ろう者の「あるある」とは?聴者との違いや障がいを知って理解を深めよう

ろう者は耳が聞こえないことから、日常生活においてさまざまな問題を抱えています。
ただ、耳が聞こえる聴者にとっては、どのような点で困っているのか理解できていないケースが多いでしょう。
この記事では、ろう者の「あるある」をご紹介することで、ろう者と聴者との違いについて解説します。
ろう者について理解を深めることができるよう、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
ろう者の特徴は?
「ろう者」とは、聴覚障がい者のなかでも音がまったく聞こえない人のことです。
ろう者は音が聞こえないという障がいのため、コミュニケーションがとりづらいという問題を抱えています。
また、日常生活では音から得られる情報が多いため、情報不足のなかで生活する必要がある点も大きな問題です。
コミュニケーションについては、手話や筆談、音声を文字化するツールなどを活用することで支援ができますが、日常生活における音の情報については、支援できない部分があります。
そのため、ろう者の多くは問題と不自由を抱えながら日常生活を送っています。
ろう者とろうあ者の違いは?
聴覚障がい者のなかには、音が聞こえづらい人や音が聞こえない人がいますが、そのうち音が聞こえない人のことを「失聴者」と呼ぶのが一般的です。
また、この失聴者のことを「ろう者」「ろうあ者」と呼ぶこともあります。
ろう者とろうあ者は、言葉に「あ」が付いているかどうかだけで似ている言葉ですが、実際には意味が異なります。
この2つの言葉の違いについて詳しくわからない人も多いかもしれません。
ろう者とろうあ者は、漢字で書くと「聾者」「聾唖者」となります。
この「聾」という漢字は耳が聞こえないことを表していて、「唖」は口を使って話せないことを表す漢字です。
つまり、違いとしては口を使って話すことができるかどうかになります。
ろう者とろうあ者についての詳細は、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:ろう者とろうあ者の違いは?呼び方や難聴者との違い・起こりやすい問題を簡単に解説!
ろう者の「あるある」とは?

ろう者のなかでは、日常生活で抱えている問題や悩みなどで、共通しているものが多く存在します。
ここでは、このようなろう者の「あるある」について、以下の項目別にご紹介します。
- ろう者の生活あるある
- ろう者の学校あるある
- ろう者の不便あるある
- ろう者の道具あるある
- ろう者の音楽あるある
- ろう者の拍手あるある
この内容を知ることで、ろう者にとっての常識や普段からおこなわれてる工夫、ろう者が抱えている悩みについても理解できるはずです。
ろう者の生活あるある
多くの人はコミュニケーションに音声をともなう言語を使っているため、ろう者にとってはそのままのやり取りではコミュニケーションがうまくとれません。
そのため、周囲から障がいに対する理解を得ることや、コミュニケーションをとるための工夫が必要です。
伝えたいことを表すために、筆談器やメモ帳などに文字や図を書いたり、顔の表情・身振り手振りのジェスチャーを使います。
他にも、日常生活にはさまざまな音による情報がありますが、ろう者はこれらの情報も得られません。
例えば、玄関のチャイムや時計のアラームなど、普段から使うものにも音の情報が存在するため、来客などを光で知らせたり振動する腕時計・目覚まし時計を使用しています。
耳が不自由な人の生活については、以下の記事にて詳細に解説しています。
関連記事:耳が不自由な人の生活はどんなもの?聴覚障害の種類や区分・不便を軽減させる工夫も紹介!
ろう者の学校あるある
ろう学校に通学しているろう者であれば、教員などからの配慮が期待できます。
ただ、すべてのろう者がろう学校に通学しているわけではなく、一般の学校に通学しているろう者も多いのが現状です。
そのため、一般の学校では必要な配慮が受けられないことがあります。
このようなろう者にとっては、学校での内容を理解するために工夫が必要です。
その工夫のひとつとして「聞こえの情報整理シート」などの自分の聞こえ方を知ってもらうためのツールを利用する方法があります。
外見からはわからない聞こえ方を知ってもらうことができるため、適切な支援が受けられやすくなります。
聴覚障がい者の学校生活については、以下の記事にて詳細に解説していますので、参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害者が学校生活で困ることは?必要な配慮やコミュニケーション支援ツールも紹介!
ろう者の不便あるある
ろう者は、日常生活でさまざまな不便を感じています。
特に外出時には、音による情報が得られず、周囲の情報がわかりにくいという不便があります。
たとえば、車のクラクションや踏切の音などは危険性を知らせる重要な情報ですが、ろう者はこれらを知ることができません。
また、街中ではアナウンスが流れていることがありますが、これについても同様です。
他にも、聴覚障がい者は他の障がい者とは異なり、外見からはわからないことも不便に感じる点です。
ろう者が困っていても、見た目ではわからないため、周囲の支援が受けられないことがあります。
ろう者が不便に感じている点の詳細などについては、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:耳が不自由な人が困ることとは?聴覚障害者への必要な配慮も詳しく解説!
