聴覚障害者へのコミュニケーション時の配慮とは?私たちにできること

聴覚障害者とコミュニケーションをとるときは、どのような点に配慮すればよいかご存知でしょうか。
今回は、私たちにできる配慮には何があるのか、どんな点を意識すれば聴覚障害をもつ方の役に立てるのかなどを、この記事で詳しく解説していきます。
聴覚障害をもつ方と円滑にコミュニケーションをとりたい、コミュニケーション方法を知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
聴覚障害をもつ方に多い悩み
はじめに、聴覚障害をもつ方に多い悩みにはどういったものがあるのかをお話しします。
聴覚障害は大きく分けて、生まれつき聴力レベルが100dB以上で両耳とも日常の音がほとんど聞こえない状態の「ろう」、聴力はあるが音が聞き取りにくい状態の「難聴」、事故や病気などをきっかけに元々あった聴力が失われていく「中途失聴」の3つがあります。
音が聞こえない、聞こえにくいだけでなく、生活や仕事などのあらゆる場面で支障をきたすのが聴覚障害です。
聴覚障害をもつ方に多い悩みは、以下の3つです。
- 音声の情報が入りにくい
- 情報をスムーズに伝えられない
- コミュニケーションがとりにくい
聴覚障害をもつ方へ配慮をするには、聴覚障害をもつ方が、実際にどんな悩みを抱えているのかを知ることから始めてみてください。
これより、上に挙げた3つの悩みについて具体的に説明します。
音声の情報が入りにくい
一つ目は、音声の情報が入りにくいことです。
家族や友人の声、テレビの音、駅放送や信号音といった屋外の音など、一日の中で耳から取り入れる情報量は数えきれないほどです。
聴覚障害をもつ方は、このような音声の情報も「音量が小さく聞こえる」「はっきりと聞き取りづらい」「音が歪んだように聞こえる」など、聞こえ方に違いがあります。
補聴器をつけていれば聞こえるのではないかと思われがちですが、周囲の雑音や反響などでかき消されるなど、聞こえにくい場所や環境もあるのです。
また、聴覚障害者の多くを占めている感音声難聴の人は、音声を音と認識していても言葉としては正確に聞き取ることが難しく、マイクを通した音声や映像の音声などは肉声に比べ、聞きとりにくいといわれています。
音声の情報が入りにくいと、目の前の一人との会話は通じても、複数人いると誰がどこで話しているのかを把握することが困難になるので、学校の授業や会社の会議などに支障が出てしまいます。
情報をスムーズに伝えられない
二つ目は、情報をスムーズに伝えられないということです。
聴覚障害があると、音声に頼った情報を上手く受け取ることができないため、聞き取りだけでなく、口話や電話などで情報をスムーズに伝えることも難しくなります。
また、聴覚障害者とのコミュニケーションに慣れていない相手とやりとりをする場合にも、情報の伝達に苦戦することがあります。
しかし、手話や筆談などのコミュニケーション手段を使用することで、情報をスムーズに伝えることは可能です。
聴覚障害者の中には、情報を効果的に伝えられる人もいますが、理解や配慮を必要とする場合もあるため、円滑にコミュニケーションをとるには、相互の理解を深めることが大切です。
コミュニケーションがとりにくい
三つ目は、コミュニケーションがとりにくいことです。
コミュニケーションは、人間関係を築くうえでとても大切な手段ですが、聴覚障害があるとうまくコミュニケーションがとれないため、聴覚障害はコミュニケーション障害ともいわれています。
外見上わかりにくい聴覚障害は、その人が抱えている困難も、周りから気づかれないという難点があるのです。
また、聴覚障害をもつ方にとって、聞きやすい話し方をする人、聞きにくい話し方をする人がいます。
モゴモゴした話し方をする人は、何を言っているのかはっきりとわからないため、話が通じにくくなってしまいます。
さらに、近年は感染症対策でマスクを着用する機会が増えたため、相手の口の動きで何を話しているのかを感じることも難しいのが現状です。
