聴覚障害者は手話ができない?日本での普及率や私たちが気をつけるべきポイントもご紹介!

聴覚障害は、先天的もしくは後天的な障害によって音が聞こえない、あるいは聞き取りづらい状態です。
私たちは聴覚障害者が使う言語として手話を思い浮かべますが、聴覚障害者のなかには、手話ができない人もいるようです。
手話ができない人は、どのような方法でコミュニケーションをとっているのでしょうか。
この記事では、日本での手話の普及率をはじめ、聴覚障害者とコミュニケーションをとるうえで、私たちが気をつけるべきポイントもご紹介します。
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目次
聴覚障害者は手話ができない?
すべての聴覚障害者が手話ができるわけではなく、なかには手話ができない人も多くいます。
聴覚障害には、先天性か後天性かの違いがあります。
生まれつき音が聞こえない人のほとんどは手話を学びますが、途中で聴覚を失った中途失聴者の多くは手話ができません。
その割合は中途一聴者の80%を超えます。
中途失聴者は音の聞き取りはできなくても、言葉を話すことはできるからです。
また、外耳の障害により先天的に音の聞こえが悪い場合は、補聴器を使えば音を聞き取れます。
このように、聴覚障害の程度の違いなどによって、第一言語として手話を選択していない人が多くいます。
第一言語として手話を使わない聴覚障害者は、どのような方法でコミュニケーションをとっているのでしょうか。
参考記事:(内閣府)障害のある当事者からのメッセージ(知ってほしいこと)
手話ができない聴覚障害者はどうやって話すの?
聴覚障害者には、音がまったく聞こえない失聴者と、音が聞きとりづらい難聴者がいます。
難聴者の場合は、補聴器で音を調整すれば人が話す言葉を聞き取れるので、一般的な会話ができます。
生まれつき失聴である人のほとんどは手話を学びますが、中途失聴者の場合は手話を使わない人も少なくありません。
中途失聴者の場合は、聴覚を失うまでは一般的な会話をしていた経験があるため、聞き取ることができなくても、自分が話すことはできます。
コミュニケーションをとる際は、相手の唇の動きから言葉を読み取る読話や、筆談などの方法をとります。
聴覚障害者は、手話・読話・筆談など、さまざまな方法を使ってコミュニケーションをとる人がいるため、相手や状況によって複数の方法を使い分けることが必要です。
日本での聴覚障害者の手話の普及率はどのくらい?
日本には、身体障害者手帳を保持する聴覚障害者または言語障害者は、約34万人です。
さらに、耳の聞こえづらさを感じている人は1,400万人以上で、全人口の11.3%にあたります。
聴覚障害者は、ろう者・難聴者・中途失聴者・人工j内耳装着者・聴覚情報処理障害(APD)に分けられます。
聴覚情報処理障害は、音は聞こえるものの言葉として理解できない障害です。
ろう者は、残存する聴力が残っていても、第一言語として手話を使っています。
聴覚障害のコミュニケーション方法は多様で、障害の種類によっても方法は変わります。
2021年総務省が発表している資料によると、コミュニケーション方法の割合の内訳は、以下の通りです。
コミュニケーション手段 | 65歳未満 | 65歳以上 |
---|---|---|
補聴器 | 25% | 20.2% |
手話・手話通訳 | 25% | 4.3% |
筆談・要約筆記 | 22.9% | 9% |
スマートフォン・タブレット端末 | 20.8% | 0.5% |
読話 | 10.4% | 2.7% |
人工内耳 | 4.2% | 0% |
聴覚障害者の手話の普及率は、65歳未満の場合は25%ですが、65歳以上になると4.3%にとどまっています。
加齢によって聴覚障害になった高齢者の場合、手話の習得は難しく、ICT(情報通信技術)による音声認識アプリを使う人も少ない傾向です。
外耳障害による難聴者は、どの世代でも補聴器を利用しているようです。
65歳未満の失聴者の場合は、スマートフォンやタブレット端末などの音声認識アプリを活用する人も多くいます。
聴覚障害者がコミュニケーションで困ること

これまでご紹介してきたとおり、聴覚障害者によってコミュニケーション方法は、異なります。
しかし、音が聞き取りづらいことは共通しています。
たとえば、病院などで視界に入っていない方向から名前を呼ばれたり声をかけられたりしても、気づくことができません。
