法定雇用率の引き上げはいつから?今後の推移や変更される4つのポイントを押さえよう!
障がい者雇用に関わりの深い、法定雇用率の引き上げが決定しました。
2023年現在、雇用率未達成の企業は48.6%と過半数を占めていますが、法定雇用率引き上げにともない、未達成企業はさらに増加する見込みです。
今回の法定雇用率の引き上げについて興味はあるものの、開始時期はいつからなのか詳しく知りたいという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、法定雇用率の引き上げ時期や今後の推移、引き上げるうえで変更される4つのポイントなどを詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
段階的な引き上げが決定した法定雇用率
法定雇用率は、最低でも5年に1度改正しなければならない決まりがあり、今後も段階的な引き上げが決定しています。
障害者雇用制度が制定された1960年からの法定雇用率は、以下の通りです。
改正された年 | 法定雇用率 |
---|---|
1976年 | 1.5% |
1988年 | 1.6% |
1998年 | 1.8% |
2013年 | 2.0% |
2018年 | 2.2% |
2021年 | 2.3% |
上記は民間企業の法定雇用率ですが、法定雇用率は事業主の区分により若干異なります。
2023年現在の各事業主の法定雇用率は、以下の通りです。
- 民間企業:2.3%
- 国、地方公共団体:2.6%
- 都道府県などの教育委員会:2.5%
そもそも法定雇用率とは?
そもそも法定雇用率とは、事業主が障がいをもつ労働者をどれくらいの割合で雇用する必要があるのかを定めた基準の数字です。
実雇用率は、フルタイムで働く障がい者の数をフルタイムで働く一般の労働者数で割って計算でき、達成しなければならない2023年現在の法定雇用率は2.3%となっています。
法定雇用率は国が義務付けた法律で、未達成の企業は障害者雇用納付金の徴収や行政からの指導などの罰則を受ける必要があるため、企業は法定雇用率の達成に向けて障がい者雇用に努めなければなりません。
法定雇用率については、以下の関連記事で詳しくご紹介していますのでご覧ください。
関連記事:法定雇用率とは?計算方法や未達成の罰則など2023年最新版で解説!
法定雇用率の引き上げはいつから?
法定雇用率の引き上げはいつからなのか、気になる人も多いのではないでしょうか。
厚生労働省は2023年の1月に、2024年4月以降法定雇用率を引き上げることを発表しました。
現在 | 2024年4月以降 | 2026年7月以降 | |
法定雇用率 | 2.3% | 2.5% | 2.7% |
2023年現在の法定雇用率は2.3%ですが、2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%と徐々に引き上げられます。
法定雇用率の引き上げの背景や推移は?
法定雇用率の引き上げには、どのような背景や推移があるのでしょうか。
政府では、障がいの有無に関わらず、すべての国民が困難なく生きていけるようにさまざまな取り組みをおこなっており、法定雇用率の引き上げもそのうちのひとつに該当します。
障がいをもつ人が共生社会の中で企業に貢献するためには、障がい者一人ひとりの障がい区分や特性に合わせ雇用管理をおこなわなければなりません。
障がい者の就職件数は近年増加傾向にあるものの、中小企業での雇用率はなかなか伸びず、規模が小さい企業ほど障がい者雇用に関する課題を多く抱えているのが現状です。
また、これまでの法定雇用率は、2012年度まで1.8%でしたが、2013年度に2.0%、2018年度に経過措置として2.2%、さらに2021年3月からは2.3%にと徐々に引き上げられました。
2023年度の法定雇用率は?