参考記事:聴覚障害者の情報アクセシビリティ
聴覚障害者とのコミュニケーション方法

聴覚障害をもつ方とのコミュニケーションの主な方法は、「筆談」「口話」「手話」の3つです。
先ほども記述した通り、聴覚障害は「ろう」「難聴」「中途失聴」の3つに分かれており、それぞれコミュニケーション方法も異なります。
コミュニケーションをとる前に、相手がどの状態にあたるのかを理解しておくことが大切です。
それぞれ3つの方法の特徴を具体的に挙げるので、自分が関わっている人にはどの方法が合っているのかを、考えてみてください。
筆談
筆談は、文字を活用してコミュニケーションをとる方法です。
ペンや紙の使用に限らず、指で手のひらに書くことや空書きも含まれます。
筆談するときのポイントは、以下の3つです。
1.日常で使用する漢字を使う
ひらがなが多すぎると、言葉のまとまりがはっきりとせず、意味が理解しづらくなります。
2.記号や図を用いて明確に表現する
図式化された表現の方が、視覚的に情報が伝わりやすいです。
3.短い文で書く
文章が長いと前後の関係が複雑になり理解しづらいため、短く簡潔に書くことを心がけます。
口話
口話は、相手の口元や頬の動きで捉えた文脈から話の内容を理解し、音声言語を用いて自分の気持ちを表現する方法です。
しかし、口話は、「聴覚」「広角」「方角」などのように口の動きが似ている言葉や同音異義語の区別がつきにくかったり、断片的な情報から話を推測しなければならないなど、不安や緊張をともなう方法でもあります。
「補聴器をつけているから大体は理解できているだろう」と思い込まず、聞こえていてもうまく聞き取れない場合もあるということを踏まえ、ゆっくり話す、適度に間をとるなどの配慮を心がけることが大切です。
手話
手話は、今回ご紹介した3つのコミュニケーション方法の中でも、特に重度聴覚障害者にとって重要な手段です。
しかし、聴覚障害をもつすべての方が手話を用いているわけではなく、日常的に手話を用いる人、手話がまったくわからない人、手話を理解しているが公の場では使用しない人など、手話を使用しているかどうかは人ぞれぞれです。
相手のコミュニケーション手段を理解し、手話を用いているようであれば活用してみてください。
手話は、本や動画サイトなどを利用すれば簡単に勉強ができます。
また、手話がわからなくても、聴覚障害をもつ方とのコミュニケーションは可能です。
相手の表情や口の動きに注目したり、手話以外にも身振り手振りなどで意思疎通はできるので、ためらわずに挑戦してみてください。
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聴覚障害者のためにできること
聴覚障害者は、外見上、障害を持っていることが把握されづらいため、生活の中で怖い思いをしていても、周りの人からはなかなか気づいてもらえません。
相手が聴覚障害をもっているかもしれないと感じたら、まず目に見えるかたちで声をかけ、どの程度の障害で、どのような対応を望んでいるかを本人に確認してみてください。
聴覚障害者のためにできることについては、この後さらに詳しく解説していきます。
どのような配慮が適切か尋ねる
まずはじめに、相手にどのような配慮が適切か尋ねてみましょう。
聴覚障害者は、聞こえ方が人それぞれのため、完璧にコミュニケーションをとれる方法は一つだけではありません。
電車の中や飲食店の中など、場面によってコミュニケーション方法もかわってくるので、手話がよいのか、または筆談の方が好ましいのかなどを聞いてみてください。
また、対応する際は、なるべく雑音や騒音の少ない場所を選ぶとよいです。
聴覚障害者の中には、自分の声の音量を調節することが苦手な人もいます。
個人情報などプライバシーに関する情報を伝えないといけない場面では、手話や筆談が周りから見えないように配慮することも大切です。
聴覚障害者とコミュニケーションをとるときは、どのような配慮が適切か確認をとり、相手が何に困っているのかを聞いてから、場面に合った対応をするようにしてください。
