ESGを簡単にわかりやすく解説!ESG経営のメリットや企業の具体的事例もご紹介

近年ビジネスシーンなどで、「ESG経営」や「ESG投資」などのキーワードを耳にする機会が増えてきました。
ESGとは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(管理・統治)の頭文字を合わせた言葉です。
ではなぜ、現代ではEGSが注目されているのでしょうか。
この記事では「ESGを簡単にわかりやすく解説!」と題し、ESGとは何なのかをはじめ、ESG経営やESG投資についても簡単にわかりやすくご紹介します。
ESGとは?簡単に解説!
ESGとはEnvironment(環境)・Social(社会)・Governance(管理)の頭文字を取った略称で、簡単にいうと経営に不可欠な3つの観点のことです。
- Environment:気候変動・野生動物の絶滅危機・海洋汚染・水資源の確保
- Social:ダイバーシティ・人口問題・経済格差・労働問題
- Governance:企業が健全な経営をおこなうための自己管理体制
現代は世界的に、環境問題や人権問題など、上記のようなさまざまな課題に直面しています。
企業の発展とともに社会貢献をおこなっていくためには、ESGに配慮した経営が必要不可欠です。
ESGへの取り組みは、2030年までの国際目標として掲げられているSDGs(持続可能な開発目標)の実現にもつながるため、積極的に取り組む企業が増えています。
ESGは、2006年に国連が「責任投資原則」を提唱したのをきっかけに、本格的に普及しました。
参考記事:(環境省)責任投資原則
ESGとCSRの違いは?
CSRはCorporate Social Responsibilityの略で、日本語では「企業の社会的責任」という意味です。
ESGもCSRも環境問題や人権問題などの社会的な課題に対し、配慮する考え方です。
2つの違いは、ESGが企業に対する投資家側からの視点なのに対し、CSRは社会的責任を果たす企業側の視点になります。
CSRは環境保護活動や社会貢献活動によって得られた利益の一部を還元していくという考え方です。
一方のESGは、社会に配慮した経営をおこなうことが、企業の成長につながると考えられ、企業の評価にも関係するため、投資の分野でも注目されています。
企業に求められる社会的責任としては、従業員・消費者・自然環境への配慮をはじめ、コンプライアンスの遵守や環境保護活動・社会貢献活動などがあります。
ESGとSDGsの違いは?
SDGsは持続可能な開発のための17の国際目標(持続可能な開発目標)です。
この17の国際目標は、企業がCSRを果たすための方向性を示しています。
CSRを果たすことはSDGsの実現に重要であり、ESGの観点から企業を成長させることにもなります。
ESGが企業経営に不可欠な3つの観点なのに対し、SDGsはすべての人が意識して取り組むべき目標と考えるとわかりやすいと思います。
SDGsという言葉は、日常的に耳にする方も多いのではないでしょうか。
一方で、投資家が企業を評価する基準になっているESGや、CSRは日常会話のなかでは耳にすることが少ない言葉です。
下記のリンク先では、ESG・CSRとSDGsの違いや、それぞれの言葉の使い方などを詳しくご紹介していますので参考にしてください。
関連記事:SDGsとサステナビリティの違いは?CSRとの使い分け方法について
ESGが注目される背景
ESGが注目される背景には投資の分野が深く関わっています。
投資といえば、以前は業績や財務状況から購入する銘柄を判断する方法が主流でした。
ESGが注目されるきっかけとなったのは、2008年のリーマン・ショック以降に、短期的利益追求型の経営や投資に批判が集まったことです。
投資家にとってESGは、将来的な企業価値を見据えるための重要な要素のひとつになっています。
現在は国際目標としてSDGsが掲げられ、各企業も持続可能で豊かな社会の実現のため、ESGに配慮した経営にシフトしています。
ESGへの取り組みは自己管理体制を整えるため、企業にとっても有益に働き、長期的な成長につながるからです。
企業は投資家からの高い評価を得て投資してもらうために、ESGへの取り組みを強化する傾向にあり、ESG投資という概念が生まれました。
ESG投資とは
ESG投資とは環境や社会に配慮して事業をおこない、適切な企業統治(ガバナンス)がなされている企業に投資をすることです。
社会的課題を単なるリスクと捉えず、解決していくことで企業が成長し、投資リターンにもつながるという概念が世界的に定着しつつあります。
実際に社会的リターンが投資リターンに結びつくことを示唆する研究結果も出ています。
