SDGs1『貧困をなくそう』で私たちにできることは?世界や日本の現状と取り組みを解説!

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SDGsが掲げる目標1「貧困をなくそう」の達成に向けて、私たちはなにをすればいいのだろうか、という疑問をお持ちの方は多いかもしれません。

この目標を達成するために、私たちができることはたくさんあります。

そのためには、まず貧困とはなにかということを正しく理解しなければなりません。

今回の記事では、SDGs1「貧困をなくそう」で私たちにできることはなにか、SDGsの世界や日本の現状と取り組みを解説しています。

ぜひ参考にしてみてください。

SDGs1「貧困をなくそう」とは

SDGs1「貧困をなくそう」とは、具体的にどのような内容かを解説します。

世界で貧困に苦しむ人の数は、1990年の19億人に比べると、2015年には8億3600万人にまで減少しました。

しかし世界では、いまだに多くの人々が貧困のなかで暮らしており、十分な食料や飲み水、衛生環境の整った場所では生活できていないのが現状です。

SDGs1は、「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つこと」を目標としています。

貧困をなくすためには、国のサービスやインフラを整える必要があります。

食糧不足を解決させるだけでなく、教育や医療の分野でも環境を改善していくことが重要です。

SDGs1目標「貧困をなくそう」のターゲット

SDGs1目標「貧困をなくそう」のターゲットは、大きく7つに分けられます。

1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる

2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる

3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度および対策を実施し、2030年までに貧困層および脆弱層に対し十分な保護を達成する

4 2030年までに、貧困層および脆弱層をはじめ、すべての男性および女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地およびその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する

5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する

6 あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する

7 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域および国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する
引用元:SDGグローバル指標(SDG Indicators)

このように、立場の弱い人々を守る社会的な仕組みづくりを各国でおこなうことが目標とされています。

そもそも「貧困」とはなにか

ここからは、そもそも「貧困」とはなにかを解説します。

具体的にどのくらいの貧しさを貧困と定義づけるかの指標は、組織や団体、機関、国などによってさまざまです。

そのため世界では、貧困の定義が複数存在しています。

国連機関のUNDP(国連開発計画)では、「教育、仕事、食料、保険医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態のこと」を貧困の定義としています。

社会で生きていくためには、住む場所、お金、食事などが必要ですが、これらの不足により命を守りながら人間らしい生活を送ることが難しい状態を貧困ととらえることが多いです。

さらに貧困の中には、絶対的貧困と相対的貧困という定義が存在しています。

絶対的貧困

絶対的貧困とは、ある必要最低条件の基準が満たされていない状態を示します。

一般的には、 最低限必要とされる食糧と生活必需品が購入できるだけの所得、または支出水準に達していない人々を絶対的貧困者と定義します。

例えば、何らかの事情があって住む家がない、食事を摂りたいが食料が買えない、子どもの体重が平均を著しく下回る状態です。

海外ではストリート・チルドレンなどが絶対的貧困者にあたります。

相対的貧困

相対的貧困とは、ある国や地域社会の水準と比較して大多数よりも貧しい状態を示します。

所得でみた場合、世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分(貧困線)に満たない場合は相対的貧困となります。

相対的貧困に関連するのが、地域内の所得の平等・不平等度を示す「ジニ係数」や、「所得階層別の所得シェア」です。

相対的貧困は目に見えづらい側面もあり、近年では子どもの貧困が懸念されています。

参考記事:第3章 貧困指標

日本の貧困率は高いのか?

