聴覚障害者が抱える仕事のストレスや悩みは?離職理由や対策も解説!

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聴覚障害者は、日常生活や仕事で多くのストレスを感じることがあるため、さまざまな場面で配慮が必要です。

しかし、聴覚障害者とコミュニケーションをとったり、同じ職場で働く際に、

「聴覚障害があるとどんなストレスを抱えやすいのか?」

と、疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、聴覚障害者が抱える仕事のストレスや悩み、離職理由や対策について詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてください。

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聴覚障害者が抱える悩みランキング

まずは、聴覚障害者が抱える悩みをランキングで解説します。

聴覚障害者が抱える悩みは個人によって異なりますが、多くの方がコミュニケーションの悩みを抱えているようです。

ここでは、聴覚障害者がどのような場面で悩んでいるのかをランキングで解説するので、日常生活で聴覚障害者の方と関わる際にお役立てください。

1位:公共交通機関を利用したときに情報が入ってこない

聴覚障害者が抱える悩みの第1位は、公共交通機関を利用したときに情報が入ってこないことです。

例えば駅で、列車の遅延や停車ホームの変更などのアナウンスが流れても、内容がはっきり聞き取れない、またはアナウンスが流れていること自体に気付かないケースもあります。

アナウンス以外でも、ドアの開閉音、緊急情報などが聞こえない、安全情報にアクセスしづらいことなども戸惑ってしまう要因です。

2位:コミュニケーションに不便を感じる

聴覚障害者の多くはコミュニケーションに不便を感じています。

聞こえの程度は、わずかに聞こえる方からまったく聞こえない方までさまざまです。

また、生まれつき聞こえない方や事故や病気などで途中から聞こえなくなった方もいるため、それによってコミュニケーションの手段も異なります。

手話や筆談、補聴器や音声変換ツールなど、聞こえの程度やシュチュエーションによって使い分ける必要があるためストレスに感じてしまうこともあるようです。

特に、聞き取りや発話が苦手な方は、電話対応で困ることがあります。

例えば、銀行やクレジットカード会社への問い合わせやATMの故障など急を要する連絡には電話対応が主流です。

このほかにも聴覚障害者が職場で抱えるコミュニケーションの悩みやポイントは、以下の記事もご確認ください。

関連記事:聴覚障害者が職場で抱えるコミュニケーションの悩みは?理解しておきたい3つのポイントも解説!

3位:音声情報がわからない

聴覚障害者は、音声情報がわからないことが多く、聞こえる人にとっては当たり前の情報が入ってきません。

具体的には、次のような情報があげられます。

  • 交通機関のアナウンス
  • 災害時の警報
  • 病院や銀行などの呼び出し
  • 職場の朝礼など、口頭での伝達
  • 自動車の走行音や人の歩く音

また、複数人で談笑していて周囲が面白そうに笑っているときも、なぜ笑っているのか理解できません。

音声情報が入らないことは生活に支障をきたすだけでなく、普段の会話でも苦労します。

聴覚障害者への配慮については以下の記事で詳しくご紹介しているので参考にしてください。

関連記事:耳が不自由な人が困ることとは?聴覚障害者への必要な配慮も詳しく解説!

聴覚障害者は仕事でどんなストレスを抱えやすい?

聴覚障害者は仕事でどんなストレスを抱えやすいのか、職場で共有しておく必要があります。

さらに聴覚障害者ご自身もどのような点で困っているのか、どういったことでストレスを感じるのかを知ることが大切です。

自分自身の状態を知ることが、働きやすい職場や、やりたい仕事を見つけるための大きなヒントになります。

  • 複数人での会話や会議についていけない
  • 話の早さについていけない
  • 相手にうまく伝わらない
  • コミュニケーション環境が十分でない

具体的にこのような場面でストレスを感じやすい方が多いので、聴覚障害者自身だけでなく職場でも事前に対策や対処が必要です。

複数人での会話や会議についていけない

聴覚障害者は複数人が同時に発言すると音声情報を同時に理解するのが難しく、誰に注力すべきか判断できないことがあるため、会話や会議についていけなくなりストレスを感じてしまいます。

