ユニバーサルデザインの例と7つの原則とは?家や街中を探してみよう!
ユニバーサルデザインとは、「すべての人に優しいデザイン」を指します。
年齢や性別などの個性に関わらず、誰もが利用しやすく暮らしやすい社会にするために物やサービスを提供していく考えのもとで、7つの原則を兼ね備えています。
しかし、ユニバーサルデザインの具体的な例や7つの原則とはどのようなものなのか、疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ユニバーサルデザインの例と7つの原則、さらに家や街中にあるユニバーサルデザインをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
目次
ユニバーサルデザインとは?
はじめに、ユニバーサルデザインとは何を意味するのかをご紹介します。
ユニバーサルとは、「普遍的な」「すべてに共通する」と訳され、ユニバーサルデザイン(Universal Design)は、「すべての人に優しいデザイン」という意味です。
デザインという言葉は、色や柄、形だけを表すものではなく、人々がよりよい暮らしをするための設計という意味ももっており、ユニバーサルデザインでは、障がいや年齢、性別に関係なく誰もが暮らしやすいように物や仕組みを提供してく考え方を示しています。
ユニバーサルデザインは、1980年代にアメリカのロナルド・メイス博士が中心に提唱したデザイン、近年ではあらゆる物事にユニバーサルデザインが採用されています。
また、ユニバーサルデザインは「バリアフリー」と混同されがちですが、バリアフリーは障がい者や高齢者などが社会生活をする上でバリアとなるものを除去するという意味であり、すべての人が快適に暮らせることを目指すユニバーサルデザインとは、異なります。
ユニバーサルデザインの7原則
ユニバーサルデザインには、7つの原則があります。
この原則は、工業デザイナーや建築家が協力してまとめたもので、ユニバーサルデザインの方向性を明確にする手助けとなっています。
いずれも、すべての人が使いやすいという考えに直結する、大切な原則です。
- 原則1:誰にでも公平に利用できること(公平性)
- 定義:誰でも利用できるように作られている
- 原則2:使う上で自由度が高いこと(自由度)
- 定義:使う人の利き手、能力などに合わせて作られている
- 原則3:使い方が簡単ですぐわかること(単純性)
- 定義:使う人の能力・特性・経験などに関係なく、わかりやすく作られている
- 原則4:必要な情報がすぐに理解できること(わかりやすさ)
- 定義:使用状況に関係なく必要な情報がすぐにわかるように作られている
- 原則5:うっかりミスや危険につながらないデザインであること(安全性)
- 定義:意図しない行動が、危険につながらないように作られている
- 原則6:無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること(省体力)
- 定義:効率よく疲れずに使用できる
- 原則7:アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること(スペースの確保)
- 定義:どのような体型や能力の人でも、操作しやすいスペースや大きさにする
参考記事:ユニバーサルデザイン 7原則
7つの原則すべてに当てはまるものを作ることは難しいですが、できることから少しずつ着手していけば、思いやりにあふれた街づくりにつながっていきます。
ユニバーサルデザインの7原則については、以下の記事で詳しく解説しています。
具体例もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:ユニバーサルデザインには種類がある?具体例や必要とされる理由も解説!
街中にあるユニバーサルデザインはどんな物があるのか?
ユニバーサルデザインの中には、普段目にしている道具や、街中の機能にさりげなく組み込まれているものも数多くあります。
普段意識していないだけで、
「こんな身近にあるの?」
「これもユニバーサルデザインなんだ」
と驚くものもあるかもしれません。
街中にあるユニバーサルデザインの具体例は以下の通りです。
- 自動ドア
- ノンステップバス
- 多機能トイレ
ぜひ、街中を歩きながらユニバーサルデザインがないか探してみてください。
自動ドア
人感センサーや重量センサーで自動的に開閉する自動ドアは、ドアを自力で開けることが難しい高齢者や子ども、車椅子の方などにとって、とても便利な存在です。
スーパーやデパート、マンションなどに設置されていることが多く、近年ではほとんどの建物に自動ドアが設置されています。
また、ベビーカーを押す人、子どもを抱きかかえている人、両手が荷物で塞がっている人など多くの人にとっても利便性が高いです。
ノンステップバス
ノンステップバスは、バスの床面を低くすることで乗降口の段差を無くしたバスのことです。
足が不自由な方や高齢者、子どもだけでなく、松葉杖を使用している方やキャリーバックを引いている方などの役に立ちます。
さらに、補助スロープを使用すれば、より乗降口の床面が滑らかになり車椅子でのスムーズな乗り入れが可能です。
