合理的配慮とは何かを簡単に解説!具体例や問題点・どこまでおこなうべきかも紹介!

障がいがあっても、職場や学校で平等に社会生活を送れるように、障壁を取り除く必要があります。
SDGsの観点からも、障がい者の働き方や社会参加には注目されているので、「合理的配慮」という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。
「合理的配慮とは簡単にいうとどのようなこと?」
「具体的な例や問題点などを知りたい」
とお考えの方に、今回の記事では、合理的配慮について詳しく解説していきます。
学校や職場ではどのような行動ができるのか、どこまでおこなうべきなのかをご紹介するので、これから障がい者の受け入れをする方は参考にしてみてください。
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目次
合理的配慮とは?簡単に解説
世のなかには多種多様な人がいるため、一人ひとり得意なことや苦手なことの基準は人それぞれです。
この基準の違いによって、障がいを理由に差別的な扱いをしたり、教育や就業の機会を与えないことは禁止されています。
どのような人も平等に社会生活を送れるように、さまざまな障壁を取り除くことが「合理的配慮」です。
例えば、「障がいがあるため入学試験を受けられなかった」、「耳が聞こえないので会議に参加しても内容が理解できない」などの問題が起こらないように対策が必要です。
私たち一人ひとりが、障がいを正しく理解して、どういった配慮をしなければいけないのかを考えた行動が求められます。
参考記事:「合理的配慮」を知っていますか?|内閣府
合理的配慮の3つのキーワードとは
合理的配慮を実践するための3つのキーワードを解説します。
- 障がい者差別を禁止
社会から排除したり、不利な条件を提示するのは止めましょう。
- 勤労機会や待遇を平等に確保
どのような人も能力を十分に発揮できるような環境をつくることが必要です。
- 相談体制の整備
適切な環境を提供し続けるために、相談できる機関を設置して、定期的に内容を見直して整備しましょう。
この3つのキーワードを考慮すると実行しやすくなります。
合理的配慮の7つの要素とは?
合理的配慮は以下の7つの要素を考慮して、どのような内容にするべきかを検討する必要があります。
- 個々のニーズ
それぞれのニーズを満たすためには、「会議の資料を事前に文章で準備してほしい」「玄関の段差をなくしてほしい」など、個人や状況に合わせる必要があります。
- 非過重負担
車椅子で乗り入れができるようにするために施設内を全面バリアフリー化するなど、金銭的にも事業者の負担になるでしょう。
このようなケースでは、必要最小限の場所を整備するなど、過重な負担をともなわないようにします。
- 社会的障壁の除去
施設のバリアフリー化では物理面、音声ツールを導入すると情報面やコミュニケーション面のバリアなど、あらゆる面からの社会的障壁をなくすことが必要です。
- 意向尊重
本人からの要望でも、障がいを人に知られたくないと思う方も多いです。
他人からの視線に注意を払いながら、プライバシーへの配慮も求められます。
- 本来業務付随
本来の業務に関係のないところまで配慮すべきなのかは線引きが難しいです。
プライベート、仕事や学校でのサポートはどこまで必要か事前に話し合って決定することが大切です。
- 機会平等
就労時間が十分に確保されない、昇進の機会が与えられなかった、などは不平等にあたります。
可能な限り多くの機会を与えて、選択できる環境を提供する必要があります。
- 本質変更不可
機会平等が本質を変えるほどの内容である場合は、よく検討しなければなりません。
「入学試験の科目を変更してほしい」という要望は、場合によっては、学校の教育方針として認められないケースもあります。
これから職場や学校で障がい者を受け入れる際には、以上のような点を参考にしてみてください。
合理的配慮は義務化されている?
令和6年4月から合理的配慮が義務化されました。
今回の義務化のポイントは、国や自治体に限らず、民間事業者であっても、障がい者への配慮が義務づけられた点です。
配慮の申し出があった際には、障壁を取り除く行動をとらなければなりません。
例えば、「補助犬と同伴でサービスを利用させてほしい」「音声だけでなく字幕をつけた映像がほしい」などです。
しかし、このようなケースでは、事業者の負担にならない範囲という制限もあります。
合理的配慮の考えを取り入れた法律とは?

合理的配慮の考えを取り入れた法律は、2016年4月1日に施行された「障害者差別解消法」です。
すべての国民が障がいによって区別されることなく、お互いの個性を尊重し合いながら生きていける社会の実現を目指すために定められました。
国や行政、民間業者に対して障がい者への不当な差別的な扱いを禁止しています。
この場合の「障害者」とは、以下のように定義されています。
身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
事業者は、障がい者との対話から、お互いに協力して問題解決へ向けて行動することが重要です。
今回、法改正がおこなわれた経緯やポイントは以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:障害者差別解消法の改正ポイントをわかりやすく解説!罰則や具体例もご紹介
合理的配慮の具体例は?
