SDGs目標の不平等をなくそうとは?達成に向けて私たちができること

近年よく聞くようになった言葉に「SDGs」があります。
SDGsとは、「不平等をなくそう」というスローガンをもとに、世界中に向けて17の目標を掲げたものです。
現在世界各地では、さまざまな不平等が残っていて、日本も例外ではありません。
不平等は個人レベルのものだけでなく、国家レベルに拡大しているものもあり、国家間の格差やその国民の格差など数多く存在します。
そこで今回の記事では、SDGsの目標である「不平等をなくそう」の内容や取り組みについて詳しくご紹介します。
目次
SDGsの「人や国の不平等をなくそう」とはどんなこと?
SDGsのスローガン、「人や国の不平等をなくそう」とはどういったものなのかを解説します。
まず、SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」という意味です。
内容としては、17のゴールと169のターゲットから構成されていて、先進国だけでなく、発展途上国でも取り組むこととなっています。
そのひとつである「人や国の不平等をなくそう」という目標10は、世界各国の国内での不平等や、国家間の不平等を是正するために取り上げています。
不平等が起こるのは、性別や年齢、障がいの有無、人種などが理由であり、機会均等を測るための取り組みが必要です。
他にも、経済格差を是正するため、途上国の輸出に対する特別待遇や、途上国への資金流入の促進も求められています。
国際的な取り組みとしては、金融市場での規制、モニタリングの強化、途上国の発言権の拡大などがあります。
SDGsはいつから始まったのか?
SDGsは近年特に耳にすることが増えた言葉ですが、SDGsはいつから始まったのか?と疑問に思う方がいるかもしれません。
SDGsは2001年に策定され、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択されました。
SDGsには目標が設定されていますが、これについては2016年から2030年までに達成することを目指しています。
参考記事:SDGsとは?
SDGs目標10を達成するための内容
SDGsでは、「人や国の不平等をなくそう」という目標10を達成するための内容として、世界各国や国内の不平等に関するものが設定されています。
そのターゲットは10個存在し、各国の所得成長率を持続させること、すべての人々の能力強化や社会的・経済的・政治的な包含の促進、機会均等の確保、成果の不平等の是正などがあります。
どれも不平等の是正と成長に関する内容となっていて、国際社会全体としての目標です。
ターゲットは1つの国としてだけでなく、世界の金融市場のモニタリングや、地球規模の経済対策など、国際社会全体の問題として不平等を取り扱っています。
また、計画的な移民政策の実施や、移住労働者の送金コストの抑制など、移民をターゲットにした内容が含まれているのも特徴です。
他にも、発展途上国の発言力を拡大させるなど、国家間の不平等にも触れています。
参考記事:SDGグローバル指標(SDG Indicators)
なぜ目標10の達成を目指すのか?
現在、SDGsは世界中でさまざまな取り組みがおこなわれていますが、なぜ目標10の達成を目指すのかという最大の理由は、近年の格差拡大です。
特に経済面においては、富の集中が顕著に現れていて、ごく一部の富裕層が世界全体の大半の富を所有するまでになっています。
また、経済がグローバル化したことにより、経済格差は国内のみにとどまらず、世界規模に拡大し、国家間においても経済格差が生じるようになりました。
このような経済格差を是正し、不平等が固定化されないためにも、SDGsの目標10の達成は重要になります。
他にも、人種や障がいの有無、性的マイノリティーによる差別なども社会問題になっていることから、これらの不平等についても目標に設定されています。
参考記事:10.人や国の不平等をなくそう | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会
不平等をなくすための取り組みとは?

現在、さまざまな国がSDGsの目標である、不平等をなくすための取り組みをおこなっています。
実施されている取り組みは、各国によって差があり、その度合いも異なります。
世界の取り組み
まず、世界の取り組みとしてご紹介するのは、SDGsの達成度が高いフィンランドの取り組みについてです。
フィンランドの取り組みで特徴的なのは、行政が中心となって持続可能な社会への取り組みを進めていて、また、社会全体としてもSDGsの考え方が浸透している点です。
実例として、首都のヘルシンキでは、観光情報を紹介するサイトにサステナビリティの基準を満たしている施設が紹介されていて、観光客はどの施設がSDGsに積極的なのかわかるようになっています。
また、フィンランドはSDGsが国連で採択されるより前から、持続可能な社会について活動していました。
このように、フィンランドでは官民が一体となって取り組んでいます。
また、スウェーデンでもSDGsの取り組みを積極的におこなっています。
こちらも国が主体となってSDGsを推進しているため、企業もその意識が高まっているのが特徴です。
例えば、廃棄物を処理する企業のラグンセルスでは、断熱材のリサイクルをおこなっています。
スウェーデンでは必需品である断熱材をリサイクルすることで、埋め立て処理されるゴミの量を減らしています。
これは、SDGsの目標「つかう責任 つくる責任」に基づいた取り組みです。
また、このような活動をデンマークの企業と共同でおこなっています。
これは、SDGsの目標「パートナーシップで目標を達成しよう」に基づいています。
関連記事:サステナビリティとは?SDGsとの違いや意味・企業の取組事例をご紹介!