ろう者の道具あるある
聴覚障がい者と聞いてイメージする道具として補聴器がありますが、補聴器は聴力が残っている難聴者には効果がありますが、ろう者は音が聞こえないため使用していません。
高齢者の介護などで大きな声で話しかける場面がありますが、「聞こえにくいから」といって、補聴器をつけている難聴者に同じように大きな声をかけると、補聴器を通してとても大きな音になってしまうため驚いてしまいます。
また、多くの聴覚障害者がコミュニケーションの手段として使える「筆談器」という、子供用のお絵描きボードと似た磁石を利用して何度も書き直しができる道具があります。
お互いの言葉を文字で伝え合える便利な道具ですが、消してしまうと記録が残らないため、「言った」「言わなかった」と後々曖昧になってしまうこともあります。
それでも、子育て中には子どものお絵かきの道具としても重宝するアイテムです。
ろう者の音楽あるある
ろう者は音が聞こえないため、音楽は関係がないと思う人は多いかもしれません。
ところが、実際にはろう者でも音楽を楽しんでいるケースは多くあります。
生まれたときには音が聞こえていた中途失聴者にとっては、音楽を聞いた記憶があるため、失聴者になった後でも音楽を楽しんでいます。
音が聞こえない場合でも、音は振動からできているため、体で感じることが可能です。
実際、ろう者のための「耳で聴かない音楽会」というイベントが開催されたことがあります。
この音楽会では、音を振動や光で表現する聴覚補助システムを用意することで、ろう者でも音楽会を楽しむことができました。
参考記事:耳で聴かない音楽会 落合陽一×日本フィル プロジェクト VOL.1 | 日本フィルハーモニー交響楽団
ろう者の拍手あるある
拍手は手を叩いて音を出す行為ですが、音が聞こえないろう者は拍手の音を聞くことはできません。
ろう者自身も拍手と同じ動作をすることが可能であっても、実際に拍手をすることはあまりありません。
なので、周囲が拍手をしているのを見て、意味もわからず真似をして手を叩くことがあります。
ろう者が拍手の代わりにおこなっているのが、両手を挙げてひらひらとすることです。
ろう者は前にいる人が拍手をしてもわかりませんが、両手を挙げてひらひらさせれば、拍手をしているということが理解できます。
近年では、ろう者がいる場所では一般の人にも同じ動作をすることを勧めている場合がありますが、説明を聞いていない聴者がそれを見ると、「何をしているんだろう?」「なんで踊ってるの?」と不思議がることがあります。
ろう者の常識は聴者にとって非常識になることがある?
日常生活においては、さまざまな常識が存在しますが、これはろう者にも存在します。
ただ、ろう者にとっての常識が聴者にとっては非常識になることがあります。
ろう者は耳が聞こえないことから、日常生活のなかでさまざまな工夫をしていますが、これが一般的な観点から見ると非常識に見えてしまうのです。
たとえば、ろう者は人を呼ぶときに肩を叩いたり、気付いてもらうために物を投げたりすることがあります。
これらは耳が聞こえないことを補うための工夫ですが、聴者にとっては非常識に感じるでしょう。
また、食事の際にも違いがあり、ろう者は周囲に合わせて音を調整することができないため、音を立てて食べてしまうことがあります。
このように、耳が聞こえないことで行動様式が違う部分があります。
ろう者の行動様式の違いについては、以下の記事にて詳しく解説しているため、参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害者は非常識?聴者との行動様式の違いについてまとめてみた
「デフ」とは?
近年では、耳が聞こえないろう者のことを「デフ」と呼ぶことがあります。
デフは英語の「Deaf」が由来となっています。
このDeafという英語は、聞こえない人、聞こえにくい人という意味です。
デフという言葉は、特にスポーツ関連で多く使われていて、耳が聞こえない人がおこなうサッカーを「デフサッカー」と呼んでいます。
また、ろう者がおこなうスポーツにはサッカー以外にもさまざまなものがあり、それらを集めた大会として「デフリンピック」というものも開催されています。
デフリンピックって何?
