聴覚障害者の離職率は?職場定着率や平均収入・雇用の課題もわかりやすく解説!
障害者の社会進出が進み、企業で働く聴覚障害者の方が増えています。
これから障害者雇用を進めようと思っている企業の方のなかには、
「聴覚障害者が職場に定着するためにはどのようなサポートが必要なのか」
「障害者雇用での課題や解決のための方法は?」
などの疑問をお持ちの方も多くいらっしゃるかもしれません。
そこで本記事では、聴覚障害者の職場定着率や離職率、職場でできる配慮などを詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
聴覚障害者の離職率はどのくらい?
令和4年の障害者雇用状況の集計結果によると、民間企業の実雇用率は2.25%で、法定雇用率2.3%以上を達成している企業の割合は48.3%でした。
聴覚障害者の就職率は40.3%という調査結果がありますが、聴覚障害者に限定する離職率はわかっていません。
ただ、就労している障害者への調査をみると、「今と別の会社で働いたことがある」という問いに回答した人が56.0%いるため、就労経験のあるうちの半分以上は、離職経験があることになります。
令和3年の厚生労働省発表のデータによると、全体的な離職率は13.9%なので、障害者の離職率はとても高いです。
参考記事:令和4年 障害者雇用状況の集計結果
聴覚障害者の離職理由とは?
聴覚障害者の離職率はとても高いとお伝えしましたが、ここからは、どのような理由で退職しているのか解説していきます。
事前に離職理由を把握しておくことが、職場での適切なサポートや配慮につながります。
これから障害者雇用を進めようとお考えの企業の方は、聴覚障害者がどのようなことで不安に思ったり、不満や悩みを感じているのか参考にしてみてください。
賃金・労働条件への不満
聴覚障害者の離職の理由では、待遇への不満が多くあげられます。
働く対価として受け取る賃金が低く、ボーナスや手当がないなど、努力が認められないと感じている障害者の方が多いです。
障害者雇用枠で働く方のなかには、心身に負担がかからないように、週30時間未満で勤務する方も一定数います。
働く時間が短いことで、キャリアアップや昇進のチャンスが少なくなるのは、給料が上がらない要因です。
働きたい意欲があるのに企業から要望を聞いてもらえない、賃金や労働条件などの不満から離職へつながってしまいます。
職場の雰囲気や人間関係の悩み
聴覚障害者の方の多くはコミュニケーションに大きな不安を抱えています。
職場の雰囲気や人間関係の悩みは離職につながる要因です。
職場に話せる人がいない、障害を理解してもらえないなど、耳が聞こえないことで生じるコミュニケーションの悩みも多くあります。
聴覚障害者の耳の聞こえ方は、一人ひとり異なります。
コミュニケーションも、筆談や手話、口話などそれぞれ違うので、どのような方法がいいのか事前に決めておくことが大切です。
聴覚障害者が職場で抱えるコミュニケーションの悩みは、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害者が職場で抱えるコミュニケーションの悩みは?理解しておきたい3つのポイントも解説!
配慮が不十分で働きづらい
障害者雇用では、それぞれの障害に合わせた配慮が必要です。
働く環境や配慮が不十分で働きづらいと感じている障害者も多くいます。
例えば、全体の打ち合わせや会議では、話についていけないことも多く、疎外感を感じてしまう方も多いかもしれません。
発言するタイミングがわからず意見ができない、必要な情報がわからないことも多くあります。
音声変換ツールを活用したり、会議後に議事録を作成するなどの配慮も必要です。
このほかにも、ピーク時間を避けて通勤できるような配慮や、社内のバリアフリー化、時短勤務など、それぞれに合わせたサポートができるように事前に確認しておくようにしましょう。
参考記事:(厚生労働省)障害者雇用実態調査結果
聴覚障害者の平均収入
聴覚障害者の平均年収は約250万円です。
ダイバーシティが推進されているなか、聴覚障害者の社会進出も進み多くの職場で活躍している方が増えています。
職場で配慮を受けながらも、週30時間以上のフルタイムで働く聴覚障害者も多いです。
聴覚障害があっても、デスクワークや軽作業などができる方も多く、ほかの障害よりも、比較的長い時間働けることから年収も上がっています。
障害者雇用と一般雇用の年収の違いについては、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害者の平均年収は?障害者雇用と一般雇用の違いや給料が安いといわれる理由も解説!
