難聴者とろう者との違いは?コミュニケーション方法やできる配慮も解説!

聴覚障がい者は、耳が聞こえない・聞こえにくいという状態にあり、その程度によっていくつかの種類に分類されています。
聴覚障がい者の種類としては、「難聴者」「ろう者」などがありますが、細かい違いについて理解できていない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、難聴者とろう者の違いやコミュニケーションの方法、できる配慮について解説します。
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目次
難聴者とろう者の違いとは?
耳が聞こえない・聞こえにくい人を聴覚障がい者と呼んでいますが、その障がいの種類や程度によって「難聴者」「ろう者」に分類されています。
一般的に、補聴器などを使用しても音声が判別できない・耳が聞こえない状態の人が「ろう者」、聴力がある程度残っていて聞き取れる状態の人が「難聴者」です。
ただ、手話を主なコミュニケーション手段とする人を「ろう者」、音声言語が中心で手話をあまり使わない程度の人を「難聴者」と呼ぶこともあります。
聴覚障がい者の種類には他にも、生まれたときには聴者だったのに何らかの原因で聴力を失った「中途失聴者」がありますが、中途失聴者を含めた広い意味で難聴者という場合もあります。
この分類は聴覚障がいの原因や種類、聞こえ方の程度によって分けられていますが、その人自身のアイデンティティの問題である部分もあり、聴覚障がい者を分類し定義することは非常に難しいのが現状です。
ただ、難聴者とろう者については、耳が完全に聞こえないかどうかで分けるのが一般的です。
難聴者の意味を簡単に解説
難聴者とは聴覚障がい者の種類のひとつで、音声言語を習得する前に聴力に障がいが発生していても聴覚障がいの程度が比較的軽く、聾学校に行かずに普通の学校に通った人、または中途失聴者のことです。
また、ろう者の考え方や行動に違和感を示す聴覚障がい者についても、自分のことを難聴者としているケースがあります。
難聴者は聴力の程度によって、軽度難聴者、中度難聴者、高度難聴者に分かれています。
難聴者は聴力がある程度残っているため、音声言語を用いて話すことができる場合が多いのが特徴です。
また、軽度難聴であれば電話が使える人もいます。
参考記事:中途失聴・難聴者 – 大阪府
難聴者の定義や特徴などについては、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:難聴者とは?難聴の定義や後天的な難聴の特徴もわかりやすく解説!
ろう者の意味を簡単に解説

ここでは、ろう者の意味を簡単に解説します。
ろう者とは、聴覚障がい者の種類のひとつで、ろうあ者と呼ぶ場合もあります。
主に、聾学校を卒業していたり、日常のコミュニケーションとして手話を中心に使っている人、聾社会に所属している人のことです。
特に、音声言語を習得する前に聴力を失ったケースが多くなっています。
また、聴覚障がい者に「障がい」という言葉が含まれているため、その表現を嫌う人が自分のことを「ろう者」と呼ぶ場合もあります。
ろう者は本人のアイデンティティによる部分があり、普段から手話を堂々と使い、聞こえない自分を肯定している聴覚障がい者が、自分を「ろう者」と呼ぶことが多いようです。
参考記事:ろうあ者 – 大阪府
ろう者の症状は遺伝によるもの?
ろう者がなぜ聴覚障がいをもつようになったかの原因については、さまざまなものがありますが、その原因のひとつに遺伝によるものがあります。
ただ、実際には遺伝ではなく、「遺伝子」に関係しています。
そのため、両親は耳が聞こえていても突然変異で子供の耳が聞こえなくなる場合があったり、親が難聴の遺伝子をもっていて、それが子供に受け継がれてしまう場合もあるようです。
実際には、両親は耳が聞こえているのに子供は聞こえないというケースが圧倒的に多いのが現状です。
ろう者の原因には遺伝子によるものが50%あり、残りのうち25%は環境が原因とされています。
例えば、母親が妊娠中に風疹にかかったり、ストレプトマイシンなどの薬物を摂取した場合がこのケースに当てはまります。
最後の25%については原因がわかっていません。
参考記事:遺伝性難聴に関する情報 – 独立行政法人 埼玉県立病院機構
ろう者は言葉で話せる?
