聴覚障害には等級がある?障害者手帳にも関わる判定基準や程度を詳しく解説!

聴覚障害は音がまったく聞こえなかったり、聞き取りづらかったりする障害ですが、程度は人によって異なり、日常的に感じる不便さもそれぞれ違います。
障害認定を受けると、障害者手帳が交付され、国や自治体からさまざまなサポートが受けられますが、聴覚障害の等級によって支援内容も異なります。
本記事では、障害者手帳にも関わる聴覚障害の等級の判定基準を詳しくご紹介するので、参考にしてください。
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目次
聴覚障害の等級とは
聴覚障害の等級は、その他の障害と同様に障害の程度によって定められていて、聴力が定められた数値よりも下回る場合に、身体障害者手帳が交付されます。
聴覚障害とは、音を聞く能力(聴力・聴覚)の障害によって、継続的に聞こえなかったり聞こえづらかったりする状態のことです。
音が聞こえづらい難聴者は、外耳から中耳に障害がある伝音性難聴、内耳から耳神経または脳に障害がある感音性難聴と、その両方が原因の混合性難聴に分けられます。
また、聴覚障害は平衡機能障害をともなう場合があり、さらに音声言語を習得する前から障害がある場合は、言語機能の障害にもつながります。
聴覚障害の場合は、両耳の聴覚の程度をはじめ、平衡機能障害や言語機能障害の有無などで等級は決まります。
関連記事:聴覚障害の種類をわかりやすく解説!タイプや症状・原因についても理解を深めよう
等級の判定基準と難聴の程度

聴覚障害の等級は、主に純音オージオメータを使用した周波数の聞こえ方で判定します。
難聴の程度によっては、指定医の判断で他覚的聴力検査(ABR検査など)が実施される場合もあります。
障害者福祉の増進をはかる身体障害者福祉法による聴覚障害の等級の判定基準は、厚生労働省の「身体障害者障害程度等級表」です。
身体障害者障害程度等級表に基づく、それぞれの等級の内容をご紹介します。
6級
1.両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声され会話語を理解し得ないもの)
2.一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの
身体障害者程度等級表
70デシベルは騒々しい事務所の室内、90デシベルはカラオケで歌唱中の室内くらいの音です。
6級は聴覚障害のなかでもっとも低い等級ですが、大声でなければ聞き取りづらい状態なので、補聴器を使用される方もいます。
4級
1.両耳の聴力レベルがそれぞれ80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)
2.両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの
身体障害者程度等級表
80デシベルは走行中の地下鉄車内くらいの音です。
語音明瞭度(ごおんめいりょうど)は、文字音声をどのくらい正確に聞き取れるのかを示す指標です。
数値が低ければ低いほど、音は聞こえても言葉として正確に聞き取りづらくなるので、ゆっくり話すなどの配慮が必要になります。
4級までの聴力レベルならば、補聴器を活用することで普通音声でのコミュニケーションも可能です。
3級
・両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
身体障害者程度等級表
両耳とも90デシベル(カラオケで歌唱中の室内程度)という、かなりの大きさがないと聞こえません。
3級以上は補聴器の活用だけでは会話が困難なため、聴覚に頼らないコミュニケーションが必要です。
筆談・手話・指文字のほか、唇や舌の動きや顔の表情から話の内容を読み取る読話(読唇)や、聴覚障害者向けのツールなどを活用することで対応できます。
2級
・両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)
身体障害者程度等級表
聴覚障害のなかで最も重度が高い等級が2級です。
「ろう」と呼ばれる状態で、100デシベルは電車が通過中のガード下くらいの音です。
生まれつきなど、言語を習得する前から耳が聞こえない人を「ろう者」と呼び、手話を第一言語として使用する人が多くいます。
1級と5級は?
聴覚障害に5級の認定はありません。
また、聴覚障害に対する等級は2級までですが、両耳の全ろうに言語障害が加わる場合は、1級に認定されることがあります。
先天性聴覚障害は、母国語を習得する以前から障害があるため、話し方そのものがわからない場合が多くあります。
読話・手話・指文字によるコミュニケーションが困難なときは、筆談やチャットなどの視覚によるコミュニケーション方法が有効です。
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障害者手帳をもらえる基準
障害者手帳には「精神障害者保健福祉手帳」「身体障害者手帳」「療育手帳」の3種類があります。
聴覚障害の場合は身体障害者福祉法に基づき、都道府県・政令指定都市・中核市より身体障害者手帳が交付されます。
聴覚障害のもっとも低い等級は6級で、身体障害者手帳をもらえる基準は6級以上の等級が対象です。
認定の要件は一時的な障害ではなく、将来にわたり回復する可能性が極めて低い状態であることです。
参考記事:(厚生労働省)身体障害者手帳
障害者手帳のもらい方は?
身体障害者手帳は、6級以上または7級の障害が2つ以上ある場合に申請できます。
申請する場所は各市区町村の障害福祉窓口ですが、交付の基準は自治体によって異なる場合があるので確認してください。
障害者手帳のもらい方は、医師の診断書や意見書、本人確認ができる書類(住民基本台帳カード・パスポート・マイナンバーカードなど)、申請書類に申請用の写真を添えて提出します。
本人による申請が困難な場合は、家族や医療機関の職員などによる代理申請が可能になる場合があります。
申請から交付までにかかる日数は1〜2ヵ月程度です。
障害者手帳は手帳タイプだけではなく、代わりにカードを発行している自治体もあります。
聴覚障害で手当が支給される場合がある?

