積極的に吸収するため、PekoeとTeamsチャットを活用しています。また、会議やミーティング、朝礼、小さな打ち合わせでも必ずPekoeを使用し、情報を貪欲に得ることを心がけています。辞書登録については、グループ全体で一つの辞書登録ファイルを共有することで効率化を図っています。

―Pekoeを導入した後、何か変わりましたでしょうか?
森 それまでは事象と結果だけを簡潔に伝え「中抜き」になっていましたが、原因、問題、取組み、課題を含めて伝達できるようになり、疎外感は薄れてきたと思います。得能さんが幼少期より訓練を行い、自己研鑽を行ってきていることで、音声認識がもたらす以上の効果を生み出したと思います。
得能 一言でいえば、健聴者にとって「普通」のことができるようになりました。具体的には、情報共有によりグループメンバーとして意識を持てるようになり、疎外感を感じることがなくなりました。情報の蓄積により自分の役割や方向が見えてきて、自分の強みを出せるようになり少しずつ意見も言えるようになりました。
また、Pekoeを通じて他のメンバーの話を聞くことで皆さんの個性や優秀さを再認識し、自分も頑張らなくてはと意欲が湧いてきます。さらに、良い情報だけでなく耳の痛い情報も入ってくることで、今までは崖の上とは知らずに歩いていたところ、初めて霧が晴れて下が見えたような、よい意味での緊張感を持って仕事に向き合うようになりました。
またグループの皆さんがPekoeを活用して積極的に修正や辞書登録をしてくれているのを見て、「何か結果で返さなければ申し訳ない!」とモチベーションがあがり、俄然やる気が湧いてきました。
森 得能さんはその結果、グループの業務工数削減プロジェクトに参加し、得意のIT技術でツールを開発し、ミッションを達成します。得能さんは15台のRPA開発に関わり、月105時間の業務工数を削減するという結果を出しています。ツールを開発するときにもPekoeを使って活発な意見交換を行いました。
また、モチベーションはそれだけにとどまらず、社内検定試験にもグループ内最高得点で合格し、業務工数削減の功績が認められてステージアップも果たしました。
―今後仕事の上で得能さんに期待することはなんですか?
森 デジタル化の領域は以前よりハードルが下がってきているので、他部門の方ともデジタル化、DX化という共通課題を共有してご自身の成長や成果を追求して欲しいと思います。
得能 今まで以上に貪欲にいろいろな情報を吸収し、その情報を活用してRPAの更なる深化につなげたいと考えています。
Pekoeは聞こえる人が率先して使うもの

―是非メッセージをお願いします
森 Pekoeは健聴者が率先して使うことが重要です。聴覚障がい者はみなさんが思っている以上にいろいろな情報を「知らない」のです。
Pekoeがうまく認識しないと、話者にとって少し屈辱的に感じることがあります。滑舌が悪いと指摘されるわけではありませんが、発声が正確でない可能性もあります。Pekoeが正しく認識するよう、口をしっかり開けて速度を落として話すことで、認識率が向上します。修正が多いと会議の理解度も下がるので、認識を良くするよう心がけています。
得能 Pekoeを活用することで、聴覚障がい者は筆談や配慮をお願いする心理的負担の大幅な軽減、一緒に働く方もサポート負担の大幅な軽減になり、お互いよりよい『Win-Winの関係』を築けるものと信じています。また聴覚障がい者が「普通」を手に入れるまたとないツールなので、是非、色々な方に利用して頂きたいなと思います。
初めてPekoeに触れたとき、真っ先に思ったのは、普通の学校に通っている聴覚障がいの学生にぜひ活用してもらいたいということです。私自身、学生時代は先生の話が分からず、ひたすら黒板を写すだけの授業で楽しい思い出はありません。しかし、今の学生たちがPekoeを使うことで、先生の話を100%理解できれば、勉強が楽しくなり、学生生活がより充実したものになるでしょう。
また、若い頃から質の高い情報を蓄積することで、将来の展望がイメージしやすくなり、職業選択の幅が広がる可能性が高くなると考えています。学生向けのPekoe開発をぜひお願いしたいと思います。
編集後記
得能さんは以前から、耳からの情報の不足を補うために色々なジャンルの読書を続けてきたそうです。またいつ来るか、来ないかもわからないチャンスに備えて自己研鑽に努め、ITスキルを身につけてきたそうです。
リーダーの森さんの言葉の通り、それらの努力が音声認識ツールとしてのPekoeがもたらす以上の成果をもたらしたに違いありません。
得能さんはよく私達にPekoeを使っての感想や要望を伝えてくれます。
私たちPekoeチームは、引き続き当事者の声を大切にしながら、聴覚障がい者の方々が「普通」にコミュニケーションできる環境を提供し、さらにそのサポートを強化していきたいと考えています。
Pekoeが皆さまの業務や日常に役立ち、より多くの方々にとって便利なツールとなるよう、これからも改良を続けていきます。