聴覚障害者が手帳を取得するメリットは?割引や税金の控除・福祉サービスも活用しよう

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聴覚障害者が障害者手帳を取得すると、税金の控除や特定のサービスで割引を受けられるなどのメリットがあります。

これから障害者手帳を取得しようか検討している方のなかには、

「どのくらいの聴覚障害レベルで手帳を取得できるのか、注意すべき判断基準はどのようなポイントがあるのか?」

などの疑問があるかもしれません。

そこで本記事では、聴覚障害者が手帳を取得するメリットや申請方法、注意しておきたい判断基準を詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

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障害者手帳とは

障害者手帳とは一定以上の障害がある方に交付される手帳のことで、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の3つの種類があります。

対象となる障害は以下のように分類されます。

  • 身体障害者手帳

視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声機能障害、肢体不自由など

  • 療育手帳

知的障害

  • 精神障害者保健福祉手帳

気分障害、統合失調症、てんかん、発達障害など

制度の根拠となる法律はそれぞれ異なりますが、いずれも障害者総合支援法の対象となるため、支援策や自治体・事業者が独自に提供するサービスを受けられることもあります。

参考記事:障害者手帳について|厚生労働省

聴覚障害者が障害者手帳を取得するメリットは?

聴覚障害者が障害者手帳を取得するメリットは多くあるので、状況に応じて取得しておくことをおすすめします。

都道府県や自治体ごとに変わる内容もありますが、代表的な支援やサービスは以下の項目です。

  • 医療費の助成
  • 補装具の助成
  • 所得税・住民税の控除
  • 自動車税の減免
  • リフォーム費用の補助
  • 公営住宅の優先入居
  • 特別障害者手当
  • 生活保護の障害者加算
  • 保育に関わる配慮
  • 障害者雇用枠での就労
  • 就労支援や失業・再就職時の福祉サービス
  • 公共交通機関の割引
  • 携帯料金やレジャー施設などの割引

ここからは、それぞれの内容を詳しく解説していくのでぜひ参考にしてみてください。

医療費の助成

障害者手帳を持っていることで、医療費の助成を受けられることがあります。

重度障害者に対する医療費の助成は「心身障害者医療費助成制度」(通称:マル障)と呼ばれ、お住まいの都道府県や等級、所得によって変わってきます。

たとえば、東京都内在住の方は、一定の基準を満たしていれば、医療保険の対象となる医療費、薬剤費などで助成を受けられます。

健康診断、予防接種、薬の容器代や介護保険の利用者負担額は対象外となるので、事前に確認が必要です。  

詳しい内容は、お住まいの行政のホームページや直接窓口にお問い合わせください。

参考記事:東京都福祉局「心身障害者医療費助成制度(マル障)」

補装具の助成

障害者手帳を持つ方が下肢装具などの補装具を新調したり、作り替えたい場合は、公的補装具の助成を利用できます。

原則として、装具購入または修理にかかる費用の一部を自己負担すると補装具の支給を受けられます。

聴覚障害者の方は、補聴器・人工内耳を購入する際に助成を受けられますが、収入によって助成額が変わるので、購入前に行政の福祉課などでご確認ください。

参考記事:補装具費支給制度の概要

障害者を対象にしたサービスや支援について、行政や民間でのさまざまな事例を以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:障害者総合支援法とは?サービスの種類や対象者・目的なども簡単にわかりやすく解説!

