ユニバーサルデザインには種類がある?具体例や必要とされる理由も解説!
ユニバーサルデザインは、障がいの有無、年齢、国籍などに関わらず、すべての人にとってわかりやすく使いやすいデザインです。
ユニバーサルデザインという言葉は知っているけれど、
「ユニバーサルデザインにはどのような種類があるの?」
「ユニバーサルデザインはどうして必要なの?」
と疑問を感じたこともあるのではないでしょうか。
本記事では、身の回りのユニバーサルデザインや珍しい種類のもの、原則と具体例、さらに必要とされる理由などを詳しく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ユニバーサルデザインは何種類ある?
ユニバーサルデザインには、大きく分けて「モノ」と「情報」の2種類があります。
モノと情報は、どちらも日常生活において欠かせないものです。
視点は異なりますが、モノのユニバーサルデザインも情報のユニバーサルデザインも、使う人を選ばず、誰もが使いやすいことが前提となっています。
モノと情報のユニバーサルデザインについて、それぞれ特徴をご紹介していきます。
「モノ」のユニバーサルデザイン
「モノ」のユニバーサルデザインとは、道具や建物など、普段人々が使用するものを誰にでも使いやすくしたものです。
身体が不自由な方や高齢者など、あらゆる人々が説明がなくても使用できるように、イラストを記載する、音を出す、物の位置を低くするなどの工夫がされています。
モノのユニバーサルデザインは身近にあふれており、自動ドアやスロープ、多機能トイレ、左利き用のハサミなどが該当します。
なかには、日常に溶け込んでいて一見ユニバーサルデザインだと気が付かないものもあるので、ぜひ身の回りにどのようなユニバーサルデザインが潜んでいるのかを探してみてください。
「情報」のユニバーサルデザイン
トイレの標識、音声付き家電、駅の電光掲示板などが情報のユニバーサルデザインに該当します。
「情報」のユニバーサルデザインは、ITによる通信技術が普及している現代において欠かせない存在です。
インターネットで何でも検索し、知りたい情報を見つけるのが当たり前の時代ですが、それが目や耳の不自由な方や子ども、外国人などすべての人に適しているわけではありません。
紙媒体の情報でも文字色やフォントデザインを変える、イラストを入れるなどして、ITによる情報のようにあらゆる人が受け取りやすいデザインにする必要があります。
関連記事では、ユニバーサルデザインについて詳しく解説しているので、こちらも併せてご覧ください。
関連記事:ユニバーサルデザインマーク何個知っている?数や意味・歴史も理解しよう
ユニバーサルデザインの7原則と具体例
ユニバーサルデザインには7つの原則があり、ひとつずつガイドラインが設けられています。
- 公平性
- 自由度
- 単純性
- わかりやすさ
- 安全性
- 省体力
- スペースの確保
どれも、わかりやすく使いやすいといった考えに該当する大切な原則です。
これらの7つの原則を知ることでユニバーサルデザインをより理解できるので、ぜひ目を通してみてください。
原則1:公平性
原則1は、誰もが公平に使用できることです。
障がいの有無などに関係なく容易に使えるもので、使用する際に差別感がでないようなデザインでないといけません。
具体例1:手すり
障がいがあり歩けない方や足が不自由な高齢者は階段や坂道を登るのが困難ですが、手すりがあることにより登りやすくなります。
具体例2:点字ブロック
点字ブロックは目が不自由な方の大切な情報源で、歩道や駅、公共のトイレなどに設置されています。
点字ブロックでは、道の誘導やトイレの位置など視覚障がい者が目で受け取れない情報も簡単にわかります。
手すりや点字ブロックなどのように、ユニバーサルデザインにはさまざまな種類のものがありますが、どれも利用者がどのような状態であっても公平に使用できることが決まりです。
原則2:自由度
原則2は、使用時の自由度が高いことです。
ユニバーサルデザインは、障がい者や身体に不自由のある人など、使用する人がそれぞれ必要な場面で使えるように配慮しなければなりません。
具体例1:みんなのトイレ
みんなのトイレは、男女問わず使用できるだけでなく、乳児のおむつを交換する台やオストメイト(人工肛門・膀胱)の方の汚物流し台の設置、車椅子の方でも動きやすいように広さを確保するなど、さまざまな工夫をしています。