口話や手話、筆談などのコミュニケーション手法を使っている聴覚障害者にとって、会話やディスカッションが速いテンポで進行する場合、情報に追いつくのが難しいです。

複数人での会話や会議では、コミュニケーションの障害や情報アクセスの制約が原因となるため適切な支援と配慮が必要です。

話の早さについていけない

聴覚障害者は口の動きを読んだり、なんとなく聞き取れた言葉から話の内容を読んで会話をします。

会話のスピードが速いとついていけないことがあり、ストレスに感じることがあるでしょう。

手話でのコミュニケーションでも、テンポが速いと情報に追いつくのが難しいことがあります。

手話には独自の文法と動作が含まれており、スムーズにやり取りをするには熟練が必要なので、速度を調整したり簡潔に要点をまとめて会話することが求められます。

相手にうまく伝わらない

職場で相手にうまく意見が伝わらないこともストレスの要因です。

聴覚障害者のなかには、曖昧な表現やニュアンス、意図を理解するのが苦手な方もいます。

「適度に」「あと少し」「ちょっと多めに」「だいたいこれくらい」などの曖昧な表現は、話す人によって感覚が違うこともあります。

「100部印刷してください」「30分以内にこの仕事を完了させてください」などと明確に伝えると正しく理解できるので、説明や指示をする際はできるだけ具体的な表現を使うように心がけましょう。

コミュニケーション環境が十分でない

職場のコミュニケーション環境が十分でないのもストレスの要因です。

聴覚障害者とのコミュニケーションには大きく以下のような方法があり、状況に応じてどのようにやり取りをするのか考えなければいけません。

  • 口話
  • 筆談
  • 手話
  • 指文字

聴覚障害は生まれつきのものもありますが、事故や病気、加齢が原因のものもあり、聞こえ方も人それぞれです。

耳で感じる音が小さくなり聞き取りづらくなるタイプや、音質がゆがんだようになるタイプ、補聴器をつけても声や音がまったく聞こえない方もいます。

そのため、職場では状況に応じてコミュニケーションの方法を工夫する必要があります。

どのような時でもスムーズにコミュニケーションをとれるよう、事前に職場環境を整えておくことでストレスを軽減できます。

その際に大切なポイントや便利なツールなどは以下の記事を参考にしてください。

関連記事:耳が不自由な人とのコミュニケーションは?大切ポイントを押さえ便利なツールも活用しよう!

聴覚障害者が難しいと感じやすい仕事内容は?

