
現在では、国家資格・民間資格ともに数多くの資格が存在し、活かせる場もさまざまあります。
障害者を支援できる資格にも多くの数と種類がありますが、障害者施設によっては特定の資格が必要なケースがあり、どの資格を取得すべきか迷う方がいるかもしれません。
この記事では、障害者を支援できる資格の一覧についてご紹介します。
また、施設で働く際の資格の必要の可否や、取りやすい資格についても解説します。
障害者の支援について興味がある方や、障害者施設で働きたい方は、参考にしてください。
障害者支援に役立つ資格一覧
現在、国家資格にはさまざまな種類がありますが、障害者支援に役立つ資格も数多く存在します。
ここでは、それらの資格の概要などについて解説します。
社会福祉士
社会福祉士とは、身体上や精神上の障害をもつ方を支援する専門職です。
環境面での問題により日常生活を送ることが困難な方の相談に応じ、アドバイスをおこなうほか、福祉サービスを提供する事務所などとの連絡調整をおこないます。
この資格を取得することで、相談支援のプロフェッショナルとして活動できます。
社会福祉士の資格を取得するためには、まず福祉系の大学などの教育機関や社会福祉士指定養成施設を卒業し、受験資格を得なければなりません。
また、場合によっては、相談援助の実務経験が必要です。
介護福祉士
介護福祉士は、介護に関連する一定の知識や技能を習得していることを証明する唯一の国家資格です。
介護関連の資格は数多くありますが、国家資格となっているのは、介護福祉士のみです。
介護福祉士は、通常の介助をおこないながら課題を見つけ、介護が必要な方の生活に向き合い、その生き方や生活全般の支援をおこないます。
介護業務のほかにも、医者など他の職種と連携しながら環境を整備し、最適な介護を提供する役割があります。
精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神に障害がある方が利用する病院などの施設で、地域生活に関連した相談や社会復帰に関する相談に応じ、アドバイスや必要な訓練・援助を提供するための資格です。
この資格を取得することで、精神障害者に対する支援のプロフェッショナルとして活動できます。
精神保健福祉士の資格は、保険福祉系の大学や教育機関を卒業するか、社会福祉士の資格を取得後に短期養成施設を卒業することなどで受験可能です。
理学療法士
理学療法士とは、リハビリテーションに関する国家資格です。
PT(Physical Therapist)とも呼ばれていて、病気やケガなどが原因の障害をもつ方に対し、歩行・立つ・座るなどの基本動作能力の維持や、悪化予防を目的とした運動療法や物理療法をおこなうための資格です。
この資格を取得することで、基本動作能力のリハビリの専門職として活動できます。
理学療法士の資格は、大学などの養成学校を卒業して受験資格を得た後、国家試験に合格することで取得できます。
作業療法士
作業療法士は、リハビリテーション関連の国家資格です。
OT(Occupational Therapist)とも呼ばれていて、病気やケガが原因で障害をもった方に対して、食事・入浴・余暇を楽しむなどの活動ができるように作業療法を提供するための資格です。
この資格を取得することで、日常生活の復帰に向けたリハビリの専門職として活動できます。
作業療法士の受験資格は、大学などの養成学校を卒業することで得られます。
言語聴覚士
言語聴覚士は、リハビリテーションに関する国家資格です。
ST(Speech Language Hearing Therapist)とも呼ばれていて、生まれつきまたは病気やケガなどが原因で言葉や摂食、嚥下機能に障害がある方に対して、発声によるコミュニケーションや食事ができるように、検査や対処療法を提供するための資格です。
この資格を取得することで、言語機能と口腔機能のリハビリの専門職として活動できます。
言語聴覚士の受験資格は、大学などの養成学校を卒業することで得られます。
公認心理士
公認心理士は、保健医療・福祉・教育に関する国家資格です。
心理面での支援が必要な方の心理状態の観察や分析、相談支援、心の健康に関する情報提供などをおこなうための資格です。
この資格を取得することで、心理に関する相談支援のプロフェッショナルとして活動可能です。
公認心理士の受験資格は、場合によっては実務経験が必要となりますが、大学院などで必要な科目を履修することで得ることができます。
義肢装具士
義肢装具士は、医療福祉に関する国家資格です。
PO(Prosthetist and Orthotist)とも呼ばれていて、義手や義足を必要とする方の採型や採寸をおこない、適合する義肢装具を作成するための資格です。
この資格を取得することで、義肢製作のプロフェッショナルとして活動できます。
義肢装具士の受験資格は、義肢装具士養成校を卒業することで得られます。
保育士
保育士は、児童福祉に関する国家資格です。