日本の取り組み
SDGsは日本でも取り組みが進んでいます。
日本政府としての取り組みは、「実施体制の構築」「ジャパンSDGsアワード」「SDGs未来都市」の3つです。
「実施体制の構築」では、SDGsの17の目標を、日本向けに再構築し、人間、繁栄、地球、平和、パートナーシップに関わる8つの優先課題と主要原則が提示されました。
「ジャパンSDGsアワード」は、SDGsに対する優れた取り組みをおこなった企業や団体を表彰するものです。
これまで、複数の企業や地方自治体、NGOなどが表彰を受けています。
このジャパンSDGsアワードは、企業などのSDGsへの取り組みを見える化することで、その活動を促進するのが目的です。
「SGDs未来都市」は、2018年から2020年までに、SDGsの達成に向けた優れた取り組みを選定する制度です。
その中でも、先導的な取り組みを実施する都市を「自治体SDGsモデル事業」として選定し、資金面でサポートするようになっています。
これは自治体としてSDGsへの取り組みを推進させるもので、2018年〜2020年の期間に93の都市がSDGs未来都市に選定されています。
参考記事:●日本政府の取組|経済産業省
SDGs目標10の具体的な問題点とは?
ここまでSDGsの内容や取り組みについて解説しましたが、目標10には問題点もあります。
まず挙げられるのが、テーマが大きすぎるため実感がともなわない、という点です。
SDGsには目標が設定されていますが、「すべて」「ゼロ」という目標が多いため、現実的に実現は難しいと考えられています。
そのため、いくつかの目標は理想をかかげるだけで終わるのではないかと危惧されています。
また、SDGsは世界的な取り組みが必要であるため、個人で解決できないことも問題です。
たとえ優れた能力があったとしても、一人で社会を変えることはできません。
SDGsの目標達成には、多くの人や団体を巻き込む必要があります。
SDGsの目標には数値が設定されているものがありますが、この数値の妥当性を疑う声が上がっています。
例えば目標1「貧困をなくそう」では、1日の生活費が1.25ドル未満という極度の貧困を終わらせることが目標となっていますが、1.26ドルで生活する人は支援対象から外れてしまいます。
そのため、設定されている数値目標の妥当性について、検証することが必要です。
身の回りで起きている不平等な例

日常生活においては、程度の差に関係なく、さまざまな不平等が存在します。
ここでは、身の回りで起きている不平等な例についてご紹介します。
ジェンダー格差
ジェンダー格差とは、性別(ジェンダー)に基づいた社会的・文化的な偏見や、ジェンダーによる雇用や賃金の格差といった経済的な格差のことです。
ジェンダーとは、生物学的な性別に対し、社会的・文化的役割としての性別を意味しています。
男性であること、女性であることで期待される役割や、機会が異なること、男女間の関係性についてもジェンダーに含まれています。
具体的には「家事や子育ては母親がするべき」「男は泣いてはいけない」などは、ジェンダーによる問題といえるでしょう。
また、企業の役員の割合は男性が多くなっていたり、政治家に男性が多すぎることもジェンダー格差のひとつです。
一般的に、ジェンダー格差では男性が優遇されている点が問題となりますが、レディースデーなどの女性が優遇されることもジェンダー格差に含まれます。
その他、ジェンダーを利用したセクハラやモラハラも問題となっています。
関連記事:マイノリティな生き方とは?多様性への理解を深めて社会問題を解決!