2023年度の法定雇用率は2.3%です。
もともと法定雇用率は、2023年に2.7%に引き上げられることが決まっていました。
しかし、それまでの2.3%から2.7%へと一度に大きく引き上げる発表を受けて対応に困る企業が多かったため、企業が計画的に障がい者を雇用できるように、2023年は法定雇用率を一度2.3%のままに据え置きし、2024年以降徐々に引き上げることになりました。
法定雇用率の引き上げにより変わる4つのこと
法定雇用率の引き上げにより、以下の4つのことが変わります。
- 対象となる事業主の範囲
- 除外率の引き下げ
- 障がい者の算定方法
- 事業主支援の強化
法定雇用率が引き上げられる以外にもさまざまな変更点があるため、併せて確認しておく必要があります。
対象となる事業主の範囲
法定雇用率の引き上げにともない、障がい者雇用の対象となる事業主の範囲が広がります。
現在 | 2024年4月以降 | 2026年7月以降 | |
事業主の範囲 | 従業員43.5人以上 | 従業員40人以上 | 従業員37.5人以上 |
現在、一般従業員数43.5人以上となっている範囲は、2024年4月以降に40人以上、2026年7月以降37.5人以上へと変更予定です。
また、対象となる企業には以下の対応が求められます。
- ロクイチ報告(6月1日時点の障がい者雇用状況をハローワークに提出する)
- 障がい者雇用推進者を選び、障がい者雇用の促進に務める
- 障がい者を解雇する際はハローワークに報告する
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除外率の引き下げ
除外率制度の除外率も引き下げられることになります。
除外率制度とは、障がい者の雇用が困難な職種の企業に対し、フルタイムで雇用している労働者数から除外率に該当する労働者数が差し引かれる制度です。
除外率制度はノーマライゼーションの視点から2004年に一度廃止が決まりましたが、しばらくの間は経過措置として職種ごとに除外率を設け、段階的に廃止される予定です。
今後、2025年4月1日以降、除外率は徐々に引き下げられます。
ただし、2025年にすべての職種の除外率が10%引き下げられるため、現在の除外率が10%未満の職種は除外率制度が適用されなくなるので注意が必要です。
障がい者の算定方法
法定雇用率の引き上げにより、障がい者の算定方法も変更になります。
変更点は以下の2つです。
- 短時間労働の精神障害者に対する算定特例が延長される
週の労働時間が20時間以上30時間未満である精神障害者を1カウントする措置が2023年3月末で終了予定でしたが、4月以降も継続できることになりました。
現時点で特例の制限は設けられていないため、当分の期間は精神障害者を1カウントとして算定できます。
- 週労働時間20時間未満の障害者雇用率の算定
2024年4月以降、週労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者を、雇用率を0.5カウントとして算定できるようになります。
事業主支援の強化
法定雇用率を目指している企業に対しては、以下の障害者雇用助成金が支給されます。
- 労働移動支援助成金
- 中途採用等支援助成金
- トライアル雇用助成金
- 地域雇用開発助成金
- 人材確保等支援助成金
- キャリアアップ助成金
- 両立支援等助成金
- 人材開発支援助成金
これらの助成金の支給により、雇用継続や障がい者の加齢などのさまざまな課題を解決しやすくなります。
法定雇用率を達成している企業の割合は?
令和4年度の法定雇用率を達成している企業の割合は、48.3%です。
法定雇用率未達成の企業は55,684社ですが、そのうちの65.4%は0.5人〜1人が不足している状況で、法定雇用率の達成まであと一歩です。
しかし、2024年以降法定雇用率は引き上げられるため、現在達成している企業も新たな雇用率に向けて、準備を進めていかなければなりません。
未達成の半数以上は雇用数ゼロという現実
法定雇用率が未達成の企業の半数以上は、障がい者の雇用数がゼロです。
障がい者を1人も雇用していない企業は32,342社に及び、未達成企業の58.1%と半数以上を占めています。
法定雇用率を達成できない企業が多い理由として、障がい者に適した業務がない、障がい者が働ける環境が整っていない、障がい者を募集しているが採用できないなどの理由が挙げられます。
法定雇用率が達成できていない企業が多いことは、共生社会を目指す本国にとって問題であるため、企業は現状や理由を分析し改善していかなければなりません。