ESGは消費者の指向にも関連しており、消費者は環境に配慮した商品や社会的責任を果たしている企業に、お金を使いたいと考える人が増加する傾向です。
また、企業がサスティナビリティを意識することも支持しています。
サスティナビリティを意識した商品には、フェアトレード認証製品などが挙げられ、売上も年々増加しています。
ESG投資は、短期的な業績の良し悪しだけで評価しないため、安定的な運用が期待できるのがメリットです。
参考記事:(財務省)ESG投資について
ESG投資の市場規模
ESG投資の市場規模は、日本だけではなく世界的にみても拡大する傾向にあります。
世界規模では2016年に22.9兆ドルだったESG市場は、4年後の2020年には1.5倍増しの35.3兆ドルに拡大しました。
日本市場では2016年で0.5兆ドルでしたが、4年後の2020年には約6倍増しの2.9兆ドルまで拡大しています。
日本全体の運用額のうち約24%がEPS投資が占める割合ですが、他国にくらべるとまだまだ少ない状況です。
ESG投資市場は2019年以降に急激に拡大していますが、これには新型コロナウイルスにともなう金融緩和が大きく影響しています。
ESGのなかでも新型コロナウイルスの影響で特に関心が高まったのは、Social(ダイバーシティ・人口問題・経済格差・労働問題)の部分でした。
業績悪化により給与の減額や人員削減に踏み切る企業が増えたことにより、労使関係への関心が高まったためです。
参考記事:(財務省)ESG投資について
ESG投資の種類

世界のESG投資額の統計を集計している国際団体であるGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)は、ESG投資を以下の7つの分類に分けて統計しています。
- ネガティブ・スクリーニング
- 国際規範スクリーニング
- ポジティブ・スクリーニング/ベスト・イン・クラス
- サステナビリティ・テーマ投資
- インパクト・コミュニティ投資
- ESGインテグレーション
- エンゲージメント/議決権行使
ESG投資はどのような視点を持つかで投資する手法が変わります。
それぞれのESG投資の手法の特徴やおよぼす影響などをご紹介するので参考にしてください。
ネガティブ・スクリーニング
ネガティブ・スクリーニングは、ESGの観点にそぐわない企業や業種を、投資対象から除外する手法のことです。
例えば、たばこ・アルコール・ポルノ・ギャンブル・動物実験などが当てはまり、社会や未来の世代にとって望ましくないネガティブな銘柄として除外されます。
ESG投資において投資銘柄を選定するための代表的な手法のひとつで、最古の手法といわれています。
以前は体に悪影響を及ぼす嗜好品やギャンブルなどが除外対象となるのが主流でした。
最近では特に環境への配慮が重視されるようになり、原子力・化石燃料・温室効果ガス業界などが除外対象に含まれるようになっています。
しかし、判定基準が定まっていないため選定が難しいという側面があり、ESG投資に占める投資運用残高割合は全体の数%にとどまっているのが現状です。
国際規範スクリーニング
国際規範スクリーニングは、環境保護・人権の保護・労働基準などの観点から国際規範に照らし合わせ、最低限の基準を満たしていない企業を投資対象から除外する手法です。
国際規範となるのは、国連グローバル・コンパクト(UNGC)や国際労働機関(ILO)が提唱する基準などが挙げられます。
UNGCは人権の保護や環境への対応に関連する国際規範で、人権・労働・環境・腐敗防止に関した10の原則で構成されます。
また、ILOが定める基準は条約と勧告の2種類です。
条約は国際労働基準をもとに労働時間やハラスメントなどについての190以上の条約で構成され、実施する義務があります。
勧告は条約と異なり努力目標のため、法的な拘束力はありません。
条約と内容が重複するものも含めると200以上の基準で構成されますが、毎年のように新たな基準が追加されています。
ポジティブ・スクリーニング/ベスト・イン・クラス
あらかじめ判定項目を設け、評価が高い銘柄やプロジェクトを積極的に保有する手法を「ポジティブ・スクリーニング」といいます。
判定項目には人権・環境・従業員対応・ダイバーシティなどが挙げられます。
ESG投資においてポジティブに評価されるのは、環境・社会・企業統治(ガバナンス)への取り組みが優れた企業です。
ESGに代表される非財務的要因に配慮する企業は、同業他社とくらべると高い競争力の維持にもつながると同時に、将来的に企業価値を上げる力になります。
ESGの観点からトップクラスの銘柄を保有する手法を「ベスト・イン・クラス」と呼びます。
サステナビリティ・テーマ投資
