聴覚障害者が学校生活で困ることは?必要な配慮やコミュニケーション支援ツールも紹介!

聴覚障害に関すること
#聴覚障害
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聴覚障害者が学校で困っているイメージの画像

聴覚障害がある子どもは、先生や周囲の子どもたちが話す言葉や、音を聞き取りづらい状況にあります。

聴覚障害者が学校生活を送るうえで、困ることはどのようなことなのでしょうか。

また、周囲にいる私たちは、どのような配慮をおこなえばよいのでしょうか。

この記事では、聴覚障害者が学校生活で困ることに着目し、それに対する配慮やコミュニケーションに役立つ支援ツールをご紹介します。

\聴覚障がい者向け音声認識ツール/

聴覚障害者が学校生活で困ることは?

聴覚障害は、話し声や身のまわりの音が聞き取りづらかったり、ほとんど聞こえない障害です。

私たちは多くの情報を、視覚からだけではなく聴覚からも得ています。

聴覚に障害がある場合は、主に視覚から情報を得ますが、聴者と同じようには得ることができません。

では、学校生活で音が聞き取りづらいと、どのようなことに困るのでしょうか。

  • 授業が聞き取りにくい
  • 周囲の騒音が気になる
  • チャイムなどがいつ鳴ったかわからない
  • 友達の会話が聞き取れない
  • 無視した・聞いていないと思われてしまう

