手話通訳とは?必要な試験や合格率・仕事内容についても徹底解説!
手話通訳という職業を、1度は耳にしたことがあると思います。
ですが、手話通訳の詳しい仕事内容や「手話通訳者」と「手話通訳士」の違いなど、知らないことも多いのではないでしょうか。
本記事では、手話通訳に必要な試験や合格率、仕事内容などについて詳しくご紹介していきますので、手話通訳の仕事の勉強を検討している方はぜひ参考にしてください。
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目次
手話通訳とは?
手話通訳とは、聴覚障がい者が使用する手話などを用いて聴覚障がい者とそうでない方との仲介に入り、相互のコミュニケーションを可能にしたり聴覚障がい者のサポートをおこなうことです。
テレビ番組や講演会などで話者の隣で手話をしている方を見たことがあると思いますが、その方がおこなっているのが手話通訳です。
字幕のないテレビ番組や講演会の内容も、手話通訳があれば聴覚障がい者でも理解できます。
現在、手話通訳は就業や子育て、教育など聴覚障がい者の生活に関わるさまざまな場面で必要とされています。
手話通訳者と手話通訳士の違い
手話通訳を業務とする職種に、「手話通訳者」と「手話通訳士」があります。
どちらも主に手話通訳をおこなうので、同じもののように思えますが、この2つの職種にはどのような違いがあるのでしょうか。
手話通訳者とは、各都道府県で認定を受けて手話通訳をする人を指します。
全国手話研修センターが実施する「手話通訳者全国統一試験」に合格し、都道府県の審査に通過すると手話通訳者になれます。
一方、手話通訳士は資格の名称を表しており、聴力障がい者情報文化センターが実施する「手話通訳技能試験」に合格し、聴力障がい者情報文化センターに登録している人を指します。
手話通訳士は名称を表しているだけのため、この資格をもたなくても手話通訳の仕事をおこなうことは可能です。
手話通訳に携わる方の中には、手話通訳士の資格は取らず、手話通訳者の認定のみを受けて活動している方も多いようです。
国際手話通訳とは?
国際手話通訳とは、聴覚障がい者が国際交流の場で使用する手話の共通語である「国際手話」の通訳です。
手話は話し言葉と同様に国や地域で異なるため、聴覚障がい者が外国人との意思疎通をはかるにはその国の手話を使用しなければなりません。
しかし、国ごとの手話を覚えるのはとても大変です。
国際手話通訳は、聴覚障がい者と外国人との仲介に入って各国の手話や言語を国際手話に変換し、互いの意思疎通をサポートします。
聴覚障がい者の世界的な交流場である「世界ろう者会議」や、ろう者が参加する国際スポーツ大会「デフリンピック」など、さまざまな場所で国際手話通訳の方が活躍しています。
手話通訳の仕事内容は?
手話通訳の仕事内容は、あらゆる生活場面での聴覚障がい者に対する通訳のサポートです。
聴覚障がい者とそうでない人が1対1で会話をする際に仲介に入り、手話と音声言語の両方を通訳したり、講演会などで話者の発言内容を手話に変換して通訳するなど、聴覚障がい者のコミュニケーションのサポートをおこないます。
講演会や会議などのビジネスシーンだけでなく、病院や銀行など日常生活に必要な場面でも手助けをします。
手話通訳に向いてる人とは?
手話通訳の仕事に向いているのは、以下のようなスキルがある方です。
- コミュニケーション力
性別や年齢など関係なくさまざまな人とコミュニケーションをとる仕事なので、人と接することが好きでコミュニケーション力の高い人材が求められます。
- 他者への思いやり
聴覚障がい者とそうでない人の仲介に入って両者を良好な関係に築く必要があるため、他者への思いやりが大切になります。
- 傾聴力・表現力
聴覚障がい者の気持ちを読み取り、何を伝えるべきなのか正確な判断力が必要です。また、相手に正確な情報を伝えるために、言葉選びや伝え方などの表現力も重要です。
- 教養・専門的な知識
行政の窓口や医療現場など専門用語が必要な場所でも仕事をするので、それらの場所で使用される専門知識が必要になります。幅広い知識が必要なため、継続して勉強する意欲のある方に向いています。
手話通訳の年収はどのくらい?
手話通訳者の年収は、職業情報提供サイトjob tagによると平均579.8万円です。
しかし、雇用形態や働く地域などにより異なるため、一概には言えません。
非正規職員の場合、手話通訳の仕事のみで生計を立てるのは難しいともいわれているので、安定した収入を得たい場合は一般企業や福祉関連施設などで正規職員を目指してみるのもよいでしょう。
関連記事では手話通訳者の報酬について詳しくご紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。
関連記事:手話通訳者の報酬はどのくらい?必要性や仕事内容についても詳しく解説!
手話通訳はどんな場所で活躍できる?
手話通訳は、以下のようにさまざまな場所で活躍できます。
- 県庁・市役所などの行政機関
- 社会福祉協議会・障がい者施設などの福祉関連施設
- 手話通訳派遣センター
- 聴覚障がい者団体
- 自治体などでの手話講師
その他、ハローワークで聴覚障がい者の就労相談の通訳をする「手話協力員」などの募集もあります。
手話通訳自体は資格がなくてもできますが、近年では手話通訳士の資格が必要な募集条件も多くなっているため、就職先の候補を広げたい方は手話通訳士の資格を取得しておくとよいでしょう。
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手話通訳に必要な勉強や合格率は?
