聴覚障害の種類をわかりやすく解説!タイプや症状・原因についても理解を深めよう

聴覚障害に関すること
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聴覚障害は、音や声が聞こえない、聞こえにくいという耳の障害です。

聴覚障害といっても個人差があり、障害の原因や程度の差、聞こえ方の違いなどがあります。

この差や違いを理解することは、聴覚障害者とコミュニケーションをとるうえで重要です。

この記事では、聴覚障害の種類・タイプ・症状・原因などについて解説しますので、参考にしてみてください。

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聴覚障害とは?分類される3つのタイプ

聴覚障害とは、耳の障害によって音や声が聞こえない、あるいは聞こえにくい状態のことです。

一般的に、聴力の程度を示す聴力レベルは、音の強さを示すdB(デシベル)という単位で表します。

また、音の周波数を示す単位のHz(ヘルツ)も使用し、音の高低を表します。

聴力レベルを計測するオージオメーターという機器では、聞こえる程度と、どの部位に障害があるかの測定が可能です。

正常な聴力の場合、聴力レベルは0dB付近で、難聴の程度が強くなると数値が大きくなり、

  • 30dB以上:軽度難聴
  • 50dB以上:中度難聴
  • 70dB以上:高度難聴
  • 100dB以上:ろう

と分類されます。

聴覚障害にも、原因や種類など個人差があるため、以下の3つのタイプに分類されています。

  • 中途失聴者
  • 難聴者
  • ろう者/ろうあ者

ここからは、この3つのタイプについて解説します。

中途失聴者

「中途失聴者」とは、生まれつきではなく、何らかの理由で聴力を失った方のことです。

中途失聴者には、聴力に障害が出た時期が言葉を覚えた後だったケースがあります。

そのため、声は聞こえていなくても話すことができる(発話できる)人や、聴覚障害者とみなされていても手話は使えない人、失聴後に手話を覚えたことで手話でコミュニケーションがとれる人などさまざまです。