聴覚障害者が難しいと感じる仕事内容をイメージした画像

聴覚障害者の方が就職や転職をする際には、どのように職場を探したらいいのか迷ってしまうことがあるかもしれません。

勤務条件や待遇のほかに、障害への理解や合理的配慮などを意識すると入社後のトラブルを防ぐことができます。

ここからは、聴覚障害者が難しいと感じやすい仕事内容を具体的に解説します。

これから転職をお考えの方はぜひ参考にして仕事探しにお役立てください。

サービス業などの接客対応

聴覚障害者が難しいと感じる職業のひとつにサービス業などの接客対応があげられます。

人との会話がメインとなる業務は、話を聞くことも重要となるため困難な場面が多いでしょう。

レストランなどの飲食店のウエイター、ホテルのフロントデスク、美容院のスタイリスト、客室乗務員などはお客さまとのコミュニケーションが必要になります。

さらに、これらの仕事はお客さまとの円滑なコミュニケーションやサービス提供が求められる分野なので、顧客満足度を高めるためにも良好な接客スキルが不可欠です。

接客業は多くの場面でコミュニケーションが重要な役割を果たし、サービス業全体の一部として広範囲にわたります。

しかし、聴覚障害者であっても、やり取りを工夫することで、接客業へ就くこともできるので、就業先の支援やサポートを事前に確認したり相談してみるといいでしょう。

オペレーターなどの電話対応

オペレーターやコールセンターなどのように電話対応がある仕事は、聴覚障害者にとって困難に感じる場面が多いことが懸念されます。

音声会話が中心となるこのような業務はストレスの要因になりかねません。

会社の事務で働く場合にも、事前に電話対応ができるのかどうかを職場で共有しておくことでトラブル回避になります。

音声会話や聞き取りが難しい聴覚障害者の方は、緊急の対応が必要な状況となっても、110番・119番などへの電話による通報ができません。

また、非常時に緊急ボタンは押せても、音声応答が必要なケースではその後の対処が困難になるため、あらゆるケースを想定して準備しておくことが必要です。

外出することが多い仕事

外出することが多い仕事も、状況判断や緊急時の対応など個人の裁量でこなさなけばならないので、聴覚障害者にとって困難な場面が多いかもしれません。

外回りの営業やドライバー、現場業務など、外にいることがメインとなる業務は、危険が迫っていても気付けないことがあるため細心の注意が必要となります。

仕事の内容や聞こえの程度にもよりますが、聴覚障害者には内勤の方が安心して働ける環境と考えられます。

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聴覚障害者の就職率や離職率

聴覚障害者の就職率は40.3%という調査結果がありますが、聴覚障害者に限定する離職率はわかっていません。

就職率は、求職申し込み件数7,523件に対し、就職件数3,035件から算出された数値です。

障害者雇用における就職率は新型コロナウイルスの流行によって減少しましたが、徐々に戻りつつあります。

就労している障害者への調査をみると、「今と別の会社で働いたことがある」という問いに回答した人は56.0%でした。

就労経験のあるうちの半分以上は、離職経験があることになります。

令和3年の厚生労働省発表のデータによると、全体的な離職率は13.9%なので、障害者の離職率はとても高いということです。

就職率や離職率については以下の記事で詳しく解説しているのでご確認ください。

関連記事:聴覚障害者の雇用率は?離職理由や定着のために企業に求められる配慮も徹底解説!

聴覚障害者の離職理由とは?

聴覚障害者の離職理由の半数以上を占める、個人的理由の詳細は以下のとおりです。

  • 賃金、労働条件に不満・・・32.0%
  • 職場の雰囲気・人間関係・・・29.4%
  • 仕事内容があわない・・・24.8%
  • 会社の配慮が不十分・・・20.5%
  • 障害のため働けなくなった・・・16.6%
  • 家庭の事情(ただし、出産・育児・介護・看護を除く)・・・16.4%
  • 通勤が困難・・・9.7%
  • 出産・育児・介護・看護・・・9.7%

参考記事:(厚生労働省)障害者雇用実態調査結果

「障害のため働けなくなった」という理由を除けば、一般的な離職理由と同じ内容であることがわかります。

賃金や労働条件、または職場の雰囲気や人間関係の改善は、障害の有無に関わらず求められることです。

障害者の離職理由は、「会社の配慮が不十分」ということが考えられるため、企業では障害者に対する配慮を正しくおこなうことで離職率の低下につなげられます。

参考記事:働く難聴者・中途失聴者のために

聴覚障害者に向いている仕事は?

聴覚障害者に向いている仕事は、事務職、軽作業、エンジニア、デザインなどです。

事務職系は電話対応が必要なイメージですが、データ入力作業やファイリング作業などのような耳を使わない仕事も多いため働きやすい業種です。

このような作業には高い集中力が求められるため、ひとつの仕事に没頭できる方に向いています。

軽作業系の業種は、耳で聞いて仕事をするよりも目視で状況を判断することが多いため、聴覚障害のある方にも向いている仕事です。

エンジニア系の仕事は、パソコンのスキルがある聴覚障害者におすすめで、情報のやり取りもメールなどのテキストを利用するので不便を感じることは少ないでしょう。

デザイン系の仕事は、見る力とセンスが問われる仕事なのでそのようなスキルに自信がある方におすすめの業種です。

聴覚障害者が感じている精神的ストレスや差別とは?

聴覚障害者が感じる精神的ストレスをイメージした画像

聴覚障害者は仕事で精神的ストレスや差別を感じることがあります。

実際に聴覚障害者が職場で受けた差別事例をご紹介します。

  • 差別的な発言

仕事で上司に評価されたことに対して、他の同僚から「聞こえないくせに生意気だ」と、聴覚障害者は能力が低いということを前提にした発言をされた。

資料の変更点を「文書で回してほしい」と伝えると、上司から「だから聞こえないのは面倒なんだよ」と言われた。

  • 合理的配慮の不十分な対応

会社の会議に手話通訳をつけてほしいと依頼しても、「企業秘密があるから外部の人はだめ」と言われるため、内容がわからず意見する場がない。

人事担当者に「業務遂行上必要だから手話通訳を依頼してほしい」と相談したが、「もともと採用の条件は自力ですべての仕事ができる人という条件のはず」と難色を示された。

  • 不当な扱い

雇用形態は嘱託のままで昇給もなく、新入社員と同じ賃金では納得できない。

  • 機会の不平等

職場のパソコンのOSが、他の社員は最新なのに、聴覚障害の自分は旧式なので、理由を聞くと「よく使いこなしているからそれでいい。話せないのだから贅沢言わないの」と言われる。

  • いじめ・嫌がらせ

健常者以上に仕事を回されて徹夜で仕事をさせられたり、棚卸しで在庫が記録と合わないときにも「おまえが弁償しろ」と言われた。

会社で上司に吃音を真似されて嫌な思いをしている。

聴覚障害者にとって、職場でこのような差別を受けることは精神的ストレスにつながるでしょう。

職場などの雇用分野では、障害を理由に不当な差別的取り扱いを禁止しています。

障害のある人も障害のない人も、それぞれの能力を活かして仕事ができるように事業主は職場環境を整える必要があります。

参考記事:働く障害のある方へ|厚生労働省

聴覚障害者が働きやすい職場のためにできる対策は?