人種差別
人種差別とは、人種に基づいて個人や集団を差別することで、特定の人種が他の人種よりも優れているという考えに基づいておこなわれる差別です。
人種差別は、社会的、経済的、政治的な分野で存在しており、現在大きな社会問題となっています。
ほとんどの国では、人種差別は法律により禁止されていますが、それでもなお世界中で存在し、問題となっています。
人種差別では、肌の色の違いにより差別されることが多く、アメリカなどでは黒人差別が大きな社会問題です。
人種差別は肌の色の違いだけでなく、特定の民族に対して差別するケースもあります。
特に、少数民族への差別は国際的な問題となっていて、国家により差別されることで、難民問題にまで発展するケースもあります。
人種差別には、さまざまな原因がありますが、差別を根絶するためには、教育や啓発活動が重要です。
少数派への差別
身の回りの不平等としては、少数派への差別も問題です。
これは、マイノリティという言葉で表されることが多く、集団の中での少数派だけでなく、社会的に重要ではないという意味で少数派と判断するケースもあります。
マイノリティには、外国人移住者などの社会的マイノリティや、性的指向や性自認における少数派である性的マイノリティなどがあります。
このマイノリティは数が少ない、影響力が少ないことを理由に、不平等に扱われるケースがあり、耳にすることが多い方もいるかもしれません。
人種差別や少数民族への弾圧なども、マイノリティ差別の一種です。
近年では、ヘイトスピーチやヘイトクライムなども問題となっています。
マイノリティへの不平等に対する対策としては、LGBTに関する法律が制定されたり、啓蒙活動をおこなうなどが実施されています。
マイノリティに関する意味や詳細については、以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
関連記事:マイノリティの意味は?種類や使い方の具体例をわかりやすく解説!
働いても稼げない不平等
その他の不平等として、働いても稼げない不平等というものがあります。
これは地域や国によっては、同じだけ働いたとしても不当に少ない賃金しか稼げない状態のことです。
特に、発展途上国の農業などでは、かなり低い賃金で就労させているケースがあり、社会問題に発展しています。
これは、労働者が社会的に弱い立場にあることで、賃金が低くても働かざるを得ないために発生している不平等です。
場合によっては、子どもが働かされているケースもあり、問題の解消が急務です。
これらの不平等を解消する取り組みとして、フェアトレードがあります。
フェアトレードでは、農産品などを適正な価格で買い取ることで、生産者が自立できるよう支援する取り組みです。
このフェアトレードについても、SDGsの取り組みに含まれています。
SDGs目標10達成に向けて私たちにできることは?
SDGsの達成には、世界的な取り組みが必要です。
ただ、目標10達成に向けて私たちにできることも存在します。
個人として大きな取り組みはできませんが、日常生活において少し注意を向けるだけでもSDGsの達成に貢献可能です。
個人が簡単にできる取り組みとしては、
- 支援団体への寄付
- ボランティア活動の参加
- 節水、節電などのエネルギーの節約
- 地産地消を心がける
- エコバッグやマイボトルを持ち歩く
などがあります。
また、普段使っている製品をSDGsに積極的に取り組んでいる企業のものに変えることでも、SDGsの目標に貢献できます。
小さな取り組みでは影響がほとんどないと思うかもしれませんが、個人の小さな積み重ねが大きな流れになるため、普段から少しずつSDGsについて意識するようにしましょう。
一人ひとりができることから始めよう
SDGsは世界中でおこなうべき大きな目標ですが、一人ひとりができることから始めることも重要です。
個人でできることには限界がありますが、少しの取り組みでも続けることが貢献につながります。
例えば、節電や節水は個人がすぐにできる取り組みです。
電気や水は、各家庭に届くまでの過程で、多くのエネルギーが消費されています。
その際に、多くの温室効果ガスが排出されていて、地球温暖化の原因となっています。
そのため、節電や節水をおこなうことで、SDGsに貢献が可能です。
また、フードロスを減らすこともSDGsに対する取り組みです。
現在、日本では毎年多くのフードロスが発生しています。
フードロスを減らす方法としては、購入した食材や食品は使い切ること、安く売られているからといって大量に買い込まないことなどを意識しましょう。
また、家庭におけるフードロスだけでなく、飲食店や製造メーカーでフードロスが起こらないように考えることも重要です。
参考記事:SDGs達成に向けた分野別取組|外務省
まとめ
ここまで、SDGsの目標である「不平等をなくそう」の内容や取り組み、問題点などについて解説しました。
SDGsは、人や国の不平等をなくすために国連で提唱された目標で、国内だけでなく国家間の不平等をなくすための世界的な取り組みです。
すでに多くの国で具体的な取り組みがあり、多くの企業や団体が実施しています。
SDGsの目標を達成するためには、世界中が取り組む必要がありますが、個人としてもできることがあります。
個人では大きな取り組みはできませんが、普段からSDGsについて意識することで、貢献することが可能です。