コミュニケーションをとる言語が手話の場合は、検査や診療で医師や看護師と直接会話することは困難です。
手話通訳者を配置している病院は少なく、医師や看護師の多くが手話を習得していないからです。
通院時に家族が付き添った場合、医師や看護師は必要なことは家族に話します。
診療や治療の際に、医師や看護師と直接コミュニケーションをとりづらいのが困りごとです。
そのほかにも、聴覚障害者へのさまざまな誤解による困りごとがあるので、ご紹介していきます。
コミュニケーション手段の誤解
聴覚障害者のコミュニケーション方法には、手話をはじめ読話や筆談などがあります。
コミュニケーション方法は人によってさまざまですが、耳に障害があるすべての人が、読話や手話ができると誤解する人も多くいます。
補聴器を使用している難聴者の多くは、読話や手話はできません。
中途失聴者の多くは、読話で相手の話しを理解したうえで、自ら話してコミュニケーションをとるため、手話は使わないのが一般的です。
また、手話を第一言語として使う聴覚障害者は、生まれつき音を聞き取れないことが多く、言葉というものに馴染みがないため読話はできません。
聴覚障害者とのコミュニケーションの際には、どのような方法が可能なのかを確認することが重要です。
聞こえ方への誤解
難聴の場合は補聴器を使用しますが、「補聴器をつけたら普通に聞こえるだろう」と、聞こえ方に誤解をする人もいます。
実際は補聴器を使っても人それぞれ聞こえ方は違いますし、周囲の環境によって聞き取りづらくなることもあります。
また、もともと耳が聞こえていた人は、一般的な会話をしていた経験があるため、相手の口元の動きから言葉を読み取れます。
言葉を話すことができることから、耳も聞こえていると誤解されがちです。
補聴器を使う場合も読話の場合も、相手の話を理解するために、口元の動きなど、視覚からの情報を頼りにしていることを理解する必要があります。
その他の誤解
その他の誤解として、読話によって日常的な会話が成立したとしても、ビジネスシーンでもおなじように会話できるわけではありません。
日常会話などのなじみやすい言葉や使ったことのある言葉は読み取れても、ビジネス用語などの特殊な言葉を読み取ることは簡単ではないからです。
また、対面による会話が成立していると、電話での通話もできると思われがちです。
しかし実際は、多くの聴覚障害者は視覚的な情報も含めて話を理解しているため、口元が見えない相手との会話は難しい傾向があります。
聴覚障害者と会話する際は、マスクを外すことや、遠隔でやりとりする場合は通話以外の方法を選択するなどの配慮が必要です。
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聴覚障害者との話し方で気をつけるポイントは?
聴覚障害者と話す際は、耳から得る情報だけではなく、読話などの視覚情報も含めて、総合的に相手の言葉を理解しているということを意識するようにしましょう。
また、どのような相手にも共通することとして、コミュニケーションをとる前に、どういった方法がよいのかを相手に確認します。
そのうえで気をつけるポイントは3つです。
- 視界に入ってゆっくり話す
- 複数人いる時は一人ずつ話す
- わかったふりをしない
これらは、聴覚障害者が相手の声を聞き取ったり、読話を使ったりするときに気をつけたいポイントです。
それぞれのポイントとその必要性をご紹介するので、参考にしてください。
視界に入ってゆっくり話す
難聴者は補聴器を使って音を聞き取りやすくしていますが、話を聞く際は補聴器だけに頼らず、相手の口元を読み取る読話という方法をあわせて使う人もいます。
そのため、難聴者と話す際マスクをしている場合は、はずして口元が見えるようにしましょう。
相手の視界に入って、なるべく口元が正面から見える位置に移動し、ゆっくりと話すことがポイントです。
読話は相手の唇の動きを見るので、動きも意識して話すのがおすすめです。
複数人いる時は一人ずつ話す
会議や打ち合わせなど、聴覚障害者も含めた複数人で話すときは、なるべく同時に発言することは控え、一人ずつ話すようにします。
複数人が同時に話しても、読話を使う聴覚障害者は一人の口元にしか集中できません。
また、聴覚障害者に限らず、何人もの話を同時に聞き取ることは困難です。