以上にあげた項目のように、授業が聞き取りにくいだけではなく、周囲とのコミュニケーションに関することなど、さまざまな点に不便を感じています。

授業が聞き取りにくい

学校生活では、授業の聞き取りにくさを感じる聴覚障害者が多くいます。

音が聞き取りづらい状況なので、話す側はできるだけスピードを落として話すことが望ましいです。

また、相手の口元の動きなどから言葉を読み取る「口話」を併用する聴覚障害者も多いため、黒板に板書をしながら進める授業では、さらに聞き取りづらさが増します。

言葉が聞き取りづらいうえに、授業では聞き慣れない単語が出てくることも多いので、授業内容を理解できなくなる可能性が高まります。

クラスに聴覚障害者がいる場合は、授業の聞き取りやすさに加え、わからないことがあったらすぐに質問できる環境を整えるなどの配慮が必要です。

周囲の騒音が気になる

音の聞き取りづらさがあると、話を聞き取ることに集中する必要があるため、周囲の騒音が気になります。

教室内には複数の話し声だけではなく、ドアの開け閉めをはじめ机や椅子を動かす音など、さまざまな音が聞こえてきます。

それらの音がある状況下で補聴器を使用すると、いろいろな音が反響してしまうため、正確に聞き取ることは困難です。

多くの人が集まる教室内では、周囲の会話なども騒音に感じる可能性があり、相手の言葉だけを聞き取ることは、とても難しくなります。

周囲は、授業中は私語を控えたり、休み時間などに聴覚障害者と会話する場合は、できるだけ静かな場所を選んで話すなどの配慮が必要です。

チャイムなどがいつ鳴ったかわからない

学校生活では、一般的に授業の開始時刻や終了時刻を知らせるための方法として、チャイムを使用しています。

聴覚に障害があって、音を聞き取りづらい人のなかには、チャイムなどがいつ鳴ったのかわからない人もいます。

終了時刻の場合は、周囲の雰囲気からチャイムが鳴ったことを把握できても、教室外では開始を知らせるチャイムが鳴っても、気が付かないかもしれません。

また、校内ではチャイムだけではなく、職員室などからの呼び出しや緊急時のアナウンスなども放送されます。

聴覚障害者は、聞こえないことによって不便を感じたり、危険が迫っても気が付かない可能性もあるため、知らせる方法を確立しておくことが重要です。

友達の会話が聞き取れない

聴覚障害者は、たくさんの音がする教室のなかでは、友達の会話を聞き取れない場合があります。

1対1の対面での会話は聞き取れても、同時に何人もの人が話す環境では、聞き取ることが苦手です。

補聴器を使用している場合も、クリアに音が聞こえているとは限らず、大きな声で話しても、逆に音が反響してしまい聞き取りづらくなる可能性もあります。

また、近くで会話している人がいるのがわかっても、どのような話をしているのかがわからないため、途中から会話に加われません。

こちらから声をかけたり、聞き取りづらそうな場合は筆談などの方法をとるよう心がけましょう。

無視した・聞いていないと思われてしまう

聴者は、後ろから話しかけられても気が付きますが、聴覚に障害があると、後ろからの呼びかけに気が付かない場合があります。

聴覚障害者は、自分の視野以外から話しかけられるのは苦手です。

決して無視しているわけではありませんが、反応がないため、話しかけたほうは「無視した」「聞いていない」などの印象を持つ可能性が高くなります。

聴覚障害者の特性や苦手なことを、ほかの生徒たちが正しく理解していなかった場合、トラブルに発展する可能性があります。

参考記事:(埼玉県)聴覚障害のある子どもの支援のために

学校で聴覚障害者を受け入れるためには、聴覚障害者の困っていることを理解し、どのような配慮が必要なのかを把握することが重要です。

聴覚障害者とのコミュニケーションに重点を置き、校内で孤立させないような環境をつくるようにしましょう。

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聴覚障害者のために学校で必要な配慮は?

学校での聴覚障害者への配慮をイメージした画像

聴覚に障害がある生徒が学校で学ぶためには、視覚的な補助が必要になります。

学校で聴覚障害者を受け入れる際は、聴覚障害者ばかりではなく、生徒全員が平等に学べる環境でなければなりません。

そのためにできる、学校に必要な配慮とはどのようなことなのでしょうか。

授業の進め方やチャイムなど、通常の学校生活では聴覚に頼って進めている部分があります。

聴覚に頼れない聴覚障害者を受け入れる場合は、視覚からのアプローチが有効です。

  • 目で見てわかるような環境づくり
  • 授業を理解しやすくする工夫
  • 子どもに合わせたコミュニケーション手段をとる
  • 伝わっているかどうかを細かく確認する
  • 学校全体で聴覚障害への理解を深める
  • 地域でサポートしてもらう
  • 必要に応じて要約筆記者や手話通訳者などを配置する
  • サポートツールの導入や騒音対策をおこなう

上記にあげた8つのポイントを参考に、必要な配慮を整えていきましょう。

目で見てわかるような環境づくり

日常的に学校生活を送る教室や、共有スペースなどでは、聴覚障害者にもわかりやすいような視覚支援を取り入れるなど、目で見てわかるような環境づくりが必須です。

視覚支援とは、絵や文字など視覚から情報を得られる支援です。

近年、すべての人に優しい環境づくりとして、ユニバーサルデザイン化が進んでいます。

学校内ですぐに実施可能な配慮として、伝えるべき情報は文章に起こして配布したり、掲示物で知らせるなどの方法があります。

関連記事:ユニバーサルデザインの例と7つの原則とは?家や街中を探してみよう!

また、災害時に備え「光警報装置」など、聴覚障害者に視覚的に危険を知らせるシステムの導入が求められます。

参考記事:(総務省)「ユニバーサルデザインを踏まえた火災警報設備等の導入・普及のあり方

授業を理解しやすくする工夫

聴覚障害のある生徒が授業を理解しやすくする工夫をおこなうためには、聴覚障害について正しく理解し、必要な配慮をおこなうことが重要です。

授業中は、先生の声が聞き取りやすく口元の動きが見やすいことを考慮して、座席を配置するようにしましょう。

口頭での説明は、早口にならないようにハッキリとを意識して話すことが大切です。

授業中は初めて聞く言葉も多く、口話を用いる聴覚障害者は、母音が同じ発音の言葉を間違って聞き取ってしまう可能性が高くなります。

特に聴覚に障害がない生徒でも、聞き間違えてしまう言葉もあるため、日頃から身ぶり手ぶりなども活用して、伝わりやすくしましょう。

また、絵・板書・メモ書きなどの視覚からの支援も、積極的に取り入れる工夫が必要です。

子どもに合わせたコミュニケーション手段をとる

全国に聴覚障害児は15,000人程度います。

参考記事:(内閣府)障害児・者数の状況

聴覚障害がある生徒によって、聞こえ方やコミュニケーション手段は異なるため、それぞれの子どもに合わせたコミュニケーション手段をとることが重要です。

通常学級で学ぶ聴覚障害児は、音声言語を習得していますが、音が聞き取りづらい状況です。

聴覚に障害があっても、音声言語を習得している場合は、明瞭に発話できる子も少なくありません。

しかし、音声の聞き取りに関しては、音と口元の動きなどを合わせて、総合的に言葉を予測して理解している可能性があります。

必要に応じて「口話」や「筆談」などの方法も取り入れるようにしましょう。

下記のリンク先では、耳が不自由な人とのコミュニケーションのポイントや、便利なツールについてもご紹介していますので、参考にしてください。

関連記事:耳が不自由な人とのコミュニケーションは?大切ポイントを押さえ便利なツールも活用しよう!