専門的な知識や技術に基づいて、乳幼児や児童に対する保育や、保護者に対して指導などをおこなうための資格です。
この資格を取得することで、保育のプロフェッショナルとして活動できます。
保育士の資格は、指定保育士養成施設を卒業すれば、国家試験を受験せずに取得可能です。
他の取得方法としては、指定保育士養成施設以外の大学などの教育機関を卒業するか、2年以上の保育業務の経験を経て受験資格を得た後、国家資格に合格するといった2つの道があります。
臨床心理士
臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が運営している民間の資格です。
臨床心理学に基づいた知識や技術を用いて、心の問題を解決するための資格です。
この資格を取得することで、心の専門家として活動できます。
臨床心理士の受験資格は、大学院などで必要な科目を履修するか、医師免許があり心理臨床経験が2年以上ある方が得られます。
手話通訳士
手話通訳士は、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが発行していて、厚生労働省が認定している資格です。
聴覚障害がある方に手話を用いてコミュニケーションをおこなうための資格です。
この資格を取得することで、手話のプロフェッショナルとして活動できます。
手話通訳士は、20歳以上で3年程度の手話通訳経験があれば誰でも受験可能です。
視能訓練士
視能訓練士は、医療福祉に関する国家資格です。
CO(Certified Orthoptist)とも呼ばれていて、乳幼児から高齢者まで弱視や斜視などの視能の検査をおこなうための資格です。
この資格を取得することで、視能のプロフェッショナルとして活動できます。
視能訓練士は、視能訓練士養成校を卒業することで受験資格が得られます。
歩行訓練士
歩行訓練士は、視覚障害生活訓練等指導者とも呼ばれている民間資格です。
歩行訓練士は、視覚障害者が安全に歩く方法を習得し、日常生活をスムーズに送れるようにするための資格です。
視覚障害者が他の人と同じように生活を送るために、歩行訓練士には重要な役目があります。
この資格を取得することで、視覚障害者の指導をおこなうプロフェッショナルとして活動可能です。
歩行訓練士の資格は、社会福祉法人日本ライトハウスの視覚障害生活訓練等指導者養成課程か、国立障害者リハビリテーションセンター学院の視覚障害学科を卒業することで取得できます。
社会福祉主事任用資格
社会福祉主事は、都道府県や市町村などの福祉事務所で、社会福祉に関するサポートをおこなう職員のことです。
社会福祉主事の「主事」は、公的機関や団体に配属される職員の職名の一種です。
この社会福祉主事に任用されるための資格が「社会福祉主事任用資格」となっています。
この資格は取得するだけでは意味がなく、資格を取得したうえで地方公務員試験に合格し、福祉事務所に配属されてはじめて「社会福祉主事」と名乗ることができます。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護職の基本知識や技術を習得できる研修で、介護職の最初の資格という位置付けとなっています。
介護に関する理念や、人体の仕組み、高齢者特有の身体の変化、基本的な医学的知識などが習得できます。
介護に関する資格はいくつかありますが、最初に取得すべき資格が介護職員初任者研修で、この資格がなければひとりで身体介助をおこなうことができません。
従来のホームヘルパー2級に相当する資格ですが、取得に必要な学習内容や条件は異なります。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、略称「実務者研修」と呼ばれていて、介護に関する実務的な技術と知識が習得できていることを証明する資格です。
この資格は、介護福祉士の資格を取得する場合は必ず取得しておく必要があります。
先程ご紹介した介護職員初任者研修の上位の資格という位置付けで、より専門的な技術と知識が身につき、実務者研修を取得することで、現場のリーダーとして期待がもたれます。
また、従来は医師や看護師しかできなかった「たん吸引」や「経管栄養」の基礎知識を学ぶことができるため、実務者研修取得後に実地研修を受ければ、それらの業務をおこなうことが可能です。
相談支援専門員
相談支援専門員は、障害者がサービスを活用できるよう支援するための仕事です。
障害者福祉支援や、日常生活での悩みに対する相談支援をおこない、障害者と家族をサポートしています。
相談支援専門員は、特定の研修を受ける必要があり、さらに業務経験も要求されます。
また、保有している資格や業務内容によって研修期間が異なる点が特徴です。
この資格は一度取得すればいいというわけではなく、資格の更新が必要で、更新時には研修を受ける必要があります。
サービス管理責任者
