障害者総合支援法とは?サービスの種類や対象者・目的なども簡単にわかりやすく解説!
障害者総合支援法とは、障害をもつ大人や子ども、難病を抱える人が安心して日常生活を送ることを目的とした法律のひとつです。
障害者を対象にしたサービスは多いため、その他の支援との違いがよくわからないとお困りの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、障害者総合支援法とはどのようなサービスで、対象者はどんな人なのか、目的は何なのか、また、障害者自立支援法との違いなどもわかりやすくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
\聴覚障がい者向け音声認識ツール/
目次
障害者総合支援法とは?簡単にわかりやすく解説!
障害者総合支援法とは、障害児や障害者を対象とした、障害保健福祉施策で定められた法律です。
障害をもつ大人や子どもが、基本的人権がある個人としての尊厳にふさわしい日常生活を送ることができるように、福祉サービスに関わる給付・支援事業などをおこなうことを定めています。
障害者総合支援法のサービスは、自立支援給付と地域支援事業の2種類に分かれており、障害の種類や区分、サービス利用の意向などをもとに区別されます。
参考記事:国立障害者リハビリテーションセンター:障害者総合支援法
障害者総合支援法が施行されたのは何年?
障害者総合支援法が施行されたのは、2013年です。
しかし、現在の障害者総合支援法という制度になるまでに、何度も改正を重ねています。
ここでは、障害者総合支援法に至るまでの流れをご紹介します。
- 2000年 社会福祉基礎構造改革
2000年におこなわれた社会福祉基礎構造改革が、現在の障害者総合支援法の発端です。
社会福祉基礎構造改革により一部を除く社会福祉事業で、これまで行政側に決定権があった措置制度から、サービス利用者が自らの意志で利用するサービスを選択できる制度に変更されました。
- 2003年 支援費制度の開始
支援費制度では、高齢者の介護保険制度から障害の程度区分やサービス提供の過程などを参考とし、より充実したサービス内容に整えました。
- 2006年 障害者自立支援法
支援費制度の課題を解決して改正されたのが、障害者自立支援法です。
しかし、障害者に多い低所得世帯にも1割負担を課すなど不評が多く、廃止されました。
障害者自立支援法の廃止により、障害者やその家族の意見に基づいて施行されたのが、現在の障害者総合支援法です。
障害者総合支援法の実施主体は?
障害者総合支援法の実施主体は、市町村や都道府県などの行政機関です。
障害のある子どもから大人を対象に、必要と認められた用具の貸与や費用の給付、支援などをおこなっています。
障害者総合支援法の目的
障害者総合支援法の目的は、障害者や障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活、社会生活を送ることです。
さらに地域生活支援事業に組み込み、より総合的に支援ができるようにしています。
障害者総合支援法の基本理念は、第一条の二で以下のように定められています。
- 障害の有無に関係なく、すべての国民が基本的人権をもつ個人として尊重され、ともに生活する社会を実現する
- 障害をもつ人が地域社会で日常生活、社会生活を営むために支援を受けられる
- 障害の妨げとなる制度や物事、観念などの除去に努める
障害者総合支援法は、障害者や障害児がすべての国民と同じように基本的人権を守られ、自立した生活が送れるようにあらゆる支援をおこなうことを目的としています。
参考記事:厚生労働省:障害者総合支援法について
障害者総合支援法の対象者は?
