耳が不自由な人の生活で困ることは?聴覚障がいの種類や区分・不便を軽減させる工夫も紹介!

私たちは、日常的にさまざまな感覚から情報を得て暮らしていますが、目や耳からは単に情報を得るだけでなく、危険なども察知しています。
では、耳が不自由な人が生活のなかでどんなことに困っているのかを想像してみてください。
実際には、私たちが思うよりも、不自由なことがあるかもしれません。
この記事では、聴覚障がいの種類や区分をはじめ、普段の生活で困っていること、不便を軽減させる工夫もご紹介します。
目次
耳の聞こえない人はどうやって生活している?
耳を使う会話や通話は、人とのコミュニケーションに欠かせないものですが、耳の聞こえない人にとっては、周囲の理解やさまざまな工夫が必要になります。
また、クラクションや防災アラートなどの危険を知らせる音も、耳の聞こえない人には届かないことが多いため、サポートしてくれる道具を使用したり、周囲の人に頼らなければなりません。
玄関のチャイムや時計のアラームなど、日常的に使うものも工夫しながら生活することになります。
ただ、聴覚障がいの種類や程度は人によって違うため、不便を軽減させる工夫が異なります。
ここからは、聴覚障がいの種類や工夫の仕方を詳しくご紹介するので参考にしてください。
聴覚障がいには種類や区分がある
聴覚障がいは大きく分けると、まったく聞こえない失聴(ろう)と、音が聞えづらい難聴に区分されます。
また、難聴の種類は、伝音性難聴・感音性難聴・混合性難聴の3種類に分けられます。
- 伝音性難聴
外耳または中耳の障がいによって、音が伝わりづらい状態です。
治療で聴力が改善される場合もあり、補聴器などの使用によってよく聞えるようになる場合が多いです。 - 感音性難聴
感音性難聴には、老人性難聴も含まれますが、内耳・調神経・脳など、音の伝達機能の障がいによって、音が歪んだり響いたりして聞こえる状態です。
補聴器の使用によって聴力を上げられる可能性がありますが、音量のほかに、音質や音の出し方などの細かな調整が必要です。 - 混合性難聴
混合性難聴は、伝音性難聴と感音性難聴の両方の原因がある難聴です。
いずれの難聴の場合も、音の聞き取りづらさはありますが、話せることが多いため、比較的コミュニケーションがとりやすい傾向があります。
失聴(ろう)の場合は、先天的失聴者か中途失聴者かで、第一言語が異なります。
- 先天的失聴者(ろう者)
コミュニケーション方法として手話を使うことが多いため、手話を使わない人との会話は困難です。 - 中途失聴者
音声言語の習得後に失聴した場合は、相手の口の動きを読み取る口話法などを使って、会話する人もいます。
聴覚障がいの種類をさらに詳しく説明している記事がありますので、そちらも参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害の種類をわかりやすく解説!タイプや症状・原因についても理解を深めよう
身体障害者福祉法では、失聴または難聴の聞こえの度合いによって「障害者程度等級」が定められています。
両耳の聴覚レベルがそれぞれ100dB以上のものは2級、90dB以上のものは3級、というような区分に分けられ、その区分によって行政から受けられる支援が変わることがあります。
参考記事:(厚生労働省)障がい者の範囲
生活の不便を軽減させる工夫
難聴者の場合も失聴者の場合も、日常的に不便を感じる場面があります。
特に不便を感じるのは、周囲とのコミュニケーションのとりづらさです。
難聴者の場合は、聴力をアップするために補聴器などを使用しています。
失聴者は、筆談・手話・口話のいずれかの方法で会話をしますが、相手が手話をできない場合は、筆談が主なコミュニケーション手段です。
口話は1対1など少人数での会話には対応できますが、会議や複数の人が発言する場面には向きません。
複数の人が発言する場では、パソコンやスマートフォンの音声文字認識ツールを使うと便利です。
聴覚障がい者は、状況に合わせて不便を軽減させる工夫をしていますが、外見的に障がいはわかりづらいものです。
そのため、「話しかけたのに無視された」など誤解を招くことも少なくありません。
日頃からヘルプマークを身につけるなど、周囲に障がいがあることを理解してもらう工夫も必要です。
参考記事:(内閣府)障がい者に関係するマークの一例
耳が不自由な人の生活で困ることは何?