所得税・住民税の控除

障害をもつ方の金銭的な負担を軽減するために、税金を安くする支援があります。

代表的なものは、所得税・住民税の控除です。

障害者が受けられる特例として、所得税は所得金額から27万円、住民税は所得金額から26万円の控除が受けられます。

さらに、障害者である親族を扶養していたり、世帯をともにする方にも、所得税の障害者控除があるので、国税局のホームページなどでご確認ください。

参考記事:障害者と税|国税庁

自動車税の減免

車を所有していると、自動車税や自動車重量税、消費税などの税金がかかりますが、条件次第では自動車税の減税が受けられるケースもあります。

聴覚障害者であれば、等級が2級・3級が対象です。

申請の際には、所有者・運転者は誰か、車を使う目的はなにか、車の種類によって免税額が決定します。

一般的な自動車では、45,000円程度を限度に減免されますが、細かい条件や申請方法はお住まいの都道府県によって異なるのでご確認ください。

リフォーム費用の補助

障害者の方が、自宅のバリアフリー化のための改修が必要な場合に、リフォーム費用の補助がおこなわれます。

工事の内容としては、手すりの取り付けや段差の解消、トランスファーボードなどの水平移動の機器取り付けなど、リフォーム工事が対象です。

補助額は、上限が決められていたり、所得によって金額が変わることがあります。

お住まいの自治体や、リフォーム業者へ事前に見積もりを依頼するのがおすすめです。

公営住宅の優先入居

障害者手帳を保有している方は、公営住宅の優先入居ができる場合が多いです。

等級によって優先順位が変わりますが、一般の応募者よりも優先されて入居することができます。

民間の賃貸住宅には金銭的な補助がないことが多いので、家賃を抑えたい方は公営住宅への入居がおすすめです。

しかし、公営住宅のなかにはバリアフリーに対応してない物件も多くあるので、生活に支障がないか事前に確認しておくようにしましょう。

特別障害者手当

特別障害者手当は、20歳以上で身体または精神に重度の障害があり、常に特別な介護が必要な、在宅で生活をしている方が対象です。

障害者手帳は1級・2級程度、療育手帳は1度・2度程度の障害が重複している状態、またはこれらと同等の疾病・精神障害がある状態が目安となります。

障害の程度による金額の差はなく、一律で月額27,980円です。

特別障害者手当の申請には、医師の診断書が必要なことがあるので、指定の様式や提出物は事前に行政の窓口に問い合わせておくとよいでしょう。

参考記事:特別障害者手当について|厚生労働省

生活保護の障害者加算

生活保護の受給者が障害者である場合、通常は障害年金の申請をおこないます。

障害者加算とは、健常者よりも障害者の方が生活のハードルが高いので、通常の保護費にプラスでお金を支給するというものです。

たとえば、足が不自由な方は、健常者が歩ける距離であってもタクシーを利用する状況が多く、かかった交通費は基本的に生活費から捻出しなければならないでしょう。

このようなことに配慮し、障害者加算として多めに保護費が支給されています。

一般的な生活保護費に加え、障害年金とあわせての受給も可能です。

お住まいの地域の等級や障害の等級によって加算額が変わるので、詳しいことを知りたい方は市区町村の福祉課などへお問い合わせください。

保育に関わる配慮

障害者手帳を持つことによって、お子さんの保育に関わる優遇もあります。

具体的には、認可保育園に入りやすくなる、保育料の減免・補助などの配慮です。

認可保育園に入園する際には、保護者の仕事や健康状態、家庭環境に応じて点数をつけられ、その合計によって優先順位が決まります。

保護者が障害者手帳を保有する場合、その事実によって点数が加算されるので、認可保育園に入りやすくなるケースが多いです。

障害者雇用枠での就労

障害者手帳を保有している方は、障害者雇用枠で就労することができます。

障害者雇用枠とは、障害があったとしても職業生活を通して、自立した自分らしい生活を送れるように、国が率先して障害者の雇用対策を進める取り組みです。

企業は、障害があることを前提として採用しているため、一人ひとりの障害特性に応じた配慮をしてくれます。

勤務日数や勤務時間、休憩の取り方、職場環境、そして業務内容といったあらゆる部分に対して、働きやすいように工夫をしてくれます。

参考記事:障害者雇用のご案内

就労支援や失業・再就職時の福祉サービス

ハローワークや就労移行支援事業所で、就労支援や失業・再就職時の福祉サービスも受けることができます。

就労支援とは、就職を希望する障害者の方に対して、必要なスキルや能力の訓練、適性にあった職場探し、就労後職場定着のための支援をおこなう通所型の支援サービスです。

失業や再就職に向けてのサポートもあるので、次の就労に向けての支援を受けることができます。

就労に向けての支援機関やサポートは、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:聴覚障害者の働き方は?就職の支援機関や向いている仕事・必要な心構えも徹底解説!

