Pekoe(ペコ)のサポートを担当している聴覚障がいを持つ当事者の木下がPekoeにかかわる人たちにインタビューをしていくコーナーをスタートしました。
第2回は、Pekoeのセミナーを担当している小野さんと宮原さんにきっかけ、当時の思い出、いまの気持ちをオンラインでPekoeを起動しながらインタビューして記事にしてみました。
インタビュアー
木下健悟:Pekoeチーム サポート担当。聴覚障がいを持つ当事者。 生後まもなく薬剤により両耳とも聞こえなくなり重度用補聴器を装用している。コミュニケーション手段は口話、手話、筆談、音声認識アプリをシーンによって使い分けている。
インタビューイ
小野敦子:Pekoeチーム セミナー、営業、サポート担当。約20年前からパソコン要約筆記で聴覚障がい者支援を行う。社内外で聴覚障がいの理解と要約筆記の指導を実施。また、部下に聴覚障がい者、視覚障がい者をもち活躍促進を行ってきた。
宮原輝江:Pekoeチーム セミナー担当。手話通訳士。リコーの教育部において手話啓蒙研修など聴覚障がいのある人とのコミュニケーションに関する研修を数多く実施してきた。
– セミナー担当になったきっかけ
木下:
小野さんは部下に聴覚障がい者を持った経験からPekoeの活動に参加されています。宮原さんは手話が堪能で以前手話研修を担当されていたことを私は知っていたのでPekoeの活動にお誘いしました。現在、おふたりは経験を活かしてPekoeのセミナーを担当されています。まずは小野さんからセミナーをやることになったときのきっかけを教えてください。
小野:
私は元々要約筆記で聴覚障がい者の方のサポートをしていましたが、その頃から周囲の方の理解がとても大事だと感じていました。そこで、私の部下に聴覚障がい者の方が入ってきたときはまず初めに一緒に働くメンバーに聴覚障がいのことを正しく知ってもらうようにしました。Pekoeを導入するときもやはり同じだと思っています。Pekoeというツールをお渡ししただけでは十分活用されないばかりか、聴覚障がい者がひとりで使うツールになってしまって、周囲の方に関心をもってもらえないまま、聴覚障がい者の方がなんとなく話がわかったというところで終わってしまいます。Pekoeを正しく使っていただくことをセミナーでお伝えしたいと思いました。
木下:
確かに私も当初はPekoeをひとりで使っていたのですが当時所属していた部署の皆さんにPekoeを使っていることを紹介する機会があり、それから周囲の皆さんが認識結果を気にしてくれるようになりました。Pekoeにたいして周りの理解が得られた方が仕事がしやすくなることをすごく実感しました。私も当事者のみでなく周囲の皆さんにも聴覚障がいのことを正しく伝える必要があると思いました。
小野:
やはり聴覚障がいというのは周りの誤解が多いと思います。Pekoeを使えばその聞こえない部分が100%補えて『もう困ることはないですね』というのもまた間違った解釈です。聴覚障がいの方が持っている聞こえの特徴とかそれぞれの方の特性とか、もう少しこうしたらコミュニケーションがスムーズになるというポイント、一緒に働いていくためのポイントをお伝えできたら、みんなが働きやすくなってチームがもっと活性化し、聴覚障がいの方ももっと活躍できるようになるのではと思っています。
宮原:
私は木下さんから誘われたのがきっかけです。以前、私が聴覚障がい者とのコミュニケーションに関する研修を担当していたことを知っていたので、Pekoeのセミナーを始める
にあたり当時の話などについて聞きたいと連絡がありました。話の中で現在の聴覚障がい者の働く状況や一緒に働く方の理解の状況を伺い、数十年前とあまり変わっていないと思い、自分に出来ることがあればお手伝いをしたいとセミナー担当を引き受けました。
木下:
宮原さんが研修に関わっていたというのは20年前ですね。20年もたって聴覚障がい者の働く環境、現場は変わっていないということですか?