参考記事:障害者雇用率を段階的に引き上げ、2026年度中に2.7%へ
法定雇用率が未達成の場合のリスク
法定雇用率が未達成の場合、企業には以下のリスクが生じます。
- 障害者雇用納付金の徴収
障がい者数が不足している常用労働者数100人以上の企業は、不足分の障がい者1人につき月額50,000円を納付しなければなりません。
ただし、納付金を払えば障がい者を雇用する義務がなくなるわけではないため、その点注意が必要です。
- ハローワークによる行政指導
障がい者の雇用義務が実行されていない企業は、ハローワークによる行政指導が入ります。
指導が入ってもなお改善がみられないと判断された場合、企業名が厚生労働省のwebサイトで公表されてしまうため、企業のイメージが低下する、今後の人員採用に波紋が起きるなどの影響がでます。
企業が早めにしておくべき準備
法定雇用率の引き上げに向けて、企業がしておくべき準備をご紹介します。
- 必要な障がい者の雇用人数を算出する
- 雇用計画を立てる
- 社内全体で障がい者への理解を深める
- 障がい者が安心して働ける環境の整備
法定雇用率が達成できず罰則を受けないためにも、企業は早めに対策することが大切です。
障がい者の必要な雇用人数を算出する
2024年から2026年にかけての法定雇用率引き上げに備え、必要となる障がい者の雇用人数を算出しなければなりません。
現在の総従業員に対しての障がい者の雇用人数はどれくらいか、2024年、2026年に障がい者を何人雇用しなければならないかを確認する必要があります。
以下の計算式で、各企業が何人障がい者を雇用しなければならないのかを算出できます。
法定雇用障害者数 =(常時労働者数+短時間労働者数✕0.5)✕ 障害者雇用率(2.5%もしくは2.7%)
雇用計画を立てる
企業は、今後の雇用人数を見据えて雇用計画を立てる必要があります。
はじめに、障がい者に担当してもらう業務を具体的に決めます。
障がい者が担当できる業務がなくて困っている場合は、障がい者雇用促進センターで紹介している雇用事例を参考にすれば検討しやすいです。
具体的に業務内容が決定したら、ハローワークを通して求人票を出します。
社内全体で障がい者への理解を深める
社内全体で障がい者への理解を深めることも大切です。
労働者のなかには、障がい者の特性や自社の障がい者に対する雇用方針を知らない人もいるかもしれません。
障がい者の雇用形態や、障がい者を雇用するメリットを社内全体で共有し、理解を求める必要があります。
障がい者の雇用形態に不安な点がある場合は、社会保険労務士への相談も可能です。
安心して働ける環境の整備
障がい者が安心して働けるよう、環境の整備をすることも大切です。
手足が不自由な身体障害者が動きやすいように段差をなくす・手すりをつけるなどでバリアフリーに対応したり、聴覚障害者も安心して会議に参加できるように音声認識サービスを導入するなど、さまざまな方法があります。
音声認識サービスの一例として、リコーグループが提供している「Pekoe(ペコ)」という聴覚障害者向けのツールがあります。
Pekoeは動画や過去の配信などのあらゆる音声に字幕がつけられるため、筆談や口話を使用せずに会議やイベントへの参加が可能になります。
聴覚障害者本人だけでなく、周りや会社の同僚や上司などチームのコミュニケーションをとることもできるので、ぜひ活用してみてください。
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障がい者雇用のロクイチ(6/1)報告とは?
障がい者雇用を対象とする企業には、障がい者の雇用状況をハローワークに提出するロクイチ(6/1)報告が義務付けられています。
毎年6月1日時点での障がい者の雇用状況を、自社の所在地を管轄するハローワークに報告しなければなりません。
ロクイチ報告によって、行政は各企業が障がい者をどれくらい雇用しているのかを確認することができます。さらに各企業の障がい者雇用数の結果を集めれば、全国の障害者雇用率が算出できるので、今後の雇用率改正に役立てることができます。
まとめ
法定雇用率の引き上げの背景や推移、今後変更される4つのポイントなどをご紹介しました。
法定雇用率は、2024年から2026年にかけて、段階的に引き上げられていきます。
法定雇用率の引き上げにともない、対象となる事業主の範囲や障がい者の算定方法など知っておかなければならない変更点もあるので、各企業はしっかりと把握しておくことが大切です。
今後の法定雇用率引き上げに向けて、今からできる対策を始めてみてください。