公共交通機関の割引

障害のある方が外出するときに、電車・バス・タクシー・フェリー・飛行機などの公共交通機関を利用する際には割引サービスがあります。

JRには、身体障害者・知的障害者の方の普通乗車券、回数乗車券、普通急行券が5割引になる制度があり、介助者にも割引が適用されることがあります。

住んでいる地域や利用する公共交通機関によって割引される条件が異なるので、事前に確認が必要です。

参考記事:JR東日本「障害者割引制度のご案内」

携帯料金やレジャー施設などの割引

民間のサービスでは、携帯料金やレジャー施設などの割引も多くあります。

携帯電話大手3社は、障害者割引サービスをおこなっていて、申請すると基本料金が割引されます。

さらに、全国各地のテーマパーク・動物園や水族館などのレジャー施設では、障害者手帳を提示すると割引になるサービスを展開しているところが多いです。

博物館・美術館や動物園でも積極的に障害者割引を実施していて、国や地方自治体が運営している場合は無料、民間企業が運営している場合は半額となることもあります。

このほかにも、宿泊施設や映画館、スポーツ観戦でも障害者手帳を提示すると割引が適応されることもあるので、ホームページなどでご確認ください。

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障害者手帳をもらうデメリットは?

障害者手帳のデメリットをイメージした画像

障害者手帳をもらうデメリットはほとんどありません。

なかには、障害者手帳を交付されると、障害者と認定されることに抵抗がある、周囲から理解が得られないかもしれない、などの心理的な不安を抱いている方はいらっしゃるかもしれません。

障害者手帳を取得して、本人の意志で障害をオープンにするには勇気が必要です。

また、友人や職場の同僚などに偏見の目で見られることがあるかもしれません。

しかし、自分から言い出さない限り障害者手帳を持っていることはわかりませんし、手帳の返却も自由です。

ここまでいくつかご紹介したように、障害者手帳があると金銭面や就労面で多くのメリットがあります。

多少、書類関係の整理が面倒という点を除けば、デメリットはほぼないでしょう。

どのくらいの聴覚障害レベルで障害者手帳を取得できる?

聴覚障害のもっとも低い等級は6級で、身体障害者手帳をもらえる聴覚障害レベルは6級以上の等級が対象です。

6級に認定される聴覚レベルは、以下のように定められています。

  • 両耳の聴力レベルが70dB以上のもの

(40cm以上の距離で発声された会話語が理解し得ないもの)

  • 一側耳の聴力レベルが90dB以上、他側耳の聴力レベルが50dB以上のもの

聴力レベルの障害が片耳だけである場合、身体障害者手帳の交付要件には当たらないものとされています。

聴覚障害の等級やレベルについては、以下の記事を参考にしてみてください。

関連記事:聴覚障害には等級がある?障害者手帳にも関わる判定基準や程度を詳しく解説!

高齢者も障害者手帳を取得した方がいい?

障害者手帳の保有にはデメリットがほとんどないので、取得要件を満たしているのであれば取得することをおすすめします。

これは高齢者も同様で、障害者手帳は取得しているほうがメリットが多いです。

高齢になって新たに障害者になった場合、ほとんどのケースで身体障害者にあたります。

病気や加齢が原因であっても、体や臓器の不自由が存在している場合、障害者手帳を取得することができます。

医療費や税金の助成が受けられて、金銭的な負担は軽減されるので、体の機能に障害がある高齢者の方は取得を検討してみるといいでしょう。

障害者手帳の申請方法や必要な書類は?

障害者手帳の申請方法や必要な書類は以下を参考にしてください。

  • 申請の流れ
  1. 市区町村窓口へ申請・相談
  1. 指定医師に診断書を書いてもらう
  1. 市区町村窓口に書類を提出
  • 申請に必要な書類
  1. 申請書:市区町村窓口で入手します。
  1. 診断書:市区町村窓口で用紙を入手し、指定医師に記入してもらいます。
  1. 本人の写真
  1. マイナンバーがわかる書類

まずは市区町村窓口で、「診断書・意見書」を記入するための用紙を入手し、必要書類を準備します。

「診断書・意見書」を記入できるのは都道府県知事が指定した指定医師です。

すでに病院に通っている場合、かかりつけ医が指定医師かどうかは、書類を入手する際に窓口で聞くと調べてくれます。

必要な書類をまとめたら、市区町村窓口に提出します。

上記の必要書類のほかにも、印鑑、未成年であれば保護者の委任状や身分証明書が必要なケースもあります。

診断書発行には費用がかかることもあるので、事前に医療機関に確認しておくことをおすすめします。

障害支援区分や認定基準は以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:障害支援区分には目安がある?認定基準や手続き方法もわかりやすく解説!