具体例2:エレベーター・エスカレーター
移動手段に欠かせないエレベーターやエスカレーターも、ユニバーサルデザインです。
車椅子の方、早く上層階に行きたいという方はエレベーター、ゆっくり登りたい、体力に自信のない方はエスカレーターを利用するなど、そのときの場面にあわせて使い分けられるようになっています。
原則3:単純性
原則3は、使い方が単純でわかりやすいことです。
パッと見て、誰でもすぐに使用方法がわかるのがユニバーサルデザインです。
高機能なものやサービスであっても、説明書が読めなかったり使い方がわからない人がいたら意味がありません。
ボタンひとつ押すだけのようなシンプルな構造にしたり、目立つ大きさのマークを付けたりして、簡単に使用できるよう配慮する必要があります。
具体例:テレホンカード
テレホンカードやプリペイドカードなどは、よく見るとカードの一部に切り込みが入っています。
手で触れただけで挿入方向がわかるデザインになっており、視覚障がい者の方でも簡単にカードが使用できます。
原則4:わかりやすさ
原則4は、知りたい情報がすぐに理解できるわかりやすさです。
ユニバーサルデザインは、必要な情報がすぐにわかることがポイントです。
あらゆる人が情報を理解できるように、複数の言語を用いた文章やアナウンス、イラストの表示などが取り入れられています。
具体例:駅のアナウンス・ディスプレイ
電車の出発時間、次の駅名などを知らせるアナウンスや表示は、日本語だけでなく英語、中国語、韓国語などの多言語を使用しており、外国の方でもわかりやすくなっています。
また、アナウンスだけでなく看板やディスプレイも多言語で表示されており、アナウンスを聞き逃した場合でもすぐに確認できます。
原則5:安全性
原則5は、ミスや危険のない安全性のあるデザインです。
ミスや危険につながらないようなデザインにすることが、ユニバーサルデザインには不可欠です。
失敗や危険性をあらかじめ防いだり、間違えた場合にもフォローできる設計であると安心できます。
具体例1:パソコン
パソコンのワードやエクセルなどで編集中に誤ってデータを消してしまっても、戻るボタンを押せばひとつ前の状態に戻り危機を回避できます。
具体例2:駅のホームドア
近年設置数が増えている駅のホームドアは、ホームからの利用者の転落を防ぐ目的があります。
特に視覚障がい者や聴覚障がい者の方は電車のホーム侵入がわかりづらいですが、ホームドアがあることで電車との接触を未然に防げます。
原則6:省体力
原則6は、省体力で楽に使用できることです。
ユニバーサルデザインは、利用者の身体への負担をなるべく少なくするように配慮しなければなりません。
日本をはじめ世界中で、力を入れなくても機能するものや仕組みがたくさん導入されています。
具体例1:センサー式蛇口
蛇口をひねることなく手をかざすだけで水が出るセンサー式の蛇口は、体の不自由な方や高齢者など、手に力が入りづらい方でも楽に使用できます。
具体例2:改札機
改札機ではICカードのタッチが主流となり、切符の購入や改札機に通す手間が省けるようになりました。
日常生活に欠かせない動作をスムーズにできるようにすることが、ユニバーサルデザインの大切なポイントです。
原則7:スペースの確保
原則7は、使いやすさとスペースの確保です。
車椅子の方やベビーカーを押している方など、あらゆる方が使いやすいようにスペースが確保されていることが求められます。
具体例1:車椅子対応タクシー
車椅子対応タクシーは、車椅子に座ったままでも乗ることができる広いスペースが完備されているのが特徴です。
車を乗り降りする際に、わざわざ車椅子から降りる必要がなく、負担を少なくできます。
具体例2:多機能トイレ
多機能トイレには、車椅子やベビーカーでも入りやすい十分なスペースが確保されています。
また、多機能トイレの鍵は施錠しやすいように大きめのつくりになっている場所も多く、あらゆる視点で配慮が整っています。
参考記事:ユニバーサルデザイン7原則
ユニバーサルデザインが必要とされる3つの理由
ユニバーサルデザインが必要とされる3つの理由は、以下の通りです。
- グローバル化
- 少子高齢化社会
- 障がい者の権利保障
