聴覚障害者の働き方は?就職の支援機関や向いている仕事・必要な心構えも徹底解説!
聴覚障害者が抱える悩みのひとつが、仕事に関するものです。
「どのような仕事に就けばよいのかわからない」
「ひとりで就職活動するのは不安」
と、障害を理由に悩まれていませんか?
本記事では、聴覚障害者の働き方や就職の支援機関、さらに、聴覚障害者に向いている仕事や就職に必要な心構えをくわしくご紹介します。
この記事を読めば、悩んでいる就職活動のヒントが見つかるかもしれません。
就職を考えている聴覚障害者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
聴覚障害者はどんな働き方ができる?
「聴覚障害があるから、どのように働いたらよいのかわからない」と悩まれる方は大勢います。
では実際に、聴覚障害者はどんな働き方ができるでしょうか?
聴覚障害者の方は、下記のとおり、さまざまな雇用形態で働いています。
- 正社員
- アルバイト
- パート
- 契約社員
2024年現在、障害者の法定雇用率は2.3%にまで引き上げられており、障害者雇用を導入する企業も徐々に増えてきました。
しかし、障害者を正社員雇用している企業の割合はいまだに少なく、アルバイトやパートの契約をしている人も多いのが現状です。
また、近年では障害者の働き方も以下のように多様化しています。
- 在宅勤務
- 障害者採用
- 特例子会社
- 就労継続支援サービス
「障害者採用」は、初めから障害者と認識したうえで雇われるので、障害に考慮した仕事内容を配慮してくれます。
「特例子会社」は、障害者雇用の促進を目的に設立している場合が多く、一般企業よりも仕事内容や人員の配置など、働きやすい環境が整備されています。
近年は障害者でも働きやすい方法が増えているので、自分に合うものを選んでみてください。
聴覚障害者に向いている仕事は?
「聴覚障害があるから、どのような仕事に就いても迷惑をかけてしまいそう」と、就職をためらう方もいるかもしれません。
ですが、聴覚障害者の方が働きやすいおすすめの仕事があります。
聴覚障害者に向いている仕事を、いくつか例に挙げてみました。
- データ入力
- オフィス事務
- ライター・校正者
- カスタマーサポート
- 福祉系の仕事
耳が聞こえづらい聴覚障害者の方は、コミュニケーションをとったり、音で判断したりする業務が難しくなります。
ですが、上記のようなデスクワーク系の職種なら耳が聞こえなくてもできる業務が多いので、聴覚障害者の方でも問題なく取り組めます。
本来ならば、電話対応や会議での発言などの仕事を任せられる職種もありますが、障害者雇用ならそのような点は配慮を要求できるため、安心して働くことが可能です。
関連記事では、聴覚障害者の方にもおすすめの仕事を11選ご紹介しているので、仕事を探している方はぜひ参考にしてください。
関連記事:聴覚障害者におすすめの仕事11選!難聴でもできるパートや役立つ資格もチェック!
聴覚障害者の就職率は?
2021年時点での聴覚障害者の就職率は、40.3%です。
新型コロナウイルスの影響で一時就職率は減少したものの、近年は徐々に戻ってきています。
近年普及している、文字起こしなどの聴覚障害者向けのアプリやツールが、今後さらに就職率を上げる要因となりそうです。
令和5年6月現在の雇用障害者数は、64万2,178人(前年より4.6%増)、雇用率は2.33%(前年より0.08ポイント増)で、両者ともに過去最高の記録です。
さらに、令和6年には法定雇用率が2.3%から2.5%までの引き上げが決定しているため、就職率の上昇も期待できます。
参考記事:令和5年 障害者雇用状況の集計結果
各企業が障害者も働きやすい仕事環境を整えることで、就職率が上がるきっかけにもなります。
聴覚障害者の雇用率をさらにくわしく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。
関連記事:聴覚障害者の雇用率は?離職理由や定着のために企業に求められる配慮も徹底解説!
聴覚障害者がいる職場で起こりやすいトラブル
耳が聞こえづらい聴覚障害者のいる職場では、どうしても問題が発生してしまう可能性があります。
聴覚障害者がいる職場で起こりやすいトラブルを、いくつか例に挙げてみました。
- 気になる点があっても注意しづらい
- 配慮するのが当たり前と思われている
- 評価するのが難しい
耳が聞こえない、または聞き取りづらいと、職場の人とのコミュニケーションが不足し、このようなトラブルを招きやすくなります。
健聴者で聴覚障害の症状を理解している方は少なく、余計に聴覚障害者との連携がうまくとれないケースが多いです。
トラブルを招かないためには、事前に自分の障害の状態や望ましい配慮の仕方を周囲に伝えておくのが大切です。
関連記事では、トラブルの防止策を具体的にご紹介しているので、参考にしながらトラブルを未然に防げるようにしましょう。
関連記事:聴覚障害者のいる職場で起こりやすいトラブルとは?企業ができる防止策や配慮を解説!