再生可能エネルギー・持続可能な農業・男女同権・多様性など、サステナビリティに貢献する企業やテーマに投資する手法が「サステナビリティ・テーマ投資」です。
ESGに配慮した持続可能なテーマに注目して投資します。
特に注目を集めているテーマは、カーボンニュートラル・AI・サイバーセキュリティ・Fintech(フィンテック)・DX(デジタルトランスフォーメーション)、5Gなどです。
持続可能なテーマは社会的な背景やそのときの課題に合わせて変わります。
特定のテーマに絞るため銘柄も選定しやすく、高リターンを期待できるのが特徴です。
インパクト・コミュニティ投資
金融機関の融資を受けづらい低所得者層をはじめ、地域に根付いた中小企業に経済的援助をおこなう投資手法です。
資金援助することにより、地域社会の活性化や社会的課題への直接的な解決を目指します。
ESG投資では、長期的なリスクの削減や企業価値の上昇を目的としますが、インパクト・コミュニティ投資は、特定の社会課題解決が目的です。
基本となる目的は異なりますが、どちらもポジティブな社会や環境を目指す点では類似しています。
ESGインテグレーション
「ESGインテグレーション」はESG投資の代表的な手法です。
従来型の財務分析に加え、ESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を考慮したうえで投資します。
ESGインテグレーションが注目されるようになった背景には、財務情報が企業価値の決定にそれほど影響しなくなったことが要因です。
財務情報と非財務情報(企業のESGへの取り組み)をかけ合わせて、より正確に企業分析したうえで投資先を選定をします。
銘柄選定にESGインテグレーションの手法をとると、長期的に高いパフォーマンスが期待できる効果があります。
エンゲージメント/議決権行使
「エンゲージメント」とは、投資家と投資先企業が建設的な目的を持って対話することです。
また、「議決権行使」とは株主総会での決議の場に株主が参加し、事案に対して賛否を投票します。
エンゲージメントの最大の目的は、投資先企業をより良い方向にシフトすることによって企業価値を向上させることです。
投資先の財務情勢や非財務情勢を的確に把握し、投資先の企業がより発展できるように積極的に働きかけることによって、投資リターンの拡大にもつながります。
社会や経済全体を持続的に発展させていくことがエンゲージメントの理想とされ、今後、投資手法の主流となる可能性が高いとも言われています。
企業がESGを取り入れるメリット
ESGが示す環境・社会・ガバナンスの3つの観点は、企業の長期的な成長に欠かせない概念として世界中に広まっています。
ESGの観点に対する取り組みが不十分な企業は、長期的な成長が見込めないと判断される傾向にあります。
企業がESGを取り入れるメリットは、以下の3つです。
- 企業価値が高まる
- キャッシュフローの拡大
- 優秀な人材の獲得
日本企業でもESGは企業経営戦略の一部とみなし、投資家を対象とする「統合報告書」を発行する企業が増えている状況です。
また、それにともないESG投資に強い関心を示す投資家も増え、ESG投資市場では個人投資家向けのESGファンドの販売も増加しています。
ここでは3つのメリットを詳しくご紹介しますので、参考にしてください。
企業価値が高まる
企業がESGを取り入れるメリットとしてまず挙げられるのは、企業イメージをアップさせることによって企業価値が高まることです。
ESGに配慮した経営は、投資家だけではなく消費者からの印象も良くなります。
社会や環境などに配慮した製品に興味を示す消費者が増えていますし、企業統治にも積極的に取り組む企業を高く評価する傾向です。
企業イメージが高くなれば、売上も増えて投資家からの企業価値も高まります。
キャッシュフローの拡大
キャッシュフローとは企業内の資金の流れのことを指し、キャッシュフローをみることにより、企業状態を把握できます。
キャッシュフローには3種類あり、営業活動によるもの・投資活動によるもの・財務活動によるものに分けられます。
ESGに関わっているのは、投資活動によるキャッシュフローです。
ESGの取り組みによって投資家からの評価が高まることで、資金が増え、キャッシュフローが拡大します。
投資活動によるキャッシュフローからは、将来の事業拡大のためにどれだけお金を使っているかや、投資からどれだけ回収しているかなどがわかります。
優秀な人材の獲得
ESGに取り組む企業は、新卒や中途採用の求職者をはじめ、その企業で働く社員からも魅力的な企業として評価されます。
ESGへの取り組み自体にはコストがかかりますが、適切な企業統治がおこなわれる企業では、働きやすさややりがいが生まれます。