宮原:
そうです。変わっていない状況にがっかりしました。私自身、研修を継続していませんでしたが、状況は変わっていないのだと改めて感じました。
– 手話をはじめたきっかけ

木下:
おふたりは手話ができますね。ぜひ手話を始めたきっかけをお聞きしたいです。
小野:
私は以前神奈川リコー(現;リコージャパン)で聴覚障がい者雇用を積極的に進めることを決め、まずは聴覚障がい者を受け入れるための受け皿づくりとして、手話サークルを始めたのがきっかけです。手話と同時に要約筆記の仕組みも立ち上げました。
木下:
それが今のPekoeの活動に繋がっているんですね。
宮原:
私は会社の手話サークルでした。当時リコー大森事業所に勤務していて、手話サークルの案内のポスターを見て参加したのがきっかけです。あるとき1人で参加したら聴覚障がいの方しかいなくて皆さん手話で楽しそうに話されていました。私だけ手話がわからなかったから、ちょっと失敗したな、早く帰りたいな、どうやって抜け出そうかなと思っていました。
でも、しばらくその場にいて皆さん笑い合いながら手話で楽しそうに会話をしている様子をみながら、ふと、気づいたのです。
『普段聞こえない人は、聞こえる私たちの声だけの会話の中で、今の私と同じように、寂しい思いで日常を過ごしているのではないか』と。
私はこのサークルに足を運ばなければこのような思いをすることはありませんが、彼らは圧倒的に聞こえる人が多い日常で、毎日このような思いをしているのだと思いました。その時に私は彼らと同時に笑いあいたいと思い、手話を勉強してみようと手話サークルに通いはじめました。
木下:
1枚の手話サークルのポスターとの出会いがきっかけだったのですね。手話サークルに通い始めて手話通訳士の資格までとられるというのはすごいことだと思います。その後、社内外で聴覚障がい者に対する研修に関わられていましたが、そのきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
宮原:
毎年聞こえない方の入社があるので、新人研修を担当している教育部に働きかけて手話通訳などの情報保障をつけたいと手話サークルから依頼しました。手話サークルとして新人研修の手話通訳を何回かお手伝いしている中で、会社として手話研修を立ち上げるため教育部に力を貸してほしいと言われ、異動することになり、教育部で手話研修を立ち上げました。
手話研修の内容を検討するにあたり、聞こえない人に会社での不便さの意見を募り、同時に聞こえない人の上司に直接お話をうかがったりしました。その結果をまとめると聞こえない人の不便さと上司の考えが大きくずれていることが分かりました。聞こえない人は全然情報が足りないとの声にたいし、上司たちは私たちの部門はコミュニケーションが図れているから特に問題はない、という回答が多かったことに疑問を感じ、周囲の方に聴覚障害についての正しい知識と理解を深めて頂く研修内容にしました。
木下:
宮原さんが動いたから研修が始まったのですね。
宮原:
「私がというより手話サークルのメンバーで新人研修に情報保障をつけようと声をあげたのがきっかけですね。私は単に代表として教育部に行ったので私ひとりの声ではなくて、手話サークル全員、聞こえない人の声を含めて、その研修を立ち上げていった形になります。
木下:
当時研修で何か心に残ったお話ありますか?
宮原:
研修を通して聞こえない人の今までの苦労話や今現在も続いている歴史的問題等を知ることで、最初は手話で彼らと一緒に笑いあいたいという自分の気持ちから変化がありました。聞こえないという目には見えない障害が周囲に理解されないがために社会的課題が解決されていないのだという事を感じたので、もっと関わってみたい気持ちになりました。
– 初セミナーの手ごたえは?
木下:
現在担当されているPekoeのセミナー、はじめてのセミナーはどうでしたか?