聴覚障害者が抱えやすい仕事の悩みは?
コミュニケーションに関する悩みが多い聴覚障害者ですが、それ以外にも仕事で悩む要素は多いです。
聴覚障害者が抱えやすい仕事の悩みを、4つ挙げました。
- 周囲に理解されにくい
- 通勤に不安がある
- 疲れやすい
- コミュニケーションがうまくとれない
悩みを抱えながら働くのは心身ともに辛いので、少しでも悩みを解決できるように対策をとらなければなりません。
周囲に理解されにくい
聴覚障害は外見からではわかりづらく、周囲に理解されにくいです。
コミュニケーションをとろうとして初めて、「この方は何か障害があるのかな?」と気付いてもらえます。
仕事中に電話対応や来客対応をせずにいると、勝手に仕事をさぼっている人のように認識されてしまい、辛い思いをする人もいるでしょう。
また、聴覚障害者には、残存聴力があり少しの会話ならできる軽度難聴から、補聴器をつけても音の判別が難しい重度難聴までさまざまな人がいます。
そのため、相手とどのようにコミュニケーションをとればよいのかわからないのが健聴者の本音です。
職場に配属されたら、まず初めに自分の聴覚障害の状態やコミュニケーション方法を理解してもらうようにしましょう。
聴覚障害の特徴をうまく説明する際には、以下の関連記事も参考にしてみてください。
関連記事:難聴者とは?難聴の定義や後天的な難聴の特徴もわかりやすく解説!
通勤に不安がある
通勤に不安がある方も大勢います。
聴覚障害者が通勤時にバスや電車などの公共機関を使用する場合、駅のホームやバスのアナウンスが聞こえづらいという問題点があります。
遅延情報やトラブル時の情報が聞き取れなかったり、災害時の運行状況の把握がしづらかったりするため、健聴者より不安を感じやすいです。
また、バスや電車内で体調を崩しても伝える手段が限られており、周囲に助けを求めづらいのも不安要素のひとつです。
いざというときのために、ヘルプマークをカバンにかけたり、筆談器を常備したりするとよいでしょう。
通勤が不安という方は、在宅勤務ができる仕事を選ぶのもおすすめです。
疲れやすい
疲れやすいのも聴覚障害者が抱える悩みのひとつです。
これは、健聴者が感じる体の疲れとは別の聴覚障害者特有のものです。
難聴者のなかには、耳鳴りやめまいの症状がある人もいて、仕事中もこれらの症状と向き合わなければなりません。
また、聴覚障害者は気圧や気候に影響されやすい場合も多く、常に体調を整えるために気を張っているので、どうしても疲れが溜まりやすくなります。
さらに、職場の人や客とのコミュニケーションにもより気を遣わなければならず、心身ともに負担は大きいです。
疲れを溜め込んでしまうと仕事のパフォーマンス力が下がるだけでなく、プライベートにも支障がでるので、仕事の合間に休息の時間をつくるなど、ほどよく息抜きもしましょう。
疲れを溜めないようにするためには、週2〜3日程度パートやアルバイトとして働くのもひとつの方法です。
コミュニケーションがうまくとれない
- 話しかけられてもわからない
- 複数人での会話に参加できない
- 会議の内容が理解しづらい
- 伝えたいことがうまく伝わらない
など、コミュニケーションがうまくとれないのは聴覚障害者にとって大きな悩みです。
仕事の合間の雑談にも参加しづらく、なかには孤独を感じてしまう方もいるかもしれません。
コミュニケーションに関する悩みを解消するには、人との関わりの少ない職業を選んだり、聴覚障害者でもコミュニケーションがとりやすくなるツールやアプリの使用を検討してみるのもよいでしょう。
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聴覚障害者が仕事を辞める理由は?
働くなかで悩みや不満が積み重なり、そのまま退職してしまう障害者も少なくありません。
聴覚障害者が仕事を辞める理由には、以下のようなものがあります。
- 仕事の内容が合わない
- 職場の雰囲気や人間関係
- 通勤が困難
- 会社の配慮が足りない
人間関係、仕事内容などの一般的な理由以外にも、通勤が困難、会社の配慮不足など聴覚障害者ならではの理由も含まれています。
悩みが大きくなる前に、上司や支援機関に一度相談すると問題が解決する場合もあるので、ひとりで悩まず周りを頼ってみてください。
また、聴覚障害者の離職率を下げないためには、聴覚障害者も働きやすい環境を整えるなど、企業が障害者への配慮を適切におこなうことも大切です。
具体的な聴覚障害者の離職理由や対策を知りたい方は、以下の関連記事もご覧ください。
関連記事:聴覚障害者が抱える仕事のストレスや悩みは?離職理由や対策も解説!
