中途失聴者とは?定義や特徴・原因や遺伝との関係もわかりやすく解説!

聴覚障害に関すること
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中途失聴者をイメージした画像

中途失聴者とは、聴力が下がり耳が聴こえなくなった人のことを指します。

「なんとなく聞いたことがあるけれど、中途失聴の具体的な状態や難聴者との違いがわからない」

「中途失聴者とのコミュニケーションのとり方はどうすればよいだろう」

と疑問に思うこともあるのではないでしょうか。

本記事では、中途失聴者の定義や特徴・原因、遺伝との関係もわかりやすくご紹介していきますので、ぜひ中途失聴者についての理解を深めてみてください。

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中途失聴者とは?定義や特徴を解説

中途失聴者の定義は、音声言語を習得したあとに聴力が下がり耳が聴こえなくなった人です。

聴力が下がる原因は、薬の副作用やストレス、事故など多様にわたります。

言葉の発声を覚えたあとに聴力を失ったため、一般的な聴覚障がい者と違い、耳が聞こえなくても発話できる人も多いのが中途失聴者の特徴です。

コミュニケーション方法は、手話を使用する人もいれば筆談や口話を使用する人もいます。

中途失聴者は難聴の一種とされることもありますが、症状はろう者に近い状態にあります。

一見わかりづらい中途失聴と難聴、ろう者の違いも併せてご紹介します。

参考記事:難聴者・中途失聴者問題 ハンドブック|全日本難聴者・中途失聴者団体連合会

中途失聴者と難聴者の違い

中途失聴者と難聴者の違いは、残存聴力があるかないかです。

聴力を失った中途失聴者に対し、難聴者は若干の聴力が残っている状態を指します。

難聴者のなかには、補聴器や人工内耳を使用すれば音を聞き取れる人もいますが、音は判別できても言葉は聞き取りづらい、自分の声も聞き取れないなど、聞こえる程度には個人差があります。

中途失聴者とろう者の違い

中途失聴者とろう者の違いは、聴力を失うタイミングです。

音声言語習得前に聴力を失ったろう者に対し、中途失聴者は習得後に聴力を失った人を指します。

ろう者は音声言語を身につける以前から聴力を失っているので、手話を第一言語とする人が多いです。

ろう者のなかには、残存聴力が残っており補聴器を使用する人も少なからずいますが、ほとんどの人が手話を使用しています。

手話を使用する中途失聴者は全体の約2割と少数で、口話や筆談、音声言語などで対応している人が多いです。

参考記事:聴覚・言語障害

中途失聴の原因は?

中途失聴の原因をイメージした画像

中途失聴の原因は、以下のようにさまざまなものがあります。

  • ストレプトマイシン(抗生物質)などの薬による副作用
  • 騒音を聴き続けるで起こる耳の有毛細胞の損傷
  • 事故・病気などによる頭部への衝撃
  • 遺伝性
  • 耳の中の気圧の変化
  • ウイルス性
  • ストレス

また、中途失聴は耳のどの箇所に損傷があるかで細かく分類されています。

  • 伝音性難聴

中耳炎や感染症、腫瘍などにより内耳の鼓膜が破れることが原因

  • 感音性難聴

内耳や聴神経に異常が生じる。感音性難聴の原因には、薬剤性難聴・老人性難聴・騒音性難聴・突発性難聴などがある

  • 混合性難聴

伝音性難聴と感音性難聴の両方の要素を含むもの

難聴の種類については以下の記事で詳しくご紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。

関連記事:聴覚障害の種類をわかりやすく解説!タイプや症状・原因についても理解を深めよう

中途失聴は遺伝する?

中途失聴は遺伝も関係するといわれており、耳の中で動くタンパク質を作る細胞の遺伝子に変異が起こることで発症すると考えられています。

若年性難聴の場合には、以下の遺伝子の変異が確認されています。

  • ACTG1遺伝子
  • CDH23遺伝子
  • COCH遺伝子
  • KCNQ4遺伝子
  • TECTA遺伝子
  • TMPRSS3遺伝子
  • WFS1遺伝子

聴力検査や難聴の遺伝子検査で、中途失聴が遺伝性のものなのかを調査することが可能です。

遺伝子変異による難聴者の割合は、難聴者全体のおよそ0.14%〜1.9%となっています。

参考記事:304 若年発症型両側性感音難聴

中途失聴者が抱えやすい3つの困難

中途失聴者が抱えやすい困難のなかから、3つを例に挙げてご紹介します。

  • 補聴器になじめない
  • 聞こえないことを周囲に伝えづらい
  • 手話がなかなか覚えられない

これらのように、中途失聴者ならではの悩みや問題が多数あります。

補聴器になじめない

ひとつ目は、補聴器になじめないことです。

これまで耳を頼りに音を拾っていたのが、補聴器をつけないと聞き取れなくなったため、違和感を感じる人も多いです。

初めは補聴器に慣れるのにも時間がかかります。

また、発話ができる中途失聴者のなかには、「言葉は話せるのにどうして補聴器をつけないといけないんだろう」と補聴器をつけることに対してためらう人もいるかもしれません。