小野:
はじめてのセミナーは緊張しました。オンラインのセミナーで、終わってから気が付いたら下はパジャマのままでした。よほど緊張していたのだと思います。
セミナーでは私たちの取り組みや失敗談も交えながらお話ししています。失敗を元にやった取り組みとして、例えばPekoeの開発メンバーが当事者の気持ちを理解できていないという課題から、聞こえない話せない人になって疑似体験をする『ろうあ体験』というものをやったことがあります。これをお伝えしたときに、お客様から参考になりました、自分のところでもぜひやってみたいですとおっしゃっていただき、自分が伝えたかった思いがちゃんと伝わったという嬉しさ、喜びを感じました。そしてこのPekoeとセミナーを一緒に組み合わせて伝えていけたらどこにもない音声認識のサービスになるぞ、という実感が得られました。聴覚障がい者が何人もいる企業様だったので、私が話すことはもうみんな知っているのではないかという思いがあったのですが、回答いただいたアンケートを見てそうではなかった、知らないことがあった、ということがわかり、お伝えできてよかったと思いました。
木下:
セミナー当日の宮原さんに会社の食堂でばったり会いました。その日のメニューはカキフライだったのですが午後は担当のセミナーがあるので、あたったら大変とお好きなカキフライをやめて他のメニューにされていました。セミナーを大事にされているのだなと思いました。
宮原:
美味しそうなカキフライだったので食べたかったのですが、万が一あたってしまうと大変なことになると思ったので避けました。(笑)
以前実施していた手話研修は対面での集合型だったので、相手の反応をみて伝わっていなさそうだったらその場でカバーできていました。
オンラインのセミナーは初めてということもあり、リハーサルを何度も行いました。画面に向かって話すということは慣れていないので緊張しました。なので終わったときはほっとした気持ちの方が大きかったのですが、後からちゃんと伝わったのかなという心配も出てきて、セミナーのアンケートの回答を見て、わかりやすかったというお声をたくさんいただいて、よかったと思いました。
木下:
いまはもう慣れましたか?
宮原:
まだまだ慣れないです。相手の表情が見えないと余計に緊張しますね。本当に伝わっているのかなというのが分からないので、どうしても一方的にしゃべってしまう形になってしまうことが難しいところだなと思います。
小野:
相手の顔が見えないで話すのは難しいです。カメラをオンにしていただけないお客様も中にはいらっしゃいますので、静止画に対してニコニコと話しかけている感じになります。でもそういったお客様も2回目の時はカメラをオンにしてくれて、終わるときは拍手してくれたり、アンケートにすごくよかった、親しみやすかった、という感想を書いたりしてくださっています。それを読んで、私たちのやってることはちゃんと伝わっているんだ、と宮原さんと話しています。
宮原:
そうですね。嬉しいですね。
– セミナーのおすすめポイント
木下:
最後に参加いただいたお客様に好評なPekoeのセミナーのおすすめポイントを教えてください。

体験型プログラム – 聞くだけでなく体験や実践を通して気づきを得るセミナー
小野:
体験型のセミナーですので、飽きずに参加でき、何かしら実感して持ち帰ってもらえるものがある内容になっていると思います。聴覚障がいの方がいらっしゃる部門の方、隣で働いている方がどんな方なのかという事は、理解できていないことが多いと思うので、ぜひ聴覚障害をお持ちの方と一緒に働いている方に受けてほしいと思います。お客様の中には会社のみんなにも知ってもらいたいと言ってくださった方もいらっしゃいました。
宮原:
セミナーのポイントとしては話を聞くだけで終わりではなく、共に考えていくという内容に作り上げているところです。聞こえない人も様々なので、講義を聞くだけではなく、聞いた上でいろんな想像を働かせて考えてもらいたいと思っています。ぜひ管理職の方にも受けてもらいたいです。現在聞こえない人が部下にいる方はもちろん、いない人でもいつ自分の部下に聞こえない人が来ても、心構えや対応方法が分かっていれば、心の余裕ができ、聞こえない方に合った対応ができると思います。
木下:
本セミナーに参加したチームメンバーが「聞こえない人を意識して伝わりやすく話すようになった。」と言ってくれました。会議メンバーに理解頂くことで、私は安心して会議に参加でき、積極的に発言できるようになります。多くの方に本セミナーを通して聴覚障がいの正しい理解を深め、お互いに働きやすい環境をつくっていただきたいと思います。少しでも興味を持った方はぜひお問い合わせフォームからお問い合わせください。
Pekoeは無料でお試しいただけます。
ぜひみなさまもトライアルをご検討ください。
Pekoe公式ホームページ
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※この記事では、聴覚障害ではなく聴覚障がい表記に統一しています。