企業のイメージアップは優秀な人材の獲得にも有利ですし、働きやすくてやりがいのある職場は離職率が低くなるのが一般的です。
優秀な人材を獲得することは企業の業績や成長に大きく関わるため、企業統治の内容も非財務情報として重要な要素です。
参考記事:(経済産業省)SDGsとESGの社会的(Social)側面
ESG経営の注意点
企業が持続的に成長するためにESG経営は必要不可欠です。
ESGを意識することにより企業の健全性が高まると同時に、社会的課題への解決が進むため、結果的に企業全体のブランド力もアップします。
このように、ESG経営には好転的な変化がたくさんありますが、その反面、ESG経営に切り替えるには注意点もあります。
ESG経営の注意点は以下の3つです。
- 中長期的での取り組みが必要
- ESGの基準が明確ではない
- 全従業員で意識を合わせる必要がある
メリットだけに目を向けてESG経営を始めると、大きな失敗を招く可能性が高まります。
既存の事業やシステムなどを広く見直す必要があるため、ESG経営に切り替えるコスト面を含め、さまざまな知識や情報を得たうえで慎重に検討することが重要です。
ESG経営に取り組むうえで注意したい3つのポイントを詳しくご紹介します。
中長期的での取り組みが必要
ESG経営は短期間での効果が出づらいため、中長期的な長いスパンでの取り組みが必要です。
ESG経営に切り替えるには、それなりの資金が必要ですが、短期間の効果では費用対効果が釣り合わない場合もあります。
費用回収までに時間がかかり過ぎると、資金力がない企業はキャッシュ不足や資金ショートに陥る可能性があるからです。
ESG経営は、実際に効果が出るために数年を要するケースもあるので、中長期的になることを意識したうえで入念な計画を立てることが重要です。
ESGの基準が明確ではない
ESG経営をおこなっているかどうかを評価するには、特定の指標が必要です。
しかし、指標はESG投資額の統計を集計している国際団体GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)をはじめ、複数の指標が存在します。
多くの指標が乱立しているため、ESGの基準が明確ではありません。
基準が統一されていないと、ESGに取り組むうえで正しい方向性を見極めづらいデメリットが生まれます。
指標を発表するESGの調査会社は世界中に600社ほどあります。
ESG経営では、世の中の動向を読み取り、評価されやすい取り組みを見極めることが重要です。
ESG経営が盛んな欧米の影響を受ける可能性もあるため、国内だけではなく海外の動向にも目を向けることが大切です。
全従業員で意識を合わせる必要がある
ESG経営を社内に浸透させるには、全従業員で意識を合わせることが必要です。
監督機能の強化も大切ですが、従業員が一丸となって足並みをそろえなければ、経営の透明性や公正性を向上できません。
経営する側・管理職・全従業員と企業にはいくつかの階層がありますが、邁進させるためには各階層にESGへの取り組みを正しく伝えることが重要です。
そのために企業はESG経営に関するセミナーをおこなったり、従業員からの意見も取り入れて改善していく必要があります。
ESG経営導入のポイント

ESG経営に関する注意点をご紹介しましたが、実際にESG経営に取り組むには難しい部分があることがわかりました。
ESG経営の歴史が浅いため、指標が確立していない点も大きく影響していますが、決算情報や財務情報からは経営が好転的に進んでいるかの判断が難しいのも要因です。
今後、日本における具体的なESG経営の定義付けが進んでいくことが理想ですが、現在のところそれぞれの企業が最適な方法を見つけることが重要です。
ESG経営導入に必要な4つのポイントをご紹介するので参考にしてください。
環境問題への積極的な取り組み
ESGの「Environment」の部分は、環境問題への積極的な取り組みを示しています。
環境問題への取り組みは、持続的な社会を目指す考え方(サステナビリティ)につながっています。
問題視されている環境的な課題はさまざまであり、すべての企業が対処可能な課題もあれば、業種によって対応できる課題もあります。
たとえば製紙メーカーであれば、森林資源を守るために再生資源の利用を推進させたり、漁業であれば漁獲量を制限するなどの配慮が必要です。
直接は環境問題に関わりないと思われる業種であっても、省エネルギーを心がけるなど地球温暖化への対応で積極的に取り組めます。
ダイバーシティの推進
ESGで環境問題と並んで重視されるのが、ダイバーシティ(多様性)の推進です。
ダイバーシティはSDGsを進めるうえでも重要な要素のひとつであり、ビジネスシーンにおいても避けられない課題です。