障害者総合支援法の対象者は、以下に該当する方です。
- 18歳以上で条件に該当する障害者
- 障害児
- 難病患者
障害だけでなく、難病をもつ方も支援が受けられます。
また、障害者手帳を所持していなくても、程度により障害者総合支援法のサービスを受ける対象となる場合もあります。
18歳以上で条件に該当する障害者
18歳以上で、以下の条件に該当する障害者の方が対象となります。
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者(発達障害も含む)
障害児
18歳未満の、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害も含む)をもつ障害児も対象となります。
難病患者
障害者だけでなく、障害者総合支援法で指定された難病を患い、難病の程度が日常生活に制限が必要と判断された際に、サービスが受けられます。
また、障害者手帳を所持していなくても、程度により障害者総合支援法のサービスを受ける対象となる場合もあります。
参考記事:国立障害者リハビリステーションセンター:障害者総合支援法
障害者総合支援法のサービスの種類
障害者総合支援法には、あらゆる種類のサービスがあります。
障害者と障害児でのサービスは大きく変わっており、18歳以上の障害者を対象とした主なサービスが自立支援給付です。
自立支援給付は、以下のように細かく分けられていますので、ひとつずつ簡単にご紹介していきます。
- 介護給付
- 訓練給付等
- 相談支援サービス
- 自立支援医療制度
- 補装具費支給制度
- 地域生活支援事業
介護給付
介護給付は、食事や排泄などの介助が必要な方の介護や、障害をもち生活援助を必要とする方に対し、介護施設へ入所するサービスの提供などをおこなうことです。
介護給付のサービスは、以下のようなものがあります。
- 居宅介護
自宅にて食事、入浴、排泄などの介護をおこなう
- 重度訪問介護
障害をもち常に介護が必要な人に対し、食事、入浴、排泄などの介護や外出時の移動支援をおこなう
- 同行援護
視覚障害をもつ人に対し、外出時に必要な情報提供や介護をおこなう
- 重度障害者等包括支援
障害をもち、かつ介護の必要性が高い人に対し、介護サービスなどを包括的におこなう
- ショートステイ(短期入所)
介護者が病気などの場合に、施設で食事や入浴、排泄などの介護をおこなう
- 療養介護
常時介護と医療を必要とする人に対し、医療機関で療養上の管理や日常生活の世話をおこなう
- 生活介護
常時介護を必要とする人に対し、食事や入浴、排泄などの介護や生産活動の機会を提供する
- 施設入所支援
施設に入所する人に対し、休日や夜間に食事、入浴、排泄の介護をおこなう
訓練等給付
訓練等給付のサービスは、以下のようなものがあります。
- 自立訓練
自立した日常生活ができるよう、身体機能維持のために一定期間訓練をおこなう
- 就労移行支援
一般企業への就職を希望する人に対し、就労に必要な知識、能力向上を目的とした訓練をおこなう
- 就労継続支援(雇用型・非雇用型)
一般企業での就労が難しい人に対し、就労する機会を提供し、能力向上のための訓練をおこなう
- 就労定着支援
就労により生活面に支障が出ている人に対し、就労の継続を目的として企業との連絡調整、問題に対する相談や助言などをおこなう
- 自立生活援助
自立して日常生活ができるように、生活能力の維持や向上のために必要な訓練をおこなう
- グループホーム(共同生活支援 )
共同生活する住居で、休日や夜間に食事や入浴、排泄などの介護、援助をおこなう
障害をもつ方が地域で自立して生活できるように、身体面や生活力の向上を目標とする訓練を提供したり、働くことが困難な方に対し、支援を受けながら働ける場所を提供したりしています。
相談支援サービス
障害をもつ人が置かれている状況や、抱えている悩みに応じ、暮らしに関して一緒に考えることが、相談支援サービスです。
相談内容に対する助言や情報の提供、必要に応じて福祉サービスをつなげる支援などが主な内容です。
相談支援サービスには、以下のようなものがあります。
- 計画相談支援
障害をもつ人が障害福祉サービスを受ける際に必要な受給者証の申請手続き、相談援助をおこなう
- 地域移行支援
障害者支援施設、精神科病院に入所、入院している人に対し、住居の確保や障害福祉サービスの体験利用など、地域生活に移行するための支援をおこなう
- 地域定着支援
自宅で単身で生活している障害者を対象に、常時連絡体制を確保し、緊急時に必要な支援をおこなう
相談支援サービスは、市町村の福祉窓口や相談支援事業所でおこなわれています。
自立支援医療制度
自立支援制度は、心身の障害に対応した医療に対し、医療費の自己負担額を軽減する公費負担制度のことです。
自立支援医療制度は、以下のようなものがあります。
- 更生・育成医療
- 精神通院医療
身体障害者や障害児、精神疾患を患っている人を対象とし、医療費の自己負担額の軽減が可能です。
\聴覚障がい者向け音声認識ツール/
補装具費支給制度
補装具費支給制度とは、障害により必要となった補装具の購入や修理にかかる費用を給付する制度です。
対象となる補装具の種類は、以下のものなどです。
- 車椅子
- 義肢(義足・義手)
- 補聴器
- 座位保持椅子
- 義眼
市町村に費用支給の申請をすれば、利用できます。
地域生活支援事業
地域生活支援事業は、市町村事業と都道府県事業に分かれており、相談支援や障害者支援に関わっている人員の要請や派遣、研修などの間接的なサービスを中心におこなっています。
市町村事業、都道府県事業の支援事業を一部ご紹介します。
市町村事業
- 障害に対する理解の促進や啓発
- 相談支援事業
- 日常生活用具の給付・貸付
- 福祉施設の設置・運営
都道府県事業
- 発達障害、重症心身障害など専門性の高い支援が必要な障害について相談に応じ、必要な情報提供をおこなう
- 手話通訳者、要約筆記者などの人材の育成
障害児を対象とするサービス
障害児を対象とするサービスは、上記で挙げた障害者の給付サービス以外にも、以下のようなものがあります。
- 障害者入所支援
日常における基本的な動作や集団生活への適応訓練などをおこなう
- 障害児通所支援
日常生活における基本的な動作の指導や、必要な治療をおこなう
- 放課後等デイサービス
学校終了後、または休日に生活能力向上のために必要な訓練などをおこなう
- 保育所等訪問支援
保育所や児童養護施設、乳児院などを訪問し、障害のある児童に対し専門的な支援をおこなう
これらの支援を受ける際、利用の判断に障害支援区分はありません。
参考記事:厚生労働省:障害福祉サービスについて
障害者自立支援法と障害者総合支援法の違いは?
