障害者とのコミュニケーションツールは?活用事例をご紹介!

視覚や聴覚などに障害のある方とは、コミュニケーションをとることが難しいケースがありますが、これを支援するためのコミュニケーションツールが存在します。
この記事では、障害者とのコミュニケーションツールの種類・概要・活用事例などについて解説します。
障害をもつ方とコミュニケーションをとる機会がある方は、参考にしてみてください。
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目次
障害者へのコミュニケーション支援とは?
障害者へのコミュニケーション支援とは、障害が原因で意思疎通を図ることが難しい方を、手話通訳者や代筆などの方法で支援する事業です。
これは、障害者総合支援法に基づいた各自治体が実施する、地域生活支援事業の必須事業のひとつとなっています。
コミュニケーション支援をおこなう支援者には、厚生労働省令に基づいた認定資格試験に合格した人や、自治体などで養成された人が割り当てられます。
参考記事:意思疎通支援|厚生労働省
障害者への理解と合理的配慮
障害者への支援に関しては、さまざまな政策がとられていますが、自治体などがどれだけ支援したとしても、障害者への理解と合理的配慮が不可欠です。
日本では「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」を求める障害者差別解消法が、2016年に施行されています。
「不当な差別的取扱い」とは、障害者に対して正当な理由なく、障害を理由とした差別をすることです。
具体的には、障害を理由としてサービスの提供を拒否したり、時間や場所に制限をつけたりすることがこれにあたります。
「合理的配慮」とは、障害者が社会生活をするうえで生じる問題について、障害をもたない人と同じことができるように障害者が対応を求めた場合、負担が重すぎない範囲で対応しなければならないということです。
この「負担が重すぎない範囲」での対応とは、障害がない人と同じ対応ができない場合、可能な範囲で配慮することと、その内容を相手に伝えて了承を得ることが含まれます。
参考記事:「合理的配慮」を知っていますか?|内閣府
障害者への接し方
障害のない人に、差別的な意図がなくても、障害者への接し方によっては差別と捉えられるケースがあります。
そのため、日常生活において障害者と接するときは、配慮が必要です。
障害者と会話をする際、コミュニケーションが成立しているように見えても、実際には話が伝わっていない、話したことを理解していないと感じることがあるかもしれません。
この場合、障害者が意味を正しく受け取っているかを確認しておいたほうがよいでしょう。
また、他の人の言動から学ぶことが苦手な障害者も存在します。
一般的に社会常識とされていることでも、その意味や手順を丁寧に説明しないと、障害者側が「聞いていない」「知らない」と感じることもあります。
相手のことをよく理解し、お互いの基本的な認識について確認しておかなければなりません。
参考記事: 精神・発達障害者しごとサポーター 養成講座|内閣府
障害によりコミュニケーション方法は異なる

障害者はそれぞれもっている障害に違いがあり、その障害によりコミュニケーション方法は異なります。
そのため、相手がもつ障害に適したコミュニケーション方法をとることが重要です。
例えば、目が見えない障害者であってもその程度や範囲が異なるため、それぞれに適したコミュニケーションが必要です。
ここでは、障害に応じた適切なコミュニケーション方法について解説します。
目が見えない人とのコミュニケーション方法
目が見えない人とのコミュニケーション方法は、その障害の状態や目が見えなくなるまでの経緯によって異なります。
主なコミュニケーション方法には、
- 手書き文字
- 触手話
- 点字筆記
- 指点字
- ローマ字式指文字
- 文字筆記
- 弱視手話
- 音声
などがあります。
「手書き文字」は、手のひらに指先などで文字を書いて伝える方法です。
「触手話(触読手話)」は、話し手が手話を表し、障害者がその手に触れることで伝える方法です。
「点字筆記」は、点字を読み取ることでおこなうコミュニケーションで、タイプライターや点字ディスプレイを使います。
「指点字」は、障害者の指を点字タイプライターのキーと想定して指を打つコミュニケーション方法です。