聴覚障害がある場合、支給要件を満たしていれば手当が支給されます。
障害者が受け取れる主な手当は、障害年金(障害基礎年金または障害厚生年金)です。
通常の年金とは異なり、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合、年齢を問わず請求ができます。
ただし、障害年金を請求できるのは障害等級が2級または1級です。
障害年金が支給される場合は国民年金保険料は免除になるので、年金証書が届いたら各市区町村にご相談ください。
障害年金のほかにも、要件にあてはまれば受け取れる障害手当金(一時金)があるので、ご紹介します。
障害手当金
障害手当金(一時金)は、厚生年金の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日がある場合に申請できます。
初診日から5年以内に症状が固定し、治った日(症状が固定した日)に障害厚生年金を受けられる程度よりも軽い障害の状態の場合に支給されます。
障害厚生年金の等級は「厚生年金保険法施行令」によって定められています。
・1級
身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの・2級
身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの・3級
労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの・障害手当金
(政府広報オンライン)障害年金の制度をご存じですか?
傷病が治ったもので、労働が制限を受けるか、労働に制限を加えることを必要とする程度のもの
障害年金
障害年金には障害基礎年金(国民年金)と障害厚生年金(厚生年金)があります。
障害基礎年金は、国民年金の被保険者期間中だけではなく、国民年金の被保険者となる前(20歳未満)や被保険者資格を失った後(60歳以上65歳未満)でも対象です。
申請した時点で、身体障害者障害程度等級表の2級または1級に該当する場合に支給されます。
参考記事:障害年金|日本年金機構
また、厚生年金に加入している場合、被保険者である期間に障害の原因となった病気やけがの初診日があるときは、障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされます。
障害認定日から申請した時点(65歳まで)で、1級〜3級に該当する場合が支給の対象です。
障害厚生年金の等級は、身体障害者手帳の等級とは異なり、厚生年金保険法施行令によって定められた等級です。
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まとめ
この記事では聴覚障害の等級の判定基準や、障害者手帳のもらい方などをご紹介してきました。
障害者手帳の申請は任意ですが、持つことで得られるメリットがあることがわかりました。
また、障害者手帳で認定された等級を知ることは、どんなサポートを必要としているのかの目安にもなります。
聴覚障害を理解し、対象者に合ったサポートとコミュニケーションを心がけていきましょう。