「デフリンピック」とは、ろう者のためのオリンピックのことです。
英語で耳が聞こえないという意味の「デフ」と「オリンピック」を合わせた造語となっています。
デフリンピックは、オリンピックと同様に4年に1度、夏季大会と冬季大会が開催されています。
開催されるスポーツのルールはオリンピックとほぼ同じものですが、耳が聞こえない人のためにさまざまな工夫がされているのが特徴です。
デフリンピックが最初に開催されたのは1924年のフランスで、9ヵ国から148人の選手が出場しました。
また、2017年にトルコで開催されたデフリンピックでは、史上最多の100ヵ国から約3,100人の選手が出場しています。
参考記事:デフリンピックのご紹介|全日本ろうあ連盟
ろう者のことがわかるドラマがある?

日本では数多くのテレビドラマが放送されていますが、ろう者を扱ったドラマも存在します。
ろう者を扱ったドラマで人気のものが「星の金貨」です。
口と耳が不自由な主人公が看護師として働くうちに医師と恋に落ちるというストーリーで、このドラマは人気となったため後にシリーズ化しています。
最近放送されたドラマとしては「デフ・ヴォイス」があります。
このドラマは、ろう者の手話通訳士が法廷で争う社会派ミステリーとなっていて、ろう者を違った側面からドラマにしているのが特徴です。
このように、ろう者を扱ったドラマからも、ろう者のことをより知ることができます。
参考記事:デフ・ヴォイス
ろう者あるあるを発信する人がいる?
耳が聞こえないことで多くの悩みを抱えているろう者ですが、ろう者のあるあるをコントを使って発信している人がいます。
「デフW」という二人組で、ろう者のあるあるをコントのテーマとしてYouTubeで配信しています。
このデフWは、ろう者でもお笑い芸人をしていることを知ってもらい、興味をもってもらうために活動をしているのが特徴です。
さらに、ろう者にとっても手話で楽しめるエンターテインメントを届けるという目的もあります。
コントという親しみやすいコンテンツで発信することで、ろう者についてより理解してもらえることが期待されます。
参考記事:デフW公式サイト
ろう者から見る聴者とのコミュニケーションあるあるは?
ろう者は耳が聞こえないなかで日常生活を送っていることから、聴者とは異なる文化があります。
特に、ろう者と聴者のコミュニケーションでは、言葉や感覚にズレがあるのが特徴です。
ろう者が使う言葉については、聴者よりもきっぱりと言い切る傾向があり、その言葉によって相手の聴者を傷つけてしまうなどの人間関係の悩みに発展することがあります。
また、ろう者が主に使う手話にはない日本語があるため、あいまいな言葉は伝わりにくく、誤解を招く原因となりがちです。
言葉さえ伝わればコミュニケーションがとれると思われがちですが、このようなズレがあることも理解してもらう必要があります。
ろう者と聴者のコミュニケーションの詳細については、以下の記事で解説しています。
関連記事:耳が不自由な人とのコミュニケーションは?大切ポイントを押さえ便利なツールも活用しよう!
ろう者は手話ができない?
ろう者は耳が聞こえないため、コミュニケーションは手話でおこなっていると思っている人も多いのではないでしょうか。
実際には、ろう者でも手話を使わずコミュニケーションをとっている人も存在していて、手話ができない人もいます。
特に、生まれながらの聴覚障がい者ではない中途失聴者の大半は手話を使うことができません。
手話以外のコミュニケーションの方法としては、筆談や読話などを使っています。
また、最近では音声認識技術を使って音声を文字化するツールも普及してきています。
聴覚障がい者と手話については、以下の記事で詳細に解説していますので、参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害者は手話ができない?日本での普及率や私たちが気をつけるべきポイントもご紹介!
ろう者のコミュニケーションあるあるを支援する「Pekoe」
ろう者はコミュニケーションにおいてさまざまな支援が必要ですが、この支援に活用できるツールがいくつか存在します。
特に近年多く利用されているのが、音声の文字化ツールです。
音声文字化ツールにはいくつか種類がありますが、リコーグループが提供している「Pekoe」もそのひとつです。
Pekoeは、対面やオンラインで利用できるツールで、音声認識技術により音声をリアルタイムで文字化することが可能です。
音声認識の精度は高く、誤変換についてはすぐに修正できるため便利です。
また、修正作業は誰でも参加することができます。
Pekoeはろう者だけでなく、聴者にとっても便利に活用できるツールとなっています。
無料トライアルもあるため、一度検討してみてください。
\聴覚障がい者向け音声認識ツール/
まとめ
ここまで、ろう者が日常生活で抱えている「あるある」についてご紹介しました。
ろう者は耳が聞こえないことから、コミュニケーションにおいて多くの不便を感じています。
また、日常生活においては音から得られる情報も多いため、その情報を得られないことも問題のひとつです。
ろう者のあるあるを知ることで、ろう者が抱えている問題を理解し、より適切な支援につながるでしょう。
