社員が障害者になった場合の対応は?助成金や必要な配慮までわかりやすく解説!

現在では、障害者の雇用に関する法律がいくつか存在し、従業員が一定数を超える企業は障害者を雇用する必要があることなどはよく知られています。
ですが、これまで健常者として働いていた社員が障害者になった場合に、どのように対応すればいいかわからない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、社員が障害者になった場合の対応と助成金、必要な配慮について解説します。
どの企業にとってもありうるケースですので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
社員が障害者になったらどうすればいい?
もし社員から、うつ病や難病などの障害を抱えたと報告された場合、企業側はどうすればいいでしょうか。
障害者については、障害者雇用促進法により、他の社員と比べて不当に差別的な扱いをすることは禁じられています。
また、障害に合わせた配慮をしなければなりません。
さらに、過重な負担にならない範囲で、障害者のために設備を整えたり、出退勤を柔軟にするなどの法令に則った対応をおこなう必要があります。
この差別的な扱いの禁止や配慮については、障害者手帳がない社員も対象となるため注意が必要です。
障害があると診断を受けた場合でも、障害者手帳を取得するかどうかは任意となっているため、本人の意思を無視して障害者手帳の取得を促すことはトラブルの原因になります。
障害者認定の定義とは
障害者雇用率制度でカウントされる障害者は、原則として障害者手帳を持っている人となっています。
この障害者手帳を持っている障害者のみが法定雇用率に適用されます。
現在の障害者の雇用については、法律により、従業員の数が43.5人以上の場合、民間企業では2.3%の割合で雇用しなければなりません。
雇用率は、以下のようにカウントされる数値をもとに算定されます。
精神障害者の場合
- 週30時間以上で1カウント
- 週20時間以上30時間未満で0.5カウント(ただし「新規雇入れから3年以内」または「精神障害者保健福祉手帳の取得から3年以内」ならば1カウント)
身体障害者、知的障害者の場合
- 週30時間以上で1カウント(障害が重度ならば2カウント)
- 週20時間以上30時間未満で0.5カウント(障害が重度ならば1カウント)
障害者としてカウントできるのは、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っている場合のみです。
企業側は必ず手帳を確認し、そのコピーを保管しておく必要があります。
参考記事:障害者の範囲
社員が障害者になった際に必要な手続き
社員が障害者になった際には、企業側が取るべき必要な手続きがあります。
まず最初に、管轄するハローワークに連絡をしましょう。
専門の雇用指導官に相談したうえで、障害者雇用への変更の手続きや今後企業側に必要となる対応などについて、本人と話を進めます。
障害者になった既存の社員を新たに雇用率にカウントする場合、後々のトラブルを防止する意味でも、本人の同意が必要です。
さらに、管轄するハローワークに対して、毎年6月1日時点で障害者の雇用状況を報告する必要があります。
ハローワークに相談することで、助成金の対象となったり、税制上も優遇されたりする可能性があります。
参考記事:事業主の方へ|厚生労働省
社員が障害者になった時に相談できる場所は?
社員が障害者になった時に相談できる機関がいくつか存在します。
障害者の雇用について直接的に支援してくれる機関としては、
- 障害者就業・生活支援センター
- 就労移行支援事業所
- 就労定着支援事業所
- 障害者就労支援センター(市区町村)
- 地域障害者職業センター
- 特別支援学校
があります。
これらの機関は、障害者本人に直接支援をおこなうだけでなく、企業の担当者の雇用管理に関する相談にも応じてくれます。
それぞれ適した機関に相談してみましょう。
また、企業と障害者本人を間接的に支援してくれる機関もあります。
この機関は、障害者本人や家族の相談にのり、支援をおこなうためのもので、企業側は直接相談しませんが、他の機関と連携しながらサポートをしてくれます。
間接的に支援してくれる機関としては、
- 障害者相談支援センター・生活支援センター
- 医療機関
- 福祉事務所
があります。
社員が障害者になった場合の給料はどうなる?