ここからは、私たちにどのような配慮ができるのか具体例をご紹介します。
学校や職場では、すべての人に均等な機会を提供することが求められます。
身体障がい者をはじめ、発達障がい、精神障がいなど、障がいによってさまざまなハンデを抱えています。
これから、受け入れる際にはどのような点に気をつけるのか参考にしてみてください。
学校における合理的配慮の具体例
一般的に、学校での配慮は本人または保護者からの申し出があった際に内容を検討します。
しかし、申し出がなくても、学校生活を観察するなかで必要と思われるサポートがあれば、適宜行動することも必要です。
具体的な行動を詳しくご紹介します。
【離席が目立つ小学生の場合】
- 集中できる環境を確保するために、周囲の生徒の姿が見えないように前方の席を確保し、集中が途切れるものは見えない場所に保管する
- 学習に気持ちが向くように、教科書やノートを指差しで確認して働きかける
- 授業の合間に黒板を消したり、プリントを配布する係を任せて、体を動かしてもよい機会をつくる
【聞こえに障がいがあり補聴器を使用する中学生の場合】
- 教師の口がよく見えるように中央から前の席にする
- 指示や大事なポイントは文字にして伝えたり、外での活動ではホワイトボードやメモ帳で情報を伝える
- 孤立感を感じさせないよう、学級の雰囲気づくりを工夫するために、聾学校や専門機関と連携をはかる
- 災害時の緊急の連絡、避難方法など事前に決めておく
【偏食があり給食が苦手な小学生の場合】
- 給食指導では無理強いをしない範囲で、みんなと同じように食べれることを目標にする
- まずは唇に触れさせてみる、一口食べてみるなどスモールステップでチャレンジする
- 学校だけで取り組むには限界があるので、面談や連絡帳で家族と情報を共有、食べることの意識を少しずつ変化させる
このように、状況やそれぞれの障がいに合わせて、個別にどのような対応ができるのか検討し、行動することが大切です。
そのためにも、障がい者が学校生活でどのようなことで苦戦しているのか理解する必要があります。
以下の記事で詳しくご紹介しているので参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害者が学校生活で困ることは?必要な配慮やコミュニケーション支援ツールも紹介!
職場における合理的配慮の具体例
障がい者雇用が進み、企業ではさまざまなハンデのある方を受け入れる機会が増えてきました。
採用から雇用までの合理的配慮を詳しく解説します。
【障がい者を採用する場合】
- 採用サイトでは、誰でも求人票を理解できるように、音声ソフトに対応させる
- 面接時には支援機関の職員や教員の同席を許可する
- 筆談に対応した面接試験、書くことに困難な人には筆記試験など免除する
【数年のブランクを経て就職する身体障がい者の場合】
- 入社前には就労支援機関の支援者の同行で聞き取りをおこなう
- 久しぶりの仕事を考慮して時短勤務からの業務とする
- 車椅子を利用している場合は、玄関とトイレにスロープを配置し、エレベーターなどを利用する際には社員同士でサポートする
障がい者を受け入れる場合はもちろんですが、すでに在籍する社員が障がい者になる可能性もあります。
その場合の対応については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:社員が障害者になった場合の対応は?助成金や必要な配慮までわかりやすく解説!
これから障がい者を受け入れる企業では、人事部だけでなく社内全体で決定事項を共有しておく必要があります。
決定までの流れはもちろん助成金などについても把握しておく必要があるでしょう。
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発達障がいや精神障がいに対する合理的配慮の具体例
発達障がいや精神障がいは、まずは一人ひとりの特性の理解が大切です。
例えば、発達障がい者は、予期せぬことへの対応が苦手なので、資料をあらかじめ渡しておいてどのような内容で行動するのかについて知らせておくとよいでしょう。
精神障がい者の場合は、新しい場所が不安に感じることも多くあるので、学校見学や会社見学などを実施して、心の準備をしておくのも効果的です。
人為的なサポートのほかにも、以下の記事でご紹介しているガジェットやツールを使用するのもおすすめです。
関連記事:発達障害のある人が仕事で使えるライフハック術とは?ADHDの困りごとや便利なガジェットも紹介!