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ここからは、日本の貧困率は高いのかについて解説していきます。

貧困率とは、国や地域における貧困状態を表す指標で、生活状況が自分の所属する社会の大多数よりも貧しい状態にある人の割合を指します。

厚生労働省の調査では、2018年の日本の貧困率は15.4%であり、子どもの貧困率は13.5%、世界貧困率ランキングの12位に入るほどの高さです。

この状況は、経済的な問題や現代社会のさまざまな変化、人口推移など多種多様な要因が絡み合って生まれたと考えられています。

さらに、貧困問題は都道府県でばらつきがあり、貧困率には地域差があります。

地域の特性や、子どもが置かれている環境などが貧困率を高めている要因とされます。

参考記事:OECD経済審査報告書(2017年)

世界や日本の貧困の現状

私たちがSDGsの目標達成をするためには、貧困の現状を正しく把握しておく必要があります。

その上で、貧困撲滅に向けて行動しなければいけません。

ここからは、世界や日本の貧困の現状はどうなっているのかを解説していきます。

1980年代には、多くの途上国で市場経済メカニズムに依拠する、構造調整政策を通じた開発手法が採用されました。

しかし、この手法は順調には進まず、貧困の悪化をも引き起こすことがありました。

その反省もあり、1990年代には貧困に対する関心が高まり、1995年の世界社会開発サミットでは人間中心の社会開発を目指し、世界の絶対的貧困を半減させるという目標が提示されました。

では、世界における貧困の現状と日本における貧困の現状をご紹介します。

参考記事:グローバルな貧困の現状

世界における貧困の現状

まず、世界における貧困の現状を解説します。

2015年10月、世界銀行は貧困の基準を1日1.90ドル以下の収入と設定し、さらに2022年9月には、2.15ドルに引き上げられました。

世界銀行のデータによると、当時およそ7億3600万人がこのわずかな収入で生活しており、世界人口の約10%が貧困にあることを示しています。

1990年の世界の貧困率は約36%であり、2015年までには大きな改善がみられるものの、撲滅となるといまだに課題は山積みです。

貧困問題で特に重大とされているのは以下の2つの問題です。

1.貧困による子どもの死亡率

国連の「死亡率推計に関する機関間グループ」の報告書では、2017年に死亡した15歳未満の子どもは推計630万人で、毎日およそ1万7000人が亡くなっていることになります。

そのうち540万人が5歳未満児で、その50%はサハラ以南アフリカ、30%は南アジアです。

死亡原因は、技術のある助産師が立ち会わない出産、不十分な健康管理・不衛生な環境による肺炎・マラリア・はしかなどの感染症・合併症でした。

2.貧困の地域格差

国連開発計画(UNDP)とオックスフォード貧困・人間開発イニシアティブ(OPHI)が発表した「多次元貧困指数」によると、多次元貧困層の83%はサハラ以南アフリカと南アジアです。

多次元貧困指数とは、所得だけでなく、健康・教育・生活水準の3つの要素から貧困層を定義する指標であり、いくつもの種類の貧困に同時に直面している人々を指します。

サハラ以南アフリカでは、人口の58%にあたる5億6000万人、南アジアでは人口の31%にあたる5億4600万人が多次元貧困層です。

これらの地域ではさらに貧困層が拡大しており、他の地域との格差が広がっています。

参考記事:世界銀行「世界の貧困に関するデータ」

日本における貧困の現状

次に、日本における貧困の現状を見ていきます。

日本では、相対的貧困層の家庭と、そうでない家庭の所得格差は広がる一方です。

総務省では、所得格差を測るため、ジニ係数と平均所得の推移を公表しています。

ジニ係数とは所得分配の不平等さを測る指標であり、0に近いほど公平に分配され、1に近いほど不平等さが1世帯に集中していることを表します。

そのため、1に近ければ近いほど所得格差は大きくなっていることがわかります。

このジニ係数は、1999年は0.472でしたが、2017年は0.5594に上昇しました。。

現在は横ばいですが、少子高齢化や単身の増加で世帯の小規模化が進み、所得のジニ係数は上昇する見込みです。

世帯構造別では、ひとり親世帯の貧困率は2018年で48.1%となっており、ピーク時よりは下回っているものの、おおよそ半数が貧困状態であるとされていると報告されました。