障害者手帳の取得で注意しておきたい5つの判定基準

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障害者手帳の取得では以下の5つの判断基準にご注意ください。

  • 障害認定基準は都道府県によって異なる
  • 障害が一時的な場合は認められないことがある
  • 再認定で等級が変わる場合がある
  • 指定医師による診断書・意見書が必要
  • 交付まで時間がかかる

申請前には、行政の窓口や医療機関でも確認しておくことをおすすめします。

ここからは、それぞれの内容を詳しく解説していきます。

障害認定基準は都道府県によって異なる

障害者手帳は申請すれば必ずしも認定されるわけではないので、まずはご自身の障害が手帳交付対象であるのか確認が必要です。

障害者手帳には1級から6級までの区分があり、認定された区分によって受けられるサービスも変わってきます。

厚生労働省では、障害者程度基準が定められているので、等級表は全国で統一されています。

この等級表を基準に、都道府県知事が指定した指定医師によって区分判定されるため、同じ障害をもっていても認定に違いが出ることがあるかもしれません。

障害者認定基準は都道府県によって異なるため、お住まいの地域の基準もあわせて確認しておきましょう。

また、転居などで住所が変わった際に、以前と同じ認定が受けられず等級が下がってしまう可能性もあります。

事前に、市区町村の障害福祉担当窓口などにご確認ください。

障害が一時的な場合は認められないことがある

疾病を発病して間もない時期や発育過程にある乳幼児期など、状況によっては障害が一時的とされ、障害として認められないことがあります。

障害者手帳は一度交付されると基本的には更新がなく、生涯使い続けることができます。

これは、障害が永続していることを前提にしている制度だからです。

そのため、回復の見込みがある一時的な疾患であると判断されると、障害者認定されないので、手帳が交付されることはありません。

再認定で等級が変わる場合がある

医療の進歩や機能回復訓練の実施により、 身体に障害をもつ方の障害程度が変化する事例が増加してきています。

そのため、障害の再認定制度を導入する自治体が増えており、再認定によって等級が変わる方も多くいらっしゃいます。

日常生活での不自由が軽減された反面、障害者認定が下がってしまい、これまでの福祉サービスを受けられなくなるケースもあります。

たとえば東京都では、障害の程度が変化することが予想される場合、再認定制度の対象者です。

その場合、交付から1年〜5年後の期日までに再度医師の診断書を提出するように求められ、等級に変更がないかあらためて審査されます。

障害状態に変わりなく、日常生活に支障があるようであれば不服申し立てができることもあるので窓口などでご確認ください。

参考記事:東京都福祉局「身体障害者手帳について」

指定医師による診断書・意見書が必要

申請時には、指定医師による診断書・意見書が必須です。

この場合の指定医師とは、都道府県知事が指定した医師のことなので、医師なら誰でも診断書が出せるわけではありません。

かかりつけ医が指定医師でなければ、診断書が発行されませんので、事前に確認しておくといいでしょう。

また、診断書は古い日付のものだと、手帳申請時に受け付けてもらえないことがあります。

市区町村にもよりますが、一般的には申請書提出日から3ヵ月〜1年以内の日付の診断書が求められるので、早めの提出を心がけてください。

障害年金なども申請予定の方は、診断書をコピーしておくことをおすすめします。

交付まで時間がかかる

各市区町村の窓口に申請すると、通常1ヵ月程度で障害者手帳が交付されますが、思ったよりも時間がかかるケースもあります。

提出した診断書・意見書の内容によっては指定医師に照会する必要があるため、通常よりも時間がかかるでしょう。

さらに、手帳が交付されないと判断されたり、等級認定にあたって専門的な審査が必要であるとされた場合は、年に数回の審議会で審議されます。

交付まで4ヵ月ほどかかることもあるので、申請は余裕をもって早めに済ませることをおすすめします。

\聴覚障がい者向け音声認識ツール/

まとめ

今回の記事では、聴覚障害者が手帳を取得するメリットをご紹介しました。

障害者手帳を保有することで、税金や医療費などの負担が減り、快適に暮らすために必要な福祉サービスも受けられます。

障害者雇用枠で就職ができると、障害に配慮された環境で仕事をすることもできるでしょう。

万が一、失業しても次の就職に向けて支援を受けられるのもメリットです。

このように、金銭面、就労面で多くのサポートを受けられるので、迷っている方は手帳の取得を検討してみることをおすすめします。

障害者手帳を申請する際の手順や注意点も解説しているので、これから取得しようとお考えの方はぜひ参考にしてみてください。