社会では性別・性自認・国籍・人種・考え方を多様性として尊重する傾向にあります。
ダイバーシティが重要視されながらも、日本ではセクシャルハラスメントやパワーハラスメントの根絶には、まだまだ程遠い状態が続いています。
また、日本で働く外国人に対する偏見などもなかなかなくなりません。
ダイバーシティの推進は企業の資質が評価されるだけでなく、人材の離職率にも影響する重要なポイントです。
労働環境の見直し
ダイバーシティと並んで、企業の持続的な成長と人材の確保で注視すべき課題は、労働環境の見直しです。
長時間労働が常習的であったり、正規雇用者と非正規雇用者の間に著しい格差が生じている企業は、ESGの観点から評価が悪くなります。
非正規雇用から正規雇用への採用制度を設けたり、雇用形態にこだわらず労働に見合った給与を支給するなどの労働環境の見直しが必要です。
従業員が労働にやりがいを感じ、健全に働ける環境を整えることが重要です。
また、企業内の災害に対する対策を万全にしたり、福利厚生を充実させ従業員の健康維持にも力を入れる必要があります。
雇用されるすべての従業員が、心身ともに安心して働ける環境を整えることが望ましいとされます。
ガバナンスの徹底
企業におけるガバナンスは、健全な経営をおこなうための管理体制や企業統治を指します。
日本においてガバナンスが注目されるようになった背景には、2000年初頭に大企業やその子会社による粉飾決済や不祥事が相次いで発覚したためです。
不祥事が発覚した企業の株価は暴落し、投資家たちは大きな損害を被ります。
そのような事態が繰り返されると、積極的に投資しようと考える人が減ってしまいます。
投資家が減ると企業の資金が滞り、結果的に経済は発展しません。
上場企業の不祥事の防止を目的に、日本金融庁と東京証券取引所が中心となって策定した「コーポレートガバナンス・コード 」というものがあります。
健全な経営をおこなうためには、コーポレートガバナンス・コードに基づき、ガバナンスを徹底させることが重要です。
参考記事:(金融庁)コーポレートガバナンス・コード
ESGへの企業の取り組み事例
ESGへの具体的な取り組みは企業ごとに異なるのが一般的ですが、どのような取り組みがあるのかを簡単にご紹介します。
| 環境(E)への取り組み | ●GHG(温室効果ガス)排出量の削減 ●水の総使用量の削減・再生水使用・排水量の削減・水資源保全 ●エネルギー消費量の削減 ●事業が生物多様性に与えるインパクト ●プラスチックの削減 ●産業廃棄物の削減 ●環境問題に対する経営陣の監督・管理 |
| 社会(S)への取り組み | ●ハラスメントや差別の排除 ●雇用や待遇におけるジェンダーレス ●労働災害への対応・従業員の心身を守るための配慮 |
| ガバナンス(G)への取り組み | ●内部統制の構築・強化 ●第三者視点での監視体制の構築 ●コーポレートガバナンスの社内への浸透 |
ESGに取り組む企業の具体的な事例をご紹介するので参考にしてください。
日本郵政株式会社
日本郵政株式会社では、環境課題に対する超長期の目標として「2050年カーボンニュートラルの実現を目指す」を掲げています。
カーボンニュートラルは政府が掲げる目標であり、温室効果ガスの排出量から、植林・森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることです。
日本郵政グループでは2050年の超長期目標に向け、中期的に2030年度46%削減(2019年度比)実現に向けた取り組みをおこなっています。
具体的な取り組みは、車両を電気自動車や低燃費車両へ切り替えたり、高効率空調やLED照明への切り替えです。
人権問題への対応では、「日本郵政グループ人権方針」を制定し、すべての人に対する人権侵害を容認せず、ハラスメントのない安全で働きやすい職場環境の確保をおこないます。
また、コーポレートガバナンス体制を日本郵政グループ各社が構築し、適切な管理体制にも取り組んでいます。
取締役会において内部統制システムの構築に係る基本方針を定め、コンプライアンスやリスク管理などに対する体制を規定することが主な取り組みです。
参考記事:(日本郵政)ESGナビゲーション
SOMPOホールディングス
SOMPOホールディングスは、日本の大手保険会社です。
グループにおけるESGに関連する課題を把握したうえで、問題解決に取り組み、内容を開示しています。
温室効果ガス(GHG)の排出を制限し、年度ごとのGHG排出量を試算したうえで減少に取り組んでいます。
具体的な取り組みは、一般的なカーボンニュートラルへの実現をはじめ、事業活動で発生する廃棄物の削減や出張などによるエネルギー消費の削減などです。