聴覚障害者の職場定着率は?
障害者の就業状況の調査結果では、聴覚障害者をふくむ身体障害者の一般企業の職場定着率が就職後3ヵ月で77.8%、1年後で60.8%でした。
新たに障害者を雇用することも大切ですが、せっかく採用してもすぐに退職になってしまうと、それまでの採用にかかった時間やマンパワーが無駄になってしまいます。
そのため、雇用した障害者の職場定着を考えることは、とても大切です。
障害者雇用では、障害への配慮やサポートなど、快適な職場づくりが求められます。
入社後は、仕事や人間関係、職場環境などで、悩んでいることや困っていることがないかを定期的に面談などで確認して状況を把握しておくことも効果的です。
業種別の定着率
障害者の方にとって長く仕事を続けられるかどうかは、職場環境や業種によっても変わってきます。
ここからは、業種別の定着率を解説していきます。
業種 | 3ヵ月後 | 1年後 |
医療・福祉 | 80.5% | 61.7% |
卸売・小売業 | 77.1% | 57.6% |
製造業 | 76.9% | 60.2% |
サービス業 | 72.7% | 56.1% |
運輸・郵便業 | 68.5% | 54.3% |
宿泊・サービス業 | 68.1% | 47.8% |
生活関連サービス業 | 79.8% | 62.1% |
建設業 | 66.4% | 44.8% |
医療・福祉、生活関連サービス・娯楽業がほとんど同じ数値で、定着率トップの数値です。
宿泊・飲食サービス業、建設業の1年後の定着率は50%を切っていて、業界のなかでは低い結果になっています。
参考記事:障害者の就業状況等に関する調査研究
聴覚障害者が職場で抱えやすいストレスは?
障害の特性に合った業務に従事したり、理解と配慮のある環境で働くことは、安定して長く仕事を続けていくためにはとても大切です。
合わない職場環境で働くことで、障害が悪化したり、別の病気を発症してしまったりする例も少なくありません。
聴覚障害者が職場で抱えやすいストレスは、まずはコミュニケーションの問題です。
声をかけられたことに気付かずに無視したと思われてしまったり、会議や研修などで内容を理解できないなどのストレスがあります。
このほかにも、ラッシュ時の通勤によるストレス、気圧や天候で体調を崩しやすいなどの問題も配慮しなければいけないポイントです。
聴覚障害者が抱える仕事のストレスは、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:聴覚障害者が抱える仕事のストレスや悩みは?離職理由や対策も解説!
聴覚障害者の雇用の課題とは?
