耳が不自由な人のための道具って?困ることや活用できる便利なサービスもご紹介!
耳が不自由な人のための道具やツールは、馴染み深い補聴器をはじめ多種多様であり、さまざまな場面で聴覚障がいをもつ方の生活に役立てられています。
しかし、聴覚障がいをもつ方とコミュニケーションをとる際に、
「耳が不自由な人のための道具はどのくらいあるのか?」
と、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、耳が不自由な人のための道具や便利なサービスについて具体的にご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
耳の不自由な人が使う道具はどんなものがある?
耳の不自由な人が使う道具として、今回ご紹介する道具や便利なサービスは、以下の9つです。
- 補聴器
- 人工内耳
- 拡張器
- 筆談器
- 音声認識ソフト
- 屋内信号装置
- 字幕放送・文字放送用受信機
- 呼び出し装置
- 振動式目覚まし時計
聞き馴染みのあるものから、必要のない方にとってはなかなか耳にする機会のないものまで、さまざまな道具があります。
ひとつずつ、どのような役割をもつ道具なのか詳しくご紹介します。
補聴器
聴力を補う補聴器は、耳が不自由な人の支援器具として、最もポピュラーな道具ではないでしょうか。
補聴器は、耳にかける「耳かけ形」、ラジオのように使用する「ポケット式」、耳穴に入れる「耳穴式」などがあります。
耳かけ形や耳穴式に比べ、ポケット式は調節ツマミが大きいため、音量の調整がしやすいのが特徴です。
近年では、聞こえ方によって細かい感度調整が可能なデジタル式の補聴器も販売されています。
補聴器は、使用する人の聴力に合わせて調整をしないと、効果が薄れたり余計な音まで拾ってしまい、不快に感じることがあります。
正しく使用するためには、機器の使い方やアフターケアの方法をしっかりと学ぶことが大切です。
また、耳が不自由な人の中には、補聴器を使用していることを周りに知られたくない人もいるので、利用者の気持ちに向き合う心理的面でのサポートも必要になります。
人工内耳
人工内耳とは、人工臓器のひとつで、補聴器の効果が不十分な人に対する聴覚獲得方法です。
手術で耳の奥に埋め込む部分と、マイクで拾った音を耳内に埋め込んだ部分へ送る体外部の、2つで構成されます。
体外部は、耳かけ式補聴器のようなものが主流ですが、近年では、耳にかけず後頭部に取り付けるコイル一体型の体外装置も製品化されるようになりました。
人工内耳は、有効性に個人差があり、手術直後からすぐに音が聞こえるわけではありません。
また、人工内耳を通して聞く音は機械的に合成されたような音ですが、リハビリをおこなえば、徐々に音がはっきりと聞き取れるようになっていきます。
人工内耳の十分な効果を発揮するためには、術後の本人の積極的なリハビリ姿勢が大切です。
拡張器
拡張器(クリアーボイス)は、必要時に本体を握り耳に当てることで、音声を拡大して聞き取れる装置です。
家族との会話や、お店や病院の受付など相手の声が聞き取りにくいときに、受話器のように耳に当てるだけで、会話を大きく聞き取ることができます。
拡張器は軽量で手のひらサイズのものが多く、聞きたいときだけ使用することができるので、操作も簡単です。
筆談器
筆談器は、子供用のお絵描きボードとしても知られている、有名な道具です。
磁石を利用し、書き消しが何度でも可能なため、難聴の方が筆談する際に重宝します。
耳が聞こえにくい高齢者の方とのコミュニケーションにも有効です。
また、家の中だけでなく、お店の受付などでも使用することができます。
字の読み書きができれば誰でも使用できるので、活用しやすい道具です。
音声認識ソフト
音声認識ソフトとは、話している人の音声を認識し、文字化するソフトウェアです。
録音した会議の音声を文字化して議事録を作成するなど、主にビジネスシーンで活躍します。
音声認識ソフトは、登録語数が多いほど認識精度も向上し、さらに、カスタム登録機能や自動学習機能などを活用することで、より精度の向上が可能です。
無料のものと有料のものがありますが、それぞれおすすめの音声認識ソフトを、いくつかご紹介します。
【無料ソフト】
- Group Transcribe
- 文字起こしさん
- Sloos
【有料ソフト】
- Pekoe
- Voice Code
- VoiceRep スマート議事録forテレワーク
- もじこ
ソフトウェアによって特徴や精度が大きく異なるので、機能性や精度の観点などから、自身に適したものを取り入れることが大切です。
有料ソフトの中には、無料トライアルができるものもあるため、本格的にビジネスシーンで使用したい方は、まずはお試しで使用してみるのもおすすめです。
屋内信号装置
屋内信号装置は、来客時のチャイムの代わりにフラッシュランプで知らせたり、電話の着信音やドアのノック、子供の泣き声などをセンサーがキャッチし、光や振動で知らせる道具です。
視界に入る場所にランプを設置すれば、いつでも特定の音を受けとることができます。
なかには、家の中の複数箇所にセンサーを取り付けたり、携帯型の振動式受信機を持ち歩いたりしている人もいます。
