バリアフリーとユニバーサルデザインの違いは？簡単にわかる具体例や課題も解説！
「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」は、どちらも障がい者福祉と深く関わりのある言葉です。
一見、似たような意味合いに思える2つの言葉ですが、実際は考え方や対象者などの異なる点があります。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いがよくわからないと疑問に感じていませんか？
本記事では、バリアフリーとユニバーサルデザインの違いや簡単にわかる具体例、これから取り組むべき課題もご紹介していくので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
バリアフリーとは？
もともとバリアフリーは、障がいをもつ人が社会生活をするなかで、障壁（バリア）となるものを除去する（フリー）意味として使用されていました。
社会のなかにあるバリアは、大きく4種類に分けられます。
- 物理的なバリア
- 制度的なバリア
- 文化・情報面でのバリア
- 意識上のバリア
現在は、高齢者や障がいをもつ人のために、これらの社会的・制度的・心理的なすべてのバリアを取り除く・改善するという意味で使用されています。
バリアフリーは、以下のように家の中や公共施設などさまざまな場所に採用されているので、馴染み深いのではないでしょうか。
- 家の玄関先にスロープを設置する
- トイレに手すりをつける
- 駅のホームにホームドアを設置する
- 点字ブロックを設置する
人々が暮らしやすい社会をつくるためには、多様な人の立場に立ち、バリアをなくす「心のバリアフリー」の考えをもつことが大切です。
まずは、身近にどのようなバリアがあるのかを考えてみてください。
ユニバーサルデザインとは？
ユニバーサルデザインとは、障がいの有無や性別・年齢・人種などに関わらず、多様な人々が利用しやすい生活環境をデザインする考え方です。
- 誰でも公平に利用できる（公平性）
- 柔軟性が高く自由に使用できる（自由度）
- 使い方がわかりやすく簡単である（単純性）
- 必要な情報が理解しやすくわかりやすい（わかりやすさ）
- ミスや危険につながらない安全性の高いデザインである（安全性）
- 無理なく楽な姿勢で負担が少なく使用できる（省体力）
- 使いやすい広さや大きさが確保されている（スペースの確保）
ユニバーサルデザインにはこのような7原則があるので、併せて確認してみてください。
ユニバーサルデザインには、以下のようにさまざまな例があります。
- シャンプーの容器のギザギザ
- テレホンカードの切れ込み
- ボタンが低い位置にある自動販売機
- ノンステップバス
- 多機能トイレ
特別な工夫や設計が必要だと思われがちですが、意外と私たちの身近にあり、あたりまえの設計として浸透しているものが多いです。
普段、頻繁に使用する物のなかにも、ユニバーサルデザインが含まれているかもしれないので、ぜひ確認してみてください。
参考記事：バリアフリーとユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインのマークがある？
ユニバーサルデザインには、「すべての人にやさしいデザイン」を意味するマークがあります。
年齢や性別、国籍などに関わらず、誰もが理解できるデザインの図記号です。
そのなかでも、街中でよく目にする機会のあるマークが、ヘルプマークやマタニティーマークです。
ヘルプマークは、目に見えない疾患があるなどの援助を必要とする人を対象に、マタニティーマークは妊婦を対象にしています。
見た目では援助が必要か判断できない人でも、このマークを身につければサポートをお願いしやすくなります。
ユニバーサルデザインマークにはたくさんの種類があるので、さらに詳しく知りたい方は、以下の関連記事も併せてご覧ください。
関連記事：ユニバーサルデザインマークは何個知っている？数や意味・歴史も理解しよう！
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いは？
バリアフリーとユニバーサルデザインには、4つの違いがあります。
- 対象とする人の違い
- 行動主体の違い
- 障がいに対する考え方の違い
- 製品の魅力に対する考え方の違い
どのような違いがあるのかを理解すれば、2つの言葉をより正確にとらえられるので、確認していきましょう。
対象とする人の違い
バリアフリーとユニバーサルデザインの大きな違いは、対象とする人が違うことです。
主な対象が、高齢者や障がい者など特定の不具合を感じている人であるバリアフリーに対し、ユニバーサルデザインはそれに限らず、年齢や性別、人種などすべての人を対象にしています。
行動主体の違い
バリアフリーとユニバーサルデザインは、行動主体にも違いがあります。
行政の主導でおこなわれるバリアフリーに対し、ユニバーサルデザインは民間主導で進められています。
2006年に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」（バリアフリー新法）が施行されて以来、この法律をもとにバリアフリー化が進んでいます。