ろう者は耳が聞こえないため、言葉で話せないと思う人も多いのではないでしょうか。
ただ、実際にはろう者であっても言葉を話すことができる人もいます。
これは、聴力を失ったタイミングによるもので、音声言語を習得する前に聴力を失ったろう者は、音声言語を理解していないことが多いため、その場合は話すことはできません。
ろう者であっても、わずかに音声を聞き取る聴力が残っていれば言葉を反すことができる場合があります。
また、話している相手の口の動きを見たり話の流れを予想しながら、口話(読話)によって相手の話す内容を読み取る訓練をしている人もいます。
ただ、早口や複数人でのやり取り、暗いところなどで口の動きを読むのは困難であり、口話には多くの集中力が必要です。
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中途失聴者とろう者の違いは?
聴覚障がい者の種類には、他に「中途失聴者」があります。
ここでは、中途失聴者とろう者の違いについて解説します。
ろう者とは、音声言語の習得よりも前に聴力を失ったため、コミュニケーションには主に手話を使用している人のことです。
中途失聴者は、生まれながら聴力に障がいがあったわけではなく、途中から聴力を失ったケースです。
聴力を失ったタイミングによっては、音声言語を完全に習得している場合があります。
そのため、中途失聴者には普通に言葉を話す人が多くいますが、ろう者は言葉を話す人は少なく、手話でコミュニケーションをとっています。
ただし、ろう者かどうかについては、残っている聴力の程度や手話を使っているかどうかではなく、その人自身が自分をどのように認識しているかというアイデンティティに関係する部分があるため、一概に定義することはできません。
中途失聴者の定義や特徴などについては、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:中途失聴者とは?定義や特徴・原因や遺伝との関係もわかりやすく解説!
難聴は障がい者になる?
難聴とは聴力に障がいがある状態のことですが、難聴の程度によって障がい者として認定されます。
日本においては、両耳の聴力レベルが70dB以上、または片耳の聴力レベルが90dB以上かつもう片耳の聴力レベルが50dB以上になると、障がい者としての認定を受けることが可能です。
障がいの認定についても段階があり、両耳の聴力レベルが100dB以上のものは1級、両耳の聴力レベルが90db以上のものが2級となっています。
また、日常生活に著しい制限を受けるか、著しい制限を加えることを必要とする程度のものについても2級に扱われるケースがあります。
認定を受けるためには、医師による診断のうえ、役所に申請することが必要です。
参考記事:聴覚の障害|日本年金機構
聴覚障がいには種類や分類がある?
聴覚障がいは、さまざまな条件により分類され、その要素には「聴覚障がいが発覚する時期(原因)」「聴覚障がいの種類」「アイデンティティ」の3つがあります。
- 聴覚障がいが発覚する時期(原因)
出生前に障がいが起きている場合を「先天性聴覚障がい」と分類し、健常な聴覚をもって生まれてきたものの後天的な理由で聴力に障がいが発覚した場合を「後天性聴覚障がい」と分類しています。
- 聴覚障がいの種類
障がいの原因が聴覚組織のどの部分に起こっているかで分けられる要素です。
外耳~中耳にかけての障がいによる難聴を「伝音性難聴」、内耳~聴神経、脳の障がいによる難聴を「感音性難聴」、伝音性と感音性の両方の原因がみられる難聴を「混合性難聴」と分類しています。
加齢によって耳の聞こえが悪くなる「老人性難聴」も、感音性難聴の一種です。
- アイデンティティ
アイデンティティとは、自分がどのように認識されたいかによるものです。
実際の聴力や聴覚障がいが発覚した時期などに関わらず、自分のことを「ろう者」「難聴者」と呼ぶ場合があります。
聴覚障がいの種類の詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害の種類をわかりやすく解説!タイプや症状・原因についても理解を深めよう
難聴者やろう者のコミュニケーション方法は?