人によって個人差はありますが、補聴器を通して話を聞き取るのはさらに困難なので、複数人いるときは一人ずつ話すように心がけてください。
わかったふりをしない
生まれつき耳が不自由だった「ろう者」は手話を使いますが、それ以外の難聴者は音や読話で相手の話を理解し、言葉を話すことがほとんどです。
聴覚障害者のなかには、発音が流暢な人もいれば、話すのが苦手な人もいます。
聞く側が「きっと、こういうことを言ってるんだろう」とわかったふりすると、あとから誤解が生じてしまいます。
わかったふりをせず、聞き間違いがないか確認することが必要です。
筆談などもあわせて使うなど、複数の方法を並行して取り入れることで誤解を防げます。
聴覚障害者のために私たちができること

聴覚障害者の主な悩みは、以下のとおりです。
- 周囲とのコミュニケーションをとりづらい
- 音声による情報を取得できない
- 言葉を話せない場合はスムーズに情報を伝えられない
聴覚障害者のために私たちができることは、聴覚障害者の悩みに寄り添った行動です。
聴覚障害者のなかには、まったく音が聞こえない中途失聴者・ろう者や、音が聞き取りづらい難聴者がいます。
障害の程度などによって、使うコミュニケーション方法は異なります。
「聴覚障害者とはこういうものだ」という勝手な思いこみでひと括りにせず、一人ひとりに適した配慮が必要です。
一人ひとりにあった配慮をするために、できることをご紹介するので参考にしてください。
関連記事:聴覚障害者へのコミュニケーション時の配慮とは?私たちにできること
コミュニケーション方法を確認する
一人ひとりに適したコミュニケーション方法をとるためには、聴覚障害者本人にどのような方法がよいか、必ず確認することが大事です。
聴覚障害者が手話を使う割合は意外と少ないため、手話が使えない場合は筆談などの方法をとります。
手元にパソコンやスマートフォンがある場合は、音声文字変換アプリなど聴覚障害者向けのツールを活用するのもおすすめです。
ただし、音声文字変換アプリは誤変換してしまう可能性があるので、変換された文字を必ず確認し、修正する必要があります。
音声文字変換アプリだけに頼らず、筆談や読話と組み合わせるなど、複数の方法を併用することで、誤解を防げます。
あらかじめツールが必要ない場合も多いので、必ず確認するようにしましょう。
どんな方法でも伝えようとする気持ちを持つ
聴覚障害者は、相手の言葉を正しく理解しようと努力します。
コミュニケーションをとる私たちも、聴覚障害者への既成概念や方法にとらわれずに、伝えようとする気持ちを持つことが大切です。
なかなか伝わらなくても焦らずに、ゆっくりと話したり他の方法を試したりしましょう。
聴覚障害者は音の情報を得られないか得づらいかのどちらかなので、防災無線なども聞こえない可能性があります。
病院や公共の場で困っている障害者を見かけたら、積極的に声をかけて、自分ができるサポートを心掛けていくことも大事です。
サポートをくり返しておこなうことは、必要なサポートや方法を知ることができるメリットもあります。
簡単な手話から覚えておく
聴覚障害者で手話を使う人は、手話が第一言語です。
私たちは、言語の違う人とコミュニケーションをとるときは、あいさつなど日常的に使う機会の多い言葉から覚えます。
海外からの来訪者が、覚えたての日本語であいさつしてくれると親近感を感じ、なごやかになりますよね。
手話を使う人とのコミュニケーションにおいても、同じことがいえます。
手話での会話が難しくても、比較的簡単に覚えられるあいさつなどの手話を覚えておくだけでも、コミュニケーションをとりやすくなります。
一般的なあいさつのほかに、「ありがとうございます」「ごめんなさい」など、とっさのときに使う言葉を覚えておくと役立ちます。
初心者向けの講座はテレビ番組にもありますし、動画サイトでも見つかりますので、参考にしてみてください。
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まとめ
この記事では、手話ができない聴覚障害者や手話の普及率をはじめ、コミュニケーションをとるうえで私たちが気をつけるポイントなどをご紹介しました。
聴覚障害者は、人によって聞こえ方やコミュニケーションのとり方が異なります。
聴覚障害者だからといってひと括りにせず、一人ひとりに合った方法でコミュニケーションをとり、積極的なサポートを心がけましょう。