サービス管理責任者は、心身に障害がある方に対して、適切なサポートを提供できるように、サービスの内容を管理したり、関係者との連携や調整をおこなったり、サービスを提供する職員の育成をおこなう職業のことです。
サービス管理責任者は、サポート内容の品質に影響する職業であるため、障害者支援の経験が豊富な職員が務めることが多くなっています。
居宅介護従業者
居宅介護従業者は、障害者向けのヘルパーのことです。
障害者やその家族が日常生活を送りやすいように、さまざまなサポートをおこないます。
仕事内容としては、障害者の食事や入浴などの身体介護や、食事の準備など家事の代行を主におこなう生活援助、介護に関する相談を聞き助言する相談援助などがあります。
障害者は、高齢者の介護とは異なるサポートが必要なケースがあり、一人ひとりのニーズに適したサポートをするため、居宅介護従業者の専門知識や技術は重要です。
重度訪問介護従業者
重度訪問介護従業者は、重度の肢体不自由者で日常的にサポートが必要な方に介護サービスを提供するための資格です。
この資格は、都道府県知事が指定する重度訪問介護従業者養成研修を修了することで取得できます。
訪問介護サービスにおける「サービス提供責任者」とは異なるため注意しましょう。
同行援護従業者
同行援護従業者は、視覚障害者ガイドヘルパーとも呼ばれ、障害者自立支援法に基づいた、視覚障害者の外出援助を目的とした資格です。
この資格には、一般課程と応用課程の2種類があり、一般課程を修了すると視覚障害者の外出介助ができるようになり、応用課程を修了するとサービス提供責任者になることができます。
この資格は、各自治体が指定する同行援護従業者養成研修実施機関での研修のカリキュラムを履修することで取得可能となり、試験は必要ありません。
研修のカリキュラムは講義と演習が中心で、応用課程では交通機関を利用した移動演習があるなど、実務的な内容となっています。
行動援護従業者
行動援護従業者は、障害者が日常生活での危険を回避し、社会に参加するための介護をおこなうための資格です。
仕事内容は、
- 目的地の説明や道順などの説明
- 問題が起きそうな条件を把握し、回避するように工夫
- 問題が発生した場合に安全を確保し、混乱を収拾
- 介助や排泄のサポート
- 外出中の食事の介助
- 外出する前後の衣服の着替えの介助
などがあります。
障害者関連施設などで従事することが可能で、近年ニーズが高まっている職種です。
障害者移動支援従業者
障害者移動支援従業者は、障害が原因で一人で外出するのが困難な方にサポートや介助をおこなう人のことで、ガイドヘルパーとも呼ばれています。
視覚障害者や体を動かせない人、知的障害などのある人が、安全に外出できるように、さまざまなサポートをおこないます。
ただ、現在は視覚障害者のサポートは同行援護従業者に、知的障害者や精神障害者のサポートは行動援護従業者に移行している状況です。
強度行動障害支援者
強度行動障害支援者は、強度行動障害がある方に適切に配慮したサポートを提供するための資格です。
強度行動障害とは、自分の体を叩いたり、食べられないものを口に入れたり、本人の健康を損ねる行動をとる、他人を叩いたり物を壊すなどのことです。
この資格は、都道府県の強度行動障害支援者養成研修を修了することで取得できます。
福祉系の三大資格とは?

福祉系の資格にはさまざまなものがありますが、
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 精神保健福祉士
の3つが、福祉に関連する三大資格とされています。
社会福祉士と精神保健福祉士は、相談援助が専門であるのに対し、介護福祉士は直接援助を専門としているのが特徴です。
また、社会福祉士は障害者だけでなく、日常生活を送るのが困難な方を支援対象としていますが、精神保健福祉士は精神に障害がある方のみに特化した資格となっています。
参考記事:障害者福祉に関する資格について
福祉系の最高峰の資格は何?
福祉系の資格は数多く存在しますが、そのなかでも最高峰とされている資格が「認定介護福祉士」です。
この資格取得者に求められている役割には、
- 現場のマネジメントと育成
- 他の職種との連携
- 地域の介護力の向上
があります。
現場のマネジメントと育成では、介護の現場で人材育成に取り組み、介護サービスのマネジメントをおこなうことでサービスの質を向上させます。
他の職種との連携では、介護サービスの利用者と家族を支援する職種との連携を図ることが必要です。
また、地域住民やボランティア、家庭で介護をする人に対して、介護の専門家として指導やアドバイスをおこなうことも求められます。
資格を取得するために必要なスキルは、
- 専門的な介護の実践能力
- 現場リーダークラスへの指導力
- サービスの管理能力
- 人材のマネジメント
などです。
このように、認定介護福祉士は総合的なスキルが求められるため、福祉系の資格の最高峰とされています。
障害者施設で働くには資格が必要?