ユニバーサルデザインが必要とされている背景には、現在日本が抱えている課題や現状があります。
これらの課題や問題を解決するために、国が一丸となりユニバーサルデザインの導入や法律の制定に取り組んでいます。
グローバル化
旅行や就労目的で来日する外国人の数は年々増加しており、駅のアナウンスや商業施設の案内表示など、多言語に触れる機会はこれまでより多くなりました。
日本語の理解が乏しいと、災害時などに重要な情報が受け取れず、逃げ遅れるなど危険なリスクに及ぶことも十分に考えられます。
そのようなリスクを防ぐためにも、外国人でも理解しやすい情報や、物の使用方法の提示を実践することが大切です。
少子高齢化社会
日本では少子高齢化が進んでおり、高齢者の比率の増加にともないユニバーサルデザインはさらに必要となってきました。
加齢とともに筋力や視力、聴力などの身体機能の衰えだけでなく、理解力や判断力などの機能も低下するため、どのような配慮が必要か、高齢者目線になって考えなければなりません。
高齢者一人ひとりが明るく生活できるよう、ユニバーサルデザインの普及は大切です。
障がい者の権利保障
日本は「障がい者の権利に関する条約」を締結しており、障がい者の人権や尊厳の尊重の促進を実現するために法的な措置をとらなければなりません。
日本では、「障害者基本法」の改正や「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する法律」が成立し、この法的措置の義務を果たすことになりました。
ユニバーサルデザインは、障がい者の権利保障を実践的におこなうにあたり重要な役目であり、今後も積極的に進める必要があります。
ユニバーサルデザインとSDGsの関係は?
ユニバーサルデザインとSDGsにはどのような関係があるのでしょうか。
17の目標と169のターゲットがある国際目標のSDGsのゴールは、2030年までに地球上の誰ひとりも取り残さないこと(leave no one behind)です。
SDGsの17の目標のうち、3つにユニバーサルデザインとの関係性があります。
- SDGs4「質の高い教育をみんなに」
- SDGs10「人や国の不平等をなくそう」
SDGs4、SDGs10の2つでは、人種や性別、人権などに関わらず、誰もが教育を受けられたり、社会で均等に機会を得られることをゴールとしています。
ユニバーサルデザインの「誰もが平等に生活を送れるようにする」という目標と重なる部分があります。
- SDGs11「住み続けられるまちづくりを」
SDGs11では、子どもや障がい者、高齢者、社会的弱者などをターゲットとし、安全な交通機関の提供や災害による被災者を減らすことなどを目標としています。
ユニバーサルデザインでは、点字ブロックや駅のアナウンス、災害時の文字や音による情報提供などを組み込んでいます。
ユニバーサルデザインとSDGsに共通するのは、誰もが安心して暮らせるという考え方です。
SDGsの目標を達成させるために、ユニバーサルデザインの考え方に基づく商品やサービスの開発が進められています。
参考記事:SDGs17の目標|SDGsクラブ|日本ユニセフ協会
身の回りにあるユニバーサルデザイン
身の回りにあるユニバーサルデザインを6つご紹介します。
- 音響・時間表示信号機
- 自動販売機
- 照明のスイッチ
- 点字がついたアルコール缶飲料
- スマートフォン
- 紙幣
どれも身近に感じるものばかりなのではないでしょうか。
普段何気なく使用したり見かけているもののなかにも、ユニバーサルデザインは潜んでいます。
ひとつずつ詳しくご紹介しますので、実際に手にとったり見たりして確かめてみてください。
音響・時間表示信号機
「音響信号機」は青信号を音で知らせ、「時間表示信号機」は渡れる時間や待ち時間を数字やメーターで表示します。
普段街中でよく耳にする「ピヨピヨ」「カッコー」といった鳥の鳴き声もユニバーサルデザインで、目の不自由な人だけでなく、すべての人が青信号であることを瞬時に把握できます。
時間表示信号機は音響信号機に比べ少ないですが、待ち時間や青信号の残り時間がわかり、車椅子の方や子連れの方でもゆとりをもって行動できるのがメリットです。
自動販売機
自動販売機の商品の取り出し口や、お釣りの受け口が低い位置にあることに意味があるのをご存じでしょうか。