字幕放送・文字放送用受信機
字幕放送・文字放送用受信機は、聴覚障がいのある人や音が聞きにくい人でも、テレビを楽しめるツールです。
ドラマの台詞、バラエティー番組のトークだけでなく、ドアを叩く音や笑い声なども字幕で表示されるので、番組内容をより楽しむことができます。
地上波放送で字幕放送を見るためには、文字放送用受信機が必要ですが、近年では、受信機がなくても字幕放送が見られる機能がついたテレビも多いです。
テレビ本体の設定から、字幕あり・なしを選択すれば、すぐに字幕放送を見ることができます。
また、新聞のテレビ欄に「字」マークがあるものは、字幕放送が見られる番組なので、ぜひ新聞もチェックしてみてください。
呼び出し装置
呼び出し装置は、2個1組で使用し、光や振動で相手に合図を送る装置です。
病院や役所など、窓口での呼び出し時に使用することで、耳の聞こえない人が「まだ呼ばれないかな」と気を張りながら待つ苦痛がなくなります。
屋外のみならず、家の中で離れた相手に合図を送りたいときにも役に立ちます。
振動式目覚まし時計
振動式目覚まし時計は、枕の下にシェイカーという振動部を入れ、振動で起こす目覚まし時計です。
しっかりとした振動で、音の聞こえない聴覚障がい者でも起きることができます。
据え置き型の他に、腕時計型や屋内信号装置と組み合わせて使用するタイプもあるので、自身に合ったものを選びましょう。
振動式目覚まし時計の費用は、助成対象になる自治体もあるため、気になる方はお住まいの自治体に問い合わせてみてください。
参考記事:厚生労働省:障害者支援の活用ガイドブック
耳が不自由な人の生活はどんなもの?
耳が不自由な人は、生活のあらゆる場面で支障がでますが、どのような工夫をしているのでしょうか。
先ほどご紹介した、耳の不自由な人のための道具を活用する以外にも、さまざまな工夫をすることにより快適に過ごすことができます。
ここでは、いくつかの事例を挙げていきます。
1つ目は、車の運転です。
「耳が不自由な人は運転できるの?」と誤解されやすいのですが、補聴器を使用して90デシベルの警音器の音が聞こえれば、運転することは可能です。
また、ワイドミラーや補助ミラーを使用したり、蝶々マークの聴覚障害者標識を付けることが車を運転できる条件となっています。
緊急車両のサイレンなどの音が聞こえない問題点もありますが、ミラーで確認したり交差点で注意を払うようにすれば、問題なく運転できます。
2つ目は、子育てに関してです。
「子供の泣き声に対応できないのでは?」と思われるかもしれませんが、ベビーモニターや屋内信号装置を活用すれば、離れた場所でも子供の様子を確認することができるので、不自由なく子育てできます。
このように、耳の不自由な人は日常生活の中で困る場面もありますが、工夫すればそうでない人と変わらない生活を送ることが可能です。
耳が不自由な人の生活については、関連記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:耳が不自由な人の生活はどんなもの?聴覚障害の種類や区分・不便を軽減させる工夫も紹介!
災害時に困ることも多い
地震や火災を知らせるサイレンなど、音声による情報は、耳が不自由な人にとっては伝わりづらく、不便さがあります。
最悪の場合、その場の状況が把握できず、避難が遅れたり取り残されたりする可能性もでてきます。
災害時、耳の不自由な人に必要な配慮は以下の通りです。
・わかりやすく伝える
耳が不自由な人は、相手の声が多少聞き取れる人や補聴器をつけてもすべては聞き取れない人など、聞こえ方は人それぞれです。
身振り手振りで危険を伝えたり、口を大きくあけてできるだけ簡潔に話すなどして、正しい情報をわかりやすく説明します。
・できるだけ一緒に避難する
耳が不自由な人が、避難時に一人で避難するのは危険が生じるため、できるだけ家族や地域の人と一緒に避難するように心がけます。
避難する際は、身振りや光などの合図、視覚から伝わる情報で、音以外のコミュニケーションをとります。
災害時は、特に地域の方とのつながりが重要になるので、日頃からコミュニケーションを大事にすることが大切です。
また、すぐ避難できるように、非常時の避難場所や持ち出し品リストを定期的に確認しておくと安心です。
耳が不自由な人のマーク
耳が不自由な人のマークがあることをご存じでしょうか。
「耳マーク」は、聞こえが不自由であることを表示したり、聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマークです。
また、このマークが掲示された役所や病院などの窓口では、聴覚障害をもつ人へ配慮した対応もおこなっています。
耳が不自由な人は、見た目では判断が難しく誤解されたり不便な場面も少なくありませんが、このマークを身につけることで、周囲から理解されやすくなり、不安が軽減されます。
このマークを提示された際は、相手は声が聞き取りにくいということを理解した上で、ゆっくり話したり筆談をするといった対応を心がけることが大切です。
耳マークについては、関連記事で詳しくご紹介していますので、併せてご覧ください。
関連記事:耳が不自由な人のマークの意味は?聴覚障害者がどんなことで困るかも知っておこう!
