多文化共生とは?推進する理由や自分にできることもわかりやすく解説!

日本では、深刻な人手不足により、外国人労働者を積極的に受け入れるようになりました。
近年は、学校や職場だけではなく、街の飲食店やコンビニエンスストアなど身近な場所でも外国人に接する機会が多くなり、日本全体で多文化共生に取り組む必要があります。
そもそも多文化共生とは、どのようなことなのでしょうか。
この記事では、「多文化共生とは?」と題し、推進する理由をはじめ、実際におこなわれている取り組みなどをご紹介します。
目次
多文化共生とは?
・多文化共生とは
「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」
多文化共生の推進に関する研究会報告書
簡単にまとめると、国籍や民族などが異なる者同士が、お互いの文化の違いを認め合い、同じ地域社会で協力しあって生きていこうという考えです。
近年、日本で暮らす外国人は増加傾向にあり、その人口は約200万人に達しています。
しかし、外国人に対する対応は、現行の制度では対応しきれない部分があり、外国人労働者を積極的に雇い入れている地域を中心に直面する課題に取り組んでいる状況です。
地域に暮らす外国人も同じ地域住民として認識し、共生していくことが求められています。
今後さらに外国人人口が増加し、それにともなって全国の各自治体が、共通した課題に取り組むことが予想されます。
国家レベルでの本格的な多文化共生を推進するなかで、私たち一人ひとりが外国人に対する理解を深めていくことが大切です。
多文化共生は何のためにするの?
世界的な規模でグローバル化が進むなか、社会には人・物・お金・文化など、さまざまな事柄において流動性が高まっています。
特に人におけるグローバル化では、異なる文化にとまどいを感じたり、違和感を覚える人も少なくありません。
文化の違いを理解できなかったり、受け入れられないことは、差別につながる可能性があります。
多文化共生は、国籍や人種にこだわらず、同じ地域で暮らすすべての人々が円滑な社会生活やコミュニケーションをおこなうために必要不可欠なものです。
さまざまな分野での多様化が進むなかで、お互いの文化に対する理解を深め、歩み寄ることが重要です。
多文化共生の推進に関する条例がある?
多文化共生を推進するにあたり、多文化共生に関する条例を制定している自治体(都道府県・市区町村)があります。
特に外国人が多く暮らす場所のひとつ、群馬県では令和3年4月1日より「群馬県多文化共生・共創推進条例」が施行されています。
・群馬県多文化共生・共創推進条例
群馬県では、国籍、民族等の異なる人々が、互いの文化的な違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員としてともに生きるとともに、多様性を生かしつつ、文化及び経済において新たな価値を創造し、又は地域社会に活力をもたらす社会を創るため、「多文化共生・共創推進条例」を制定し、令和3年4月1日に施行しました。
この条例では、多文化共生・共創社会の形成の推進についての基本理念を定め、県、市町村、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、施策を総合的・計画的に推進することにより、「魅力あふれる、持続して発展する群馬県」、「国籍や民族等にかかわらず誰もが幸福を感じることのできる社会」の実現を目指しています。
群馬県多文化共生・共創推進条例
以上の目標から、県・市町村・県民などに対し責務を担うよう呼びかけています。
また、多文化共生・共創社会の形成の推進のために、県は市町村と協働することや、情報提供および支援をおこなうことなどが掲げられています。
多文化共生のメリットは?
厚生労働省の発表によると、令和5年10月末時点で日本で働く外国人労働者数は2,048,675 人で、前年比は225,950人増加しています。
届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新しました。
人口が減少傾向にある日本において、働く外国人が増えることは、単純に人手不足の解消につながるだけではありません。
- 外国人労働者による人口が増えることで、経済的な利益が生まれる
- 多様な人や文化と出会うことで、これまでになかった新しいサービスやルールが生まれる
- 多様な側面を見ることによって、日本の良さを改めて見直すきっかけになる
- 相互理解が深まり、国際的な協力が強化される
以上のようなメリットがあげられます。
しかし、多文化共生にはメリットばかりではなく、文化摩擦により社会の安定性が損なわれるなどの可能性も懸念されます。
現在は多文化共生の過渡期の状態です。
日本に暮らすすべての人々が、この課題におけるメリットとデメリットを意識して、取り組んでいくことが大切だといえます。
日本にはどのくらいの外国人がいる?

