SDGsとサステナビリティの違いは?CSRとの使い分け方法について
SDGsとサステナビリティの違いを、ご存じでしょうか?
一見、同じ意味のように思われるかもしれませんが、実はそれぞれ異なる意味合いをもちます。
この記事では、SDGsとサステナビリティの違いやCSR・ESGの使い分けについて、詳しく解説していきます。
SDGsやサステナビリティの知識を深めるために、ぜひ参考にしてみてください。
目次
SDGsとサステナビリティの違い
ニュースで耳にすることも増えてきたSDGs・サステナビリティという言葉ですが、意味を正しく理解するのが難しく感じていませんか?
はじめに、SDGsとサステナビリティの意味や違いについて解説します。
- SDGs(Sustainable Development Goals)
2015年に開かれた国連サミットで、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている国際目標。貧困・飢餓・健康・福祉など17のゴールが構成され、2030年までによりよい世界を目指す。2001年に定められた、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継。
- サステナビリティ
社会や環境、経済のバランスを整え、世の中全体を持続可能な状態にする考え方。企業がサステナビリティに取り組むことを、コーポレート・サステナビリティという。
簡潔にいえば、SDGsはサステナブルな世界を目指すための世界共通目標、サステナビリティは世界全体を持続可能な状態にしていく考え方を意味しています。
サステナビリティという言葉が広まったのは、SDGsがきっかけといってもおかしくありません。
それは、持続可能性やサステナビリティといった概念を具体的に目標としたのがSDGsだからです。
サステナビリティを目標とした行動をとるならば、まずはSDGsの17の目標を把握する必要があります。
参考記事:JAPAN ADGs Action Platform
サステナビリティの3つの柱とは何か
サステナビリティには、3つの柱があるとされています。
- 経済発展
- 社会発展
- 環境保護
元々、水産資源を減らさず漁獲量を持続させるという分野で用いられていたサステナビリティですが、現代では開発と環境のみならず、社会や環境、経済に与える影響を踏まえ、現在の価値を失わず維持し続けるといった考え方がメジャーです。
これら3つの観点を含んだ事業を展開している企業の事例が、以下の通りです。
- トヨタ自動車
2019年にサステナビリティ推進室を設立したトヨタ自動車では、SDCsやESGを本格的に取り組み始めました。
- キヤノン
キヤノンでは、「新たな価値創造・社会問題の解決」「地球環境の保護・保全」「人と社会への配慮」の3つのコンセプトを設け、事業に取り組んでいます。環境分野では世界からの評価も高く、環境コミュニケーション大賞に3年連続優良賞を受賞しています。
- ユニリーバ
洗剤やヘアケア用品を販売しているユニリーバでは、「サステナビリティを暮らしの当たり前に」というコンセプトを掲げ、SDGsが設立される以前から、「健やかな暮らし」「環境」「経済発展」の3点を課題として取り組んでいます。
サステナビリティの3つの柱について、関連記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
関連記事:サステナビリティとは?SDGsとの違いや意味・企業の取組事例をご紹介!
意味が混同しやすい用語
サステナビリティにおける、意味が混同しやすい用語を解説していきます。
サステナビリティと似た意味合いをもつ用語が、CSR・ESGです。
それぞれの定義や、サステナビリティとの違いをご紹介します。
CSRとは
CSRとは、「Corporate Social Responsibility」の略で、企業の社会的責任という意味です。
各企業が自社の利益を追求し、さらに組織活動が社会に影響を与えることに意味をもち、消費者や取引先、社会全体からの要求に対して適当な意思決定をすることを指します。
日本では、寄付やボランティアといった、利益を目的としない事業と誤解されてしまうこともあります。
HONDA、ユニクロ、武田製品などが、実際にCSR活動に取り組んでいる企業の例です。
- HONDA
HONDAではグローバルを中心に、環境保全活動や安全への取り組み、社会活動といったさまざまなCSR活動をおこなっています。
- ユニクロ
ユニクロでは、商品のリサイクル活動や固形燃料へのリサイクル、衣装援助、難民雇用、出張授業など、活動の幅を広げています。
- 武田薬品
武田薬品では、パンデミックへの準備や対応、世界10都市のがん治療アクセス改善の持続的・革新的システムの構築などの事業に取り組んでいます。
CSRの活動のメリットの一つが、従業員の満足を高める効果があることです。
社会活動に貢献することで社会の役に立っていると思え、従業員のモチベーションが上がり、結果労働の生産性アップが期待できます。
ESGとは
ESGとは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字からできた言葉です。
ESGの3つの観点が、企業の長期的な成長のために必要という考えが世界で広まっています。
水不足や温暖化などの環境問題、差別や人権問題などの社会問題といった課題に直面している中、2006年に発足されたPRI(責任投資原則)によってESGへの注目が集まりました。
ESGは持続可能で豊かな社会実現を目指しており、この取り組みは今後も広まっていくと考えられます。
サステナビリティとESGの違い
サステナビリティとESGの違いをみていきます。
持続可能な世界にする動きの総称であるサステナビリティに対し、企業の成長に必要な環境・社会・ガバナンスの3つの観点を意味するのがESGです。