聴覚障害者が就職・転職で利用できる支援機関は?
障害者の就職や転職は、「採用してもらえるか不安」「会社がどのような配慮をしてくれるかわからない」など、不安な点もたくさんあると思います。
そのような場合でも、雇用のサポートをしてくれる機関の力を借りれば安心して仕事に就くことが可能です。
ここでは、聴覚障害者が就職・転職で利用できる支援機関を4つご紹介します。
- 障害者就業・生活支援センター
- ハローワーク
- 就労移行支援事業所
- 障害者向け就職・転職エージェント
就職や転職支援だけでなく、仕事に関する悩みの相談ができる機関もあるので、障害者の方にぜひ一度利用してほしいサービスです。
それぞれ支援内容や特徴が異なるので、気になるものがあればチェックしてみてください。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、社会福祉法人や公益法人、NPO法人などが運営している就労に関する総合的な機関です。
障害者の就業面と生活面の一体的な相談や支援をおこない、自立できるようフォローします。
障害をもつ方の悩みや困りごとに対しても相談に乗ってくれるので、気軽に利用できるのも特徴です。
各都道府県に配置されているので、お住まいの地域で探してみてください。
参考記事:障害者就業・生活支援センターについて
ハローワーク
国が運営する就労機関のハローワークは、一般的な就職や転職のサポートだけでなく、障害者専用の相談窓口があります。
相談窓口のスタッフは、障害者の就労に関して専門知識をもっているので、細かい相談にも乗ってくれます。
障害雇用における支援や助成金など、雇用に向けて疑問や不安点があればぜひ相談してみてください。
雇用の準備段階から雇用継続まで、長期的にサポートしてくれます。
参考記事:ハローワークインターネットサービス
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、一般企業や団体へ就職を目標にする障害者の方のためにつくられた施設で、就労に必要な知識や技能の習得をサポートしてくれます。
18歳〜64歳までの障害者・難病をお持ちの方が対象で、定められている2年間の期間内に、職業訓練や就労支援から就労後の定着支援までを受けることが可能です。
学校のように通いながらサポートを受けられ、気軽に利用できるのが特徴です。
障害者手帳を持っていなくても、主治医の診断書や定期的な通院記録があれば利用できる場合もあるので、該当する方はぜひ利用してみてください。
参考記事:就労移行支援事業
障害者向け就職・転職エージェント
障害者向け就職・転職エージェントは、障害手帳を持っている人が無料で利用できるサイトです。
障害者雇用枠での就職や、転職に関する総合的なサポートをおこなっています。
専任のキャリアアドバイザーが障害者の希望に合った求人を紹介してくれたり、就職活動に必須の面接対策などのアドバイスをしてくれたりします。
就職・転職エージェントは数が多く、どれを選んだらよいのかわからないと悩まれるかもしれません。
そのようなときは、自分と同じ聴覚障害者の支援実績を確認したり、複数のエージェントに登録して相性の合うアドバイザーを見つけてみたりするのがおすすめです。
面接を円滑に進めるためにできる準備は?
面接を円滑に進めるためには、企業側に準備や配慮を求めるだけでなく、聴覚障害者側でもあらかじめ準備をしておくことが大切です。
ここでは、聴覚障害者が面接を円滑に進めるためにできる準備をいくつかご紹介します。
- 面接日程などの連絡事項はメールや文書でやりとりする
- 筆談器やノートなどのコミュニケーションツールを用意する
- 自身の聴覚障害の状態やサポートが必要な場面などをあらかじめメモしておく
面接では確認事項の共有や自身のアピールなど、直接のコミュニケーションが欠かせません。
意思疎通がしやすいように、簡単にやりとりできるノートやツールを用意しておくとよいです。
どれも難しいものではないので、ぜひ実践してみてください。
また、面接をおこなう際に企業側が意識している配慮も把握しておくと、聴覚障害者側も準備しやすくなります。
関連記事では企業が面接時におこなう配慮をくわしくご紹介しているので、こちらも併せてご覧ください。
関連記事:聴覚障害者の面接で企業ができる配慮は?必要な準備や質問内容もまとめて紹介!
