聴覚障害者は非常識?聴者との行動様式の違いについてまとめてみた
聴覚障害者の方と共に生活をしていると、声が異常に大きい、食事中くちゃくちゃと音を立ててご飯を食べるなど、非常識な行動だと感じることがあるかもしれません。
ですが、これらの行動は本当に非常識なのでしょうか。
聴覚障害者は、耳が聞こえないことを補うために先ほどのような行動をとりますが、この特有の行動が非常識と思われてしまっているのが現状です。
本記事では、聴覚障害者の行動は本当に非常識なのか、聴力が正常な聴者と聴覚障害のろう者の行動様式の違いなどについて詳しくご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
聴覚障害者の行動は非常識?
聴覚障害者のなかでも特に程度が重いろう者は耳が聞こえないことを補うために、物を投げたり、人を呼ぶときに肩を叩くなど、特有の動きをすることがあります。
ですが、これらはろう者にとって当たり前の行動であるにも関わらず、聴者には理解ができないがために非常識なものだと捉えられてしまうのです。
結論、聴者とろう者の行動様式が違うことが聴覚障害者が非常識といわれる要因であり、聴覚障害者の行動自体は非常識ではありません。
ろう者は、自身の行動が非常識だと思ってはいないものの、周りの人から注意されたり冷たい視線が向けられると、「失礼な行動をしてしまったのかな」と自分を責める傾向があります。
これにはろう者と聴者の力関係が関わっており、ろう者に非がなくても自然と自分が悪かったという受け止め方をし、我慢してしまう背景があるのです。
ろう者の特徴や、日常生活のなかでどのようなことに困るのかを聴者が理解しなければ、この問題は簡単には解決しません。
聴者とろう者の行動様式の違い
聴者とろう者の行動様式の違いを、以下の場面ごとにご紹介します。
- 人を呼ぶとき
- 声の大きさ
- 視線に関すること
- 食事のマナー
- コミュニケーション方法
聴者とろう者の行動様式には、上記のようにコミュニケーション方法や文化的な要因など、いくつかの違いが存在します。
どのような違いがあるのかを明確にすることが、ろう者とのコミュニケーションを円滑に進めるために重要となるので、ここでしっかりと把握しておきましょう。
人を呼ぶとき
人を呼ぶとき、聴者は「◯◯さん」というように相手の名前を口に出すのが一般的です。
しかし、ろう者は発声が難しいため、口を使わずに相手の肩を叩いたり、机などの物を叩き音を鳴らして相手に気付いてもらおうとします。
この動作はろう者にとってごく普通の行動ですが、聴者からすると「名前を呼ばないなんて非常識だ」「急に肩を叩かれて驚いてしまう」とマナーのない行動に捉えかねません。
かと言って、声を出して呼ぼうとすると、ろう者は自分の声量が調整しにくいため過度に大きな声が出てしまい、それはそれで迷惑がられてしまうのです。
声の大きさ
前述にもある通り、ろう者は自身の声がはっきりと聞き取れないため、発声しても自分の声がどれくらいの大きさで周りに聞こえているのかがわかりません。
イヤホンやヘッドホンで音楽を聴きながら話すと、自分では気が付かなくても自然と声量が大きくなってしまうのと同じで、ろう者は声量を自分で調整するのが難しいです。
相手に聞こえるような音量で話そうとすると、かえって声が大きくなってしまい、特に公共の場や静かな場などでは迷惑がられてしまう場合もあります。
聴覚障害者のなかには、このように自己発声に対する不安をもちながら日常生活を送っている方が多いことを理解しておくとよいでしょう。
視線に関すること
聴者とろう者には、視線に関する感覚の違いがあります。
ここで例に挙げるのは、ろう者が会話をしている聴者の顔をじっと見るのは非常識なのかということです。
聴者の場合、相手の顔を見なくても相手が何を話しているか耳で聞き取れますが、ろう者はそうはいきません。
ろう者は聴者の口元を見て何を話しているか理解しようとするため、必然的に相手の顔に視線を向けます。
そうすると、じろじろと見られて不快に感じたり、恋愛感情をもたれているのではないかと誤解を受けてしまう可能性もあります。
相手の目をじっと見て話すことに慣れていない聴者は、視線を感じると恥ずかしく感じてしまいやすいです。
ろう者の視線が気になるかもしれませんが、口元を見て何を話そうとしているのかを理解しようとしてくれていると受け止めることが大切です。
食事のマナー
聴者とろう者では、食事のマナーにも常識の違いがあります。
まずは、会話の音量を意識して調整できるかできないかという点です。
聴者は、TPOや店の雰囲気に合わせて声のボリュームを調整できるのに対し、ろう者は周りの状況が掴めないため、手話をするときや笑ったときに普段通りの音量の声がでてしまう場合があります。
また、食事中の咀嚼音やスプーン・フォークを置くときの音なども、聴者は周りに配慮して気をつけられますが、ろう者は調整が困難なため食事中に音を立てて食べしてまうことがあり、周りから非常識だと思われてしまいます。
マナーとは異なりますが、ろう者には聴者が集まる飲み会に抵抗がある人が多いです。
周りの会話が聞き取れず場の雰囲気を楽しめなかったり孤独を感じてしまい、次第にこのようなコミュニケーションが必要な場所を避けてしまいます。
コミュニケーション方法
コミュニケーション方法も大きく異なり、直接の会話が主流の聴者に対し、ろう者は手話、筆談、口話、指文字などが一般的です。
話している人の口の動きを読み取って相手の言いたいことを理解する口話や、400種類以上ある手話を取得するには、長い時間を費やさなければなりません。
聴覚障害者のコミュニケーション方法については関連記事で詳しくご紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。
関連記事:耳が不自由な人とのコミュニケーションは?大切ポイントを押さえ便利なツールも活用しよう!