簡単にいえば、企業がサステナビリティに取り組む際の方法の1つが、ESGということです。
ESGは、持続可能な世界を実現するためにサステナビリティの流れを推進する、大きな動力にあたります。
サステナビリティとCSRの違い
次に、サステナビリティとCSRの違いをみていきます。
世の中全体を持続可能な状態にする考え方を意味するサステナビリティに対し、企業の社会的責任を指すのがCSRです。
よりよい世界にしていくという点は同じですが、活動範囲や対象は異なります。
サステナビリティは企業の活動だけでなく、世界全体を対象とした理念であり、CSRは、サステナビリティを含んだ企業の社会的責任を果たすための考えです。
簡単に言い換えると、サステナビリティの主語は世界全体、CSRの主語は企業になります。
企業が利益を上げながらあらゆる環境・社会問題の解決に取り組むことで、よりよい社会を目指すのがCSRです。
サステナビリティ・SDGs・ESG・CSRの使い分け
これまでは、それぞれの用語の意味や、違いについて解説してきました。
同じようで実は異なる意味合いをもつ用語ですが、会社などでどのように用語を使い分ければよいのかが難しいと思います。
ここでは、サステナビリティ・SDGs・ESG・CSRの使い分けを解説します。
- サステナビリティ:世界が普遍的に目指すゴールであり、SDGs・ESG・CSRを含む
- SDGs:2030年という時限付きゴールであり、消費者を対象にサービスや商品を提供する。
- ESG:ステークホルダー(企業に対し利害関係にあたる人)の中で、特に投資家や金融機関を重視している
- CSR:これまでにもCSR活動を継続している
各用語の違いを理解すれば、正しく使い分けることができます。
1つずつ詳しくみていきましょう。
サステナビリティ
以前は、SDGs・ESG・CSRを使用した情報発信をする企業が多く見られましたが、2020年頃からサステナビリティを中心に発信する企業が増えています。
理由として挙げられるのが、海外企業の動向です。
海外の企業では、以前からサステナビリティを軸とした自社の取り組みを発信することが主流でした。
そのことから、グローバル展開を目指す日本企業でも、海外企業に合わせてサステナビリティが取り上げられるようになってきています。
サステナビリティは、SDGs・ESG・CSの全てを含む用語のため、どの用語を使用した際もステークホルダーに合わせ情報を展開できるのが利点です。
SDGs
SDGsは、他の用語より認知度が高いことが最大の特徴であり、自社の事業をSDGsで発信できれば、ステークホルダーに向けて情報が届けやすくなります。
中でも、B to C(対消費者)を目的としている企業で効果が高いです。
サステナブルな取り組みが普及している現在、SDGsを利用して情報発信をする非上場企業が増えてきました。
SDGsで情報発信をする手段として、SDGsマッピングがおすすめです。
自社事業とSDGsの17の目標を紐付けて整理できるSDGsマッピングは、自社企業と同時にSDGsの目標、ターゲットとの関係性も整理することができます。
ESG
ESGは、投資家が企業を評価する基準となっており、上場企業が使用するケースが多いです。
特に、地方銀行はESGに力を入れており、ESGに取り組んでいる企業に優遇されている金利で融資をする取り組みが普及しています。
この影響を受け、以前までSDGsで情報を発信していた中小企業が、ESGで発信するケースも増えてきました。
近年では、ESG投資という投資方法も普及しています。
ESG投資は大きく7つの方法があるので、「このようなものがあるのだな」と頭に入れておいてください。
- ネガティブ・スクリーニング
- ポジティブ・スクリーニング
- 国際規範スクリーニング
- ESGインテグレーション
- エンゲージメント・議決権行使
- サステナビリティ・テーマ投資
- インパクト・コミュニティ投資
CSR
これまでCSRで情報発信してきた企業は、現在もCSRでの取り組みに力を入れています。
CSR活動例は以下の通りです。
- 環境保全を目標とした植林活動
- 児童労働の撲滅を掲げた非営利団体への寄付
- 住みやすい街づくりを目指すゴミ拾い運動
一方、CSV(Creating Shared Value)で発信をする企業も増えています。
CSVとは、共通価値の創造という意味で、企業が事業を通して経済価値や社会価値を一緒に作る戦略を指します。
ですが、CSVは他の用語より認知度が低いため、ステークホルダーに対して情報が理解されづらいのがデメリットです。
サステナブルとサステナビリティの違い
最後に、サステナブルとサステナビリティの違いを解説していきます。
よく似た用語ですが、どんな違いがあるのでしょうか。
結論から言うと、2つの用語に大きな意味の違いはありません。
「持続可能な」という形容詞の意味をもつサステナブルに対し、サステナビリティは「持続可能性」を指します。
それぞれ意味を理解し、使い方に気をつけることが大切です。
使い分けとしては、サステナブルは「サステナブル投資」、「サステナブル経営」などのビジネスシーン、サステナビリティは健康などのライフスタイルの場面で使用される傾向にあり、「方法や手段」と捉えると理解しやすいです。
まとめ
SDGsとサステナビリティの違いや、CSR・ESGとの使い分けについて解説しました。
サステナビリティを具体化したものがSDGsという国際目標であり、さらにその中にCSRやESGといった活動があります。
それぞれ意味や使用場面は異なりますが、いずれも持続可能な社会の実現を目指す考え方という意味では同じです。
これらの言葉の違いを理解すれば、会社などでも正しく使い分けることができます。
多くの企業でSDGsやサステナビリティの活動を取り入れているので、この機会にどんな取り組みをしているのかぜひ調べてみてください。