「ローマ字式指文字」は、指で作ったアルファベットを障害者の手に触らせることで伝える方法です。手の動きが少ないため、少ない数の文字で表現できるメリットがあります。
「文字筆記」は、紙にペンで文字を書いて伝える方法で、これ以外にもパソコンで文字を入力する方法もあります。
「弱視手話」とは、視覚障害の状態に合わせて、話し手との距離や手を動かす幅などから、手話を目で見て読み取る方法です。
「音声」とは、耳が聞こえる全盲難聴や弱視難聴の障害者に、耳元や補聴器のマイクで直接話す方法です。
参考記事:盲ろう者のコミュニケーション方法
耳が聞こえない人とのコミュニケーション方法
耳が聞こえない人とのコミュニケーション方法には、
- 手話
- 指文字
- 読話
- 補聴器
- 筆談
などがあります。
「手話」は、聴覚障害者の生活から生み出された言語で、手や体の動きでコミュニケーションをとる方法です。
また、同じ表現方法であっても、表情・口の形・位置・強弱などで意味あいが変わります。
「指文字」は、50音を指の動きで表現する方法です。一字一句正確に伝えることができますが、多用すると読み取りが難しくなるという難点があります。
「読話」は、口の動きや会話の前後から内容を推測する方法です。
ただ、日本語には同口形異音が多いため、読話のみですべてを理解するのは困難なケースがあります。
「筆談」は、日本語の読み書きができる聴覚障害者に有効な方法です。
ただ、筆談のみでは細かいニュアンスが伝わりにくいという側面があります。
「補聴器」は、耳が少しでも聞こえる障害者に有効な方法ですが、完全に聞き取れるわけではなく、補聴器をつけていてもすべての言葉を聞き分けられるとは限りません。
そのため、補聴器をつけていても周囲の協力が必要です。
他にも、聴覚障害者のために手話通訳者や要約筆記者を派遣する制度もあります。
聴覚障害者へのコミュニケーションについては、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:聴覚障害者へのコミュニケーション時の配慮とは?私たちにできること
コミュニケーションをとる際に気をつけること
先に述べたように、障害者とコミュニケーションをとる際は、さまざまな方法を活用します。
障害がない人とのコミュニケーションとは異なるため、障害者とコミュニケーションをとる際には気をつけることがあります。
ここでは、視覚障害者と聴覚障害者についてそれぞれコミュニケーションの際に注意すべき点について解説します。
障害者とコミュニケーションをとる機会がある方は、参考にしてみてください。
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視覚障害者とのコミュニケーション時の注意点
視覚障害者には、目が見えない方と見えにくい方がいます。
そのため、それぞれコミュニケーションのとり方を変える必要があります。
視覚障害者が困っているように見えた場合は、まず声をかけてあげてください。
困っているように見えない場合は、すぐに手を貸す必要はありません。
注意点としては、あいさつする際は、必ず名前を名乗りましょう。
また、立ち去るときは、一声かけるようにしましょう。
声をかけないと、人がいなくなったことに気づかない場合があります。
手を引いて道を誘導する場合は、視覚障害者に肘を軽く持ってもらうか肩に手を置いてもらい半歩前を歩くようにします。
また、階段やエレベーターがある場合は、上がりになっているのか下がりになっているのかを教えるようにしましょう。
もし白杖を使っている場合、視覚障害者にとって白杖は目の役割を果たすため、白杖を持つ手に触れると驚いたり不安を感じる場合があります。
白杖を持つ手をつかむことは避けるようにしてください。
聴覚障害者とのコミュニケーション時の注意点
聴覚障害者にとっては、音が聞こえないことよりも、話が通じないと思われてコミュニケーションを避けられることが悩みです。
そのため、話が通じにくくても、コミュニケーションはとっていくようにしましょう。
聴覚障害者のなかには、話し手の口元を見て会話の内容を理解している方もいます。
そのため、耳元で話すと口元の動きが分からなくなってしまい、逆に口元が近すぎても読み取りづらくなります。
コミュニケーションをとる際の注意点は、話すときは口元が見えるようにして、口をはっきりと動かし母音の区別をつけましょう。