日本の貧困は都道府県によってばらつきがあり、低い地域と高い地域があります。

特に貧困率が高い地域は、沖縄県、高知県、鹿児島県、徳島県で、最低賃金が全国平均よりも低いことや、非正規雇用率が低いことなどが要因と考えられます。

参考記事:厚生労働省「所得再分配によるジニ係数の改善の推移」

SDGs1目標「貧困をなくそう」への取り組み

SDGs1目標「貧困をなくそう」を達成するために、世界中で積極的な取り組みがおこなわれています。

国家レベルでの大々的なものや、身近な生活を良くしていこうする支援団体による活動など、さまざまな取り組みがあります。

ここからは、世界と日本の具体的な取り組み内容を解説します。

世界の貧困への取り組み

まずは、世界の貧困への取り組みをご紹介します。

先進国では、貧困をなくすために政府がさまざまな取り組みをおこなっています。

例えばドイツの場合、給付金や住宅手当などの経済支援、法律で定められた育児手当や育児休暇により子どもがいる世帯への支援が実施されている点が特徴です。

給付金や休暇を通じて「食糧が手に入らない」、「教育を受けられない」などの問題をなくすため、このようなことに取り組んでいるのです。

一方、途上国では、さまざまな要因から十分な貧困対策を政府が実施できているとはいえません。

十分な予算を確保できない、貧困対策よりも重大な問題が発生している、などの要因があります。

それらの途上国で、貧困問題の解決に取り組んでいる支援団体は少なくありません。

ユニセフの場合、栄養治療食やワクチン、鉛筆・ノートの提供などさまざまな物で支援を実施中です。

現地での支援活動や実態調査などによっても、貧困問題の解決に取り組んでいます。

このように、政府が主体となって政策をとっている国もありますが、民間団体の活動によって貧困を減らす取り組みもおこなわれています。

日本の貧困への取り組み

続いて、日本の貧困への取り組みをご紹介します。

日本では生活に困っている人を支援するために、生活困窮者自立支援制度があり、次のような支援事業がおこなわれています。

【日本政府がおこなっている主な貧困対策事業】

  • 自立相談支援事業
  • 住居確保給付金の支給
  • 就労準備支援事業
  • 家計改善支援事業
  • 就労訓練事業
  • 生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業
  • 一時生活支援事業

国の制度に加えて、子ども向けの支援活動や生活困窮者への支援をおこなっている団体もあります。

子どもたちへの教育支援、生活費に困っている人への食料支援などを通じて「教育を受けられない」、「食料が手に入らない」といった問題の解消に取り組んでいます。

例えば子ども食堂は、主にNPO法人や地域住民によって運営され、食事を提供することを目的としたコミュニティです。

食事を通して地域の交流を増やしながら、経済的理由や家庭の事情で栄養のある食事が摂れない子どもたちへ、食事の支援をするという社会的な役割を担っています。

さらに、ひとり親世帯の育児のサポートのため、託児所や保育園も増加しています。

親が一人しかいないせいで収入が少なかったり、子育てと仕事の両立が難しく、正社員としてフルタイムで働けなかったりといった問題を解決することが目的です。

2017年の保育所等の数が32,793ヵ所に対し、2019年には36,345ヵ所に増加しています。

しかし、2022年に出された厚生労働省の待機児童等に関する資料では、待機児童の数は減少しているものの、2,944人の待機児童がいると報告されています。

さらなる保育所等の増加が必要ではありますが、このように地域ごとに子育て環境の整備が進められています。

参考記事:厚生労働省「待機児童数公表」

貧困をなくすためにはどうすればいい?

