Pekoeのサポートを担当している聴覚障がいを持つ当事者の木下がPekoeにかかわる人たちにインタビューをしていくコーナーをスタートします。
第1回は、私が最初にPekoeのことを問い合わせたお二人、Pekoeチームリーダー岩田とPekoe開発チーム中島にPekoe(ペコ)のきっかけ、当時の思い出、いまの気持ちをオンラインでPekoeを起動しながらインタビューして記事にしてみました。
インタビュアー
木下 健悟:Pekoeチーム サポート担当。聴覚障がいを持つ当事者。 生後まもなく薬剤により両耳とも聞こえなくなり重度用補聴器を装用している。コミュニケーション手段は口話、手話、筆談、音声認識アプリをシーンによって使い分けている。
インタビューイ
岩田 佳子:Pekoeチーム リーダー 。音声認識を活用した議事録サービスを開発していたところ聴覚障がい者向けに使えないかと相談を受けPekoeを始める。
中島 章敬:開発やWebマーケティングを担当。今はPekoe公式サイトの作成やTwitter運用などマーケティング寄り。
– 私が初めてPekoeを知ったのは
木下:
「私が初めてPekoeを知ったのは、神奈川県海老名市にあるリコーの研究開発拠点リコーテクノロジーセンターで働く聴覚障がいを持つメンバー10名が参加するコミュニティでした。そのコミュニティで、『社内の技術展示会に電子黒板 (RICOH Interactive Whiteboard) に組み込んで音声認識を使った会議効率化ソリューションが出展されていて、パソコンでも使えるようにしてもらいました』という投稿があったのが2019年4月でした。当時オンラインでの会議が増えコミュニケーションに困っていた私はこの投稿に興味を持ってすぐに連絡先を聞き、連絡したのがいま一緒に活動するPekoeチームのリーダー岩田さん、Pekoe開発担当の中島さんでした。
岩田さん。中島さん、本日はPekoeをはじめたきっかけやPekoeの将来のお話を聞かせてください。 」
– 「Pekoe」をはじめたきっかけは?
岩田:
「2019年に電子黒板に搭載した音声認識ソリューションを社内の技術展示会に出しました。その展示を情報保障(手話通訳、PC文字通訳など)の観点を持っていた方が見てくださり、聴覚障がいの方に使っていただいたらどうか?という提案がありました。その方と、私たちの上司が同じバスケットボールサークルだった縁もありやってみようという話になりました。当時はまだ認識率が悪く、聞こえる方が活用するにはまだ早いという段階でした。このソリューションのピボット先を探していたため、ちょうどいいタイミングでした。 」
木下:
「聴覚障がいの方に活用できそうだ、と聞くまでは聴覚障がい者にニーズがあるとは全く思っていなかったのでしょうか?」
岩田:
「全く思っていなかったです 。ただ何かに活用したいな、というぐらいでした。確か最初は聴覚障がい者向けに、という考えはなかった記憶があるのですが、中島さん、どうでしたか? 」
中島:
「思っていなかったです。」
木下:
「もし提案をしてくれた方がその技術展示会に参加してなかったらPekoeは存在していなかったということですね。」
岩田、中島:
「そうですね。そう思います。 」
– Pekoeを進める中で気づいたことって?
岩田:
2019年ごろの音声認識精度はあまり良くなかったのですが、社内トライアルしてくれた聴覚障がいを持つ方から、みんなの話が全部わかる、間違っていてもいいから全部わかるのは嬉しいと言われたときに、聞こえる人と聞こえにくい人の思いというのは全然違うのだな、ということが純粋な驚きでした。
また社内の聴覚障がいの方から、いつも誰かにタイピングをしてもらうようにお願いしなければならないのが苦痛だというお話をお聞きしました。Pekoeを使えば会議の最初から最後まで、皆さんがどんな話をしているかが全部わかるというのが嬉しい、と言われました。これを聞いて聞こえる人より聞こえない人にニーズがあるのだなと思いました。
中島:
最初のころ、すべての会話を文字化して伝えるというのはどうなのだろうかと思っていました。情報があふれて理解がしづらくなるのではと。でも、そこは全部知りたいと思う聴覚障がいの方が多いと分かり、もしかしたら聞こえる人とはまた違ったニーズがあるのかなと感じました。
木下:
私はPekoeを社内トライアルしていることを先ほど話したリコーテクノロジーセンターのコミュニティの投稿で知り、すぐに社内トライアルに参加させてもらいました。そのコミュニティに当時の感想が残っていました。 『早速、同じ会議室5人、遠方の会議室4人のオンライン会議で使ってみました。いままで遠方の方の発言はPCにタイピングしてもらっていたのですが、今日はタイピングしてもらうことなく理解できました。間違いもありますが前後でなんとかわかる感じ。みんなも試してみるべきです!』
相手にタイピングしてもらわずに理解できたことがすごく嬉しかったことは、つい昨日のことのように覚えています。
岩田:
木下さんの打ち合わせの現場に伺わせてもらった時に、すでにご自分でスイスイ活用していてすごいと思いました。
– 当初と今で1番考え方が変わったなと思うところは?
