多文化共生の取り組みとは?海外と日本の成功例や課題・外国人の生活支援も紹介!

近年ではグローバル化が進んでいることから、日本に滞在している外国からの留学生や労働者も増えていて、学校や職場などで外国人とコミュニケーションをとる機会が増えてきています。
このような環境で必要になるのが「多文化共生」という考え方ですが、多文化共生と言われても具体的によくわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、多文化共生に対する取り組みの具体例や実現のための課題などについて解説します。
目次
日本の多文化共生の取り組みの具体例は?
現在、日本では多文化共生のためのさまざまな取り組みが進んでいます。
その内容は多岐に渡り、主に、以下のように分けられます。
- コミュニケーション支援
- 生活支援
- 多文化共生の地域づくり
- 推進体制の整備
ここでは、多文化共生の取り組みをそれぞれの分野について解説します。
コミュニケーション支援
多文化共生でのコミュニケーション支援としての取り組みについては、日本語への対応がメインです。
日本語がわからない外国人のために、119番通報などの緊急時や災害時に、民間の通訳を利用した多言語対応を実施しています。
また、自治体などが、使用する言語に限らず災害発生時に情報を伝達できるように、外国人でもわかりやすい「やさしい日本語」についても研究しています。
他にも、外国人に日本語を覚えてもらうために、地域生活に密着した「生きた日本語」を学習できる場を提供したり、日本語の学習を支援するボランティアを募集するなどの取り組みも支援の一環です。
生活支援
多文化共生での生活支援の取り組みは、生活面で困ることなどへのサポートが中心です。
まず居住地を提供するために、多言語対応ができる不動産業者を紹介したり、入居後のトラブルにも多言語で対応できる相談窓口を運営したりしています。
教育面については、就学前の外国人の子どもに対して日本語などを教えるプレスクールを実施したり、外国籍の親子の放課後の居場所づくりなどをおこなっています。
また、外国人の子どもが就学できないという問題を防ぐための実態調査や支援などもサポートのひとつです。
労働面については、介護職を希望する人に向けた資格取得や就業の支援、親が外国人である第2世代のための就職支援を実施しています。
医療面では、医療通訳の仕組みをつくったり、さまざまな出身国のスタッフによる介護・福祉サービスの提供などをおこなっています。
また、防災に備えるために、外国人の住民が企画・運営する防災訓練を実施したり、日本人の住民とのパイプ役を担う外国人防災リーダーを育成するなども支援の一環です。
多文化共生の地域づくり
多文化共生のための地域づくりの取り組みとしては、主に外国人と日本人の交流を活発化させるものが多くなっています。
たとえば、外国人の住民と地域の日本人が農作業などで交流を深めるためのガーデンを開設したり、外国人の住民が企画・運営する街歩きツアーといったイベントなどがあります。
このような機会は、参加してもらうことで多文化共生への理解を深めてもらうのが目的です。
推進体制の整備
多文化共生のための推進体制の整備としては、多文化共生の啓発活動をしたり、自治体職員を対象とした幅広い分野の研修を実施しています。
また、日本在住歴が長い外国人が、日本人には自国の文化を、外国人には日本の文化を伝えることで、地域の国際化に貢献してもらっています。
さらに、外国人の視点から見た地域の魅力についてSNSで発信してもらうことも取り組みのひとつです。
参考記事:地域における多文化共生の現状等について
多文化共生の日本の成功例

ここでは、日本で実際におこなわれている多文化共生の実施例についてご紹介します。
福島県では、生活での悩みなどが相談できるホットラインを20言語に対応して実施しています。
従来は電話のみでの対応だったところ、留学生や技能実習生の多くがスマートフォンを所持していたため、LINEからも利用できるように改善されました。
石川県小松市では、市から送付される通知の封筒に二次元コードを印刷して、その内容を英語とポルトガル語で翻訳したWebサイトにアクセスできるようにしています。
「二次元コードがあったため給付金を受け取ることができた」という声もあるため、成功しているといえるでしょう。
東京都では、動画配信サイトで外国人に対するヘイトスピーチなどの課題を紹介したり、多文化共生への取り組みなどについて配信しています。
また、WebサイトやSNSを活用して、外国人の人権コミックエッセイを公開するなど、外国人の人権や多文化共生の啓発に貢献しています。
参考記事:多文化共生事例集|総務省
多文化共生の海外の成功例
次に、多文化共生が進んでいる海外での成功例についてご紹介します。
アメリカのニューヨークでは、さまざまな国からの移民が多いという事情もあり、昔から多文化共生に取り組んでいました。
まず住居面では、多額の住宅費を支払っている世帯に対して「アフォーダブルハウジング」という救済制度があります。
また、不動産業者が特定の人種に対して誤った情報提供をすることや、特定地域への居住を誘導することを禁止しています。
他にも、多文化共生のための施策として、「311市民サービスセンター」が設置されていて、24時間365日、171言語での対応をしているのが特徴です。
さらに、英語力が限定的な人でも行政サービスが受けられるようにするため、移民局も設置されています。
参考記事:ニューヨークにおける多文化共生
多文化社会と多文化共生の違いは?
ここまで、多文化共生についてご紹介しましたが、多文化共生と似た言葉として「多文化社会」があります。
この両者については意味として近い部分があるため、その違いについてよく理解できていない人は多いようです。
多文化共生とは、「複数の文化をもつ人が互いの文化の違いを理解・尊重しつつ共に生きていくこと」という意味です。
一方、多文化社会は、「複数の文化をもつ人が共に生きていく社会」という意味になります。
どちらも、異なる文化をもつ人と生活していく、という意味では同じですが、着眼点が異なる言葉となっています。
両者の違いなど、詳細については以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:多文化共生とは?推進する理由や自分にできることもわかりやすく解説!
多文化共生の課題とは?

現在では、多文化共生の取り組みが進んでいますが、さまざまな課題も存在します。
主な課題としては、言葉の問題と生活習慣の違いの問題があります。
日本人と外国人では使用する言語が異なるため、コミュニケーション不足になることが問題のひとつです。
この問題を解消するためには、外国人に対する日本語の学習機会を充実させたり、日本語が不自由な外国人に対する行政面でのサポートも必要となります。
また、外国人と日本人では生活習慣が異なるため、ルールやマナーに関するトラブルが発生しがちです。
このトラブルを解消するためには、日本人と外国人の両方の多文化共生に対する意識を向上させたり、双方の生活習慣を学べる環境づくりが必要です。
多文化共生を実現するために必要なことは?
多文化共生を実現するためには、さまざまな施策が必要です。
外国人が日本で問題なく生活するためには、日本語の習得が不可欠で、日本語教育をさらに推進させていく必要があります。
また、外国人の子どもと日本人の子どもの共生についても支援が必要で、特に外国人の子どもの不就学問題を解消することが不可欠です。
労働環境では、外国人の低賃金、社会保険などへの未加入なども問題です。
そのため、雇用・労働環境のあり方を考える必要があります。
また、治安の問題にも取り組みが必要です。
外国人による組織的犯罪や不法滞在、不法就労などの問題もありますが、これらについては、偏見によるイメージだけで語らずに、冷静に議論する必要があります。
まとめ
この記事では、多文化共生に対する取り組みの具体例などについてご紹介しました。
近年ではグローバル化が進んでいることもあり、多文化共生という考え方を推進させていく必要があります。
多文化共生の実現にはさまざまな問題がありますが、言語問題や生活習慣の違いなどが主な問題です。
そのため、これらの問題を解消するための支援が求められるでしょう。
さらに、行政による支援だけでなく、日本人側の意識も変えていくことが重要です。