問題解決に向けて、国や慈善団体がさまざまな活動をおこなっていますが、今もなお支援を必要としている人がいるのは事実です。

では、貧困をなくすためにはどうすればいいのでしょうか。

日本が世界の貧困問題を解決するためには、次のような取り組みが求められます。

【保健分野】

  • ポリオや結核などの予防ワクチンの開発・販売
  • 学校給食のサービスの提供
  • 健康補助食品の製造・販売による栄養改善
  • 通信回線を通した遠隔医療
  • 医療・介護人材プラットフォームの提供

【金融分野】

  • 貧困層を対象に、小口の融資や貯蓄などのサービスをおこなうマイクロファイナンス設立
  • 日本証券業協会や民間証券会社による子どもの貧困解消を目的とする基金の創設や融資

このほかに、自然災害、紛争や貧困などによる人道危機や、生活の危機にさらされた人々を、教育、水衛生、保健、シェルター、生計向上、弱者保護、物資配布などの分野で支援していくことが必要です。

参考記事:(ODA) 日本人の私たちだからこそ 世界のために今できること | 外務省

貧困をなくすために私たちができること

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貧困をなくすために私たちができることはなにがあるのでしょうか?

まず、私たちが真っ先に思い浮かぶのは、寄付ではないでしょうか。

ユニセフやチャイルドスポンサーシップへ寄付することで、発展途上国の子どもたちを支援できます。

インターネットを通じて、不特定多数の人々から資金を調達するクラウドファンディングでは、少額から貧困に関するプロジェクトへの支援が可能です。

寄付のほかにも、日々の買い物で国際フェアトレード認証ラベル製品を購入するのも、私たちが貧困をなくすためにできる小さな支援になります。

一人でも多くSDGs1の「貧困をなくそう」について考え、行動を起こすことが貧困を減らすことにつながります。

関連記事:サステナビリティのマークとは?認証の種類や意味を知り取り組もう!

個人でもできること

貧困をなくすために、個人でもできることはたくさんあります。

例えば、子ども食堂でできる支援はこちらです。

  • ボランティアで参加する
  • 食材を寄付する
  • お金を寄付する
  • 場所を提供する
  • 広報活動に協力する

ボランティアとして食事を準備したり、子どもたちの面倒を見たりするのも、もちろん助けになります。

レストランや食材に関わる仕事をしている人であれば、使用する食材の一部を子ども食堂に寄贈するのも支援です。

子どもたちが集まれる広いスペースを持っていれば、子ども食堂を開催する場所を提供することも可能です。

支援を必要とする子どもたちが、子ども食堂の存在を知ることも大切であるため、広報活動の協力もできます。

中学生や高校生ができること

貧困問題を解決するために、中学生や高校生ができることを解説します。

学生の場合、金銭的な支援や食材を寄付するのは難しいかもしれません。

大事なのは貧困が自分たちの身近な問題であることを知り、行動することです。

世界中の貧困の状況を知り、どのような取り組みをおこなっているのかを学ぶことで、行動を考えるきっかけになります。

行動したいと思ったときには、支援団体などでボランティア活動ができます。

子ども食堂や高齢者支援のボランティアなど、自分の暮らす地域では貧困問題解決に向けてどのような支援活動があるのか調べてみてはいかがでしょうか。

子どもと一緒にできること

家庭で子どもと一緒にできることもあります。

親子でできる支援のひとつは、使わなくなったおもちゃや服を途上国に寄付することです。

遊ぶ機会や適切な衣生活が実現することで、教育の機会を平等に与えられることにつながります。

寄付団体によっては、不用な物をお金に換えて、必要なところへ寄付する取り組みもあります。

寄付でなくても、食べ残しはどうしてだめなのか、物を大事にする意味など、親から子に伝えていくことで、子が大人になったときに行動を考えるきっかけになるかもしれません。

                                 

まとめ

今回の記事では、SDGs1「貧困をなくそう」で、私たちができることについて解説しました。

貧困の解決に向け、これからどのようなことをしたらいいのか考えるには、まず日本や世界の貧困の現状を正しく理解しなければいけません。

貧困をなくすために、私たちができることはまだまだたくさんあります。

この記事が、貧困問題に関心を持って行動するきっかけになれば幸いです。