伝わっているかどうかを細かく確認する

聴覚障害は、見た目では障害があることがわからない障害ですし、聞こえ方にも個人差があるため、どの程度の音を聞き取れているのかがわかりません。

性格によっては、聞こえづらくても、なかなか言い出せない可能性もあります。

日頃から、話している言葉が対象の生徒に伝わっているかどうかを、こちら側から細かく確認するなどの配慮が必要です。

確認したうえで、本人に伝わりやすい方法を講じるほか、先生の話しを聞き取りやすい場所に席を移動させるようにしましょう。

学校全体で聴覚障害への理解を深める

音声言語による発話ができる聴覚障害者も多いため、一緒に学校生活を送るほかの生徒は多くの場合、聴覚障害者を認識できません。

また、補聴器を装着していれば聴者と同じように聞こえると思われがちですが、補聴器で音を補っても聞き取りづらかったり、反響して聞き取りづらくなる場合があります。

聴覚障害者に必要な配慮をおこなうためには、教師やほかの生徒が聴覚障害について正しく知ることが重要です。

学校生活は教室でおこなう授業ばかりではなく、学校全体でおこなう行事もあります。

担任をはじめ教師全員が聴覚障害についての理解を深め、さらに生徒たちにも適切な指導をおこなったり、必要な配慮を学校全体で取り組むことが大切です。

特に聴覚障害による聞こえ方は、障害者個人によってさまざまだということを理解し、個々の生徒に合わせたサポートを検討するようにしましょう。

地域でサポートしてもらう

都道府県など地域単位で、軽度・中度聴覚障害児に対する支援がおこなわれています。

  • 補聴援助システム貸与事業

身体障害者手帳の交付対象とならない軽度・中等度の難聴児に対する切れ目ない福祉サービスの一つとして、学習機会の確保を図り、健全な発達を支援するため補聴援助システムの送受信機の貸出し業務を実施している。

上記は、聴覚障害児支援中核モデルとして報告されている事例です。

詳細な支援は地域によってさまざまですが、聴覚障害者を学校に受け入れる場合は、補聴援助システム貸与をはじめとしたサポートを受けられます。

必要に応じて要約筆記者や手話通訳者などを配置する

聴覚障害者へのサポートとして、必要に応じて要約筆記者や手話通訳者などを配置する方法があります。

「要約筆記」とは、聴覚障害者のための情報保障のひとつで、話を聞いて要点だけをまとめて、手書きまたはパソコンを使って書き起こす手法です。

手書きでおこなう場合は「ノートテイク」、パソコンで入力する場合は「パソコンテイク」と呼び、通常は、対象者からノートや画面が見える位置に座っておこないます。

対象者が大勢いる場合は、全員が見える位置に設置されたスクリーンに映す場合もあります。

その他の情報保障として手話通訳者によるサポートもあり、下記の記事では、手話通訳者に必要な試験や合格率についても解説しているので参考にしてください。

関連記事:手話通訳とは?必要な試験や合格率・仕事内容についても徹底解説!

サポートツールの導入や騒音対策をおこなう

聴覚に障害がある人の聞こえ方は、それぞれ違います。

特に子どもの場合は、自分自身で聞こえの状態を把握できていない場合も多く、周囲にもどのようなサポートを求めたらよいのかがわかりません。

聴覚障害者本人が、自分の聞こえ方を知るアイテムとして、サポートツールがあります。

サポートツールは「聞こえの情報整理シート」など、障害者本人と周囲が聞こえ方の状態を理解しやすくするために、記載された項目をチェックするシートです。

参考記事:ろう・難聴の児童/生徒のためのサポートツール紹介ページ

保護者や先生と一緒に、シートをチェックすることにより、その生徒にあったサポート方法が見つけやすくなります。

聴覚に障害があると、椅子や机を引きずる音が騒音となり、話が聞き取りづらくなることがあります。

聴覚障害者ごとに合ったサポートを模索するためにも、サポートツールの導入や騒音対策は有効です。

聴覚障害のサポートツールや、無料アプリなどの導入を検討している場合は、下記のリンクも参考にご覧ください。

関連記事:聴覚障害のサポートツールでおすすめは?無料アプリや緊急用ツールもご紹介!