聴覚障害者が働くうえで意識しておきたい5つの心構え
聴覚障害者が働くにあたって、どのような心構えをもつとよいでしょうか。
ここでは、意識しておきたい5つの心構えをご紹介します。
- 自分の聞こえにくさについて周囲に伝える
- 複数のコミュニケーション方法を使いこなせるようにする
- 聞こえによる体調を理解してもらう
- 緊急時の対応を想定しておく
- 必要な配慮を伝えて自ら快適な就業環境をつくる
就職する前に上記の点に気をつけていれば、仕事の悩みやストレスも多少は抑えられるので、ぜひこの5つの心構えを意識してみてください。
自分の聞こえにくさについて周囲に伝える
はじめに、自分がどれくらい聞こえにくい状態なのかを周囲に伝えることが大切です。
聴覚障害者でも、小さい音なら聞こえる人からまったく音を認識できない人まで、聞こえ方は人それぞれです。
コミュニケーションをとる際に手話を使用する人もいれば、手話ができず筆談で話す人もいます。
聴覚障害のくわしい症状を理解している健聴者の方は少なく、聴覚障害者に対してマイナスのイメージをもっている可能性もあります。
聞こえにくさがどの程度なのかを伝えないまま過ごしてしまうと、徐々にコミュニケーションをとる機会が減る恐れもあるので、必ず事前に伝えておきましょう。
また、企業でも聴覚障害者が働きやすいようにコミュニケーション面などの配慮をしています。
企業がどのような配慮をしてくれているのかも知っておけば、自分の聞こえにくさも話しやすくなるはずです。
関連記事:聴覚障害者に職場でできる配慮とは?障害者雇用への理解を深めて働きやすい環境作りを!
複数のコミュニケーション方法を使いこなせるようにする
聴覚障害者のコミュニケーション方法は補聴器、手話、筆談など人それぞれですが、多くの方がひとつの方法に偏りがちです。
しかし、仕事をする際はひとつの方法だけでは効率よく仕事が進まない可能性があります。
複数のコミュニケーション方法を使いこなせるようにすれば、イレギュラーな出来事にも柔軟に対応できるので、今のうちに準備しておきましょう。
聞こえによる体調を理解してもらう
聴覚障害者のなかには、気圧の変化などでめまいや耳鳴りの症状がでる人がいます。
天候の変化で体調を崩す可能性のある場合は、聞こえによる体調を理解してもらうために、事前に周囲に伝えておきましょう。
また、聴覚障害があるとコミュニケーションによる気遣いや通勤などによる疲れがでやすいため、これらの疲れが原因で体調を崩しやすいことも事前に伝えて理解してもらうとよいです。
緊急時の対応を想定しておく
意外と見落としがちなのが、緊急時の対応を想定しておくことです。
聴覚障害者は災害時の避難警報がうまく聞き取れないため、そのときの状況が判断できず、逃げ遅れるなど危険な状況に陥る場合があります。
災害などの緊急時には、情報を知らせてもらうように事前に周囲に伝えておきましょう。
また、緊急時の避難経路や災害備品の場所も確認しておくとよいです。
必要な配慮を伝えて自ら快適な就業環境をつくる
就職先に環境整備を任せきりにするのではなく、事前に必要な配慮を伝えたり、快適な就業環境をつくったりすることも大切です。
具体的な例は以下のとおりです。
- 残存聴力が少しある :自分のデスクを静かな端の方にしてもらう
- 音がまったく判別できない:デスクや職場の一室にホワイトボードや掲示板を用意する
聴覚障害の特性により環境のつくり方も人それぞれ異なるので、自分にはどのような環境が必要なのか考えて整備してみてください。
在宅勤務が可能な職場なら、雇用形態を相談するのもひとつの方法です。
聴覚障害者の仕事を円滑にする「Pekoe」
聴覚障害者の仕事を円滑にするためのアプリ「Pekoe」をご紹介します。
Pekoeは、聴覚障害者やともに働くチームに向けたコミュニケーションツールです。
会議や打ち合わせの会話を、高性能の音声認識でリアルタイムに文字起こしします。
誤変換があった場合でも、URLの共有者なら誰でもすぐに修正ができるため、正確な情報をキャッチできるのが魅力です。
アプリをインストールすれば誰でもすぐに利用できるので、ぜひこの機会に利用してみてください。
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まとめ
聴覚障害者の働き方や向いている仕事、必要な心構えなどをご紹介しました。
聴覚障害者の働き方は、年々多様化しています。
働くにあたって心配ごとやトラブルが起こる可能性もありますが、本記事でご紹介した心構えや支援機関を参考にすれば、理想の働き方に出会えるはずです。
気持ちよく働くために、今のうちから準備を進めておきましょう。