また、社会的課題への対応として、ダイバーシティや労働環境の改善にも力を入れ、関わる情報を開示し、すべての取り組み内容の状況を公開しています。
開示している情報は以下のとおりです。
- グループ内の女性管理職比率
- 障がい者雇用率
- 労働組合などの加入率
- 育児休業取得者数
- 育児支援制度
- 介護休業取得者数
取り組み内容を公開することにより、それぞれの比率を上げるなど、労働環境のさらなる向上を目指しています。
花王株式会社
消費者の日常生活に関連する製品を提供する花王株式会社では、消費者の目線に立ったESG経営をおこなっています。
花王株式会社では、1990年代から環境に配慮した包装や、すべての人が使いやすいユニバーサルデザインのパッケージの開発をおこなってきました。
気候変動や高齢化社会によって、日常生活においてもさまざまな配慮が必要な時代です。
花王株式会社の製品は、消費者の生活につながっているため、消費者が求めるサステナブルな暮らしを意識した取り組みに力を注いでいるのが特徴です。
また、環境や社会課題への解決は自社だけでおこなえるものではないとし、さまざまなステークホルダーとの連携した活動もおこなっています。
例えば、製品の原料となるインドネシアの小規模パーム農園の生産性の向上や、ライオン・イトーヨーカドーと提携して詰め替え用パックの回収ボックスを設置するなどの取り組みです。
さらに事業機会の拡大と社会的課題への取り組みとして、ESGガバナンス体制を構築しています。
参考記事:(花王)ESG経営
キヤノン株式会社
キヤノン株式会社は、2015年の国連サミットでSDGsが採択される以前の1988年頃から「共生」を企業理念に掲げた経営をおこなってきました。
国・地域・自然・地球環境に配慮した取り組みは、そのままSDGsの理念にもつながっています。
キヤノンの取り組みでは、企業の持続的成長とともに、豊かな生活と地球環境が両立する社会の実現を目指します。
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2008年に設定した環境目標「ライフサイクルCO2製品1台当たりの改善指数年平均3%改善」を継続的に達成する予定です。
年平均3%改善を継続して達成し続けることにより、2030年までに累計で50%の改善を目指しています。
また、社会的な配慮として、人権の尊重・魅力的な職場環境づくり・ダイバーシティ&インクルージョンの推進・労働安全衛生と健康経営・人材育成などにも取り組んでいます。
参考記事:(キヤノン株式会社)ESGの取り組み
リコージャパンのESG目標
リコージャパンのサステナビリティの考え方は、創業者の市村清が掲げた三愛精神(人を愛し・国を愛し・勤めを愛す)に基づいています。
事業とSDGsの同軸化を掲げ、社会課題起点で業務に取り組み、成果を上げることで社会課題の解決を加速させたいという考えがあります。
事業を通じた社会課題の解決の軸となっているのは、リコージャパンが消費者と進めるSDGsと、パートナーと取り組むSDGsの2本です。
リコージャパンではESGの取り組みを踏まえた17の目標として、以下の「リコージャパンのサステナビリティ指標」を掲げています。
1.顧客からの評価:価値共創パートナー度
2.貢献するワークプレイス数
3.時間創出効果
4.生活基盤向上貢献人数
5.製品・サービスによるCO2削減量
6.主要複合機および再生機による新規資源削減量
7.自社のCO2排出量(2015年度比CO2排出削減率)
8.人権影響評価のスコア向上
9.仕入先パートナー行動規範署名率
10.社員の情報セキュリティ意識の向上
11.低コンプライアンスリスク組織比率
12.コンプライアンス感度DI*1のネガティブ回答組織割合
13.RICOH BUSINESS BOOSTERの共創プロジェクトで創出した新規案件数
14.プロフェッショナル認定レベル3以上社員数
15.社員一人あたりの学習時間
16.社員エンゲージメントスコア
17.女性管理職比率
リコージャパンのサステナビリティ指標
それぞれの指標に対する年度ごとの実績も、公式サイトで開示しています。
また、リコージャパンでは2018年度よりSDGsキーパーソン制度を設け、社内外へのSDGsの展開活動を行っているのも特徴です。
まとめ
この記事では、ESGを簡単にわかりやすくご紹介しました。
ESGは、持続可能な開発のための17の国際目標SDGsに直結しています。
各企業のESGの取り組みにはさまざまなものがあり、取り組むうえで注意しなければいけないこともあります。
社会的な課題やESGの理解を深め、それぞれの企業が自社に合った取り組みをおこなうことが大切です。