ただし、どのタイプの中途失聴者でも、相手が話している言葉は聞き取ることが難しいため、言葉を使ったコミュニケーションは困難です。

聴覚障害では、聴力レベルによって難聴などの分類がありますが、中途失聴者は聴力レベルとは関係なく、途中で聴力を失ったかどうかで分類されます。

そのため、中途失聴者には音がまったく聞こえない人や、少しは聞くことができる人など、さまざまな聴力レベルの人が存在します。

難聴者

聴覚障害者のなかで、聴力が少しでも残っている人は、難聴者と呼ばれています。

難聴の度合いは聴力レベルで表すdBの数値によって分かれていて、日本で聴覚障害者と認定されるのは、聴力レベルが70dB以上の「高度難聴」からです。

難聴者には、聴力が残っているため、補聴器などを使って音を聞き取る人がいますが、音が聞こえても聞き取るのが困難な人など、程度には差があります。

音が聞こえることから、普通に生活が送れると判断され、サポートが受けられずに困っている人もいます。

また、普段は補聴器などで音が聞き取れても、体調によっては聞き取れない日があるなど、困難な生活をおくっているケースもあります。

このように、難聴者のなかでも個人差があり、聞こえているようでも、他の聴覚障害者と同様にサポートが必要なケースがあると理解することが重要です。

また、コミュニケーションをとる方法についても個人差があるため、その人に合わせたサポートが必要です。

ろう者/ろうあ者

聴覚障害者のなかでも、聴力の損失が大きく、幼児期など言葉を覚える前に聴力を失った人のことを「ろう者」または「ろうあ者」と呼びます。

ろう者のなかには、まったく声を出せない人もいれば、声を使って話すことができる人もいます。

また、コミュニケーションの方法もさまざまで、手話を主に使っている人もいれば、そうではない人もいます。

読み書きの程度についても、人によってさまざまです。

ろう者は、音が聞こえないというだけでなく、コミュニケーションの不自由さや情報不足が原因で、日常でさまざまな問題をかかえています。

音が聞こえる人々は、日常生活で、さまざまな情報を音に頼っています。

そのため、ろう者は聴覚障害者のなかでも困難なケースが多いのです。

ろう者とのコミュニケーション方法には、手話が多く使われていますが、手話が理解できない人は、筆談でもコミュニケーションが可能です。

筆談でコミュニケーションをおこなう場合は、読みやすい文字と簡潔な文章を使いましょう。

ただ、ろう者のなかには、文章で伝えることが苦手な人もいるため、その人にあったサポートが必要です。

聴覚障害の種類と特徴

聴覚障害は、障害の原因となる部分が耳のどのあたりにあるかで種類が異なります。

聴覚障害の種類によって、必要となるサポートが異なるため注意しましょう。

聴覚障害の種類には

  • 伝音性難聴
  • 感音性難聴
  • 混合性難聴

の3種類があります。

ここからは、それぞれの種類と特徴について解説します。

伝音性難聴

「伝音性難聴」とは、外耳や中耳が正常に機能しなくなることが原因で、音が伝わりにくくなるタイプの難聴です。

慢性中耳炎や滲出性中耳炎などの中耳の疾患で起こります。

伝音性難聴は、音が聞こえにくい状態ですが、音を大きくすると聞こえるため、補聴器などを使って聞くことが可能です。

また、伝音性難聴は機能障害が原因で発生しているため、治療や手術などで聴力が回復する可能性があります。

痛みや耳の閉塞感、耳鳴り、音のこもりなどの症状から伝音性難聴が発覚するケースがあります。

感音性難聴

「感音性難聴」とは、内耳やそれより奥の中枢の神経系に生じた障害が原因で発生する難聴です。

感音性難聴の特徴は、高音域の音が聞こえにくいことや、複数の音を一度に聞いた場合に特定の音を聞き分けることが難しいなどの症状があります。

感音性難聴は、突発性難聴や老人性難聴、騒音性難聴、メニエール病など、内耳の病気や聴神経腫瘍といった中枢の疾患でみられます。

伝音性難聴とは異なり、補聴器を使っても音を聞くことは難しいです。

また、現在、感音性難聴は明確な治療法が確立されていません。

ただし、原因を明確にすることで対処が可能です。

混合性難聴

「混合性難聴」とは、ここまで紹介した「伝音性難聴」と「感音性難聴」の両方の機能障害が混合した難聴です。

混合性難聴は老人性難聴に多く、伝音性難聴と感音性難聴の症状のどちらの度合いが強いかは、人によって個人差があります。

混合性難聴の原因にはさまざまな要因がありますが、伝音性難聴と感音性難聴に付随する原因以外では、先天性のものや外傷性のもの、ウィルス性、遺伝、ストレスなどがあり、突発性難聴のように原因が判明していないものもあります。

聴覚障害の主な症状は?

聴覚障害の症状についてイメージした画像

聴覚障害が発生すると、音の聞こえに支障が出てきます。

聴覚障害が発生した場合の主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 音は聞こえるが話している内容が聞き取れない
  • 声が明瞭に聞き取れず、こもったような音として認識される
  • 大勢の人のなかや雑音がする環境では会話が難しい
  • 時計のアラームなどの高い音が聞き取れない

また、聴覚障害の症状は、程度によって違いがあります。

  • 軽度:騒音の中での会話や小さな声が聞き取りづらい
  • 中程度:普通の声の大きさの会話が聞き取りづらい
  • 高度:大きな声か補聴器がないと会話が聞こえない

このように、聴覚障害の程度によっては、音がまったく聞こえなくなる場合もあります。

聴覚障害の症状が発生すると、会話がうまく成立しなくなり、コミュニケーションに支障が出るかもしれません。

自分の気持ちをうまく伝えられないことから、心理的ストレスを感じることもあります。

先天性の場合、言葉を音として理解できないため、発語ができなくなる場合があります。

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聴覚障害の主な原因は?

聴覚障害には、さまざまな原因があります。

聴覚障害の原因の多くは、内耳や外耳などの耳の機能の異常から発生しますが、脳や神経系に異常があり、声や言葉を音としてしか認識できない場合も聴覚障害に含まれます。

また、聴覚障害が発生した原因についても、遺伝や妊娠中のウイルス感染などによる先天性のものから、外傷や加齢などが理由の後天性のものもあります。

一口に音といっても多くの種類があり、日常生活においては音を感知するだけでは不十分で、その音を情報として理解することが必要です。

先天的なもの

先天的なものが原因で起こる聴覚障害は、先天性難聴と呼ばれています。

これは、生まれつき聴力に問題が発生している状態のことです。

原因の60%〜70%は遺伝性のもので、非遺伝性のものは30%〜40%といわれています。

音を正常に認識するためには、空気の振動として外耳に入った音を、中耳や内耳を通して電気信号に変換し、脳に伝達することが必要です。

この過程が正常に機能するには、さまざまな遺伝子が関係していて、この遺伝子に異常があると、先天性難聴が発生します。

非遺伝性の原因としては、ウイルス感染症・薬剤・外傷などが主な原因です。

一般的には、出生時に受ける新生児聴覚スクリーニング検査で発見できます。

後天的なもの

聴覚障害の後天的な原因として最も多いのが、加齢による聴力機能の衰えです。

その他にも、突発性難聴や脳腫瘍、薬による影響などから、内耳や脳の聴覚野の機能が低下することで聴覚障害が発生します。

また、大きな騒音も聴覚障害の原因です。

大音量の音を長期間聞き続けていると、難聴になることがあります。

他には、中耳炎や耳垢も原因になります。

突発性難聴による聴覚障害を防ぐことは難しいですが、加齢や大音量による難聴については、生活習慣を見直すことで防ぐことが可能です。

後天的な聴覚障害については、早期の発見が重要です。

耳の聞こえに違和感がある場合は、早めに診察を受け、医師の診断のもとで対処するようにしましょう。

日本の聴覚障害者の割合は?