参考記事：高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に 関する法律
障がいに対する考え方の違い
障がいに対する考え方が異なるのも、バリアフリーとユニバーサルデザインの違いです。
バリアフリーが考える障がいは、目が見えない・耳が聞こえない・歩けないなど、日常生活に支障がある特定の性質です。
これらの性質に特化しているため、障がいのない健康な人の利便性はあまり考慮されません。
一方、ユニバーサルデザインは障がいを特別に扱いません。
誰もが一生のうちに、いずれかのタイミングで障がいに見舞われるものと考えます。
身体の特性や病気での不具合、幼少期や高齢期の不自由さなどもすべて障がいととらえるのが、バリアフリーと大きく異なる考えです。
そのため、ユニバーサルデザインではあらゆる人が使用するのを想定し、デザインをおこなっています。
製品の魅力に対する考え方の違い
製品の魅力に対する考え方も異なります。
すべての人が利用したくなる製品を作り普及させるには、製品にそれだけの魅力がなければいけません。
また、製品を継続して出し続けるには、経済コストも関わってきます。
バリアフリーはこのような市場の原理を考慮せず、デザイン性が欠けたり、制作コストが足らず大量生産が間に合わなかったりするケースが少なくありません。
一方、ユニバーサルデザインは市場原理を重視しており、バリアの除去と同等にビジュアル面のバリエーションも重視しています。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いの例は？
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いの例を、いくつかご紹介します。
ひとつ目は、家や施設の玄関前の段差に注目します。
高齢者や車椅子を利用する人も利用しやすいように、段差にスロープをつけるのはバリアフリーの考えです。
一方、ユニバーサルデザインの考えでは、建設時当初からスロープの設定を計画します。
ゴール地点は一緒ですが、完成するまでの経緯は異なります。
ふたつ目に注目するのはトイレです。
車椅子やベビーカーを使用している人が使用しやすいバリアフリー対応のトイレに対し、ユニバーサルデザインでは、子供用便器やオストメイト対応の洗浄機器、ベビーベッドなどを併設した多機能トイレを設置します。
誰のために設置されたのか考えると、対象者が異なるのがわかるのではないでしょうか。
関連記事では、ユニバーサルデザインの例や7つの原則をご紹介しているので、さらに理解を深めてみてください。
関連記事：ユニバーサルデザインの例と7つの原則とは？家や街中を探してみよう！
バリアフリーとユニバーサルデザインの共通点は？
バリアフリーとユニバーサルデザインの共通点は、考え方の基本に「思いやりや心のやさしさ」があることです。
物や施設の設備などのハード面のみでは十分なバリアフリーにはなっておらず、使いにくさを感じる人もいます。
サービスを提供する以前に、相手に対する思いやりがなければ、バリアフリーやユニバーサルデザインは実際には実現しません。
利用する人たちの立場に立ち、役に立ちたいという気持ちをもつことで、本当に使いやすく魅力的なものになります。
バリアフリーはユニバーサルデザインに含まれる？
バリアフリーとユニバーサルデザインには共通点があることをご紹介しましたが、バリアフリーはユニバーサルデザインに含まれるのでしょうか。
結論として、バリアフリーはユニバーサルデザインに含まれています。
両者とも、高齢者や障がい者に配慮する傾向がある点は一緒であり、バリアフリーは生活の支障を除去する考え、ユニバーサルデザインは利用しやすいデザインにすることを意味しています。
簡潔にいうと、バリアフリーはユニバーサルデザインの方法のひとつです。
バリアフリーとユニバーサルデザインの課題は？
バリアフリーとユニバーサルデザインの課題は、誰もがどこでも暮らしやすい社会を目指すことです。
たとえば、高齢者や障がい者が使用する施設や設備などを、より整える必要があります。
この背景にある社会課題は、日本の高齢化です。
日本では年々高齢化が進み、介護や医療を必要とする人の増加が予想されてます。
高齢化に対応するために、バリアフリートイレやスロープなど、高齢者や障がい者が使用する設備を今以上に増やす必要があります。
また、高齢者や障がい者など、特定の人が使用する設備だけを普及させればよいわけではありません。
バリアフリーが必要ではない、若い世代や一般の人が日常的に使用する学校やオフィス、飲食店などはこのままでよいでしょうか。
実際、このような施設は、バリアフリーやユニバーサルデザインがあまり進んでいません。
すべての人が便利で快適に生活を送るには、このような施設の設備にこそ力をいれる必要があります。
まとめ
バリアフリーとユニバーサルデザインは、対象者や障がいに対する考え方が異なるだけで、「思いやりと心のやさしさ」の観点では両者の概念は共通しています。
どちらも福祉に欠かせない考えですが、ハード面のみを進めるだけでは十分とはいえません。
ソフト面の整備も同時に進めることで、初めて本物のバリアフリー、ユニバーサルデザインが実現します。
住みやすさや暮らしやすさを考える際に、バリアフリーやユニバーサルデザインの考えが重宝されるので、ぜひ参考にしてみてください。