社員が障害者になった場合、仕事内容が以前と同じなのであれば、基本的には給料は同じです。
ただし、実際には以前と同じ仕事ができないケースがほとんどで、障害があっても仕事ができるように職務替えなどがおこなわれるのが一般的です。
この職務替えについては、本人の了承があれば可能です。
以前より仕事内容が少なく、責任が軽い職務に変更することになるため、給料は下がることになります。
この場合でも、障害を理由に給料を下げるのではなく、本人に業務ができなくなったため変更するという理由です。
給料についても、障害者を特別扱いしてはならない、という点に注意してください。
障害を理由に解雇は認められる?
社員が障害者になった場合でも、障害そのものを理由に解雇することは認められていません。
しかし、正当な理由と適正な手続きに基づけば解雇は可能です。
これは障害がない社員と同様の手続きになります。
障害の有無に関わらず、雇用契約、就業規則、関係する法令に従う必要があります。
ただし、障害者を解雇する場合は、ハローワークへの届出が必要です。
そのため、事前にハローワークや関係機関に相談したほうがよいでしょう。
ハローワークへの届出が必要な点以外は、通常の解雇の手続きと同じ形になります。
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社員が障害者になった場合に受け取れる助成金はある?
社員が障害者になった場合には、受け取れる助成金が存在します。
ここでは、以下の助成金について解説します。
- 障害者雇用納付金制度に基づく助成金
- 障害者雇用安定助成金
- 人材開発支援助成金
それぞれ詳細に解説しますので、参考にしてみてください。
障害者雇用納付金制度に基づく助成金
障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、事業主が障害者を雇用するために講じた措置が対象です。
障害者の雇用のために、職場の作業施設や福祉施設等の設置・整備などをおこなった際の費用の一部が助成金として支給されます。
また、障害者の雇用に必要な介助の措置や、通勤を容易にするための措置なども対象です。
障害者雇用納付金制度に基づく助成金には、以下の5種類あります。
- 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金
- 障害者介助等助成金
- 重度障害者等通勤対策助成金
- 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
- 障害者職場実習支援事業
障害者雇用安定助成金
障害者雇用安定助成金には、「障害者職場適応援助コース」と「中小企業障害者多数雇用施設設置等コース」の2種類あります。
障害者職場適応援助コースは、職場適応援助者(ジョブコーチ)による援助を必要とする障害者のための制度です。
支援計画に基づいた職場適応援助者による支援を実施する事業主を助成します。
中小企業障害者多数雇用施設設置等コースは、障害者の雇入れに必要な事業所の施設や設備等の設置・整備をおこなう中小企業事業主に対して助成する制度です。
助成金を受けるためには、障害者の雇入れに関する計画を作成し、その計画に基づいて障害者を新規に5人以上雇用し、その雇い入れ後障害者を10人以上継続雇用することが条件です。
助成金の支給額は、施設や設備等の設置に要する費用に応じて決定されます。
参考記事:障害者雇用安定助成金(中小企業障害者多数雇用施設設置等コース)
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、障害者の職業能力の開発・向上のために、職業能力開発訓練事業をおこなうための施設の設置・整備などが対象です。
人材開発支援助成金の支給対象は、
- 能力開発施設
- 管理施設
- 福祉施設
- 能力開発訓練施設用設備
となっています。
助成金額は、施設や設備の設置・整備(更新)費用の75%です。
ただし、新設の場合は上限が5,000万円、更新の場合は上限が1,000万円となっています。
参考記事:障害者を雇い入れた場合などの助成
このように、企業側が障害者の雇用のために設備などを用意した場合には、さまざまな助成金が受けられます。
障害者雇用の助成金の詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:障害者雇用の助成金一覧!金額と種類・条件や申請方法など目的別に詳しく解説!
助成金以外にも受け取れる支援金がある

障害者の雇用については、助成金以外にも受け取れる支援金が存在します。
ここでは、以下の支援金について解説します。
- 障害者雇用調整金
- 報奨金
各項目について解説しますので、参考にしてみてください。
障害者雇用調整金
障害者雇用調整金は、常時雇用している社員の数が100人超の事業主で、法定障害者雇用率を超えて雇用している場合が対象の支援金です。
支援金の金額は、法律で定められている一定数を超えて雇用している障害者の数に応じて、1人につき月額29,000円となっています。
報奨金
報奨金も障害者雇用調整金と同様の支援金ですが、事業主が常時雇用している社員数の違いがあります。
報奨金の場合は、常時雇用している社員の数が100人以下の事業主が対象です。
支援金の金額は、法律で定められている一定数を超えて雇用している障害者の数に応じて、1人につき月額21,000円となっています。
参考記事:障害者雇用納付金制度の概要
気をつけておきたい社員への配慮
社員が障害者となった場合には、さまざまな行政上の手続きが必要ですが、それ以外に社員への配慮も重要です。
例えば、事故や病気などで身体障害になったり、職場の人間関係や仕事内容が原因で精神障害になるなどのケースがあります。
この場合、企業側として社員に対してさまざまな配慮が必要です。
ここでは、精神障害の場合の配慮と身体障害の場合の配慮について解説します。
精神障害の場合の配慮
社員が精神障害を抱えた場合、職場復帰後にさまざまな配慮が求められます。
特に必要な配慮としては、勤務時間の短縮や勤務時間帯の変更などの勤務環境の変更です。
これは、精神障害を抱えていても仕事をできるようにするための配慮で、場合によっては仕事内容の変更や職種の転換、リワークの支援などがおこなわれることもあります。
特に、障害者となった後でも雇用の継続を希望するケースが多く、仕事を続けられるようにする配慮が重要になります。
他にも、休暇をとりやすくしたり、サポートするための担当者を用意するなどの配慮も必要です。
身体障害の場合の配慮
身体障害の場合でも精神障害と同様に、職場復帰後にさまざまな配慮が必要です。
勤務時間の短縮や勤務時間帯の変更だけでなく、障害があっても問題なくできる仕事内容への変更や、リワーク支援も不可欠でしょう。
また、身体障害者の場合は、多くのサポートが必要になるため、担当者も用意しておきましょう。
聴覚障害がある場合は、音声の文字化ツールを導入するなどのサポートも必要になります。
聴覚障害者の場合は、コミュニケーションが困難になることへの対策として、「Pekoe(ペコ)」というツールの導入が便利です。
コミュニケーションツールであるPekoeは、会議などでの音声をリアルタイムで文字化できるため、聴覚障害があっても会議の内容を理解しやすくなります。
Pekoeは導入も簡単におこなえるため、検討してみてください。
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まとめ
ここまで、社員が障害者になった場合の対応や必要な手続き、受け取れる助成金について解説しました。
社員が障害者になった場合は、管轄のハローワークに届け出るなどの手続きが必要です。
また、障害者手帳を取得している場合は、コピーを取って保管しておきましょう。
他にも、条件を満たせば受け取れる助成金があるため、確認した後に申請をしておきます。
社員が障害者になった場合でも、法律では特別扱いはできないことになっています。
ただ、本人が了承すれば仕事内容の変更などの勤務条件の変更は可能です。
そのため、本人と確認した上で、さまざまな配慮を検討してみてください。