このように、聴者とろう者では様々な場面での行動様式が異なることがわかります。
聴覚障害者が非常識といわれるのは、聴者との行動様式の違いがそもそもの要因なのです。
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聴覚障害者が聞こえる音はどれくらい?
聴覚障害者が聞こえる音はどれくらいなのでしょうか。
自分の声は少し聞こえる、周りの音は一切聞こえないなど聞こえ方は人それぞれ異なります。
聴覚障害者は、聞こえる周波数によって身体障害者程度等級表に基づき等級が決まります。
一番等級の低い6級であれば、騒がしい室内や歌唱中のカラオケの室内以上、最も重度な2級であれば、電車が通過しているときのガード下以上が基準です。
参考記事:身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)
補聴器を使用すれば音が聞き取れる人もいれば、生まれつき聴力がなく手話を第一言語で使用する人もいます。
聴覚障害の程度によって聞こえる音の範囲や強度が異なり、個々に合わせた支援が必要となってきます。
聴覚障害者の等級については関連記事で詳しくご紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。
関連記事:聴覚障害者には等級がある?障害者手帳にも関わる判定基準や程度を詳しく解説!
聴覚障害者は自分の声は聞こえるの?
前述の通り、聴覚障害の種類や程度により、耳の聞こえ方は異なります。
ろう者のように、生まれつき聴力がなく発声の仕方がわからない人は自分の声も聞こえませんし、中途失聴者のなかには補聴器や人工内耳などで残存聴力を活かして、自分の声を聞く人もいます。
感覚的な情報を頼りに声を出して、コミュニケーションをとる聴覚障害者も多いです。
認識のズレがつくり出す「非常識」
ろう者に抱かれる非常識は、聴者との認識のずれが多いために生まれています。
聴者が日常のなかで非常識と感じてしまうろう者の行動には、以下のようなものがあります。
- 演劇鑑賞で音や言葉が聞こえないため内容が把握できない
- お風呂の湧く音やインターホンの音が聞こえないため長時間放置してしまう
- 飲食店で口頭での注文が難しいため指で差したりジェスチャーを多用してしまう
- 人を呼ぶときの適切な音量がわからないため肩を叩く
- 赤ちゃんの泣き声がわからず手を握って泣くのを確認する
これらはすべて、ろう者のなかでは常識ですが、聴者にとっては非常識なものばかりです。
耳が聞こえる人とそうでない人の世界はまったく別物であることがわかります。
聴覚障害者の立場になったつもりで生活してみると不便な状況がたくさんあるので、ご自身もこの機会に想像してみてください。
聴者とろう者がそれぞれを理解するために大切なこと
聴者とろう者がそれぞれを理解するために大切なのは、互いに偏見や間違った意識をもたないようにすることです。
聴覚障害についての知識を得たり身近な聴覚障害者の気持ちに寄り添うことで、自然と相手との距離も近づきます。
コミュニケーションを図るには、ろう者のコミュニケーション法を尊重したり、話すスピードを合わせる、ろう者が伝えたいことを理解しようと努力するなどが挙げられます。
互いに対する尊重や協力の姿勢がコミュニケーションの質を向上させるので、まずは相手を理解することから始めてみましょう。
コミュニケーションのズレをなくす「Pekoe」
「Pekoe」は、聴覚障害者やその周りの人のために開発されたコミュニケーションサービスです。
会議や研修の音声をリアルタイムで認識し文字化することで、聴覚障害者の方もその場に参加しやすくなります。
音声認識ソフトは誤変換が目立ちやすいと思われがちですが、Pekoeなら音声認識に誤りがあった場合でも、参加者なら誰でもその場で修正ができるので、常に最新の情報共有が可能です。
ちょっとした呟きや笑い声も文字化するため、その場の雰囲気も伝わりやすく、周りの人とのコミュニケーションもとりやすくなります。
インターネット環境があればすぐに始められるので、聴覚障害者の方とのコミュニケーションの穴を埋めたいという方は、ぜひご検討ください。
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まとめ
聴覚障害者は非常識なのか、また聴者との行動様式の違いについてご紹介しました。
聴覚障害者が非常識といわれるのは、ろう者との行動様式の違いが関係しています。
両者の認識にずれがあることで、ろう者にとって常識だと思うことが聴者には非常識に感じてしまうのです。
聴覚障害の症状や、ろう者が日常生活の中でどのようなことに困っているのかを理解すれば、聴覚障害者に対する偏見はなくなります。
すぐに認識のずれを解消するのは難しいですが、互いに偏見をもたず理解することから始めていきましょう。