欧州では「人にやさしいバス」として普及率が高く、日本でも急速に導入が進んでいます。
バスに乗る機会があれば、ノンステップバスかどうかぜひ確認してみてください。
多機能トイレ
多機能トイレは、商業施設や駅などで目にすることも多いのではないでしょうか。
高齢者や足の不自由な人だけでなく、誰もが快適に利用できるようにさまざまな工夫が施されています。
以下は、ユニバーサルデザインに配慮した多機能トイレの設備の一例です。
- 車椅子を使用している方も利用しやすいよう、入口の幅を広くする
- 背もたれや手洗い設備の高さを調整し、座位を保てるようにする
- 呼び出しボタンを設置し、緊急時に係員を呼べる配慮をする
- ベビーシートを設置し、赤ちゃんのおむつ替えをしやすくする
- ベビーチェアを設置し、子連れでもトイレに入りやすいようにする
- オストメイト(人工肛門・人工膀胱)の方が排泄物の処理をしやすい設備の設置をする
- 目の不自由な方でもトイレの数や場所がわかりやすいように点字を用いた案内板を用意する
さまざまなニーズに配慮した多機能トイレが普及しており、どんな人でも快適に使用することができます。
文房具のユニバーサルデザイン例
日常生活で使うことの多い文房具の中には、左利きの人、握力の弱い子ども、高齢者など、使用する人にとっては使いにくいというものも少なくありません。
ユニバーサルデザインの文房具には、能力や年齢、経験などに限らず、使用する人の負担を減らし、誰でも同等に使いこなせる機能が施されているものがあります。
文房具のユニバーサルデザイン例は以下の通りです。
- はさみ
- 消しゴム
- 画びょう
ユニバーサルデザインの文房具は、他にも、三角グリップで握りやすい鉛筆、めくりやすいように斜めに切られているノート、右利き・左利きでも使用できるカッターナイフなど幅広く展開しています。
何となく使用していた文房具が、実はユニバーサルデザインだったということもあるので、ご自身で使用している文房具もぜひチェックしてみてください。
はさみ
はさみは、右利き・左利き用以外にも、握力が弱い人でも握りやすいものなどもあり、子どもや高齢者、障がいをもつ人でも使いこなせる工夫が施されています。
HARACのカスタネットはさみは、カスタネットのような可愛らしい見た目で、指先を自由に動かせない人でも簡単に使用できます。
軽く握るだけで切れるばかりでなく、ハンドルを握らなくても机に置いて上から押せば切ることが可能です。
球状のため、利き手を気にせず自由に持って使用できるのもポイントです。
参考記事:HARAC|Casta
消しゴム
消しゴムにも、ユニバーサルデザインが施されているものがあります。
コクヨから販売されている消しゴムの「カドケシ」は、2002年のコクヨデザインアワード「テーマ:ユニバーサルデザインのステーショナリー」の受賞作品から誕生した文房具です。
互い違いに28個のカドがあるため、使っていくうちに新しいカドが出現し、常に細かい部分をきれいに消すことができます。
手に力が入りづらい人でも、簡単に使用できるのがポイントです。
新しいカドで快適に文字を消すことが可能な新形状のカドケシは、老若男女を問わず人気のある消しゴムです。
参考記事:消しゴム(カドケシ)
画びょう
画びょうを刺すとき、不意に針が指先に刺さったり、落ちていた画びょうを足で踏んでしまい、痛い思いをしたことがあるという人もいるのではないでしょうか。
そのような痛い思いを防ぐために、針が直接触れにくい画びょうがあります。
針が収納されているもの、針が柔らかいリング型のカバーに包まれているものなどがその例です。
針が収納されて安全に抜き差しできる画びょうは、目が不自由な人や高齢者だけでなく、画びょうを扱うすべての人が安心して使用できます。
家の中にあるユニバーサルデザイン例
普段家で当たり前のように使用している物の中にも、ユニバーサルデザインはたくさん潜んでいます。
家の中にあるユニバーサルデザインの例は以下の通りです。
- シャンプーボトル
- 水道の蛇口
- ドラム式洗濯機
他にも、段差をなくしたフラットスルーウィンドウ、幅広の廊下、緩やかな階段など、あらゆる場所にユニバーサルデザインがあります。
家の中にユニバーサルデザインがどれくらいあるか探してみてください。
シャンプーボトル
目を閉じて髪を洗う際、シャンプーとコンディショナーの区別がつかずに困ったという経験があるのではないでしょうか。
シャンプーボトルには、容器に刻み状の突起があるため、触っただけで他のボトルと区別することができます。
視覚障害をもつ人はもちろん、髪を洗っている際に目を閉じたままでも使いやすくなっています。
現在、シャンプーのボトルと詰め替え用のパウチは、JIS(日本産業規格)の「高齢者・障害者配慮設計指針 包装・容器」で突起をつけることが義務付けられています。
家にあるシャンプーボトルで確認してみてください。
水道の蛇口
水道の蛇口にも、工夫が施されているものがあり、公共施設のトイレなどで重宝されています。
レバーを上げ下げして水を出すタイプや、蛇口に手を近づけるとセンサーが反応し水が出るタイプのものは、障がいをもつ方だけでなく、握力の弱い高齢者や子どもなど、蛇口をひねるのが困難な人の利便性を高めます。