手話通訳者と手話通訳士では、それぞれに必要な勉強内容や試験の難易度にも違いがあります。
ここでは、それぞれに必要な勉強や合格率について、詳しくご紹介します。
手話通訳者
手話通訳者になるまでのステップは少し長いので、しっかり理解しておきましょう。
はじめに、以下のカリキュラムを取得します。
- 市町村で開催される手話奉仕員養成カリキュラム
- 都道府県・指定都市などで実施する手話通訳養成カリキュラム
これらのカリキュラムは、各自治体で開催される手話講習会などに通うことで取得可能です。
次に、都道府県や指定都市、中核市などがおこなう全国統一試験などの登録試験を受験します。
この試験は上記のカリキュラムを修了していないと受験できないため、注意が必要です。
手話通訳者全国統一試験の内容は、以下の通りです。
- 手話通訳者に必要な基礎知識
- 国語
- 場面通訳などの実技試験
手話通訳者全国統一試験の例年の合格率は、20%前後となっています。
国語に関しては、発音やアクセント、文法、表現法など幅広い範囲で出題されるので、しっかりと対策しなければなりません。
都道府県・指定都市・中核市などにより実施するカリキュラムの内容や試験の実施形態が異なる場合があるため、受験を考えている場合は事前にお住まいの市町村などにお問合せください。
手話通訳士
手話通訳士になるためには、手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)に合格しなければなりません。
受験するために必要な学歴はありませんが、手話通訳に関する知識を事前に学んでおくとよいでしょう。
手話通訳技能認定試験の内容は、以下の通りです。
- 障がい者福祉や聴覚障がいに関する基礎知識
- 手話通訳のあり方
- 国語などの学科試験
- 聞き取り通訳や読み取り通訳などの実技試験
手話通訳以外にも、障がい福祉や聴覚障がいの知識、国語などの学科試験もあります。
手話通訳士の合格率は、例年10%前後と低く難易度が高いので、計画的に試験対策をおこなうとよいでしょう。
参考記事:第33回(令和4年度)手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)の合格発表について
手話通訳をお願いするとどのくらいの費用がかかる?
手話通訳者の派遣費用は事業団体、派遣時間などにより異なりますが、手話通訳者1名で1時間あたり平均7,000円〜8,000円前後となっています。
一方、聴覚障がい者の方が日常生活で手話通訳を利用する場合、お住まいの市区町村にある意志疎通支援事業を利用すれば原則費用はかかりません。
詳しくは、お住まいの市区町村にお問合せください。
手話ができない聴覚障害者もいる?
聴覚障がい者のなかには、手話ができない方もいます。
聴覚障がいの原因は、生まれつきのものと、事故や病気などによる後天的なものがあります。
後天性で聴覚障がい者となった中途失聴者は発話できる人が多く、手話をほとんど使用しない人も少なくありません。
聴覚障がい者のコミュニケーション方法については以下の関連記事で詳しくご紹介しているので、こちらも併せてご覧ください。
関連記事:聴覚障害者は手話ができない?日本での普及率や私たちが気をつけるべきポイントもご紹介!
リアルタイムで伝えられるツールは手話通訳以外にもある?
手話は聴覚障がい者にとって重要なコミュニケーション方法ですが、手話がわからない人とは意思疎通がとれないという難点もあります。
ですが、リアルタイムで相手に情報や気持ちを伝えられるツールは、手話以外にもたくさんあります。
例えば、以下のような音声文字変換アプリを使用すれば、会議や日常の会話などの音声をその場でテキストに変換できるので、聴覚障がい者も相手の話している内容が理解しやすいです。
- こえとら
- UDトーク
- YY文字起こし
無料で使用できる音声文字変換アプリは以下の関連記事で詳しくご紹介しているので、こちらも参考にしてください。
関連記事:聴覚障害者向けの音声文字変換アプリ【無料】をご紹介!チームのコミュニケーションにもおすすめ!
リアルタイムで音声を文字化する「Pekoe」
「Pekoe」は、リアルタイムで音声を文字化する聴覚障がい者向けのコミュニケーションツールです。
会議や研修会などのビジネスシーンを中心に、話者をはじめ周りの人の音声言語をそのまま文字化します。
Pekoeを使用すれば、聴覚障がい者もその場の情報を瞬時に理解でき、さらに周りの参加者との意思疎通がしやすくなり、チーム全体のパフォーマンス力も高まります。
聴覚障がい者が参加する会議で手話通訳できる人がいない、手話通訳ができる人はいるが情報量が多く通訳が追いつかないなどの心配もいりません。
始め方もインターネット環境を整えるだけと簡単なので、聴覚障がい者の方がいる企業にお勤めの方は、ぜひ導入を検討してみてください。
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まとめ
手話通訳の仕事内容や試験内容、合格率などについて詳しくご紹介しました。
手話通訳をおこなう手話通訳者・手話通訳士は、仕事内容は同じものの資格の取得方法が異なります。
どちらも難易度の高い試験に合格しないといけませんが、取得すれば講演会や行政機関などさまざまな場所で活躍できます。
手話通訳者・手話通訳士のどちらとして働きたいのかを検討し、試験対策を始めてみましょう。
手話通訳の勉強をしたいけれど忙しくて時間がとれない方などは、聴覚障がい者向けのコミュニケーションツールもあるので、そちらもぜひ利用してみてください。