木下:
当初といま聴覚障がい者向けの機能について考え方に変化はありましたか。
中島:
僕は先ほども言ったとおり、自身で全て読んで取捨選択できることが大事なのだと気づいたことですね。
木下:
手話通訳とか、パソコン文字通訳だと通訳者が伝える内容を選んで伝えてくれるので、すべてを知ることができませんね。
中島:
そうですね。生のデータと言えばいいのでしょうか。最初から誰かに要約されたものを渡されると不安に感じることもあるのかなと。
木下:
私自身が生のデータが大好きなのでPekoeがすごく刺さりました。ユーザーからの要望ではなく、Pekoeの開発メンバーから、聴覚障がい者に対してこういう機能がいいのではないか、などのアイデアが出ましたか?
中島:
聴覚障がい者向けとしていますが『実はPekoeを使うと、みんなが嬉しいよね』と言われることがあります。例えば、セミナー動画などの字幕は聴覚障がい者だけでなく聴者も嬉しい。今のPekoeは聴覚障がい者中心にしていますが、最終的に全ての人に役立つようにしていきたいと思っています。そのような視点の変化はあったと思います。
木下:
Pekoeを始める前から全てに字幕がつけばいいという考えはありましたか?」
岩田:
そもそもPekoeは全く別のサービスである議事録作成支援ソリューションが出発点でしたが、いろいろな事情があってうまく売ることができませんでした。売れないので一度終了した商品でした。当時は売れなかったので聞こえる人には不要なサービスなのだと思っていました。
木下:
いまは認識精度が格段に向上し、音声認識で作る議事録は聞こえない人だけではなくて聞こえる人も必要なサービスに変わりました。
岩田:
はい。当時は音声認識精度が悪く、修正もできなかったので誤変換が多く、実運用に耐えられませんでした。今は認識精度が良くなり、仮に誤変換があってもPekoeを使ってその場で修正できるようになりました。今後は聴覚障がい者の方だけでなく、皆様にも価値があるサービスにしていきたいと考えて活動をしています。
木下:
最後にPekoeの目指す将来について。まずは中島さんにお聞きしたいです。
中島:
始めたときは聴覚障がい者向けと考えていました。でも実は一緒に働く聞こえる人にも困りごとがあり、お互いの困りごとを解決する必要があることに気が付きました。みんながPekoeを介して自然に働けるようなチームや組織になる支援ができるツールにしていきたいと思います。
岩田:
私は子供が小さいとき、なかなか思うように働けない時期があり、それがつらい時がありました。子供がある程度大きくなり、仕事の融通がきくようになった頃、子育て支援に遠隔ロボットを使うというベンチャー企業のサポートをする活動に参加させてもらい、『働きたくても働けない人を支援するという活動』にすごく影響をうけました。聴覚障がいを持つ方で、もっと働きたい、新しい仕事にチャレンジしてみたいのにできない、と悩んでいる人のためになると思い、今活動しています。
今目指しているのは、障害をお持ちの方が「決まった仕事しかしない」という状態から、自分でやりたいと思う仕事を見つけて、新しいことにチャレンジできるようになる、という状態です。
木下:
なるほど。岩田さんの答えの中で、子育てのため働きづらい時期があったとありましたが、子育てで働けない時期はある程度期間が決まっていますよね。でも私たち聴覚障がい者は障害を持つ期間に終わりがないのです。
岩田:
はい。そう思います。 だからこそ、仕事の幅を広げられるようなお手伝いができるサービスが必要なのだと思っています。
木下:
私にとって助けになったのがPekoeだと思っています。 Pekoeを初めて使った時、誰かのタイピングの助けがなくなったことがすごく嬉しかったです。頼む側の自分も楽になるし、たぶん頼まれる相手も楽になったとおもいます。初めてPekoeを会議で使ったときの会議相手に「タイピングしなくなってどうだったのか?」と聞いてみたいです。まだ聞いたことなかった。
岩田:
そうですね、ぜひ聞いてみてほしいです。周りの人の考えも変わったとなると本当に効果が出ているなと思えるので。
木下:
はい、いろいろ素敵なお話をありがとうございました。本日のインタビューもPekoeを使って誤認識は本人に修正してもらったり、伝わらなかった箇所はチャットをいれてもらったり、私から入れたりして正しく理解でき、聞こえない私がインタビュアーとしてスムーズにインタビューできました。私自身、Pekoeを使い始めてから、Pekoeを介してチームのみんなにすごく協力してもらえていますし、自分で仕事を選んで新しいことにチャレンジできるようになりました。他の皆さんにもPekoeを使って新しいことにチャレンジしていただきたいと思っています。本日はありがとうございました。
Pekoeは無料でお試しいただけます。
ぜひみなさまもトライアルをご検討ください。
Pekoe公式ホームページ
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※この記事では、聴覚障害ではなく聴覚障がい表記に統一しています。