障害者施設で働くために資格が必要かどうかについては、支援内容によって異なり、無資格でも働くことができる場合もあります。
ただ、資格を保有していることで、業務に活かすことが可能です。
必要となる資格は施設によって異なりますが、代表的な資格について解説します。
まず、保有が推奨される資格に、介護の基本的な知識やスキルを保有していることを示す「介護職員初任者研修」があります。
さらに上位の資格に「実務者研修」があり、取得することで業務の幅が広がり、介護職でキャリアアップを目指すことが可能です。
「介護福祉士」は、介護者に指導などをおこなうための資格で、取得していると介護施設だけでなく障害者施設でも活用できます。
他にも、社会福祉士、精神保健福祉士など、取得が難しい資格をもっていれば、介護の総合的な仕事をおこなうことが可能で、より仕事の幅を広げることができます。
資格がなくても障害者施設で働くことはできますが、高度な資格があるほどキャリアアップを目指すことが可能です。
障害者施設ではどんな働き方ができる?
障害者施設では、さまざまな働き方が可能です。
仕事内容も多岐に渡り、主な内容には
- 施設入所支援
夜間の入浴や排泄などの介護や、日常生活での相談支援をおこないます。近年では口腔衛生管理や摂食・嚥下機能などの口腔機能維持の支援も求められています。 - 生活介護
入浴や食事などの介護や日常生活での支援などを昼間の時間帯に提供する仕事です。障害の特性に対応して、社会活動や作業活動を保障・支援する側面があります。 - 自立訓練
身体機能の維持や回復のためにリハビリをおこなう「機能訓練型」、生活能力の維持・向上を目指すための「生活訓練型」、地域生活の移行を目指す「宿泊型」があります。 - 就労移行支援
一般企業に就職するための知識や能力を育成し、職場探しのサポートをおこなう仕事です。作業などで就労に必要な訓練をおこない、職場探しの一環として、職場実習の場も提供します。また、就職後から半年以上の利用者には、職場への定着のための支援もおこないます。
などがあります。
障害者施設で働くためにおすすめの資格は?
障害者施設といっても、多くの数と種類があります。
各施設にはそれぞれ役割があり、施設としての目的にも違いがあるのが現状です。
また、必要となる資格についても、施設によって異なります。
障害者施設は種類が多いため、この資格があればどの施設でも通用するという資格はありません。
そのため、自分がどのような支援をしたいのか、どの分野に興味があるかを検討し、その施設に必要となる資格の取得を検討してみましょう。
ただ、「介護職員初任者研修」などの基本的な知識が必要な資格については、取得が前提となっているケースがあるため、取得しておいたほうがいいでしょう。
取りやすい福祉系資格はある?

福祉系の資格にはさまざまなものがありますが、そのなかでも比較的取得しやすいとされているものがあります。
取得しやすい資格は、受験資格が限定されていない、未経験でも受験できる、受講期間が短期間という点が特徴です。
具体的な例として、「介護職員初任者研修」は最短1ヵ月で取得できる資格で、介護の初歩的な資格です。
試験の合格率はほぼ100%といわれています。
講習で取れる福祉系資格がある?
福祉系の資格のなかには、試験が不要で講習を受けるだけで取れるものがあります。
ここでは、講習で取れる福祉系の資格をご紹介します。
「介護職員初任者研修」は、福祉業界で働くための入門的な資格で、130時間の講義と修了試験で取得できます。
必要な期間は14日〜4ヵ月です。
「実務者研修」は、研修を修了するだけで資格が取得可能で、修了試験がありません。
研修も5日〜10日程度と短いため、取得しやすくなっています。
「ガイドヘルパー(移動介護従事者)」は、16時間〜20時間の養成研修を受講すれば取得できます。
福祉用具に関するアドバイスを行う専門家である「福祉用具専門相談員」は、50時間の講習と修了評価により取得可能で、期間は6日〜8日です。
まとめ
ここまで、障害者を支援するための資格について解説しました。
障害者支援に関する資格には、数多くの種類があり、それぞれ目的が異なります。
障害者施設によって、どの資格が必要かが異なり、特定の資格が必要となるケースもあります。
障害者施設は資格がなくても働くことはできますが、資格を取得することで仕事の幅が広がり、キャリアアップを目指すことも可能です。
どの資格を取得するかについては、自分がどのような支援をしたいのか、どの分野に興味があるか、などから検討してみましょう。