聞こえないことを周囲に伝えづらい

ふたつ目は、耳が聞こえないことを周囲に伝えづらい点です。

聴覚障がい者のなかでも、話すことができる中途失聴者は周りから聴覚障がい者と気付かれにくく、不便を感じる場面が多いのが現状です。

中途失聴者は音声言語がわかる人が多いので、耳が聞こえないことを伝えても本当に聴覚障がい者なのか疑われる場合もあります。

見た目だけでは障がい者と判断されず、日常生活においてさまざまな困難が生まれてしまうのです。

また、急に失聴した場合、ショックも重なり、周りに耳が聞こえなくなったことをなかなか言い出せない人もいます。

周りの反応を気にしたり、これまでのように友人や同僚と関わることができなくなるのではないかという不安を抱くかもしれません。

中途失聴者と関わる際は、本人の抱える悩みや困難を精一杯受け止めてあげることが大切です。

手話がなかなか覚えられない

手話がなかなか覚えられないことも問題のひとつです。

聴覚を失うだけでもショックなのに、これから手話も覚えなければならないとなると、精神的にも辛くなってしまいます。

生まれつき聴覚障がいをもつ人は、コミュニケーションが必然的に手話となるため、発語のように自然と習得していきますが、言葉を覚えた後で手話を一から覚えるとなると相当な時間がかかります。

聴覚障がい者は手話を使用するイメージが強いかもしれませんが、絶対に手話を習得しないといけないわけではありません。

なかには手話を使用せず、口話や筆談などでコミュニケーションをとる人もいます。

習得するのであれば、世界には約400種類もの手話があるため、日常生活に必要なものなどから少しずつ覚えていくことが手話を覚えるポイントです。

中途失聴者が生活しやすくするために開発された道具やアプリ、ツールなどもたくさんあるので、自分にあう方法を選択するとよいでしょう。

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中途失聴者は話せる?

音声言語を習得したあとに失聴した場合、中途失聴者でも話せる人は多く、発音も問題なく一般的な会話ができることが多いです。

聴覚が失われているのに、なぜ話せるのか疑問に思うかもしれません。

それは、失聴する前の生活で発声が身についているからです。

耳の聞こえる生活が長ければ長いほど発声もしっかりしており、さらには口の形を見て言葉を読みとる「口話」を使用して相手の言葉を理解する訓練をしている人もいます。

このため、中途失聴者は聴覚障がいをもっていないかのように扱われることも多いですが、口元が見えない暗い場所で話したり、複数人での会話など苦手なシチュエーションもあります。

音声言語だけでは難しい場合、身振り手振りなどのジェスチャーと併せて相手に伝えます。

中途失聴者とコミュニケーションをとる方法は?

中途失聴者とのコミュニケーション方法をイメージした画像

中途失聴者とコミュニケーションをとるには、以下のようにさまざまな方法があります。

  • 口話(こうわ)

相手の口の動きから言葉や話の内容を読み取り発話する。

中途失聴者の多くは、手話と口話を組み合わせてコミュニケーションをとっている。

  • 筆談

筆談器やメモ帳などに文字を書き、やりとりをする。

相手が手話を理解できなくても、簡単にコミュニケーションがとれる。

災害時などの緊急時にも役に立つ。

  • 手話

手・指の動きや表情などで表現する言語。

失聴者が音声言語の代わりとして習得することが多いが、種類も多くなかなか覚えられないのが悩みのひとつでもある。

コミュニケーションで手話を主に使用している中途失聴者は、全体の2割以下。

  • 要約筆記

話の内容をその場で文字にして伝える。

理解しやすいように無駄な言葉を省き、読みやすい文章にする。

少人数の際に使用するノートテイク、スクリーンに映し出すOHC(オーバーヘッドカメラ)、パソコン要約筆記などがある。

中途失聴者のコミュニケーション方法については、関連記事で詳しくご紹介しているので、ぜひ併せてご覧ください。

関連記事:中途失聴者のコミュニケーション方法を解説!抱えやすい悩みや解決策もご紹介

中途失聴者のコミュニケーションの悩みを軽減する「Pekoe」

「Pekoe(ペコ)」は、音声言語をリアルタイムで文字化することで、中途失聴者のコミュニケーションの悩みを軽減できるツールです。

中途失聴者は、会議や打ち合わせなどの場で、周りの発言や会話が聞こえずに困る場面があります。

発言できた場合でも、相手の反応が瞬時に読み取れず、周りとのコミュニケーションのとり方にも苦戦することが多いです。

Pekoeは、発言者の言葉だけでなく、その場の些細な会話ややりとりも文字化してくれ、耳が聞こえる状態に近い感覚で参加できます。

文字に誤りがあった際もその場ですぐに修正が効くため、周りの人の負担も少ないです。

アプリをダウンロードして設定をおこなうだけで誰でも簡単に始められるので、中途失聴者とのコミュニケーションに悩んでいる方はぜひ利用してみてください。

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まとめ

中途失聴者とはどのような状態なのか、定義や特徴、コミュニケーション方法などをご紹介しました。

何らかの理由で人生の途中で聴覚を失ってしまった中途失聴者は、手話が覚えられない、補聴器になじめない、聞こえないことを相手に伝えづらいなど、さまざまな悩みを抱えています。

中途失聴者と関わる場合、まずは中途失聴の特徴、本人が感じる辛さや悩みを十分に理解することが大切です。

本記事でご紹介したPekoeなど、中途失聴者とコミュニケーションをとる際に役立つ方法やツールは多数あるので、そちらもぜひ実践してみてください。