また、センサー式の場合、蛇口ハンドルに触れることがないため、衛生的で感染対策にも効果的です。
最近では、商業施設のトイレやマンションの洗面所などで、センサー式の水道が普及しています。
ドラム式洗濯機
斜め式のドラム式洗濯機は、通常の洗濯機と比べ入口が低くなっているため、車椅子の方や高齢者、背の低い方などでも簡単に衣服を出し入れすることができます。
さらに、ドラム式の洗濯乾燥機なら、通常の洗濯乾燥機に比べ乾燥機能も高く、洗濯物を干す作業が省けるので、家事の負担を減らすことも可能です。
子どもも洗濯の手伝いがしやすく、親も助かるといったメリットもあります。
学校にあるユニバーサルデザイン例
すべての子どもが理解できる学習を目指すためには、子どもが安心し、集中して学習に取り組める環境を整えることが大切です。
学校にあるユニバーサルデザインの例は以下の通りです。
- ピクトグラム表示
- 置き場所の設置
- 時間割の設置
- 椅子や机にテニスボールをつける
- チョークの色を白や黄色で統一する
- 今日の予定・行事のみを記載する連絡用の黒板を用意する
ユニバーサルデザインの視点を教室に取り入れることで、配慮が必要な子どもはもちろん、一人ひとりが学習に集中することができます。
ピクトグラム表示
ピクトグラム表示とは、人や物を単純化しマークで表したものです。
非常口やトイレ、道路標識など、見かけない日はないくらい身近にあります。
どのピクトグラムもひと目見ただけで何を表現しているのかがわかるデザインで、子どもや外国人、小さい字が読みにくい高齢者など、文字だけでは理解が難しい人の助けになります。
面白い形や特徴のある形などで文字よりも目立ち、誰が見てもわかりやすいデザインがポイントです。
学校では、理科室や音楽室などの表示、非常口、交通安全教室などで使用されています。
低学年児や障がいのある子でも、何の場所なのかわかりやすいです。
置き場所の設置
物の置き場所を設置することで、子どもが身の回りの環境を自分で意識して整えることができます。
特に低学年の子どもは、自分で自身の身支度をすることに慣れていないため、どうしたらよいのか困ることも多いです。
教師が生徒一人ひとりに配慮して声をかけるのは大変なので、以下のような方法で視覚で持ち物の場所や環境の整え方がわかる工夫をしています。
- 机や椅子の位置にテープでカギカッコの目印をつける
- 授業中の鉛筆や消しゴムの位置を見本で掲示する
- 提出物を入れるカゴのラベリングをする
時間割の掲示
どの学校でも見られる時間割の掲示も、ユニバーサルデザインの一環です。
一日の学習予定や見通しをもつことで、子どもが安心して過ごしたり、集中して授業に取り組め、さらには次の日の忘れ物防止にもつながります。
時間割は大きくわかりやすいレイアウトにし、教室の前面に掲示しておくと効果的です。
固定の時間割でない学校の場合、更新しやすいように大きい掲示板に貼りつけます。
また、子どもの集中力を高めるために、教室の前面には時間割以外のものを極力貼らないようにするのもポイントです。
参考記事:教育におけるユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインの珍しい例は?
「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰」では、けんおんくんをはじめ、面積を広くした電気のスイッチ、握りやすく配慮したペットボトルなど障がいをもつ人や高齢者のニーズに寄り添った商品の開発が、ユニバーサルデザインを推進する力となっています。
音声付電子体温計「けんおんくん」はユニバーサルデザインの珍しい例のひとつで、内閣府特命担当大臣表彰優良を受賞しました。
体温が数字で表記される通常の電子体温計は、目の不自由な方にとって、とても不便な物です。
このけんおんくんは、測定手順や体温を音声とブザーで案内してくれるので、目の不自由な方や視力が弱い高齢者の方でも安心して測定することができます。
また、本体のスイッチを押せばいつでも検温の状態や結果を音声で聞くことが可能です。
電源スイッチもスライド式を採用しており、測定中に誤って電源を消すなどの操作ミスも防ぎます。
さらに、けんおんくんは、音声付以外にも、脇にはさみやすい・ずれにくい・大きな文字で見やすいスタンダードタイプのものも販売されていて、こちらも子どもや高齢者に使いやすいものとなっています。
参考記事:令和3年度 バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰
まとめ
ユニバーサルデザインの例や、7つの原則をご紹介しました。
ユニバーサルデザインは、実は生活の中のいたるところにあります。
バリアフリーとは異なり、障がいをもつ人や高齢者だけでなく、子どもや外国人など、すべての人が快適に過ごせるように工夫されたものがユニバーサルデザインです。
今後、ユニバーサルデザインがさらに広がれば、さらに暮らしが豊かになるでしょう。
ご自身の周りにも、ユニバーサルデザインのものがあるか、ぜひ探してみてください。