ここまで解説してきたように、私たちができる配慮は数多くあります。
それぞれに合わせて、当事者ともよく相談して進めていくようにしましょう。
参考記事:合理的配慮等具体例データ集|内閣府
合理的配慮の問題点
合理的配慮は、障害者雇用制度との違いが曖昧な点が問題とされています。
障害者雇用制度では、バリアフリー化などで設備を整える際、国や地方自治体からの助成金を受けられます。
そのため障害者手帳を保有して就業する方は、すでに一定の配慮を受けて仕事をしている状況です。
企業としても助成金制度を活用できるので取り組みやすくなっています。
現時点では、合理的配慮よりも、障害者雇用促進法に基づいたほうが、手厚く配慮できる点も問題視されています。
合理的配慮はどこまでおこなうべき?

事業主に過重な負荷がかかる場合は、合理的配慮の提供義務はないとされています。
例えば、会社の規模や財務状況、実現困難度に応じて、どのような行動をするべきか精査します。
社会的なバリアを取り除くために、双方で対話を重ねながら、解決策を検討することが重要です。
「これまで前例がない」という理由で、事情を考慮せずに一律に対応を断ったり、「万が一、トラブルが起こったら」という漠然としたリスクを理由に対応しないことは避けるべきです。
違反を繰り返した場合は、国から聞き取り調査を求められたり、指導や勧告を受ける可能性があります。
合理的配慮の不提供の例
双方で話し合ってお互いに納得することが大切ですが、協議の結果、合理的配慮の不提供を決定するケースもあります。
例えば、少人数で経営している飲食店の混雑時に、車椅子の利用者がトイレの介助を依頼した場合、人的余裕がなければ申し出を断ることができます。
これは、店の規模や従業員数、時間帯で、「過度な無理をしない」という条件に当てはまるからです。
このほかにも、精神障がいのために午前中の授業を休みがちな生徒から、単位認定を求める申し出があった際、一度も出席できていない授業では「認定しない」と決定できます。
学校の「教育方針や目的を達成できない」可能性が高いため、よく検討のうえで不提供という結果になるケースもあります。
いずれの場合も、状況に合わせて、柔軟な対応ができないのかよく話し合うことが大切です。
合理的配慮とわがままの違いは?
職場や学校でこのように対応してほしいと申し出たとき、「一人だけ特別扱いできない」と断られ経験をした方も多いかもしれません。
ここからは、合理的配慮とわがままの違いを解説します。
精神疾患をオープンにして入社した社員は、「ストレスに弱いので注意されると萎縮する」「疲れやすく、長時間は体力がもたない」などの仕事の困りごとがあります。
職場での配慮は、業務に慣れるまでは残業をさせない、気分が悪くなったら休憩室で10分程度休ませる、指導がある際には事前に知らせて心の準備をさせる、などです。
「体調が悪くなったら退社させてほしい」「ミスしても注意しないでほしい」などは、わがままと判断されかねません。
このような申し出は、どの点が問題なのか、会社側が一方的な負担を強いられていないのかがわがままに該当する判断基準になってきます。
判断基準については、以下の記事でご紹介しているので、受け入れる際には参考にしてみてください。
関連記事:合理的配慮とわがままの違いは?特別扱いと感じてしまう理由や過度な負担の具体例も紹介!
聴覚障がい者への合理的配慮ができる「Pekoe」
聴覚障がい者への合理的配慮ができる支援ツールとして「Pekoe」の活用がおすすめです。
Pekoeは、聴覚障がい者と聴者のやり取りを円滑におこなうために開発されたツールで、コミュニケーションの壁をなくすために役立ちます。
声に出した言葉がリアルタイムで文字化されるので、学校では友人とのコミュニケーションにも役立ち、画面上で資料を共有したり会議の配信にも字幕表示できるため職場でも活用できます。
Pekoeは音声認識の精度が高いだけでなく、誤変換があった場合もその場で修正ができ正しい情報が共有されるので、本人だけでなくチームのパフォーマンス力やコミュニケーションの向上にもつながります。
無料のお試し期間もあるので、コミュニケーションツールに興味をお持ちの方は、ぜひご利用ください。
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まとめ
今回の記事では、合理的配慮とはどのようなものかを解説しました。
障害者差別解消法の改正によって、障がいがあることを理由に差別的な扱いをしたり、教育や就業の機会を与えないことは禁止されています。
状況や障がいに合わせて、双方がよく話し合ってどのような配慮をするのか決定する必要があります。
これから受け入れする際には、学校や職場、障がいによっての具体例などを参考に、合理的配慮を実践してみてください。