日本には労働をはじめ、さまざまな目的によって、永住権を取得している特別永住者と中長期在留者がいます。
両者を合わせると、令和5年6月末現在、日本には322万3,858人の在留外国人が暮らしていますが、これは前年度と比べると14万8,654人(4.8%)の増加です。
国別に見ると1位は中国で、2位以下はベトナム→韓国→フィリピンとアジア地域が続き、5位がブラジルとなっています。
在留資格は「永住者」が最も多く、その他の「技能実習」「技術・人文知識・国際業務」「留学」の在留資格の前年比は増加しています。
「特別永住者」による在留資格のみ、前年よりも減少している状況です。
在留外国人数が最も多いのは東京都で、愛知県・大阪府・神奈川県・埼玉県など、主に都市部に集中しているようです。
外国人住民増加の背景とは?
日本では1980年代以降、経済活動のグローバル化にともない、さまざまな地域から外国人を受け入れるようになりました。
外国人住民増加の背景にはさまざまな要因がありますが、「留学生受入れ10万人計画」により、積極的に留学生を受け入れるようになったのがはじまりです。
さらに1990年には入管法が改定され、愛知県・静岡県・群馬県など製造業の盛んな地域における、間接雇用の形態による受入れが活発化しました。
1980年以降に入国した外国人たちのなかで、国際結婚などにより永住資格や国籍を取得する人が増えたことも背景にあります。
日本は本格的な少子高齢化が進んでいることもあり、今後はさまざまな政策によって日本に住む外国人人口は、さらに増加していくと思われます。
参考記事:多文化共生の推進に関する研究会 報告書
外国人住民が困っていることとは?
日本で生活する外国人住民が困っていることは、日本語での生活にはじまり、さまざまなことがあげられます。
- 日本語での会話がほとんどできない
- 日本語教室・語学学校等の利用・受講料金が高い
- 情報の収集が困難(多言語での情報発信が少ない)
- 病院を受診する際にどの病院に行けばいいのかがわからない
- 妊娠・出産にかかる費用が高い
- 子どもが母国語・母国文化を十分に理解していない
- 給料が低い
- 仕事で日本人よりも不利に扱われる
- 住居探しの際に国籍で断られる
- 年金や保険の制度がよくわからない
上記に記載したのは、主な困りごとですが、それぞれのライフステージごとに特有の困りごとがあることもわかりました。
また、地域によっては語学学校に通いたくても、近隣に語学学校がなくて通えないなどの問題もあるようです。
現在、日本で暮らす外国人の国籍・地域数は約195ヵ国になり、地域数に比例して言葉や文化の違いは増えています。
多文化共生は、文化の違いだけではなく、言葉の壁に関する問題も解決していくことが大切です。
多文化共生への自治体や国の取り組みは?
日本政府が外国人材の活用を積極的に進めていることもあり、総人口に占める外国人の割合は、2015年の1.5%から2020年には2.2%に増えています。
参考記事:(令和2年国勢調査)⼈⼝等基本集計結果からみる我が国の外国⼈⼈⼝の状況
今後も日本に定住する外国人は増え続けると思われます。
外国人の積極的な受け入れから、実際に多文化共生の施策をおこなってきたのは地方自治体です。
2006年に発足した総務省の「多文化共生推進プラン」をきっかけに、国としても外国人受け入れに関した、生活レベルでの多文化共生が進められるようになりました。
2012年に「住民基本台帳制度改革」により、日本人と外国人の台帳が一本化されたので、現在は、定住する外国人も正式な住民として受け入れられています。
多文化共生への自治体や国の取り組みに関する詳細は、下記の関連記事を参考にしてください。
関連記事:多文化共生の取り組みとは?海外と日本の成功例や課題・外国人の生活支援も紹介!