企業は、聴覚障害者の精神的ストレスや差別をなくすために職場環境を整える必要があります。

聴覚障害者が働きやすい職場のためにできる対策は、以下のポイントを参考にするといいでしょう。

  • 障害に対しての理解を深める
  • 困った時に相談できる窓口を用意する
  • メールやチャットでのやり取りを主体にする
  • コミュニケーションのとりやすいツールを導入する

障害者を受け入れる際には、職場環境を整えることで、入社後のトラブルを避けられ定着率にもつながります。

それぞれの詳しい内容を解説していきます。

障害に対しての理解を深める

聴覚障害に限らず、障害に対して理解がある会社かどうかは、安心して働くうえで非常に大切なポイントです。

一緒に働く仲間としてスムーズにコミュニケーションがとれるように、手話の勉強会を開催したり、ろう文化の理解を促進している企業もあります。

支援機器を積極的に導入をしている企業も多く、会議室などで役に立つ「会議用拡聴器」、筆談をサポートする「筆談支援機器」、音声を文字として出力する「音声認識ソフト」などがあると業務がスムーズになるでしょう。

働く人のさまざまな事情に配慮し、多様な働き方に対応している職場であれば、聴覚障害者に限らず働きやすい傾向にあります。

困った時に相談できる窓口を用意する

近年、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業は増加傾向です。

例えば、会社内にカウンセラーなどの困った時に相談できる窓口を設置している企業であれば、聴覚障害をはじめさまざまな障害のある方にとって安心感につながるでしょう。

仕事中に直面する困難は必ずしも一人で解決できるものではありません。

どのようなケースであっても職場内に気兼ねなく相談できる人がいることは大切です。

メールやチャットでのやり取りを主体にする

コミュニケーションの手段は、音声を使うことだけではありません。

メールやチャットでのやり取りを主体としている企業は、聴覚障害者にとって働きやすい環境といえます。

視覚的にわかりやすくリアルタイムで確認できるメールやチャットは、聴覚障害者と積極的にコミュニケーションをとれる有効的な手段です。

コミュニケーションのとりやすいツールを導入する

コミュニケーションのとりやすいツールやサービスを導入することも大切です。

聴覚障害者が働くうえでストレスになったり困ることの要因はコミュニケーションが多くを占めています。

コミュニケーションをスムーズにできる職場環境を整えるためには便利なツールが効果的です。

AI技術の進化で、複数人の会話をリアルタイムで文字変換したり、聴覚障害者が会話の流れを追いやすくするアプリなどもあるため、必要に応じて職場でも導入するといいでしょう。

聴覚障害者がいる職場で仕事のストレスを軽減する「Pekoe」

リコーグループでは、聴覚障害者向けコミュニケーションサービスとして「Pekoe(ペコ)」を運営しています。

Pekoeは、聴覚障害者がいる職場で仕事のストレスを軽減できるように開発された音声認識アプリで、対面でもオンラインでも利用可能です。

会話を見える化して、どのような人とでもやり取りがスムーズにでき、職場でのコミュニケーションの課題をサポートします。

音声認識の精度も高く、誤変換はその場で修正が可能ですが、共有URLで誰でも修正作業に参加したり、チャットやいいね!ができる機能も特徴です。

聴覚障害者だけでなく、一緒に働く社員の方やチームに向けたコミュニケーションツールです。

トライアルは無料で始められるので、ぜひ検討してみてください。

\聴覚障がい者向け音声認識ツール/

まとめ

今回は、聴覚障害者が抱える仕事のストレスや悩み、離職理由をご紹介しました。

聴覚障害者が働きやすい職場環境を整えるには、事前に準備をしたり用途に応じて新しいツールを取り入れることが大切です。

障害に対しての理解を深め、コミュニケーションの方法を工夫し、便利なサービスを積極的に導入することで定着率を高めることができます。

これから聴覚障害者の採用をする方や転職活動中の聴覚障害者の方はぜひ参考にしてみてください。