位置を低く設定しているのもユニバーサルデザインで、車椅子の方や子ども、高齢者でも使用しやすくするための配慮のひとつです。
他にも、商品の選択ボタンを低い位置に配置する、購入した商品を仮置きする台を設置するなどの配慮がされた新しいデザインの自動販売機が登場しています。
照明のスイッチ
家や会社で使用されている照明のスイッチにも、ユニバーサルデザインのものがあります。
スイッチの押す部分の面積が大きく、従来の小さいスイッチに比べて押しやすくなっているのが特徴です。
指先が不自由な方でも押しやすく、さらに両手が荷物などでふさがっているときには肩でスイッチを押すこともできます。
点字がついたアルコール缶飲料
アルコール缶飲料は、よく見ると飲み口の横に「おさけ」といった点字がつけられており、視覚障がい者の方の誤飲を未然に防げます。
また、低アルコール飲料のカクテルやチューハイなどはジュースと見間違えやすいパッケージも多いため、点字の他にも「おさけ」「ビール」と表示し、誰もが区別しやすいように工夫しています。
手にとった際にぜひ確認してみてください。
スマートフォン
「スマートフォンもユニバーサルデザインなの?」と驚くかもしれません。
スマートフォンは、文字の大きさやフォントを自由に変更したり、背景画面や明るさを自分好みにして、情報を受け取りやすくできます。
また、音声の文字起こしや読み上げ機能も充実しており、視覚障がい、聴覚障がいのある方や高齢者でも操作が簡単です。
生活必需品であるスマートフォンにも、あらゆる工夫が施されています。
紙幣
紙幣の両端には、紙幣の種類が指の触感で判別できるようにマークが入っており、目の不自由な方でも識別しやすくなっています。
意識して見ないと気付きにくいので、ぜひこの機会に見てみてください。
2024年度以降に印刷される新札では、これまでの紙幣よりもさらに識別がわかりやすくなるように数字のサイズを大きくしたり、識別マークの形状や位置などの変更が決まっており、わかりやすさは刷新ごとに追求されています。
珍しいユニバーサルデザインはある?
最後に、珍しいユニバーサルデザインを3つご紹介します。
- グリップ付き包丁
- ピンチハンガー
- ハンドル付き踏み台
ユニバーサルデザインのなかには、「こんな発想もあるのか」と思わず驚いてしまうようなデザインのものも多いです。
どのような特徴があるのか、ひとつずつ詳しくご紹介していきます。
グリップ付き包丁
従来の包丁は、柄の部分を強く握らないと食材が切れません。
グリップ付き包丁は、使用する方の身体状況に合わせてハンドルの角度を自由に変更できます。
手首に力を入れずに食材が切れるので、手首の不自由な方や車椅子に座ったままの方でも料理ができます。
また、左手でも使用できるため左利きの方にもおすすめです。
参考記事:UDグリップ包丁(両手用)
ピンチハンガー
ピンチハンガーは、洗濯バサミが多数付き一度にたくさんの洗濯物を干せるハンガーです。
ピンチハンガーにはユニバーサルデザイン使用のものもあります。
通常のピンチハンガーは片手で洗濯物を持ち、もう片方の手で洗濯バサミをつまむ必要がありますが、このピンチハンガーは片手の指だけで軽い力でつまめます。
開閉レバーを握れば一列分の洗濯物が一度に外れるので、洗濯バサミをつまむ回数も最小限に減らすことが可能です。
指に力が入りづらい方や高齢者だけでなく、洗濯の時間を短縮したい方にもおすすめです。
参考記事:いちどにありがとう32
ハンドル付き踏み台
踏み台に乗るときバランスがとれず恐怖を感じることがあるかもしれません。
そんな悩みを解決するのが、ハンドル付き踏み台です。
踏み台の高い位置にハンドルが付いており、スムーズに乗り降りができます。
女性でも安心して使え、家事や仕事中にも活躍してくれます。
参考記事:HANDLE STEP
まとめ
ユニバーサルデザインの種類についてご紹介しました。
日常でよく見かけるものや使用しているもののなかにもユニバーサルデザインはたくさんあり、誰もが生活しやすいように工夫されています。
家のなかや外に出たときに、どのようなユニバーサルデザインがあるのか、ぜひご自身でも探してみてください。
また、ユニバーサルデザインは、本記事でご紹介したもの以外にもさまざまな種類があります。
関連記事では、その他のユニバーサルデザインもご紹介しているので、ぜひご覧ください。