日本の聴覚障害者の割合は、厚生労働省の「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」によると、約29万7千人となっています。

年齢別では、64歳未満が6万人、65歳以上が23万7千人となっていて、大半が65歳以上です。

聴覚障害者の推移としては、1987年までは増加傾向にありましたが、それ以降はほぼ横ばいか、若干の減少傾向があります。

年齢別に推移を見ると、65歳以上の聴覚障害者は増加していることから、聴覚障害者が全体として高齢化しています。

また、日本の総人口に対する聴覚障害者の割合は、およそ0.27%です。

参考記事:平成28年 生活のしづらさなどに関する調査

世界の聴覚障害者の割合は?

世界の聴覚障害者の割合については、WHOのデータによると、世界の全人口の5%以上に当たる約4億6600万人いるとされています。

この聴覚障害者のうち3,400万人が子どもで、その多くは平均所得が低い国の人に多く、適切な医療措置がとられていないことが原因です。

また、2050年には世界の聴覚障害者の数は9億人を超えると推定されています。

さらに、スマートフォンなどの音響機器で大音量の音を長時間聴くことが原因となる難聴のリスクが、世界の12〜35歳と若い世代の半数近い約11億人にあると警告しています。

この聴覚障害に対して適切な対策をとらない場合、年間7500億ドルの損失になると推定されているため、今後、何らかの対策をとることが必要です。

参考記事:世界の若者11億人が大音量で聴覚障害のリスク

聴覚障害の人は話せない?

聴覚障害者との会話をイメージした画像

聴覚障害の人は話せないのでは?と思っている方は多いかもしれません。

実際は、聴覚障害があっても話すことができる人もいます。

聴覚障害にも種類があり、中途失聴者のように生まれつきではなく途中から聴覚障害が発生した場合、言語を習得しているため、話すことができる場合があります。

これは、聴覚障害が発生するまでの耳が聞こえている生活で、発声などが身についているためです。

また、話の流れを推測しながら口話(読話)によって、相手の話の内容を読み取る訓練をしている人もいます。

ただし、相手が早口の場合や複数人でやり取りする場合、暗い場所などでは口元を読み取るのが困難なので、周囲が想像する以上に集中力が必要です。

また、話せることが原因で聴覚障害があると理解されない場合があり、困っていてもサポートが受けられないなどの問題となっています。

聴覚障害者が困ること

聴覚障害者は日常生活において、困ることがいろいろとあります。

耳が聞こえないため、周囲からの音の情報が得られず、コミュニケーションをとることが難しい点も問題です。

さらに、他の障害者とは違い、外見からは障害があることがわからないため、周囲のサポートが得られにくいという問題もあります。

そのため、聴覚障害者にはいくつかの配慮が必要です。

コミュニケーションをとるのが難しい聴覚障害者への対応策として、近年ではコミュニケーションを支援するためのさまざまなツールが存在します。

これらのツールをうまく活用することで、聴覚障害者でもコミュニケーションがとりやすくなるため、日常生活での悩みも軽減できます。

聴覚障害者とのコミュニケーション方法

聴覚障害者は、さまざまな方法でコミュニケーションをとっています。

聴覚障害者のコミュニケーション方法としては、手話が有名ですが、それ以外にも、

  • 口話
  • 筆談
  • 指文字

などがあります。

「口話」は、人の口の動きを読み取って相手の言いたいことを理解する方法で、「筆談」は、紙や専用のボードなどに文章を書いてコミュニケーションをとる方法、「指文字」は指を使って日本語の五十音を表す方法です。

聴覚障害者の障害の程度には個人差があり、音がまったく聞こえない方から少しは聞こえる方、普通に話せる方などさまざまです。

そのため、聴覚障害者の状況や聞こえ方の程度によって、コミュニケーションの手段を工夫する必要があります。

リコーグループでは、音声認識で会話を見える化するコミュニケーションサービス「Pekoe〜ペコ〜」を提供しています。

音声認識によくある誤認識もその場で簡単に修正ができ、聴覚障害の聞こえ方の程度に関わらず活用することが可能です。

会議の場や教育現場に「Pekoe」を導入することで、大切な会話の内容を聴覚障害者もその場で理解することができるため、共に参加し、意見しやすい環境をつくることができます。

テキストや音声、キャプチャ画像の記録もおこなえるので、共に働く人にとっても便利なツールです。

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まとめ

ここまで、聴覚障害の種類と特徴、症状や原因についてタイプ別に解説しました。

聴覚障害者には、耳の聞こえ方などに個人差があり、それぞれタイプ別に分類されています。

音がどの程度聞こえるかについては、「中途失聴者」「難聴者」「ろう者」に分類され、障害がある場所によって「伝音性難聴」「感音性難聴」「混合性難聴」に分かれています。

それぞれ原因や対処法が異なりますが、なかには治療により回復する可能性があるため、聞こえ方に違和感があれば、早期に診断を受け、適切に対処しましょう。