耳が不自由な人のためにできることは?
耳が不自由な人のために私たちにできるのは、コミュニケーションをとることや、お店や窓口、電車やバスでの配慮などです。
聴覚障がいをもつ人への配慮は難しいと思うかもしれませんが、ちょっとした仕草や配慮が役に立ちます。
具体的にどういったものなのか、詳しくご紹介していきます。
コミュニケーション
耳の不自由な人でも、工夫すれば十分にコミュニケーションをとることができます。
聴覚障がいをもつ人は、補聴器を使用している人、手話しかできない人、相手の声は聞こえるが自分では話せない人など、コミュニケーションのとり方は人それぞれです。
相手に合わせ、ゆっくり話す、1語1語を短く話す、顔がしっかり見える位置で話すなど話し方に気をつけたり、筆談、手話などを活用してコミュニケーションをとります。
お店や窓口での配慮
お店や窓口での配慮には、何か困っていることはあるか、手伝うことはあるかと声をかけることなどがあります。
お店や窓口に耳マークが掲示されている場合は、耳が不自由な人に配慮した対応をしてくれるスタッフがいるので、探してみるのもひとつの手です。
電車やバスでの配慮
電車やバスの車内や駅のホームなどは、ガヤガヤしていて音が聞き取りにくいものです。
乗り換えがわからなかったり、緊急時にアナウンスが流れている場合、耳の不自由な人は、自分から誰かに助けを求めないといけません。
このような場面で困っている人がいたら、何に困っているのかを聞き、適切な対応をとりましょう。
耳が不自由な人のための便利なアプリがある
耳が不自由な人のための便利なアプリがあるのをご存じでしょうか。
ここでは、聴覚障がいをもつ人の生活に役立つアプリを、いくつかご紹介します。
耳が不自由な本人だけでなく、配慮する人ももっておくと役に立つアプリもあるので、ぜひこの機会にダウンロードしてみてください。
【音声認識アプリ】
・こえとら
音声を認識するだけでなく、文章を音声にして伝えることができます。
感情や季節なども絵文字で表現でき、リアルな自分の気持ちを相手に伝えることが可能です。
【筆談アプリ】
・携帯筆談器(Android)
社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会が、認定したアプリです。
筆談した画面は画像として保存でき、メールなどへ添付できます。
参考記事:「携帯筆談器」Androidアプリ|APPLION
【緊急連絡アプリ】
・電話お願い手帳
外出時に要件や困り事を書き、周りの人に協力してほしい際に使用するコミュニケーションツールです。
インターネットに接続できない場面でも利用が可能なので、災害時などに重宝します。
参考記事:電話お願い手帳
【補聴器・集音器アプリ】
・Petralex 補聴器
イヤホンをスマートフォンやタブレットに繋ぐだけで使用できる、補聴アプリです。
専用の器具や設定が不要なため、簡単に使用できます。
参考記事:Petralex 補聴器
聴覚障がい者向けコミュニケーションサービス「Pekoe〜ペコ〜」
最後に、聴覚障がい者向けコミュニケーションサービス「Pekoe〜ペコ〜」をご紹介します。
Pekoeは、会話を音声認識化する、ビジネスシーン向けのコミュニケーションツールです。
耳が不自由な人の中には、オンライン会議や打ち合わせの際に、周りの発言をすべては聞き取ることができない、ちょっとした会話や笑い声などが聞こえず、その場の雰囲気がわからなくて孤独を感じる、といった悩みをもつ人もいます。
Pekoeは音声認識の精度が高いだけでなく、誤変換があった場合もその場で修正ができ正しい情報が共有されるので、本人だけでなくチームのパフォーマンス力やコミュニケーションの向上に役に立ちます。
会議や打ち合わせだけでなく、過去の研修動画やリアルタイムの配信にも字幕表示をつけることができるため、耳が不自由な人のキャリアアップも可能です。
難しい設定もなく、インターネット環境とマイクさえあれば、すぐに誰でも使用できるのも魅力です。
\聴覚障がい者向け音声認識ツール/
まとめ
耳が不自由な人のための道具について、詳しくご紹介しました。
聴覚障がいをもつ人は、生活の中で様々な不便さに直面していますが、道具やアプリ、ツールなどを上手く使用して、不自由さを軽減しています。
耳が不自由な人だけが道具やアプリを使用するのではなく、周りの人も関心をもって配慮することで、より快適に生活できます。
今回ご紹介した道具やアプリ、ツールの理解を深めることが、耳の不自由な人への手助けをするきっかけづくりになるので、試してみてください。