聴覚障害の子どもは何人に一人くらいいる?

聴覚障害児を含む子どもをイメージした画像

先天的に聴覚に障害をもつ子どもは、およそ1000人に一人の割合で生まれています。

先天性の聴覚障害のほかにも、病気やケガなどが原因で中途失聴や難聴になる生徒も含めると割合はもう少し増えるでしょう。

聴力を向上させるために、補聴器の使用や人工内耳の移植をおこなうことがありますが、聴者と同じくらいの聴力を得られるわけではありません。

聴覚障害児には、年齢や障害の程度に応じたサポートや指導が必要です。

参考記事:(文部科学省)聴覚障害教育の手引

日本では、2021年の出生数が87万人程度なので、約870人ほどの聴覚障害児が誕生しています。

下記の記事では、聴覚障害者の就職率や周囲ができる配慮についてご紹介しています。

関連記事:聴覚障害者は日本では何人に一人の割合?出生率・就職率やできる配慮も解説!

聴覚障害者が学校で必要としている道具は?

聴覚障害者が学校で必要としている道具は、聴覚障害者ならではの困りごとを解消するための道具です。

音の聞き取りづらさは、授業の理解しづらさに直結しています。

授業中の聞き取りづらさを解消する手段のひとつとして、FM電波を利用しておこなう補助援助システムがあります。

先生側がマイクを使用し、FM電波を介して聴覚障害のある生徒の補聴器や人工内耳などに直接音を届けるシステムです。

参考記事:(独立行政法人 日本学生支援機構)聴覚障害 授業全般

また、聴覚障害者は非常事態が起きても、校内アナウンスなどの音声情報には気付けない可能性が高いため、安全面での配慮が必要になります。

聴覚障害者本人が、非常事態を視覚的に認識できる回転灯やフラッシュランプの設置が望ましいです。

その他にも、聴覚障害者をサポートする道具はいろいろとありますので、下記の記事も参考にご覧ください。

関連記事:耳が不自由な人のための道具って?困ることや活用できる便利なサービスもご紹介!

コミュニケーションの支援ツールはある?

聴覚障害者が学校生活を続けるためには、授業だけではなく、周囲とのコミュニケーションを円滑におこなえることも重要です。

周囲と円滑にコミュニケーションができないと、ストレスや孤立感を感じることにつながり、健全な学校生活を送れません。

コミュニケーションをとる方法として「筆談」が有効ですが、近年は手書きではなく、スマートフォンなどを使用したやり取りが主流になっています。

お互いに文字を入力して送り合うほか、聴覚障害者がテキスト文を入力すると音声化してくれるアプリなどもあります。

聴覚障害者とのコミュニケーションの支援ツールは、いろいろなものがリリースされていますので、下記の記事もチェックしてみてください。

関連記事:聴覚障害者との会話を支援する方法は?上手に活用してコミュニケーションを円滑に!

学校でのコミュニケーションをサポートする「Pekoe」

学校でのコミュニケーションをサポートする支援ツールとして「Pekoe」の活用がおすすめです。

「Pekoe」は、聴覚障害者と聴者のリアルタイムでのやり取りを、円滑におこなうために開発されたツールです。

主な特徴は以下のとおりです。

  • アプリをインストールするだけで使える
  • 会話や言葉などの音声言語を認識してリアルタイムで文字化する
  • URLを知る人は誰でも参加ができ誤変換に対する修正も気付いた人が対応できる
  • チャット機能があり「いいね」も送りあえる

リアルタイムで文字化されるので、友達とのコミュニケーションにも役立ちますし、画面上で資料なども共有できるため、授業にも活用できます。

無料のお試し期間もありますので、コミュニケーションツールに興味をお持ちの方は、ぜひご利用ください。

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まとめ

この記事では、聴覚障害者が学校生活で困ることや、それに対応できる配慮をご紹介しました。

聴力が弱く聞き取れないことは、私たちが想像する以上に不便があります。

聴覚障害者が問題なく学校生活を送るためには、関わるすべての人が聴覚障害について正しく理解することが重要です。

そのうえで、不便なことに対応できるツールを取り入れながら、聴覚障害者が個々に必要とするサポートをおこなえるようにしましょう。