もしマスクをしている場合は、マスクをはずすか筆談にしてください。
聴覚障害者とのコミュニケーションでは声が大きいほうがいいと思われがちですが、これも障害の度合いによって異なるため、コミュニケーションをとる際には確認するようにしましょう。
聴覚障害者とコミュニケーションがとれるツール

現在、聴覚障害者とコミュニケーションがとれるツールがいくつか開発されています。
ここでは、そのツールの特徴について解説します。
「UDトーク」は、会話を視覚化することで、コミュニケーションを支援するアプリです。
UDトークには、
- テキストの読み上げ
- 音声認識による会話のテキスト化
- 多言語翻訳
- 手書き入力
- 読み仮名の表示
という機能があります。
聴覚障害者とのコミュニケーションだけでなく、多言語翻訳や読み仮名の表示機能により言語や世代を問わず利用できます。
参考記事:UDトーク
「こえとら」は、聴覚障害者とのコミュニケーションを支援するアプリで、特に外出先で便利なツールです。
こえとらには、
- テキストの読み上げ
- 音声認識による会話のテキスト化
- 定型文の登録
- 手書き入力
- 地図を使った場所の表示
という機能があります。
定型文を登録することができるため、会話でテキストを入力する手間が省けます。
また、地図の表示が可能なので、道を教える際にも便利です。
参考記事:こえとら
「Notta」は、会議中の発言をリアルタイムで文字起こしする議事録作成ツールです。
リモート会議での自動文字起こしや録画が可能で、気になった部分をその場で再生して確認し直すこともできます。
Nottaには、
- 会話の文字起こし
- 音声ファイルの文字起こし
- Web会議の文字起こし・録画
- 発言者の識別
- チームワークスペースの作成
などの機能があります。
文字起こし結果を42言語に翻訳できるため、研修などのサポートにも役立ちます。
参考記事:自動文字起こしサービス|Notta
聴覚障害者向け支援ツール「Pekoe」
株式会社リコーでは、聴覚障害者向けの支援ツールとして「Pekoe」というサービスを提供しています。
ここでは、Pekoeがどういったサービスなのか解説します。
「Pekoe」は、主に聴覚障害を持つ方とそうでない方が共に働く場面で活用できるツールです。
主な機能としては、
- 会話を音声認識して文字化
- 誰でも誤変換の修正が可能
- 過去の研修動画に字幕を表示
というものがあります。
Pekoeは、会話を音声認識して字幕で表示するなど、視覚化をおこないます。
音声認識で誤認識した場合は、その場で修正することが可能です。
また、過去の動画にも字幕を表示できるため、聴覚障害者でなくても役立つツールとなっています。
簡単にセットアップできるため、すぐに導入できるのもメリットです。
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「Pekoe」の導入事例
ここでは、「Pekoe」の導入事例についてご紹介します。
「株式会社オカムラ様」には、聴覚障害者とのコミュニケーションをより密にする目的でPekoeを導入いただきました。
関連記事:聴覚障がい者向けの会議ツールPekoe(ペコ)の導入事例
従来は、聴覚障害者とのコミュニケーションにタイピングなどを利用していたそうですが、タイピングだけではちょっとした会話などを伝えることができないという問題がありました。
また、文字起こしをする際に、誤変換によって主旨が誤って伝わってしまう、という問題もあります。
Pekoeを導入することで、音声認識機能により些細な会話も文字化することができ、誤変換もすぐに修正できるため、正しい情報を伝えることが可能になっています。
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まとめ
ここまで、障害者へのコミュニケーション支援についての概要、コミュニケーションの方法と注意点、コミュニケーションをとるためのツールについて解説しました。
障害者へのコミュニケーション支援とは、聴覚・視覚などの障害者に、手話などでコミュニケーションを支援する事業のことです。
障害者とのコミュニケーションは、通常とは異なり障害の内容に合わせた支援が必要です。
また、現在では障害者とのコミュニケーションを支援するツールが開発されていて、音声のテキスト化など会話の視覚化により支援できるようになっています。