聴覚障がい者には、難聴者やろう者など、障がいの程度や聞こえ方の違いがあるため、希望するコミュニケーションの方法には個人差があります。
そのため、耳の聞こえ方に合わせたコミュニケーションの方法をとることが必要です。
難聴者など聴力が残っている場合は、補聴器を使用してコミュニケーションをとっています。
残っている聴力を活用する方法ですが、話し手との距離があったり雑音があると音声が埋もれて聞こえにくくなるなどの点が問題です。
中途失聴者などの音声言語を習得している場合のコミュニケーションの方法には口話があります。
これは、相手の口の動きから話の内容を推測する方法です。
簡単な会話であれば、相手に口を大きく開けてゆっくり話してもらうと判別しやすくなりますが、同音異義語などは区別が困難です。
ろう者など話すことができない場合の方法には筆談があります。
筆談は文字でコミュニケーションをとる方法で、口話と併用するケースが多くなっています。
その他、音声を文字化する音声認識ツールの利用も増えていて、会議などの複数人に対応しているツールもあるため便利です。
難聴者やろう者とのコミュニケーションでできる配慮
難聴者やろう者とのコミュニケーションにはさまざまな方法がありますが、スムーズにおこなうためには配慮が必要です。
ここでは、この配慮について解説します。
難聴者やろう者とコミュニケーションをとる場合は、まずどのような配慮が必要なのかを本人に確認しましょう。
聴覚障がいは、聞こえ方が人によって異なるため、完璧なコミュニケーションの方法があるわけではありません。
そのため、どのような配慮をすればよいか、本人に教えてもらうようにしましょう。
聴覚障がい者は、1対1では音声で会話ができる場合でも、複数人相手では困難になる場合が多くなっています。
複数人で会話する場合は、できるだけ一人ずつ発言するようにしましょう。
また、聴覚障がい者は会話がスムーズにいかない経験が多いため、自分から人に話しかけることをためらう傾向があります。
もし困っているようであれば、声をかけるなどの配慮をしましょう。
口頭で説明を聞くだけでは混乱してしまうことがあるため、メモに書いて渡すとより確実です。
聴覚障がい者へのコミュニケーションの配慮については、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害者へのコミュニケーション時の配慮とは?私たちにできること
難聴者やろう者をサポートしてくれるツールがある?
難聴者やろう者とのコミュニケーションでは、さまざまな配慮が必要ですが、このコミュニケーションをサポートしてくれるツールがあります。
現在では幅広いサポートツールがあり、日常生活や緊急時に利用可能です。
聴覚障がい者は電話を使用することが難しいケースがありますが、緊急時の通報をサポートする110番・119番への緊急通報システムがあります。
また、電話を代行してくれるサービスもあります。
他にも、音声を文字化するツールも多く存在していて、映画に字幕をつけるサービスや会議における複数人の会話でも文字化して表示できるツールなどもあり、さまざまな場面で利用可能です。
難聴者やろう者をサポートしてくれるツールの詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害のサポートツールでおすすめは?無料アプリや緊急用ツールもご紹介!
難聴者やろう者とのコミュニケーションをとりやすくする「Pekoe」
ここまで、難聴者やろう者などの聴覚障がい者のためのコミュニケーション方法や配慮について解説しましたが、会社や学校などでチームでのコミュニケーションをとる場合には「Pekoe」がおすすめです。
Pekoeは、株式会社リコーアクセラレータープログラムTRIBUSが聴覚障がい者向けコミュニケーションサービスとして提供しています。
聴覚障がい者にとっては、会議に出席した場合でもその場で内容をすべて理解することは困難です。
このようなケースでも、Pekoeを利用することで解消することができます。
Pekoeには、
- 会議での会話を音声認識して文字化
- 誤変換をその場で修正可能
- リアルタイム配信や過去の研修動画に字幕表示
といった機能が搭載されています。
Pekoeの機能を利用することで、聴覚障がい者の悩みだけでなく、チーム全体の悩みを解消することが可能です。
会議に参加した聴覚障がい者も、リアルタイムで内容が理解できるため、業務を他のメンバーと同じタイミングで始めることができます。
業務において聴覚障がい者とのコミュニケーションでお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
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まとめ
ここまで、難聴者とろう者の違いやコミュニケーション方法、できる配慮について解説しました。
難聴者とろう者はどちらも聴覚障がい者ですが、耳が聞こえるかどうかが大きく異なります。
ただし、本人のアイデンティティにより呼び方が変わるケースもあります。
難聴者やろう者とのコミュニケーションにはさまざまな方法がありますが、どの方法においても一定の配慮が必要です。
聴覚障がい者のコミュニケーションをサポートするツールがリリースされているため、うまく活用することでコミュニケーションを円滑に進めることができます。