先述したとおり、障害者総合支援法が制定される前は、障害者自立支援法という名前の法律でした。
どちらも似たような名前の法律ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
障害者総合支援法に改正され、あらゆる点で変化がありました。
- 区分が変更された
障害者自立支援法では、日常生活が送れるかを基準に障害区分が分けられていました。
しかし、障害の症状も一人ひとり違うため、一言で分けるのは困難です。
そこで、障害者総合支援法では、障害支援区分の仕方が、サービスを受ける人がどれくらいサポートが必要かといった視点に変わりました。
- 障害者の定義が変更された
障害者自立支援法の対象には発達障害が含まれておらず、発達障害をもつ人が考慮されていないことが問題視されていました。
障害者総合支援法では、発達障害をもつ人や難病をもつ人も対象になり、以前より多くの人がサービスを受けられるようになっています。
他にも、基本理念の設定や、重度訪問介護の対象者拡大など、より障害者が暮らしやすい環境が整うようになりました。
障害者福祉計画とは?
障害者福祉計画とは、障害者施策を総合的に推進するための計画で、市民や関係機関、事業者、団体など、それぞれが自主的かつ積極的に活動をおこなうための指針にあたるものです。
障害者福祉計画は、平成18年度から3年ごとに実施されており、現在は令和3年度から5年度の第6期障害福祉計画期間となります。
障害者福祉計画の成果目標は?
障害者福祉計画には、7つの成果目標があります。
ここでは、その一部を簡単にご紹介します。
1.施設入所者の地域生活への移行を進める
令和5年度末時点で、福祉施設入所者の6%以上が地域生活に移行できるようにする
2.精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築を広げる
精神障害者の精神病床から退院後1年以内の平均生活日数を、316日以上とする
3.地域生活支援拠点などにおける機能を充実させる
令和5年度末までに、各市町村が1つ以上の地域支援拠点を確保し、年に1回以上運用状況を検証し、機能の充実をはかる
4.福祉施設から一般就労への移行
令和5年度末までに、一般就労への移行実績の目標を令和元年度の1.27倍とする
5.障害児通所支援など地域支援体制の整備をする
令和5年度末までに、各市町村または各圏域に、児童発達支援センターを少なくとも1ヵ所以上設置する
6.相談支援体制を充実させる
令和5年度末までに、市町村において、相談支援制度を充実、強化させるための取り組みの実施体制を整える
7.障害福祉サービスの質を向上させる
令和5年度末までに、都道府県や市町村において、福祉サービスの質を向上させるための取り組みに関わる体制を整える
参考記事:障害福祉計画及び障害児福祉計画に係る成果目標及び活動指標について
障害福祉サービス報酬とは?
障害福祉サービス報酬とは、障害児や障害者の対象者に対し、障害福祉サービスを提供した事業所が、サービスの対価として市町村から受け取る報酬です。
サービスごとの基本報酬や一定の要件を満たしたことで発生する「加算」、ルールに満たない場合に報酬が減額する「減算」があり、これらを差し引いたものが報酬の合計です。
報酬は、利用者の自己負担分においては直接利用者から、それ以外は給付費として国民健康保険団体連合を介し、市町村から受け取ります。
自己負担が発生しない場合は、報酬の全額を市町村から受け取ることが可能です。
\聴覚障がい者向け音声認識ツール/
まとめ
障害者総合支援法とはどのようなサービスなのかを、詳しくご紹介しました。
障害者総合支援法は、障害児や障害者、難病を抱える人などが支援を受け、安心して日常生活を営むために欠かせない計画です。
医療費や装具の給付、相談支援や自立支援など、あらゆる視点で支援が受けられるため、何か困ったことがあった際は自治体へ相談することをおすすめします。
障害者総合支援法の対象者やサービス内容を学べば、障害をもつ人の力になれるので、ぜひ意識して行動に移してみてください。