耳が不自由な人が、コミュニケーションをとる際の工夫をご紹介してきましたが、その他に生活で困ることは何なのでしょうか。
耳が聞こえなくて困るのは、音による危険を察知できないことです。
例えば、道路を歩行中に背後から自転車や自動車が近づいても気が付きません。
視界に入らない限りは、危険を認識できない状態にあります。
また、災害時に発せられる防災行政無線なども聞こえないので、非常時に迅速な行動をとることができません。
それ以外にも、病院などの順番待ちで、名前を呼ばれても気付くことができないなど、日常生活で困ることは、たくさんあります。
耳が不自由な人の生活で困ることについて、詳しく書いた記事があるので、そちらも参考にご覧ください。
関連記事:耳が不自由な人が困ることとは?聴覚障がい者への必要な配慮も詳しく解説!
耳が聞こえない人のために意識したいこと
聴覚障がい者は、外見的には障がいがあることがわかりづらい傾向があります。
耳が聞こえない人のために意識したいこととして、まずは障がいがあることに気付くことが必要です。
そのうえで、音がどの程度聞こえるのかや、どのようなコミュニケーション方法が可能なのかを確認することが大切になります。
ここからは、耳が不自由な人のマークと、聴覚障がい者を受け入れる「心のバリアフリー」とは、どのようなことかをご紹介します。
耳が不自由な人のマークを理解する
最近、目にする機会が増えたヘルプマークをご存じでしょうか?
ヘルプマークは、見た目にはわかりづらい障がいがある人や、妊娠初期で周囲からの配慮が必要な人が身につけるマークです。
耳の障がいもコミュニケーションなどで周囲からの配慮が必要になるため、障がいがあることを自ら示すシンボルマークとして「耳マーク」があります。
また、聴覚障がい者への配慮ある環境づくりのため、自治体や病院などの施設に、耳マークが掲示されている場合もあります。
もし、耳マークを見かけた場合は、自分ができる範囲での配慮やサポートを心がけることが大切です。
耳が不自由な人の「耳マーク」は、下記のリンク先でも詳しくご紹介しています。
関連記事:耳が不自由な人のマークの意味は?聴覚障がい者がどんなことで困るかも知っておこう!
多様性を受け入れる「心のバリアフリー」
道路や交通機関をはじめ、公共の施設のバリアフリー化が進んでいます。
段差をなくすなど、目に見えるバリアフリーには意識が傾きますが、耳が聞こえない場合には、どのような配慮が必要なのでしょうか?
見た目ではわからない障がい者へのサポートは、一人ひとりが多様性を受け入れることを意識した「心のバリアフリー」が必要です。
障がいを抱える人は、制度・文化・情報をはじめ、周囲の意識に対しても多くのバリアを感じています。
バリアフリー化が進んでいるとはいえ、障がいのある人が気軽に出かけられるほど環境が整っているわけではありません。
例えば公共の交通機関や施設を利用する際に、聴覚障がい者向けのアナウンスや設備があっても、騒音があって聞き取りづらい場合があります。
耳マークがある場所では、静かにすることを心がけたり、耳マークを付けた人が困っているのを見かけたら、声をかけてみましょう。
周囲の心づかいや、サポートする人が増えれば、障がい者は安心して外出しやすくなります。
敬遠されたり気を遣われすぎたりすることも、障がいのある人にとってはバリアに感じられることもあるため、理解を深めて支え合うことが必要です。
聴覚障がい者の悩みや困りごとに寄り添うコミュニケーションバリアフリーについては、関連記事でも詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:コミュニケーションバリアフリーとは?聴覚障がい者の悩み・困りごとに寄り添える具体例も紹介!
耳の不自由な人が使う道具は?
耳の不自由な人が使う道具として、代表的なものが補聴器です。
補聴器や拡張器は、外耳や中耳に障がいがあって、音が聞き取りづらい人に有効な道具です。
補聴器を装着していても、騒音や声のボリュームによって聞き取りづらくなることがあるため、声の大きさや会話をする場所などの配慮が必要になります。
また、内耳の障がいに有効とされる人工内耳は、手術によって施される人工臓器のひとつです。
その他にも、会議に役立つアイテムとして、筆談器や音声認識ソフトなどもあります。
耳が不自由な人のための道具についての詳細は、下記リンクを参考にご覧ください。
関連記事:耳が不自由な人のための道具って?困ることや活用できる便利なサービスもご紹介!
耳の不自由な人を助けるサービス

聴覚障がい者は、聞こえ方の程度によって会話する方法や、必要な支援が異なるため、耳の不自由な人を助けるサービスは豊富にあります。
音がまったく聞こえない場合は、手話などを使うことが多いですが、相手が手話を使えない場合は、筆談などの方法が有効です。
特にしっかりと意思疎通をはかりたい大切な場面では、公費で手話通訳者や要約筆記者を派遣してもらえるサービスもあります。
自治体や民間機関などで、遠隔手話通訳のサービスを受けられる場所は増えています。
また、聴覚障がい者を受け入れている企業では、スマートフォンやパソコンなどの文字起こしツールを使用するケースが多いようです。
聴覚障がい者向けコミュニケーションサービス「Pekoe」
職場の会議など日常的に意思疎通をはかりたい場合は、聴覚障がい者向け支援ツール「Pekoe(ペコ)」が役立ちます。
Pekoeは、リコーが提供する聴覚障がい者向けコミュニケーションサービスです。
Pekoeの最大のポイントは、聴覚障がい者が会議に参加する際、会議の内容をリアルタイムで文字化してくれることです。
Pekoeは複数人の会話をその場で文字化しますが、誤変換された場合でも、参加者全員が即座にそれを修正できます。
この機能によって、聴覚障がい者もタイムラグを感じることなく、会議の内容を把握できるのがメリットです。
また、操作も簡単で、通常の会議だけでなく、リモート会議や動画配信などの音声ツールとしても活用できます。
公式サイトから無料トライアルができるので、ぜひお試しください。
\聴覚障がい者向け音声認識ツール/
まとめ
この記事では、聴覚障がいの種類や区分をはじめ、生活で困っていること、不便を軽減させる工夫や道具などをご紹介しました。
バリアフリー化や、障がい者をサポートするサービスが増えてきてはいますが、障がい者の外出や労働には、まだまだ不便なことがあります。
不便を軽減させるには、それに関わる人の理解や配慮が必要です。
心のバリアフリーを意識して、自分ができるサポートをしていきましょう。