聴覚障害者への配慮例
聴覚障害者への配慮例は、以下のようなものが挙げられます。
- 筆談・手話・コミュニケーションなど、目で見て理解できる方法を用いて意思疎通をおこなう
- 会議や講演会など、字幕や手話などが見やすい座席配置を決める
- 窓口で順番を知らせる際は、アナウンスだけでなく身振り手振りも交えて伝える
- 難聴者がいる場合、ゆっくり話したり複数の発言が交錯しないよう注意する
- 言語障害により聞き取りにくい場合、わかったふりをせず、内容を確認し本人の意向に添えるようにする
これらの配慮例は、聴覚障害をもつ方が日常生活や社会参加を円滑におこなえるようにするために、とても大切です。
アプリやツールを活用する
アプリやツールを活用することも、聴覚障害者に役立つひとつの手段です。
ここでは、聴覚障害者向けコミュニケーションサービス「Pekoe(ペコ)」をご紹介します。
Pekoeは、音声認識によって会話をリアルタイムで文字化してくれるコミュニケーションツールです。
- 会議の内容をすべて完璧には理解できない
- 同僚に毎回筆談やチャットでサポートしてもらうのが申し訳ない
- 会議中に発言したかった
こんな悩みがある聴覚障害者や、その周りのチーム向けのサービスとなっています。
Pekoeを使用すれば、会議や配信、動画などのあらゆる音声に字幕をつけられるため、会議や、会社で開催されるイベントなどにも参加しやすくなるメリットがあります。
さらに、音声認識の誤変換もその場で修正ができるので、正しい情報を伝えることが可能です。
Pekoeについては、関連記事で詳しく紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。
関連記事:聴覚障がい者向けコミュニケーションサービスPekoe(ペコ)の使い方
ほかにも、会話を文字変換したり、声を出せないときに代わりに読み上げてくれる機能など、聴覚障害をもつ方を支援するさまざまなアプリやサービスがあります。
手話や口話などの手段を使用するのは難しいという場合に、ぜひ活用してみてください。
関連記事:障害者とのコミュニケーションツールは?活用事例をご紹介!
聴覚障害者への配慮とPekoeの導入事例

最後に、聴覚障害者への配慮とPekoeの導入事例をご紹介します。
株式会社オカムラ様では、障害をもつ方とのコミュニケーションをより密にすることを目的とし、Pekoeを導入しています。
関連記事:聴覚障害者向けの会議ツールPekoe(ペコ)の導入事例
幅広い業務で知覚障害をもつスタッフが活躍していますが、会議や打ち合わせ時に、タイピングのみでは些細な会話や小さな笑いを文字にできないことや、文字起こしの誤変換などが課題となっていました。
Pekoeを導入してからは、それまで受け身だったスタッフも、自らPekoeを起動して全員で修正するための共有URLを準備したり、今日は誰がPekoeを起動するか問いかけたりと、職場の雰囲気を温めるようなスターターの役割となっています。
音声の文字化機能だけでなく、スタッフ同士のコミュニケーションを目的としているPekoeのコンセプトに一同が共感し、積極的に活用しています。
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まとめ
聴覚障害者とコミュニケーションをとるための配慮や、その方法を解説しました。
聴覚障害をもつ方とコミュニケーションをとるのは不安に感じるかもしれません。
しかし、筆談・口話・手話の使用や、その場でどのような配慮が必要なのか尋ねる、アプリやツールをうまく活用するといったことでカバーできるので、まずは自分のできることから始めてみてください。
Pekoeは、聴覚障害をもつ本人だけでなく、チーム全体の悩みが解決できるコミュニケーションサービスです。
職場で聴覚障害者と円滑にコミュニケーションをとりたいという課題を抱えている方は、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。