多文化共生の具体例は?

総務省の「多文化共生推進プラン」がスタートしてから、15年以上が経過しました。
- コミュニケーション支援
- 生活支援
- 意識啓発と社会参画支援
- 地域活性化の推進やグローバル化への対応
- 推進体制の整備など
以上の5つの項目が、総務省から発表されている「多文化共生事例集(令和3年度版)の概要」です。
これに基づき、日本で生活する外国人が直面している不便さの解消を目的に、国や自治体で支援などをおこないます。
コミュニケーション支援は、すべての外国人に必要な支援のひとつです。
時代とともに内容も変化し、近年は多言語翻訳機器を活用した多言語相談対応や、ICTを活用した日本語教室の運営などをおこなう地域もあります。
生活支援の内容も、教育・労働・医療・子育てなどの観点から、外国人も暮らしやすい環境を整備すべく年々進化しています。
私たちの身近でおこなわれている自治体の取り組みや問題点についてご紹介している記事があるので、参考にご覧ください。
関連記事:多文化共生の身近な例は?地域自治体や学校での取り組みや問題点も紹介!
多文化共生の現状は?
多文化共生の観点による支援は、自治体が提供をおこなってきました。
外国人住民の急増にともない、さまざまな問題に直面することとなり、その都度、国に対しても制度の改正要望がおこなわれています。
これまで、主に外国人労働者に対する政策や、在留管理の観点からおこなわれてきた国の政策では、対応しきれていない現状があります。
直接的に支援をおこなうのは地方自治体ですが、生活に関わる労働環境・外国人児童・生徒教育・外国人登録制度など、国による制度の見直しが必要です。
外国人も単なる労働者としてだけではなく、地域で暮らす「生活者」「地域住民」であることを認識し、共生するための制度の改正が求められています。
総務省では、これに対する対応策として2005年6月に「多文化共生の推進に関する研究会」を設置しました。
研究会の報告書には、「さまざまな問題に関して、地方自治体の意見を聞きながら基本的な責任を有する国の責務として検討していく」旨が記載されています。
参考記事:多文化共生の推進に関する研究会 報告書
地域社会の取り組みの現状は?
言葉によるコミュニケーションに不足があると、日本の行政の仕組みや地域に関わる情報や知識を得ることができません。
近年は公共の場所においても、特に在住人数が多い国の母国語(英語・中国語・韓国語など)の表記がなされるようになりました。
それ以外の言語を使用する外国人には、多言語翻訳機器などを活用した対応などがおこなわれています。
外国人のなかには、日本に定住することを望む人が多くいますが、定住するうえで必要な医療や教育に関する問題への取り組みが十分ではありません。
また、外国人の住民の増加と定住化が増えるにつれ、ニーズは多様化・複雑化する傾向があり、地域社会はすべてのニーズには対応しきれていないのが現状です。
多文化共生のために自分ができること
多文化共生のために自分ができることは、個々の生まれたルーツやアイデンティティを知るところから始めます。
日本に伝統や文化があるように、ほかの国にもそれぞれの文化があるので、違いを知って尊重することが重要です。
そのうえで、日本で暮らすために必要なルールやマナーなどを教えるようにしましょう。
また、行政の仕組みは地域ごとの違いもあるので、困っている外国人がいたら、生活するうえで必要な情報を伝えてあげると親切です。
日本語が不自由な場合は、翻訳アプリなどを活用して積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。
まとめ
この記事では、多文化共生の取り組みや現状を中心に、私たちができることについてご紹介しました。
今後も日本の外国人人口は、さらに増えていくと思われます。
地域社会ではお互いの理解の不足から、日本人と外国人との間で摩擦が生じてしまうことも少なくありません。
私たちは、地域で暮らす外国人も同じ住民ととらえ、積極的にコミュニケーションをとるなど、できるところから多文化共生に取り組んでいきましょう。