障害者を採用して、長く働ける職場環境をつくるためには、ここまでご紹介したような仕事で抱えるストレスを減らさなければ定着につながりません。
聴覚障害者の雇用では解決しなければいけない課題がいくつかあります。
- コミュニケーションの課題
- 情報共有の課題
- 就労支援機関の支援体制の課題
どのように解決していけばいいのか詳しく解説していきます。
コミュニケーションの課題
聴覚障害者は一人ひとり聞こえ方が異なり、手話や口話、筆談など、どの方法でコミュニケーションをとるのかも変わってきます。
そのため、コミュニケーション方法をマニュアル化するのは難しいです。
例えば、耳がまったく聞こえない場合は、筆談や音声を文字化するツールなどの方法が適しています。
一方、耳が少しは聞こえる場合は、会話の方法を工夫するだけで問題なくコミュニケーションがとれるケースがあります。
このように、聴覚障害者にとって最適な方法に留まらず、その人にとって最適なコミュニケーション方法を把握することが、スムーズなコミュニケーションにつなげるポイントです。
聴覚障害者とのコミュニケーションの課題を解決するには、コミュニケーションをとりやすいような職場環境を整えることも大切です。
情報共有の課題
多人数が出席する会議やミーティングでは、複数の人の声の聞き分けが難しいです。
誰が誰と、何を話しているのかが把握しにくくなり、会議の進行についていけなくなるなどの、情報共有の課題もあります。
聴覚に障害があると、耳で聞き取ることや口頭で伝えることだけではなく、自分が得た情報が正しいかを聞き返すなどして確認するのも困難になりがちです。
確認するタイミングがつかめなかったり、何度も聞いているうちに申し訳ない気持ちになったりすることもあり得ます。
このような場合は、メールやLINE、Teamsなどのチャットツールを用いるのも効果的です。
文字だけでは伝わりにくいことがあり、意思の疎通がとれない場合もあるので、同僚や管理責任者が適宜フォローします。
社外の方でも、日常的にやりとりする担当者などには、本人の同意を得た上で、聴覚障害があることを伝えておくとよいかもしれません。
就労支援機関の支援体制の課題
ろう学校や一般の学校における聴覚障害児童・生徒を対象とした確実な教育体制の環境整備が大きく遅れています。
就労上のスキルはもちろん、基礎学力、社会的常識が不十分なまま社会へ送り出されてしまった多くの聴覚障害者が、職場で多くの壁に直面しています。
聴覚障害者に対して、労働行政・就労支援機関は適切な支援を提供できるだけの十分な理解・支援ノウハウを備えているとはいえません。
近年、障害者の就労支援の枠組みのなかで全国的に存在感を高めてきている、障害者就業・生活支援センターでも、対応が遅れているといわれています。
全日本ろうあ連盟は、政府の障害者雇用政策に関する研究会で、その対応の改善を要望していますが、その後も目立った改善の動きは見られません。
職場でできる聴覚障害者への配慮は?
職場では、どのようなコミュニケーション手段が有効か、当事者はどれくらいの聞こえが認識できるのかを知っておくと、適切な配慮の方法がみえてきます。
例えば、聴覚障害者が参加する会議では、席を前の方にしたり、照明を明るくするなど、まずは環境を整えることがポイントです。
補聴器や視覚だけでは情報を補いきれない場合もあるので、会議用の資料を準備したり、スライドや動画には大きめの字幕をつけることもいいでしょう。
このように、仕事をするうえでのさまざまなシュチュエーションを想定して、具体的にサポート内容を決めることが大切です。
障害者雇用に向けての適切な職場づくりは、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害者に職場でできる配慮とは?障害者雇用への理解を深めて働きやすい環境づくりを!
聴覚障害者のコミュニケーションストレスを軽減する「Pekoe」
音声の文字化ツールとしては、「Pekoe(ペコ)」がおすすめです。
Pekoeは音声をリアルタイムで文字化できるツールで、会議などに導入することで聴覚障害者でもスムーズに会話に参加できます。
聴覚障害者のコミュニケーションのストレスを軽減できるツールです。
文字化した情報に間違いがある場合は、気付いたメンバーがすぐに修正できるため、間違って理解することも防げます。
また、動画に字幕をつけることもできるため、会議で映像を流す場合に便利です。
Pekoeは導入も手軽にできるため、ぜひ検討してみてください。
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まとめ
今回は、聴覚障害者の離職率や離職の理由を詳しく解説しました。
聴覚障害者の離職の要因は、職場環境や人間関係に大きく関係しています。
どのような理由で職場のストレスや働きづらさを感じているのかを理解することで、職場環境の改善につながります。
業種別の職場定着率や聴覚障害者の平均収入、雇用の課題もまとめたので、聴覚障害者が働きやすい職場づくりのためにぜひお役立てください。